『DIO』290号
連合総研の機関誌『DIO』290号は、集団的労働条件決定システムの国際比較を特集しています。
http://rengo-soken.or.jp/dio/pdf/dio290.pdf
ドイツにおける雇用・労使関係政策の新たな局面~一般的拘束力・最低賃金と派遣労働の政策を中心に 毛塚 勝利
フランスの労使交渉システムと賃金決定の課題 松村 文人
韓国における労働組合の変容と労使交渉の課題 安 周永
毛塚、松村両大家の論文も学ぶところが多いですが、ここでは安さんの韓国の話を。
私が大原雑誌で書評した『日韓企業主義的雇用政策の分岐』では、いくつかの労働法政策過程に着目してインサイダー戦略、アウトサイダー戦略を説明していましたが、今回の論文では労働組合の運動そのものを説明しています。
やや長いですが、最後の節を:
以上のように、韓国の労働組合は労働運動の危機に直面し、これを乗り越えるために多様な取り組みを行ってきた。このことを整理するに当たっては、下記の労働組合の戦略による分析が参考となる。一つはインサイダー戦略をとるか、アウトサイダー戦略をとるかという選択であり、二つ目は提携戦略をとるか、とらないかという選択である(図2参照)。
韓国労働組合は、政策アリーナに止まり、協議を通じて政策実現を図るよりも、大衆行動を通じて政策アリーナの外側から圧力をかけて政策実現をはかってきた。すなわち、インサイダー戦略よりもアウトサイダー戦略をとってきた。アウトサイダー戦略を成功させるためには、世論の支持を得ることが重要であり、そのためには、従来の政策アリーナに他の勢力を巻き込み、その勢力と一緒に闘う必要がある。民主労総はそれを実行するために産業別労働組合への転換を進め、社会団体とのネットワークの結成に取り組んできた。このような試みが成功するかどうかは、依然として不透明である。だが、企業内に安住していては労働運動に未来はないという判断から始まった韓国労働組合の取り組みがいかなる成果を生むのか。これが、韓国労働運動の分岐点になることは間違いないだろう。
日本においても、非正規労働者は増加し、労働法改正が度々行われるなかで、企業横断的問題が労働組合の主な課題として浮上した。かつて春闘が企業間格差を是正する機能を果たしたのは否定できないが、それだけでは、今日の労働組合を取り巻く環境に対応することはできなくなっている。グローバル化が進むなかで企業内待遇改善には限界がある上に、今の春闘では労働市場の二重構造と未熟な社会保障を改善することが困難であるからである。日本の労働組合も正社員を中心とした組織から脱し、その社会的存在意義を再確認することが問われているように思われる。
« リアルポリティークと情緒政治 | トップページ | 『日本の雇用と労働法』への書評 »
コメント