フォト
2020年4月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    
無料ブログはココログ

« 『OECDジェンダー白書』 | トップページ | 日本郵便への疑問 »

2014年2月22日 (土)

オバタ カズユキ『大手を蹴った若者が集まる 知る人ぞ知る会社』

Shiruオバタ カズユキ『大手を蹴った若者が集まる 知る人ぞ知る会社』(朝日新聞出版)をお送りいただきました。ありがとうございます。

https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=15662

一言で言えば、ベンチャー企業のルポ。

これまでは、高学歴層の就職先といえば大企業。しかし近年、会社の規模や知名度にとわられず「成長企業」を目指す若者が増えている。彼らが、大企業を蹴ってでも目指すのはどんな企業で、いったい何が彼らを引きつけているのか。東大、早稲田、慶応、一橋、東工大といった超上位校の若者と、中小の成長企業を結びつける人材会社「スローガン」の伊藤豊氏が選んだ企業5社を、『会社図鑑』『大学図鑑』で知られるオバタカズユキ氏が徹底取材。優秀な人材が集まる成長企業のいまと、脱大企業の最先端を行く若者たちの就職観・仕事観に迫る、渾身のノンフィクション。

前書きによると、朝日新聞出版の片桐圭子さんの企画でベンチャー企業人材ビジネスのスローガン社長伊藤氏に会いに行き、そこからの紹介で5社を取材して本書になったようです。

その5社とは:

Logoterramotors_3

Logosansan_2

Logonetprotections_2

Logoforcia_2

Logocrowdworks_2

ですが、いずれもとても優秀で意欲に満ちた人材が全力投球で最先端のビジネスに取り組んでいる絵に描いたようなすばらしいベンチャー企業です。

いや、この表現自体は皮肉じゃないです。オバタ氏の叙述は決して礼賛的でなく、時として斜に構えた姿勢ですらありながら、そこで働く人々の魅力に引き寄せられていく様がとてもくっきりと浮かび上がってきます。

ただ、実はそれは、この取り上げられた会社が、本当にハイエンドな人々が、ごく少人数の会社で全員総掛かりで最先端の仕事に取り組んでいる という意味で、かなり特殊な性格を持っているところだからなのだろうな、という感想ももたらせます。

ここに出てくる人々は、法律上は経営者も労働者もいますが、ほとんど同じような感覚で仕事に取り組んでいるのでしょう。それがベンチャー創造の現場というものなのでしょう。それはおそらくまごう事なき事実であるに違いない。ただ、これらベンチャーが成長し、中堅企業に、大企業に拡大していったときに、その全員ベンチャーというカルチャーをどのように着地させられているかは、そのときのこれら会社がブラック企業と呼ばれるようになっているかいないかを左右するのではないか、という感想も持ちました。

改めて本書を読んで一番感じたのは、登場する人々がほとんど例外なくハイエンドな人々であり、それゆえにベンチャーという土俵で十二分にその能力を全開して活躍しているということです。まさしく「大手を蹴った若者が集まる」会社たちです。

ハイエンドな人ほど大企業に「入社」したがり、中小零細になればなるほどローエンドという伝統的な日本のカルチャーからすると、確かにこれはプログレッシブな意義を提示するものなのでしょう。

しかし、彼らにとって正しいことが、「大手に蹴られた若者」にとっても同じほどの意義を有するかどうかは別の問題です。「大手に蹴られた若者が集まる」ベンチャーを売り物にする会社の姿は、本書が描き出すのとはまたひと味違う様相を示しているようにも思われます。

本書に書かれていることと、本書に書かれていないこととを、重ね焼きすることで、より複眼的に現在の(ハイエンドからローエンドまでの)若者たちの姿が浮かび上がってくるのではないか、と感じたところです。

(追記)

上記企業のうち、Sansanの角川素久さんとネットプロテクションズ(NP)の秋山瞬さんと著者のオバタカズユキさんが鼎談した「あなたの子供が「ベンチャーに就職する」と言ったら」が、日経ビジネスオンラインに載っていましたので、だいぶ間隔が空きますが、ここに追記しておきます。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20140507/264129/?P=5&ST=smart

オバタ:労働政策研究の第一人者である濱口桂一郎氏が、ご自身のブログで拙著のレビューを書いてくださいました。

 この本に取り上げられているのは、優秀で意欲に満ちた人材が全力投球で最先端のビジネスに取り組んでいるすばらしいベンチャー企業だ、と。しかし、登場するのはみなハイエンドな人々である点を見落としてはいけない。そんな主旨のレビューでした。読んでいただけました?

角川秋山:読みました。

オバタ:要するに、濱口氏は「知る人ぞ知る会社」で起きていることは、日本人の上位層のごく一部の話ですよ、と指摘しているのだと思います。まあ、そういう現象を捉えた本なので、著者としては「そうですね」という感想です。

 でも、例えばこのレビューを読んだ親御さんが、子供に対して「あなたはそこまでハイエンドではないのだから、そんなところでリスクを取らず、大企業か公務員の道を考えなさい」と思うケースは多そうだなとも感じたんです。

角川:なるほど。僕は、結構レビューにある通りだなと思います。

オバタ:そのココロは?

角川:「その通りなので、ハイエンドな人はベンチャーに入ろう」と僕は言いたいですね。「大手に入ったらあなたの持っている才能がもったいないじゃないか」という思いが明確にあります。

 けれども、ではみんながベンチャー企業に入ったら幸せになるかと言ったら、そんなことはありません。自分の子供がハイエンドではなかったら、「大手もいいんじゃない。いろいろな仕事ができるし」みたいなことを言っちゃうかもしれない。

オバタ:その場合の「ハイエンド」って何ですか?

角川:自分の道を自力で切り開く力があるかどうかですよ。こういうのをやりたいという思いや、それを勝手に推し進めるバイタリティーがすごくあること。そういうマグマを持っている人は、大手企業に入ると潰されかねない。

秋山:僕は学生によく、「ベンチャーと大手で比較をするな」という話をしています。どちらに進むにしても、まわりに流されて、なんとなく入るのならそれは思考停止です。きちんと考え、突き詰めた上で選択した進路であれば、ベンチャーでも大手でもどちらでもいい。

オバタ:流されて入ったベンチャーがブラック企業でした、では目も当てられませんからね。

角川:ベンチャーって玉石混交じゃないですか。

秋山:本当にそうだと思います。

・・・・・・・

秋山:僕は、さっきの「ハイエンド」について。お話を伺っていて、そうか自分たちはハイエンドなのか、NPがいろいろなことにチャレンジできているのも特殊な環境にあるからなんだな、とあらためて感じました。

オバタ:そうですか。

秋山:そう感じる一方で、そんな僕らが「つぎのアタリマエをつくる」ことってやっぱり価値があるよな、って。誰もやらなかったことを、1回成功事例にすれば、あとはいろいろな会社がそれを真似てアタリマエが広がっていく。そういうものをつくりたいから、僕たちはハイエンドでいい。先を走ろう、それが使命だとあらためて思いました。

オバタ:Sansanらしい、NPらしいお話をありがとうございました!

« 『OECDジェンダー白書』 | トップページ | 日本郵便への疑問 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

« 『OECDジェンダー白書』 | トップページ | 日本郵便への疑問 »