だんだん非正規化が日本版ワークシェアリングだったんだとおもえてきた。
ありすさんのつぶやきで、
https://twitter.com/alicewonder113/status/443731679329648640
だんだん非正規化が日本版ワークシェアリングだったんだとおもえてきた。
というのがあって、いやまさにワークシェアリングで騒いでいたときに、その旨を指摘していたんですが・・・。
http://homepage3.nifty.com/hamachan/shaminken.html(ワークシェアリングをどう考えるべきか)(社会民主主義研究会2002年3月23日)
ここまでは、あくまでも「ワーク」をいかに「シェア」するかという観点からの話でしたが、第4の類型、オランダ・モデルといわれるものは、狭義の「ワーク」を超えて、生活全体の時間のあり方をいかにシェアするかという問題意識から考えるべきものだと思います。これは「多様就業対応型」などと呼ばれ、「短時間勤務を導入するなど勤務の仕方を多様化し、女性や高齢者をはじめとして、より多くの労働者に雇用機会を与える」ものだとされています。実はこの言い方の中に、大きな問題が含まれているのですが、それは後に述べることにしましょう。
・・・ところが、ここが大変注意を要するところなのですが、この類型はややもすれば、要するにパートタイマーを増やして、労働力を安上がりにして、雇用を増やすことだという風に理解されてしまいがちです。近年日本ではアングロサクソン流の市場原理主義が世論を支配しており、その枠組みの中に迂闊にこのモデルを持ち込むと、社会連帯を極大化したモデルのはずが、全く逆の連帯ゼロの市場によるワークシェアリングの一変形にされてしまいかねません。
実際、ワークシェアリングに批判的な経済産業省も、「企業の業務実態やその変化に応じて、パートタイム労働者等をさらに活用することにより、一定の雇用維持・創出効果が期待される」と「多様就業活用型」を評価しており、あまつさえ、「このため、労働者派遣や有期雇用、裁量労働制の一層の規制改革を行い、制度的にも多様な就業をサポートすることが重要」と、労働市場の規制緩和の一環として利用しようという意図を示しています。
しかし、こういう風に理解された「多様就業活用型」のワークシェアリングなるものは、上で述べた「仲間の間で分かち合う」というそもそもの考え方とは異なるものというべきでしょう。むしろ市場によるワークシェアリング、生産性の低い連中はよけいな規制をしなければ外部労働市場でちゃんと仕事が見つかるんだ、パートはどうもねえ、有期は嫌だな、派遣はだめよと、文句ばかり言うから失業が減らないんだ、四の五の言わずに市場が提供する仕事に就けばよいのだ、という発想に基づくものでしょう。そこには「連帯」の思想は見あたらないように思われます。
現在、日本でワークシェアリングというと、短期的には先の企業内のワークシェアリング、中長期的にはこの多様就業型をやっていくんだということになっていますが、この多様就業型の社会的インプリケーションについては、まったく同床異夢のようです。ある人人にとっては、労働者の枠を超え、生活者全体の中で、労働時間、家庭責任を果たす時間、社会的活動の時間、個人の時間を改めて配分し直すという、社会システムの組み替えの一環として位置づけられているのに対して、他の人々にとっては、労働者保護のための規制によって硬直化している労働市場を規制緩和し、市場原理を貫徹させるための戦略の一環として位置づけられているように見えます。
http://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2009/03/032-041.pdf(ワークシェアリングとはそもそも何をすることか?)(『ビジネス・レーバー・トレンド』2009年3月号)
二〇〇二年当時話題になったのが「多様就業型」のワークシェアリングであるが、これを「仲間」の観点から説明すれば、狭義の「ワーク」を超えて、生活者全体の時間のあり方を、男性と女性、若者と高齢者など様々な社会成員の間で「シェア」しようとするものだといえる。今風の言い方をすれば、「ワーク・ライフ・シェアリング」となろうか。具体的には短時間勤務など就業形態を多様化することによって、より多くの人々に家庭生活や個人生活と両立できる雇用機会を与えるものである。オランダがこれで成功したと喧伝され、「オランダ型」とも呼ばれた。
ただし、二〇〇二年に日本でこのタイプを称揚した人々が、本当にオランダ型の社会を理想としたのかは疑問である。なぜなら、オランダモデルの中核に位置するのは、フルタイムもパートタイムも厳格に同一賃金、均等待遇で、しかもフル・パート相互の転換を自由にするという仕組みである。それにより、男性も女性も等しく家庭責任を果たし、地域社会に参加し、個人の生活を楽しむ時間を分かち合うことができる。ところが、その仕組みがなければ、要するにパートタイマーを増やして、労働力を安上がりにして、雇用を増やすことだと理解されかねない。実際、当時の経済産業省はそういう発想でこのタイプを称揚したように思われる。
・・・しかしながら現実の労働市場においては、低賃金不安定雇用のフルタイム有期雇用や派遣労働の形で、まさしく非オランダ型の就業形態多様化が進んでいった。そして今、派遣切りや有期切りという形で、非正規労働者の雇用問題が注目を集める中で、再びワークシェアリングが論じられ始めたわけである。
ワークシェリングが話題になる都度、こういうことを言ってきた割に、全然伝わってない感が・・・。
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