『日本の雇用と労働法』への書評
吉野三郎さんという方の「読書日記と読書ノート」というブログに、拙著『日本の雇用と労働法』が取り上げられています。
http://blog.goo.ne.jp/karltosakura/e/ee3bba6685ce296c386830458068dec9
濱口【日本の雇用と労働法】を読了。非常にわかりやすく、教えられるところが一杯。特に労使関係の歴史的変化が発見だった。日本型雇用慣行が戦時期の国家統制-賃金統制、労働力移動の禁止、ブルーカラーとホワイトカラーの平等-を基盤にしていることがわかった。戦後の労働組合が生活給の保障、雇用の保障を求めたのもこの流れだった。職務ではなく職能(潜在的職務遂行能力)を軸とする賃金。職能の査定では勤労意欲などは主観的なので、結果的には客観的ものさしとして勤続年数による年功賃金体系が生まれた。成果主義は潜在的能力ではなく、結果として現われた業績を評価する仕組みだが、業績を測るベースとなるもの=職務のランク付けがないため評価する基準がなく、結局中高年者の高賃金をカットするためにつかわれた。なるほど。教員の評価も同じだ。担任の職務は何か、教科担任の職務は何か。何を持って評価の尺度とするかがまったくない。それえゆえ、退学者が何人だったみたいな、基準にならない基準を無理に適用する。もともと職務遂行能力を査定するためではなく、忠誠度を測るために導入されたわけだから、客観性はどうでもいいわけだ。しかし、そのために学校の教育力が下がってしまったらこのシステムは維持できなくなる。成果主義が民間で不人気になったように。
日本の雇用契約が職務-労働能力の提供-をめぐる契約ではなく、社員たる地位(メンバーシップ)の設定であるという特質が良くわかった。
この後に拙著の要約的な読書ノートが付されています。
« 『DIO』290号 | トップページ | 今野・坂倉『ブラック企業VSモンスター消費者』 »
コメント