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2013年12月12日 (木)

ジョブ型正社員とは何か?@『損保労連GENKI』10月号

106『損保労連ホットラインGENKI』10月号に、「ジョブ型正社員とは何か?」を寄稿しました。

http://www.fniu.or.jp/kikanshi/genki2014.html

 最近「ジョブ型正社員」という言葉が盛んに飛び交っています。今年6月の規制改革会議の答申が、職務、勤務地、労働時間が特定されている正社員、つまり「ジョブ型正社員」を増やすことが労使双方にとって有益だとし、ジョブ型正社員に関する雇用ルールの整備を行うべきと提言したことがきっかけです。これに対し連合は、解雇されやすい正社員をつくりだすのは反対だと批判しています。どう考えたらいいのでしょうか。

 実は、「ジョブ型正社員」ということばを使い出したのは私です。ただ、この発想は厚生労働省の研究会などで「限定正社員」とか「多様な正社員」と呼ばれてきたものです。その問題意識を簡単に整理しておきましょう。近年の日本の労働社会では、低賃金で雇用が不安定な非正規労働者の増大が大きな問題になっていますが、雇用が安定した正社員にも拘束が多く過重労働に悩まされるなど多くの問題があります。最近は過重労働なのに使い捨てにするブラック企業まで出てきました。

 その背景にあるのは、職務も勤務地も労働時間も制限がない代わりに、仕事が少なくなったりなくなったりしたときでも配転や残業削減などにより雇用を守るという日本独特の正社員の在り方です。これは一見望ましいだけのように見えますが、いざというときに雇用を維持するために日頃から職務や勤務地が変わる配転が求められますし、いざというときに残業を減らして雇用を守るために日頃から恒常的に残業をしていることが求められます。いままでの(主として男性の)正社員たちはそれの方が望ましいと考えてきたのですが、女性や若い世代が同じ価値観であるとは限りません。

 ところが日本の労働社会は、こうした無限定の正社員か、さもなければ非正規労働者化という究極の二者択一を迫ってきました。そのため、不本意に非正規労働者として働いたり、不本意に正社員として働かざるを得ない人々を創り出してきたのです。政府はワーク・ライフ・バランスが大事だと言いますが、一方で正社員には残業や配転を命じられたら従う義務があり、断ったら懲戒解雇してもいいと最高裁がお墨付きを出しているのも実態です。

 こうした板挟みの中で、日本型正社員のように無限定ではなく、欧米の普通の正規労働者のように職務、勤務地、労働時間が限定されているけれども雇用期間は無限定というタイプを広めていったらどうか、というのが「ジョブ型正社員」の発想です。その肝は、正社員に対しては極めて強大な企業の人事権を限定するということにあります。雇用期間を無限定にするというのは、非正規労働者のように「期間満了したから明日から来なくていいよ」と言わせないためです。つまり、解雇しにくくするのが目的です。

 もちろん、企業の人事権を制約しているのですから、いざ仕事がなくなったというときに(やってはいけないはずの)遠距離配転をして雇用を維持しろとは言えないでしょう。その意味では解雇のしにくさがいままでの日本型正社員よりも劣ると言えるかもしれません。でも、どんな業務でも命じられたら従わなければならない日本型正社員は、「仕事を探すのがお前の仕事だ」という無理無体な人事命令でも、原則として従わなければならないのです。どちらが望ましいかは、労働者自身が考えることであって、労働組合が頭ごなしに無限定正社員が正しいなどと言うのは変だと思います。

 ただ実は、連合がジョブ型正社員に懸念を示すのにはそれなりの理由があるのです。それは、この議論が何が何でも解雇をやりやすくしようという不純な動機で持ち出されているのではないかというふしがあるからです。私も規制改革会議に呼ばれてジョブ型正社員についての意見を述べたのですが、その時にも委員の一人から「整理解雇というよりも、パフォーマンスが悪いときに解雇できるということが非常に重要」という発言がありました。その前後にも産業競争力会議などで、あからさまな解雇自由化論が打ち出されたりしています。しかし、ジョブ型正社員というのは雇用契約にやるべきことがちゃんと書いてあるのですから、就職当初の試用期間中に何もできないと判断されて解雇されるのならともかく、ずっと同じ仕事で働いてきた労働者をいきなりパフォーマンスが悪いなどといって解雇することが許されるはずはありません。このあたりは、政府の会議の委員も議論が混乱しているように思います。

 とはいえ、そういう悪意が裏にあるからといってジョブ型正社員という考え方そのものを頭から否定するのは、労働者がより望ましい働き方を選ぶことができる可能性を押しつぶすことになりかねません。自分の仕事と自分の生活を大事にしたい、会社の言うがままに振り回されたくないと願う労働者の希望を叶える方向で、ジョブ型正社員の正しい姿を創り出していくことこそが、労働組合に求められていることではないのでしょうか。

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