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西谷敏他『日本の雇用が危ない』

13507西谷敏他『日本の雇用が危ない』 (旬報社)をお送りいただきました。すでに、旬報社のHPに案内が出た時点で紹介していますが、煩を厭わず改めて詳しい目次を示しておきます。

http://www.junposha.com/catalog/product_info.php/products_id/898?osCsid=d137f766371eab1bf5d9a901d813400c

第Ⅰ部 雇用・労働における規制緩和政策と政策形成会議の全体像

全面的な規制緩和攻勢と労働法の危機…………西谷 敏
はじめに
一 国家戦略特別区域法の意味するもの
1 雇用特区構想とは何か
2 雇用特区構想をめぐる攻防と特区法の内容
3 特区法の評価
二 具体的な規制緩和要求の検討
1 解雇制限の緩和  
2 有期労働契約の規制緩和  
3 労働時間規制の特例  
4 ジョブ型(限定)正社員制度  
5 労働者派遣法の全面改正  
三 全面的規制緩和攻勢の特徴と批判の視点 
1 規制緩和攻勢の性格  
2 規制緩和論批判の視点  
おわりに  

第二次安倍内閣がめざす労働の規制緩和…………五十嵐仁
はじめに  
一 戦略的機関の復活と新設 
1 経済財政諮問会議  
2 日本経済再生本部  
3 産業競争力会議  
4 テーマ別会合  
5 日本再興戦略―JAPAN is BACK  
二 規制改革に向けての本格的な検討 
1 規制改革会議  
2 雇用ワーキング・グループ  
3 雇用ワーキング・グループ報告書と規制改革に関する答申  
三 参院選後の動向 
1  経済財政諮問会議、日本経済再生本部、産業競争力会議  
2 規制改革会議と雇用ワーキング・グループ  
3 国家戦略特区と労働政策審議会の動向  
むすび  

第Ⅱ部 規制緩和政策の諸相

質の悪い雇用を生み出すアベノミクスの雇用改革…………和田 肇
はじめに  
一 雇用社会の現状 
二 「質の高い雇用を通じた成長」 
三 質の悪い雇用へ 
四 アベノミクスの雇用改革における極端な企業優先主義 
五 安倍政権の本質 
おわりに  

産業競争力会議ペーパー批判…………田端博邦
はじめに  
一 分科会の基本認識 
1 文書の構成  
2 経済のグローバル化と技術革新  
3 新たな「日本的雇用システム」  
4 何のための改革か  
二 具体的な政策の視点 
1 労働市場と能力開発  
2 雇用形態・労働時間法制等  
三 「検討の枠組み」の政策体系 
結びに代えて  

限定正社員の法的位置づけ―格差是正法理と解雇制限法理のなかで…………野田 進
一 現政権における雇用政策の流れ 
1 二〇一三年雇用政策  
2 三つの流れ  
二 限定正社員構想の概要と二つの検討課題 
1 限定正社員構想  
2 二つの検討課題  
三 限定正社員の「均衡処遇」構想 
1 均衡処遇という選択  
2 「非正規」労働者の格差是正措置  
四 解雇権濫用法理の相対化 
1 解雇権濫用の限定化  
2 雇用形態を背景とする解雇権濫用法理の軽減適用  
3 契約内容による解雇権濫用の軽減適用  
4 解雇法理の相対化への危惧 
むすび―規制がないところに緩和はできない  

労働法理への叛旗…………萬井隆令
  はじめに  
一 労働法理への叛旗 
1 無原則的な派遣の拡大  
2 「限定正社員」制度の提唱  
3 ホワイトカラー・エグゼンプションの導入  
二 いかがわしい法改正作業 
1 欺瞞的提案理由  
2 実態にもとづかない空疎な政策  
3 論点の回避  
 三 改革推進の強引さ……
まとめ  

「ブラック企業型労使関係」ではなく、働く者に優しい労働政策を!…………脇田 滋
一 「氷点下」の日本労働法 
1 国・自治体が生み出す「ワーキングプア」  
2 最低基準(氷点)以下の雇用・労働条件  
二 安倍政権下での労働規制改革 
三 「特定秘密保護法」強行採決と民主主義の後退 
四 労働者・市民の連帯拡大と対抗軸明確化 

自由な企業活動と日本国憲法の原理…………深谷信夫
はじめに  
一 日本国憲法と市場原理主義 
1 日本国憲法の構成  
2 市場原理と憲法原理  
二 憲法学における「経済的自由権」 
1 芦部憲法学の経済的自由権  
2 「経済的自由権」構成の社会的役割  
3 「営業の自由」論争の意義  
三 日本国憲法と「営業の自由」 
1 水林論文の問題意識と構成  
2 水林論文の問題提起と画期性  
おわりに  

第Ⅲ部 規制改革政策の決定過程と関連資料

安倍労働規制改革―政策決定過程の記録…………深谷信夫
はじめに  
一 規制改革方針策定へ―2013年1月から7月まで 
1 規制改革諸会議の始動  
2 規制改革諸課題の検討  
3 規制改革への諸提言  
二 規制改革立法制定へ―2013年7月から12月まで 
1 規制改革諸課題の具体化へ  
2 規制改革関係法の成立へ  
3 さらなる規制改革の実行へ  
おわりに

規制改革関連資料
(1)規制改革諸会議構成名簿 
(2)これまでに提起されている課題の代表例(抜粋)(規制改革会議第2回―1 2013.2.15) 
(3)規制改革会議の進め方について(規制改革会議第2回―2 2013.2.15) 政策研究大学院大学 大田弘子 
(4)ジョブ型正社員の雇用ルールの整備について(規制改革会議雇用WG第3回 2013.4.19) 規制改革会議雇用WG座長 鶴光太郎 
(5)労働者派遣制度の合理化について(規制改革会議雇用WG第5回―1 2013.5.9) 規制改革会議雇用WG座長 鶴光太郎 
(6)有料職業紹介事業の見直し(規制改革会議雇用WG第5回―2 2013.5.9) 
(7)雇用改革報告書―人が動くために―(規制改革会議第11回 2013.5.30)規制改革会議雇用WG報告書 
(8)規制改革に関する答申~経済再生への突破口~(抜粋)(規制改革会議第12回 2013.6.5) 
(9)日本再興戦略―JAPAN is BACK―(案)(抜粋)(日本経済再生本部第7回 2013.6.14) 
(10)規制改革実施計画(抜粋)(閣議決定 2013.6.14) 
(11)労働者派遣制度に関する規制改革会議の意見(規制改革会議第17回 2013.10.4) 
(12)労働時間規制に関する3つの大誤解(規制改革会議雇用WG第11回―1 2013.10.11) 労働政策研究・研修機構労使関係部門 濱口桂一郎 
(13)労働時間規制改革の視点(規制改革会議雇用WG第11回―2 2013.10.11) 東京大学社会科学研究所 水町勇一郎 
(14)労働時間規制の見直しについて(規制改革会議雇用WG第11回―3 2013.10.11) 慶應義塾大学大学院商学研究科 鶴光太郎 
(15)労働時間規制改革について(規制改革会議雇用WG第12回 2013.10.23) 早稲田大学 島田陽一 
(16)労働時間規制の見直しに関する意見(規制改革会議第22回―1 2013.12.5) 
(17)ジョブ型正社員の雇用ルール整備に関する意見(規制改革会議第22回―2 2013.12.5) 
(18)「世界でトップレベルの雇用環境・働き方」を目指して(産業競争力会議分科会第2回 2013.10.17) 国際基督教大学客員教授 八代尚宏 
(19)今後の労働法制のあり方(産業競争力会議「雇用・人材分科会」有識者ヒアリング第1回 2013.11.5) 濱口桂一郎 
(20)「世界でトップレベルの雇用環境・働き方」を目指して〈雇用改革・労働市場改革の検討の枠組み〉(産業競争力会議「雇用・人材分科会」第3回 2013.11.11) 雇用・人材分科会主査 長谷川閑史 
(21)規制改革提案に関する現時点での検討状況(抜粋)(産業競争力会議第14回 2013.9.20) 国家戦略特区WG座長 八田達夫 
(22)国家戦略特区における規制改革事項等の検討方針(案)(抜粋)(日本経済再生本部第10回 2013.10.18) 
(23)「成長戦略の当面の実行方針」について(産業競争力会議第14回 2013.10.1) 竹中平蔵 
(24)産業競争力会議「雇用・人材分科会」中間整理~「世界でトップレベルの雇用環境・働き方」の実現を目指して~(抜粋)(産業競争力会議「雇用・人材分科会」第6回 2013.12.26) 
(25)研究開発強化法等改正法(抄)(平成25年12月13日法律第99号) 
(26)産業競争力強化法(平成25年12月11日法律第98号)の概要 
(27)国家戦略特別区域法(平成25年12月13日法律第107号)の概要 

私は、本書が全面的に批判している規制改革会議や産業競争力会議に呼ばれて、上の資料にあるような意見を述べ、そのなにがしかがこれら会議体の政策に影響を与えているという意味で言えば、まさに本書の著者たちの論敵ということになるのでしょう。

とはいえ、彼らの議論のいくつかは、実は私がこれら会議体に呼ばれて熱心に説いてきたところでもあります。

日本の労働時間法制が欧州諸国のそれと比べて物理的な時間規制の上限を欠き、無制限の長時間労働を許している点にこそ問題がある、というのは、まさに上記規制改革会議への資料で強調しているところです。そういう問題と、賃金と労働時間のリンクを外すこととをきちんと区別しなければならないというのが私の主張ですが、たとえば雑誌掲載時よりも本書で増補された田端博邦氏の論文もその点を強調しているのですが、なぜか本書の全体基調は、そういう腑分けには不熱心に見えます。

また、そういう無制限な働き方を余儀なくされる正社員のあり方を見直すべきという問題意識につらなるジョブ型正社員の議論(もちろん、これら会議体の委員諸氏には、自由に解雇したいという下心があって言っている面があるのも事実ですが)に対して、そもそも正社員は無制限じゃないなどと、理屈の上ではあまりにも正しいけれども、現実の最高裁の判例法理の上ではあまりにも無力な「正論」を振り回すだけで、何か事態を変えることができると考えているのだろうか、と不思議の念を抱かずにはいられません。

遠いところからけしからんけしからんと叫んでいるだけで、何か世の中がいい方に向かうのであるのなら、私も是非その驥尾に付したいと思いますけれども、そういうものでも無いと思います。具体的に、正社員の働き方の実態としての無限定さを少しずつでも限定に方向に持って行くために必要なのは、あれもだめこれもだめ的な批判ではないのでしょう。

 

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