勝利の方程式-リベラル右翼政党が成功する
網谷龍介・伊藤武・成廣孝編『ヨーロッパのデモクラシー[改訂第2版]』(ナカニシヤ出版)をお送りいただきました。ありがとうございます。
http://www.nakanishiya.co.jp/modules/myalbum/photo.php?lid=1017&cid=14
移民とポピュリズム、政党不信と大連立――
民主主義をめぐるさまざまな困難に立ち向かうヨーロッパ政治のいまを各国別に紹介。
新たにEU加盟を果たしたクロアチアを加えるなど、
最新の政治状況を反映した改訂版。
この本、5年前に出された本の改訂版ですが、
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/post-8c25.html(ヨーロッパのデモクラシー)
だいぶ分厚くなり、中身もさらに充実しています。これだけ包括的に欧州各国の政治の構造をクリアに分析した本はほかにないでしょう。
新たに追加されたコラム等の中で、ここではオランダ・ベルギー編に挿入された「勝利の方程式?」という一文を紹介しておきます。
オランダ・ベルギーのみならず、近年ヨーロッパ諸国全般において右翼ポピュリスト政党の台頭がめざましい。その台頭を説明しようとさまざまな議論が出されてきたが、その中の一つに「勝利の方程式(winning formula)」というものがある。それによると、移民排斥のような強硬な新保守主義的な政策と国家の歳出削減のような新自由主義的な政策を上手く掛け合わせたときに、右翼ポピュリスト政党が選挙で得票を伸ばすというのである。これは賛否両論があるものの、最近のオランダ、ベルギーの政治状況を見ると、確かに当てはまるところがある。・・・
(ベルギーの例について)・・・その主張は、移民規制や犯罪撲滅といった新保守主義的な政策のほかに、行政の効率化、失業保険の給付期間短縮など、の新自由主義的な政策が並ぶ。これも「勝利の方程式」に則ったものと言えるが、実際に、デデッケルは新党立ち上げの際、リベラル右翼政党が成功する見込みが選挙市場にあることを某シンクタンクから助言されたといわれる。・・・
いろんな意味で、昨今の日本の状況等も考え合わせると、大変示唆的なコラムです。
もっとも、日本(及びアメリカ)とヨーロッパにおける思想用語の使い方の逆転から、上の文章のある一句が意味不明な人がいるかも知れませんが、
「リベラル右翼政党」とは、文字通り、経済に対する市場原理主義的な(欧州語でいう「リベラル」な)主張と社会に対する右翼的な主張が組み合わさった政治勢力ということです。こういう所にいちいち注釈が必要なんですね。
« ブラック企業経営者を目指す人にとって必読の一冊 | トップページ | 季刊労働法244号 »
コメント