脇田成『賃上げはなぜ必要か─日本経済の誤謬 』
脇田成『賃上げはなぜ必要か─日本経済の誤謬 』(筑摩選書)をお送りいただきました.ありがとうございます。
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480015938/
日本経済の復活には、賃上げを行い、資金循環の再始動が必要だ。苦しまぎれの金融政策ではなく、労働政策を通じて経済全体を動かす方法を考える。
脇田さんは、例の政労使会議の下で理論的検討をした経済の好循環実現検討専門チームのメンバーで、
http://www5.cao.go.jp/keizai2/keizai-syakai/k-s-kouzou/pdf/koujyunkanjitsugenkouseiin.pdf
そこで本書の題名と同じこういうプレゼンをしています。
http://www5.cao.go.jp/keizai2/keizai-syakai/k-s-kouzou/shiryou/2th/shiryo3-1.pdf
本書を買いに走る前に、まずこの資料をざっと見ておくと、著者の議論の概要がわかると思います。
ついでにその時の議事要旨
http://www5.cao.go.jp/keizai2/keizai-syakai/k-s-kouzou/shiryou/2thgijiyoshi.pdf
○脇田委員のプレゼンテーション概要は以下のとおり。
・金融危機の後遺症が大きく、企業存続のため守りを固めている状況。
・民間非金融企業の資金余剰は、日本では1990年代後半から恒常的に黒字。
・1990年~1998年までは、人件費、設備投資、純資産の増減は整合的に推移。
・1998年以降は、純資産の増減が大きく変動し、企業内の財務支出優先度が自己資本、設備投資、人件費の順へ変更。
・マクロ経済的には設備投資だけでは不十分で、賃上げが効果的。
・非正規雇用から正規雇用に転換していくことも重要だが、非正規雇用労働者の賃金が上がるだけで正規雇用労働者の賃金が下がれば、格差は是正されるが、有効需要に影響する賃金総額全体が下がる可能性。
・ガイドラインを通じ、人件費、設備投資、自己資本の成長率のバランスをとることが望ましい。
本書の構造は:
第1章 成長と循環のあいだ
第2章 増大する非正規労働者をどうとらえるか
第3章 ミドルの不満と閉塞の構造
第4章 要塞化する日本企業
第5章 自分を見失った政府
第6章 少子化と家庭の変容
第7章 立ちすくみの構造
第2章、第3章のあたりは、日本的労働慣行をめぐる構造的な論点に深く踏み込んでいます。
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