フォト
2020年4月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    
無料ブログはココログ

« 産業競争力会議雇用・人材分科会有識者ヒアリング議事要旨 | トップページ | 『会社でうつになったとき』 »

2014年2月13日 (木)

差別が禁止されるパートタイム労働者

旬報社のサイトに、『労働法律旬報』2月下旬号の予告が載りましたが、

http://www.junposha.com/catalog/product_info.php/products_id/897?osCsid=eefa9f2d7c5e9910b88f3515ba289c73

そこに、

[紹介]弁護士短信―労働事件簿108ニヤクコーポレーション(パートタイム労働法八条違反)事件/ある「準社員」の闘いの行方=藤﨑千依・・・32
労働判例/ニヤクコーポレーション(パートタイム労働法八条違反)事件・大分地裁判決(平25.12.10)・・・52

という弁護士の文章と判例が載っています。

これ、昨年本ブログでも取り上げた

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/12/post-92c0.html(通常の労働者と同視すべき短時間労働者)

ものですが、その詳しい解説が載るようです。

本件については、WEB労政時報のHRwatcherでも先月簡単な紹介記事を書きましたので、参考までに。

http://www.rosei.jp/readers-taiken/hr/article.php?entry_no=168(差別が禁止されるパートタイム労働者)

 去る2014年1月23日、労働政策審議会は「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案要綱」の諮問(しもん)を受け、妥当と答申した。これを受けて厚生労働省は法案を国会に提出することになる。このもとになった労政審の建議は、2011年9月にとりまとめられており、約1年半塩漬けにされていたことになる。内容的には、パート差別を禁止している法第8条の要件から無期労働契約要件を削除するとともに、職務の内容、人材活用の仕組み、その他の事情を考慮して不合理な相違は認められないとする法制をとるものである。
 
 パート法第8条(差別的取り扱いの禁止)は、2007年の制定後1件も対象となる事案が上がってこなかったが、昨2013年12月10日、初めて正規労働者との均等待遇を認めた判決があった。X社事件(大分地裁 平25.12.10判決 判例集未掲載)である。これは貨物運送事業で働く運転手で、8年半にわたり有期契約を更新してきた準社員について、職務の内容が正社員と同一であるにもかかわらず準社員であることを理由として処遇に差があるのはパート法8条違反として訴えたものである。なお、雇止め(労働契約法第19条の適用)についても争点となっている。
 
 会社側の主張によれば、正社員と準社員の違いは以下のように挙げられていた。
・就業規則上正社員は転勤、出向があるのに対し、準社員には転勤、出向がないこと
・正社員はチーフ、グループ長、運行管理者、運行管理補助者に任命されるのに対し、準社員はこれらに任命されないこと
・準社員ドライバーは正社員ドライバーと異なり、新規業務、事故トラブルへの対応など緊急の対処が必要な業務、対外的な交渉が必要な業務には従事しないこと
・正社員ドライバーには事務職に職系転換した者がいるが、準社員にはいないこと
 
 これに対して裁判所は、「正社員と準社員との間には、転勤・出向の点において、大きな差があったとは認められない」「チーフ、グループ長、運行管理者、運行管理補助者への任命の有無によって、正社員と準社員の間で、配置の変更の範囲が大きく異なっていたとまでは言えない」「仮にドライバーのうちでそのような業務(=緊急・対外業務)にかかわる者が正社員のみであったとしても、それをもって、正社員ドライバーと準社員ドライバーの職務内容の相違点として重視することはできない」「事務職への職系転換は、正社員ドライバーにとってもごく例外的な扱いであると認められ、正社員の通常の配置とは認められない」等と、いずれも退けた上で、以下のように判示した。
 
…原被告間の労働契約は、反復して更新されることによって期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当認められる期間の定めのある労働契約(パートタイム労働法8条2項)に該当するものと認められる。そして、原告は、「事業の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)が当該事業所に雇用される通常の労働者と同一の短時間労働者であって、当該事業主と期間の定めのない労働契約を締結しているもののうち、当該事業所における慣行その他の事情から見て、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるもの…」に該当したものと認められる。
 
 実際に差別的取り扱いと認定されたのは、賞与額(準社員が年間15万円であるのに対し、正社員は55万~58万円と40万円以上の差がある)、週休日(準社員は年間6日であるのに対し正社員は同39日)、退職金(準社員には退職金がない)であり、これらについて短時間労働者であることを理由として賃金の決定その他の処遇について差別的取り扱いをしたものとして、パート法第8条第1項違反と認めた。そして、これらによる差額を損害賠償として支払うように命じた。
 
 これは大変興味深い判決であり、実務への影響も大きいと考えられる。何よりも重要なのは、「当該事業所における慣行その他の事情から見て、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれる」という要件の該当性は、就業規則上にただそう書いてあるとか、例外的なケースが存在するというだけでは足りず、通常の人事管理として両者に明確な違いがなければならないという判断を下したことであろう。
 
 今回の改正案で改正される内容は、本件のような反復更新型有期契約労働者もダイレクトに8条1項の対象となるという点であるが、それは既に先取りされていたとも言える。また逆向きに考えれば、今回の改正案に盛り込まれた規定の原型である労働契約法第20条(不合理な労働条件の禁止)についても、本判決の射程は意外に大きいかもしれない。短時間労働者でなければパート法第8条を使うことができないので労働契約法第20条でいかざるをえないわけだが、そちらでの有期労働者と無期労働者の処遇の相違の合理性判断についても、やはり就業規則上にただそう書いてあるとか、例外的なケースが存在するというだけでは足りず、通常の人事管理として両者に明確な違いがなければならないという判断がされる可能性があるということである。

« 産業競争力会議雇用・人材分科会有識者ヒアリング議事要旨 | トップページ | 『会社でうつになったとき』 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 差別が禁止されるパートタイム労働者:

« 産業競争力会議雇用・人材分科会有識者ヒアリング議事要旨 | トップページ | 『会社でうつになったとき』 »