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規制改革会議雇用WGでの報告

去る1月29日に規制改革会議雇用ワーキンググループに呼ばれて、労働局あっせん事案の実態について報告をしてきたことは、すでに本ブログで述べたところですが、そのときの議事録が内閣府HPにアップされたので、私の発言部分のみこちらにアップしておきます。

私の前に、一橋大学の神林龍さん、東大博士課程の高橋陽子さんが、それぞれ裁判と労働審判について報告をしていますので、是非リンク先をじっくりお読みください。

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg2/koyo/140129/summary0129.pdf

○濱口先生 遅れて申し訳ございません。そのために報告の順番が変わってしまいましたけれども、私からは全国48の都道府県労働局でやっているあっせんの事例の分析について御報告いたします。

 個別労働関係紛争解決促進法という法律が2001年にできまして、その年の後半から施行されております。厚労省が毎年発表している数字なのですけれども、大体年間100万件ぐらいの相談があり、うち25~26万ぐらいが民事上の事件であります。直近でいうと1万件ぐらい労働局長による助言指導の申し出がありまして、紛争調整委員会でのあっせんというのが6,000件~8,000件くらいを推移している。最近若干減少気味で、一番多かったのは2008年度の8,457件です。本日報告いたします分析の対象となったのが2008年度の事案です。

 次のページには、今、高橋さんから紹介のあった労働審判とか、あるいは関係の民事訴訟事件も含め、都道府県の労働委員会とか、労政所管部局でもあっせんをやっておりますので、そういう類似の制度で大体どれぐらいの件数が挙がってきているかを示しました

 この8,457件が全国の件数なのですが、このうち全国の4つの局の事案(1,144件)を対象として、その関係のあっせん処理票及びその附属書類等を分析した結果を以下お話します。

 まず、統計的なことから順番に見ていきますが、この1,144件の事案を労働者の雇用上の地位で見ますと、正社員が約半分強で51%、直用非正規が約3割、派遣が約1割強等といったような状況になっておりまして、これは東大の社研でやった労働審判の調査と比べると、そちらは非常に正社員の比率が非常に高くなっておりますので、相対的により弱い立場といいますか、不安定な立場の労働者が使う制度になっております。

 男女別に見ますと、全体で見て男性が56.3%、女性が42.6%と男性が若干多いという状況です。

 企業規模で見ますと、30人未満で35%、3分の1を超えておりまして、100人未満で半分を超えます。これは恐らく実数より少ないと思われるのは、合計の一つ上に不明というのがありまして、ここに約2割ぐらいありますので、それを各規模別に配分しますと、恐らく30人未満で全体の半分近く、100人未満だと3分の2を超えるのではないかと想像されます。このように雇用上の地位で見ても、また企業規模で見ても、より弱い立場といいますか、裁判所に行くお金と時間がない労働者が使う制度になっているのではないかと思います。

 先ほど労働審判のところで非常に多くの方々が弁護士を使っているというのがありましたけれども、あっせんでは、少なくとも労働者側では弁護士などはもちろんありませんし、社労士を使うという例もほとんどありません。会社側のほうにぽつりぽつりと社労士を使うという例があるぐらいで、圧倒的大部分は本人だけでやられています。したがって、あっせん申請書も手書きで読めないような字で殴り書きしてあるようなものも結構ありますが、逆に言うと、大変敷居が低い制度であるということであります。一般的には、あっせんの申請があってから1カ月ぐらいで解決ないし未解決で終わっています。

 事案の中身、これはあっせん処理票上の分類で見たものですが、いわゆる解雇とか退職勧奨とか雇止め等々といった広い意味での雇用終了にかかわるものを全部足し上げますと、約3分の2、66.1%であります。

 いじめ・嫌がらせ関係は最近さらに増えておりますが、これが約2割強、そして、労働条件引き下げ関係が1割強という状況になっております。この雇用終了のところをさらに詳しく分析しております。

 次の終了区分ですが、あっせんというのは基本的に任意の制度でありますので、そもそも出口も当然任意なのですが、入り口も任意です。どういうことかというと、圧倒的に多くの場合、労働者側からのあっせん申請で始まるのですが、そのあっせん申請に対して会社側がそれを受ける必要は全くない。むしろ、これは最後のところで申し上げますけれども、受けなくてもいいですよというようなことも伝えておりますので、結果的に言うと、約4割強が被申請人の不参加による打ち切り、つまり、あっせんの中身に入らない形で終了しているというのが約4割ぐらいに上ります。残りの6割弱は何がしかの形であっせんの中身に入るわけですが、そのうち最終的に合意の成立に至っているのは全体の3割ほどです。30.2%。ということは、約2割ほどは不合意ということになりまして、また、その他、申請人が取り下げるというものも1割弱あるという形になっております。

 恐らく、最初の雇用上の地位が弱い立場であるとか、企業規模が小さいということも影響していると思われますし、とりわけ、この終了区分で見られるように、解決する保証が全くないということが一番大きく効いているのではないかと想像されるのですが、次のあっせんの解決金額を見ていただきますと、一番多いのが10万円~20万円未満で、これが24.3%、約4分の1であります。次に、ほぼ同じぐらいで並んでいるのが5万~10万未満、12.4%。一つ飛んで20万円台が13%、30万円台が13.6%。ほぼ10万円台を中心にして、その前後に分布をしているということがわかります。

 我々の分析はここの表だけだったのですが、高橋さんのほうから平均を出してほしいという依頼があったので、計算すると大体17万円強という数字になっております。これを雇用上の地位で見てみますと、実は正社員であっても一番多いのは10万円台でありますが、相対的に言うと、より上のほうに、20万円、30万円台によりシフトしております。一方、正社員、直用非正規、派遣、試用期間というように、地位が不安定になるにつれ、だんだんと分布が低い額のほうにシフトしてくるという形になっております。

 これを先ほど高橋さんが御報告された労働審判の調査。実は労働審判のほうはかなり高い額を念頭に置いて区分けをしているために、一番低いところが50万円未満になってしまっているので、ここに一番大きな塊が入ってしまうのですが、これと比較してみると、やはり労働審判のほうが相当高いところに分布しているという傾向が窺えます。

 恐らく、この背景にあるのは、もちろん労働者自身が雇用上の地位がより弱いとか、企業規模が小さいといったこともあるだろうと思いますが、とりわけ労働審判との違いでいいますと、労働審判は裁判所でこれを断るとそのまま裁判訴訟につながっていく。あっせんのほうは、その後またゼロから裁判所にいくことになるので、とりわけ、こういう弱い立場の労働者にとっては、ここで不満であっても、低い額であっても、解決しておいたほうがいいという意識が働くというのがかなり効いているのではないかと想像されるところであります。

 あっせん関係書類から伺われる労働者の賃金額(月額、日額、時間額とさまざまですが)でもって解決金額を割ってみると、月額のところが一番わかりやすいのですが、1カ月分から1カ月半のところに大体24.6%、4分の1ぐらいで、その前後に分布しています。大体、実額で言って10万円台というのが月額表示でいうと1カ月から1カ月分台というところに当たるようです。逆にいうと、ここからもあっせんに来ている労働者の賃金水準というのはかなり低いということが窺われます。ここまでがデータ的なところであります。

 次は、このうち雇用終了にかかわる事案の中身を分析、分類したところでありまして、5ページからずっとその表が続いておりまして、8ページまで、雇用終了関係のものが先ほどのものより少し増えておりますのは、いわゆる準解雇というような、必ずしも本人がやめさせられたというようなものではないものも全部含めておりますので841件、若干増えております。これを内容の類型ごとに分類したものであります。大きく労働者の行為、労働者の能力・属性、経営上の理由、そして、準解雇、その他と分けております。

 どんな事案かということをざっとでも見ていただいたほうがいいかと思って、全部御紹介するつもりは毛頭ございませんが、9~20ページまで、1行コメント的な形で載せております。ざっと見ていただいて恐らくお感じになるのは、こんなことで解雇しているのかということではないかと思います。裁判所に来るような事案とはかなりレベルの違う事案があっせんに来ています。むしろ、こういった事案が3割は解決しておりますけれども、大部分は解決しないままになっているということのほうが、現実の法社会学的な意味での日本の雇用終了の実態という意味では重要なことなのではないかというのが、私がこの研究を行った感想であります。

 この研究成果を本にまとめたものを一昨年に出版しております。その最後のところから、日本の現実の職場で起こっている雇用終了をめぐる実態についてのコメントをまとめたものを21~22ページに書いております。

 雇用終了するかどうかの基準として一番重要なのは態度です。つまり、使用者側から見て、この労働者の態度が悪いというのが非常に多くの事案の原因になっております。労働法の教科書からすると、態度が悪いというのが正当な解雇事由になるとはあまり思われていないのですが、こういった中小零細企業で起こっている雇用終了事案の非常に多くの部分では、むしろ態度が最も重要なファクターになっているということが法社会学的な意味での大きな発見ではないかと思います。

 それに比べて、通常個別解雇における最も重要な理由となるはずの能力というものは件数的にもかなり少ないですし、さらに中身を見ますと、一応形としては、使用者側は、こいつは能力がないのだと言っておりますが、どこがどう能力が足りないのかということを明確に言っているのはほとんどなくて、その能力のなさというのはかなりの程度、態度の悪さと一連のものとしてつながっているような面があります。

 この態度が重要であり、それと裏腹で能力というのが極めて影が薄いというのが現実の日本の職場の特徴ではないかということであります。ただ、恐らくこれは実は中小零細企業だけではなくて、それが雇用終了につながるかどうかはともかく大企業でも似たような面があるのかもしれません。むしろ、大企業と中小零細企業の違いという意味で最も特徴的であるのは、3番目の経営の万能性であります。これは私どもが一つ一つの事案を分析して非常に強く感じたのですが、あっせんに来ているような事案においては、経営者側は経営上の理由である、経営不振であるというのは、だから解雇は当たり前だろうというような形で言っていることが非常に多い。もちろん判例法理では整理解雇4要件ないし4要素という形で一般の普通解雇などよりもより手厚く保護されていると考えられておりますが、実際の中小企業に行くと、必ずしもそうではない。むしろ、かなり逆のイメージがあります。

 それをとりわけクリアに示しているのは、私が表見的整理解雇と呼んだ事案なのですが、使用者側は経営不振であるという理由で解雇した。それで労働者があっせんを申請してきた。それであっせんを始めてみると、使用者側は実は彼は態度が悪いので首にしたのだけれども、そう言うと角が立っていろいろもめるので、経営不振だと言えばすっと通るだろうということでこういうふうに言ったのだと言いわけしている事案が結構多くあります。これは大企業の人事部から見ると非常に逆転した感覚かもしれませんが、中小零細企業になればなるほど、お前が悪いというよりは経営上の理由だと言ったほうが通りやすいという感覚がかなり強いということが窺われます。これは日本の中小零細企業における法社会学的な解雇の実態という意味では非常に重要なポイントではないか。あと、とりわけいじめ、嫌がらせのような事案が最近増えておりまして、これを見るとかなり職場環境が悪化しているということが窺われます。

 政策的含意というところにいろいろと書いてありますが、時間の関係もありますので基本的に省略しまして、最後のところだけ25ページの真ん中あたりからですが、政策的なインプリケーションということで提示させていただいたものです。解雇の金銭解決制度が議論されるときは、どうしても裁判に行って判決まで至ったものを前提として、それに比べて金で解決するのはけしからぬという議論になりがちなのですが、あっせんという非常に低いレベルのところから見ますと、解決に至ったものですら10万円台というところに集中し、大部分がその前後という非常に低いレベルで解決をしておりますし、さらにいうと、それも全体の3割であって、大部分は解決すらしていないという現実にあります。

 むしろ、金銭解決の一定の基準といいますか、目安みたいなものがあると、弁護士も社労士もつけられない徒手空拳の労働者が、何らかのそれなりに満足のいく解決に至る上では、むしろ有用性があるのではないかということを提示しています。

 最後は若干小さい話なのですが、なぜ4割以上も入り口で断られるのかということを調べてみると、そもそも労働者があっせん申請書を提出し、労働局はそれを会社に送るのですが、そのときに、これは任意の制度なので別に受けなくてもいいですよとわざわざ御丁寧にそういうことを言っているので、必ずしもそういうことを言う必要はないのではないか。もちろん任意の制度であるのはその通りなのですが、これは決して労働者側に立って企業を責め立てるようなものではなくて公平に解決を見出すようなものなのだということを伝えた方が、もう少し解決につながる率が上がるのではないか。これは若干みみっちい話ではありますけれども、この2つの政策的な提言をさせていただいたところです。

 私からの報告は以上です。

○大田議長代理 ありがとうございました。勉強になりました。

 濱口さんの金銭解決制度の導入という、これはざっと拝見すると、事後的なということですか。

○濱口先生 私、そもそも金銭解決をめぐる事前、事後という言葉の使い方がやや混乱していると思っております。つまり、解雇の事前、事後という意味で言うならば、基本的には全て事後の話でしかないと思っています。解雇の事前となると、それはまさに金さえ払えば不当な解雇が正当になるのか、という議論になってしまいます。

 それに対して、解雇の事後という意味では全て事後なのですが、多くの人が使っている用語法では、判決の事前、事後という意味で事前、事後という使い方をしているようです。しかし、これは解雇事案が法廷に行って初めて意味をなす概念であって、そもそもあっせんのように裁判所に行かないものは判決がないのですから、判決の事前、事後などというのはあり得ないわけです。それを判決の後のものだけが事後だと考え、その事後だけ議論するという話になると、現実に数的には圧倒的なマジョリティとして存在している裁判所に行かない解雇事案は論じるべき解雇事案ではないということになってしまうので、これは変だろうと思っております。そういう意味から言うと、解雇であれ、雇止めであれ、退職勧奨であれ、雇用終了の後でそれに対して不満を持って、あっせんであれ、労働審判の申し出であれ、あるいは訴えの提起であれ、そういう異議の申し立てをした場合にはすべて解雇の事後と考えるべきではないかという趣旨です。

○鶴座長 どうぞ。

○大田議長代理 ありがとうございます。そうすると、通常、解雇が無効の場合に金銭で元に戻らないで済む。会社に戻らないもう一つのメニューをつくることが検討されていますが、今の話だと、まず労働審判とあっせんの場合に金銭補償のルールをつくるというようなイメージになるわけですね。

○濱口先生 判決というのは、事案について裁判所が一定の判断を下すということですね。それを前提として、その事前か事後かというのが言われている話だと思うのですが、そもそもあっせんであれ、あるいは労働審判の調整であれ、そういう判定的なことはしないわけですので、判定でない形での一種の調整としての金銭解決というものをどう考えるかという、そういう意味で申し上げています。

○大田議長代理 そうすると、裁判に行った場合はどうなりますか。 

○濱口先生 裁判に行った場合でも、判決が下されるまでは、解雇後で判決前ということになります。それはここで言っているあっせんとか労働審判と同じシチュエーションだと思います。

○鶴座長 多分ここの話はすごく大事なところだと私も思っていまして、今、産業競争力会議のほうから出ているようなペーパーにも、紛争解決の問題についてなぜやるのかというところで、やはり予測可能性の向上という話をしているのです。今、濱口先生がお出しいただいた25ページから26ページの中にも、これは濱口先生も、法制度上、金銭解決の額の基準は全く存在しないことが、いろいろあっせんで低額になってしまうような問題に関係しているということなので、何らかの目安みたいなものが必要であるということについては、多分いろんなところでも濱口先生も御主張されているポイントだと思うのです。

 通常の大陸、ヨーロッパの国のケースを見ると、基本になっているのは、裁判がアンフェアだとされたときに、法律で勤続年数に応じて定められた、事例に定められている額があって、原状復帰でない形であれば、それを支払えば雇用関係が解除できるという、一応その仕組みというのがもともとある。多分今の議論の中で、裁判に行って判決が出るか出ないかという人たちが例えば全くいなかったとしても、制度上そういう状況になったら、いくらの解決金が法律で定められてこれがもらえますよという状況が定まっておれば、裁判に行く人が例えばゼロ人だったとしても、他のところでいろいろやるときに、そこの目安が当然みんな判断していろいろ行動が決まってくる。だから、多分皆がみんな裁判するわけではないし、また、無効の判決が出ていたときなどというのはそこに行く人たちはどれだけいるのですかという議論がもちろんあると思うのですけれども、そこにその仕組みをやることによって、他のいろんな解決がむしろスピードアップされるとか、効率化されるとか、そこに非常に大きな利点があり得るというのが一つ論点になっているのではないかなと思うのです。

 先ほど高橋さんがドイツのケースについて少し御説明いただいて、多分ドイツについてはここでももう一回重要なので専門家に来ていただいてお話を聞こうと思っているのですが、勤続年数×0.5というのは多分最初にドイツの場合だと、紛争があったときにいきなり労働裁判所に行ってまずどうするのかということで、裁判官がこれでどうということを提示するわけですね。それが先ほど言ったメルクマールとルール・オブ・サムで勤続年数の0.5ぐらいができている。それで納得できないのだったら、では裁判に行きましょうかというような流れなのか、私は間違っていたらそこは教えていただきたいのです。そういうものもできてくるというのは、もともとのそういう制度があるからこそ、そういうような制度もできてくるのではないかという認識をしていて、その辺についてどういうふうにお考えになられるかという部分。

 逆に、今の大田議長代理の御質問の趣旨と全く同じところです。訂正があれば訂正してください。

○濱口先生 詳しいことはドイツの専門家に聞かれたほうがいいと思うのですが、私の認識からいうと、ドイツの場合、法律上で解雇無効の場合に裁判所が解消判決で金銭補償を命じることができるという規定があって、その基準が法律に書いてある。しかし、そこまで行くのは実はレアケースで、大部分は労働裁判所で判決に行く前の和解で解決している。ただ、日本みたいに裁判所ではないところでやっているわけではなくて、労働局のあっせんみたいなものも全部労働裁判所でやっているということなのかなという理解だと思います。

○浦野委員 どうもありがとうございました。大変単純な質問からまずお聞きしたいのです。

 資料1の1ページ目で、総合労働相談件数というのが100万台ということですごい件数だと改めて思ったのですけれども、少なく見積もっても60人とか70人に1人というような感じなのです。これの中身はどんなものなのかというのが、個別の民事上のところまでいくのは25万ということになると思うのです。それ以外のものは大したことがないのかなと思うのですが、それが一つ。

 もう一つは、これはどの先生にお聞きしたらいいかよくわからないのですけれども、この解雇された人たちのその後の就職率といいますか、そういったことを追っかけた調査というのはあるのでしょうか。例えば大企業の場合に、整理解雇といいますか、何らかはどこかの工場が云々といったときには、その企業のほうで責任持って再就職先というのは徹底的にあっせんしていくわけです。この辺がこういう中小の場合は、これが終わった後、全くそのまま捨て置かれているのかどうか。解雇された人の再就職みたいなことについてのデータがあれば教えていただきたいと思います。

○濱口先生 100万件の総合労働相談件数というのは民事以外も含めた全てです。民事上でないというのは、例えば賃金不払いみたいなものは、相談窓口に来て賃金不払いだというと、そこから監督官のところに行くわけです。これは労働基準法違反の話になりますからそちらに行くとか、男女差別だったらそちらに行くとか、いろんな形で振り分けられていて、したがって、解雇やパワハラなど、あっせんにつながるようなものの母数は25万ということだと御理解いただければと思います。

 大体の傾向としては、そのうち半分強が広い意味での雇用終了関係で、やはり2割強、最近はかなり増えておりますけれども、パワハラが増えている。ただ、これはあっせんに至る可能性のあるものなのですが、あっせんは他の仕組みに比べれば非常に低コストでやれると言いながら、それでもあっせん申請書を書いてから、やはり1カ月ぐらいはかかります。これは見るまなざしの位置によって、そんなものは大したコストでないと思う人もいますけれども、そんなことをやっている暇すらない。明日の生きる糧を探す人もいるわけです。その中から、解決する見込みがどれくらいあるかということを考えて、助言指導に約1万件、あっせんに約6,000件という形で来ているのでしょう。ただ、正直言いまして、我々が分析したのは、あっせん段階まで来たもので、あっせんに来る前の段階のものは分析しておりませんので、どういう相談が来ていて、どういうものがどういう理由であっせんに来なかったかというのは、実はわかりません、推測するだけです。

 事後の就職率という意味なのですが、あっせんの結果として復職したのは、実例としてはほとんどありません。雇用終了事案のうち2件だけ復職という形で解決したものがありますがそれ以外は全て金銭解決という形ですので、復職という形で解決した事案はほとんどないというのが実態です。他に就職したかどうかというのは、我々が把握できるあっせん関係書類からは全くわかりませんけれども、就職といいますか、とにかく稼がないと生きていけないでしょうから、何らかの形では働いていることになろうかとは思います。

 

○佐々木座長代理 ありがとうございました。このデータの中で私が聞き落としたかもしれないのですけれども、解雇される人の年齢によって解決までに時間差があるとかというような違いはあるのでしょうか。若い人と年をとった人とで解決に合意というか、和解だったり判決するなりに違いがあるのでしょうかということが一つ目。

 もう一つは、勤続年数によって解決金など今後変えていくという考え方が今示されたのだろうと思って聞いていたのですけれども、例えばそれは退職金のようなイメージをすると、勤続年数が長い人には多めにお金を支払ってやめていただくということなのかなと思うのですが、例えばこれがルール化されていったときに、そうすると、経営側からすると、だめな人は早めに判断したほうがいいということにならないのでしょうか。

 すごく変ですけれども、だめだな、でも、あと1年様子を見てから考えようかなと思っているときに、1年長くより2年長くいると、その人に払う解決金が多くなってしまうわけですね。なので、そういうことにはなる危険性というのでしょうか、そういうことはないのでしょうか。

 

○濱口先生 我々の研究は我々が調査票を設計してそれに書いてもらったわけではなくて、あっせん処理票という行政上の処理票を分析したものなので、そこからは年齢も勤続年数もわかりません。事案を見ていくと、この人はどうも若いみたいだなとか、どうも中高年みたいだなというのは何となくにじみ出てきますが、そういうデータは全くありませんので、使える数字にはなりません。

 したがって、これは全く直観的な話なのですが、勤続年数などはあまり影響していないように思います。そもそも解決金額に対して個々の事案ごとに何が影響しているのかというのはよくわかりません。研究者同士で話して、結局気合いかなという意見になりました。気合いというのは、つまり、これ以上要求すると使用者側に逃げられてしまう、あるいはこれ以上締めると逆に裁判所に訴えられるといった、ある種気合いみたいなもので決まっていて、だから目安が全くないのでこういう額になってしまっているのではないかと。あまり年齢とかはファクターとして効いていないような感じがします。

 もちろん、雇用上の地位が非正規が多いとか、中小零細が多いということから、年齢とか勤続年数がそれほど影響していないということがあるのかもしれません。ただ、いずれにしても、それはデータとしてきちんとした形で出せるようなものはありません。

 

○大田議長代理 濱口先生が書いておられる金銭解決の基準をきっちりつくっていくという、非常にそのとおりだと思うのですが、すごく反対、抵抗が強いのです。金で首にしやすい社会になるのではないかという指摘が非常にあるのですけれども、大企業の場合に、ここで仮に金銭解決の制度が導入されて基準額が決められたりすると、整理解雇に対する抑止力が弱くなるものなのかどうか、なぜこんなに反対が強いのかというところでお感じのことがあれば教えてください。

 それから、高橋先生が小規模企業の解決金には上限を設けるということを書いてくださっているのですが、とすると、金銭解決の基準を定める場合に、小規模の従業員の場合には上限額を設けるべきということなのかどうかです。そこを教えてください。

 

○濱口先生 金銭解決を導入するかどうかというのは変な言い方で、現実には金銭解決をしているわけです。もっというと、金銭解決すらしないものの方がマジョリティです。金銭解決しているものについても、その基準が全くないというのが現実の姿です。ですから、解雇の事後だが存在しない判決の事前というところが一番問題としては大きなところなのだろうと思いますので、そこのところについての議論をすればいいのではないか。それは、現実に金銭解決しているわけですので、それをもう少し合理的な形にするにはどうしたらいいかという形で議論できるのではないか。

 先ほど来申し上げている通り、どうも事前、事後という言葉が違う意味でごっちゃに議論されてしまっていることが、話をややこしくしているのではないかという気がします。解雇する事前に金銭解決というのは、もしそれに労働者が合意しているのなら解雇ではなく合意解約になってしまいますし、金を払えば不当な解雇が正当な解雇になるというのは法理上あり得ないと思います。いずれにしても、そこはもう少し議論の整理をしたほうがいいと思いますし、島田先生が整理していただけるかもしれません。

 

○島田専門委員  ・・・あと濱口先生にお伺いしたかったのは、ここもよくわからないのですけれども、あっせんの場合は解決した後の履行というのはどういうふうに出るのかというのは、もしおわかりであれば。

 

○濱口先生 法律上は、和解契約という性格のものですので、逆に言うと、それを任意に履行しない場合には訴えないといけない。

 

○島田専門委員 その場で債務名義とかやるのですか。

 

○濱口先生 合意文書をつくります。双方が文書に署名、捺印したところで一件落着という形になります。

 

○島田専門委員 ありがとうございます。

 

○鶴座長 今のおっしゃった点はすごく大事で、結局、弁護士の方々というのは、金銭解決の話は非常に反対されるのです。かえって予測可能性が高まってしまうと、自分たちの弁護の裁量がなくなってしまうのではないかという。そういうことで非常に関係しているので、やはり最後まで争いたい人は弁護士を雇って結果的に高い解決金額となるという構造でしょうね。だから、ある種、何度も今日も出てきていますように、少し目安をつくるということがそういう問題ともかかわっていることを考えると非常に有効ではないのかなという感じを持っています。

 先ほど大田議長代理がおっしゃられた点というところを島田先生も御説明いただいたのですけれども、濱口先生は25ページで2002年当時、建議まで金銭解決の提案は出たのだけれども、その後、結局いろんな反対があった。その反対の中に、裁判所のほうが先ほど議論になったように、要は解雇が無効になってしまうので、解雇がなかったことにしましょう。そこで新たになぜ金銭的なものを相手に与えなければいけないのか。それが違法であったら、それに対する損害賠償とか考え方はできるのかもしれませんけれども、そういう非常に法律の技術論と言ってしまうと元も子もないのですけれども、そういう話が出てきた。

 ヨーロッパにおいては、多分法律の体系、日本とほぼ同じようなところ、またそこの意味合いが違うところ、双方においてでも、私の理解だと、それでも法律上で金額を定める金銭解決制度というのを持っている国があるということなので、なかなかそこは非常に難しいというのは私自身も承知はしているのですけれども、例えば濱口先生、そこの法的な技術論みたいなところというのは超えられないものがあるとお考えになられているのか。そうした場合に目安を提示するというのが、もっとあっせんとか労働審判みたいなところでやるときの目安みたいなものをつくるというほうに考えたほうがもしかして早いのか。その辺について何かコメントがあればお願いします。

○濱口先生 どこまでゼロベースで考えるかということだと思います。個々の国の詳しい制度については、本当はその国の専門家にお聞きいただいたほうがいいのですが、ドイツのように、違法な解雇は無効である、ただし、それに対して解消判決を下して金銭解決を命ずることができるとしている国があり、スウェーデンもそういうふうになっております。

 一方、私の知る限りでは、島田先生の前で言うのはお恥ずかしいところですが、フランスなどはむしろ解雇は直ちに無効ではなくて、違法な解雇に対して金銭賠償を命ずることもあるし、裁判官がこれは大変悪質だからと復職を命ずることもある。そこまでさかのぼって制度設計できるのであれば、実はそのほうがわかりやすいかもしれない。ただ、そんなことを言っても、もう既に判例が積み重なっているのだからということであると、ドイツ、スウェーデン型しか選択肢がないのかもしれません。これは非常に大きな法制度設計の問題ということになろうかと思います。

 ただ、そういう大きな話は話としてもちろん当然やられるべきだと思うのですが、私がこの研究で強く主張したかったのは、解雇の事後ではあるが、判決の事前というか、判決自体がないために判決の事後があり得ないような事例こそが大事である。つまり、世の中のすべての解雇には判決が下されるという非現実的な前提に立つと視野から消えてしまうような非常に膨大な部分に対して、どういう納得のいく解決の仕組みをつくれるのかという形で議論したほうがいいのではないか。だから、断固として解雇無効の判決をもらうのだという少数の人については、とりあえず括弧に入れて置いておいてもいいのかもしれないとすら思っています。

 しかし、そうでないケースは非常に多いわけで、そのケースに対してきちんとした解決の道筋をつくるということが、本来判決に行くべきだった可能性を奪うということにはならないのではないかというのが私の感想です。

○鶴座長 それは私も非常にお考えはよくわかるのですけれども、ただ、今日、濱口先生が御紹介していただいた、非常に悲惨な例というか、そこにも出てこないような、もっと背後にあるわけですね。それをそのままにしておいていいのでしょうかという議論ももう放っておけない話なのかなという感じがするので、今のおっしゃった話、どうやってバランスをとるのかというところがフェアなやり方ということをあまりこれまでにきちんと考えてきていないということだと思いますので、バランスをとる必要はあるのかなと思います。

 他に。どうぞ。

○濱口先生 一言だけ申しますと、労働者が自らの権利を守るためにどれだけのコストをかけるべきと考えるのか。つまり、権利の上に眠るものはこれを保護せずということわざもあるぐらいで、お金をかけて弁護士を頼もうとしない労働者は別に未解決でいいのではないかと割り切ってしまうのも一つの考え方かもしれません。しかし、少なくともあっせんの窓口まで来るということをやっている人に対しては、それなりのある程度の道筋を示すというのも社会のサービスとしてあっていいのではないかと思います。

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