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2013年12月22日 (日)

『Business Law Journal』2月号に「解雇規制の誤解」を寄稿

201402_no71ビジネス法務の専門誌『Business Law Journal』の2014年2月号に「解雇規制の誤解」を寄稿しました。

この雑誌は、「一流の法律家であると同時に、一流のビジネスパースンであることを目指す人材をサポートする」コンセプトだそうです。

一流のビジネスパースンであるなら是非理解しておいて頂きたいことを書きました。

http://www.businesslaw.jp/contents/201402.html

 最近、解雇規制をめぐる議論がかまびすしいが、非常に多くの人々が誤解していることがある。それは、日本は他の欧米諸国より解雇規制が厳しいと思われていることだ。経済学者や一部法学者までそういう誤った認識で語る傾向があるのは嘆かわしいことである。

 日本の労働契約法16条は「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」解雇を権利濫用として無効としているに過ぎない。解雇できるのが原則であり、権利濫用は例外である。ところが、その例外が非常に広くなっている。特に、欧米では最も正当な解雇理由である経済上の理由による整理解雇が、日本では最も不当な解雇とみなされているし、能力不足を理由とする解雇もなかなか認められない。しかし、それは解雇規制のせいではなく、企業の人事労務管理が鏡に映っているだけなのである。

 この問題を考える出発点は、日本の「正社員」と呼ばれる労働者の雇用契約が世界的に見て極めて特殊であるという点である。諸外国では就職というのは文字通り「職」、英語で言えば「ジョブ」に就くこと、つまり職務を限定して雇用契約を結ぶことであり、通常勤務地や労働時間も限定される。それに対して日本の「正社員」は、世間で「「就職」じゃなく「就社」だ」といわれるように、職務を限定せずに会社の命令次第でどんな仕事でもやる前提で雇われる。また勤務地や労働時間も限定されないのが普通である。こういう「無限定」社員を、われわれ日本人はごく当たり前だと思っているが、実は世界的には極めて特殊なのである。

 そういう日本型「正社員」は、たまたま会社に命じられた仕事がなくなったからといって簡単に解雇されない。なぜなら、どんな仕事でも、どんな場所でも働くという約束なのだから、会社側には別の仕事や事業所に配転する義務があるからである。社内に配転可能である限り解雇は正当とされないのだ。これを労働法の世界では解雇回避努力義務というが、それは「就職」ではなく「就社」した人々だからそうなるのである。

 欧米で一般的な「ジョブ」型の雇用契約では、同一事業場の同一職種を超えて配転することができないので、労使協議など一定の手続を取ることを前提として、整理解雇は正当なものとみなされる。それに対して日本型「正社員」の場合は、雇用契約でどんな仕事でもどんな場所でも配転させると約束しているため、整理解雇はそれだけ認められにくくなる。

 日本は解雇規制が厳しすぎるのではない。解雇規制が適用される雇用契約の性格が「なんでもやらせるからその仕事がなくてもクビにはしない」「何でもやるからその仕事がなくてもクビにはされない」という特殊な約束になっているだけなのだ。ヨーロッパ並みに整理解雇ができるようにするためには、まず「何でもやらせる」ことになっている「正社員」の雇用契約のあり方を見直し、職務限定、勤務地限定の正社員を創り出していくことが不可欠の前提であろう。

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コメント

>しかし、それは解雇規制のせいではなく、企業の人事労務管理が鏡に映っているだけなのである。
>この問題を考える出発点は、日本の「正社員」と呼ばれる労働者の雇用契約が世界的に見て極めて特殊であるという点である。

上記は正に仰せのとおり、いわゆる典型正社員の労働契約が、職に就くのではなく会社に就くという趣旨なのだから、会社は解雇回避の義務があるという理論(反対理解というか、その投影現象)が成り立っていると思われるからです。

そこで、hamachanさまの本エントリに質問なのですが(もしお時間があればお答えいただけると幸いですが・・)・・

例えば、「一流の法律家」や「一流のビジネスパースン」諸氏がそれを理解していないないのではなく、つまり元々解雇できないわけではないということは百も承知の上で、単純に「もっと都合よく解雇できないから大変」だとか、「欧米よりずっと解雇しやすい制度にすべきだ」・・といっているだけなのではないでしょうか。彼らも単純利益的、直感的に。
その上で、勤務地や労働時間も限定されないこととは関係なく、(つまり全体を斟酌しなくてもよいと考え、なお且つ囲い込みはしたいが、追い出すのは自由にしたいと考えているから・・、)、都合のよくない部分を変えるべきだというのが彼らの主張だと理解すべきなのではないでしょうか?

ただ、私の思った疑問も全然論理的ではなくて直感なのですが、しかし、現にそういう方向になってきているところを見るにつけ、これは理屈ではなく、そういうマインドなのではないかと・・

こんにちは。
解雇規制の話ですが、城氏がいつものとりの論調でブログに書いたことが面白い展開になっています。
城氏が労働組合のブログを批判して、組合が反論したのですが第三者が検証し、城氏の論理を批判するという展開になっています。一昔前では考えられないことですね。ブログのコメントも面白いです。


(労組)
http://blogos.com/article/76146/
解雇規制緩和は若者も非正規労働者も救わない-「解雇自由」のデンマークより首切り自由な日本

(城氏)
http://blogos.com/article/76412/
日本の正社員をクビにするのは世界で一番難しい

(労組)
http://blogos.com/outline/76412/
「日本の正社員をクビにするのは世界で一番難しい」とする城繁幸氏のウソ
http://togetter.com/li/605658
「日本の正社員をクビにするのは世界で一番難しい」とする城繁幸氏のウソ

(城氏と労組の言い合いを検証した人)
http://blogos.com/article/76437/
日本の正社員をクビにするのは世界で一番難しいと主張する人が見る幻覚

ああいうことを大きな声で叫べば喜んでもらえて使ってもらえると思っているのかもしれませんが、残念ながら規制改革会議にしろ産業競争力会議にしろ、ただ過激なだけで論理も実証も不在な連中は使ってくれません。そんなのをへたに使ったら、どうなるかわかっていますから。
威勢よく近隣諸国を罵るだけの連中が、冷静な国防政策論議に使えないのと同じです。
大事なのはリアリズムに裏打ちされた冷静な議論であって、その場でイケイケで盛り上がることではない、というのがすべての政策論の出発点です。そして、それがわかっている人だけが、政策論に加わる資格があります。

>日本の正社員をクビにするのは世界で一番難しい

正社員という肩書きの社内失業者がこれだけ大勢居ることからすれば、それも一理有ると思う。
また近年は日本の正社員にもリストラの風が吹き荒れていることは、城繁幸も認めている。

「NECのリストラ」というコント 城繁幸
http://www.j-cast.com/kaisha/2012/10/17150159.html
「社内失業者」という名の600万人の貴族
http://blogos.com/article/12946/

世界比較だとどうかはわかりませんが、アルバイトやパートと比べれば正社員は優遇されていると思う。
個人に対しては収入が乏しくても保険料は徴収される、けれども企業は赤字なら法人税を支払わなくていい。
企業に優しく個人に厳しい、従って企業の一員たる正規雇用は優遇されるが、そうでない非正規雇用は排除される。
正社員にはボーナスや退職金が出るがアルバイトやパートには出ない。またヨーロッパと比較して日本の最低賃金は低い。

以上は、40近くなるまで職を転々としフリーターを続けてきた自分の体験から。自分は城繁幸の言説を支持する。

こんにちは
 私も先生のブログ、書籍で勉強させていただり、ほかの方法で知り得た知識でしかないで間違いならばご指摘いただければ思います。
 解雇規制を緩和すべきという方で法的、制度などからきちんと指摘した人は一度も見たことがありません。
 乱暴になるかもしれませんが以下のようなコメントがメディアで普通に言われるようになるといいと思います。理屈でいってもうまくいかないので単純化しないと駄目だと思うようになりました。

「解雇の規制緩和は簡単にできます。二つのどちらかを行えばできます。 一つ目は法律を改正することです。民法を改正することです。第1条3項「権利の濫用は、これを許さない。」を「権利の濫用は、これを認める。」と改正する。 二つ目は会社が今持っている従業員に様々な命令を行える人事権を放棄することです。 どちらかを行えば裁判所も解雇を認めると思います。裁判所は「会社に強大な人事権という権利があるでしょう。だから簡単に解雇するのは権利の濫用です。よって簡単に解雇はできません。」とだけ言っているだけです。」
ということが報じられるとか
あるいは雑誌と特集で
「あなたの会社は従業員に命令する権利を放棄しますか?人事権を大幅に縮小しか解雇規制緩和はできない!! それとも権利の濫用を認める国にしますか?」
と報じられるとか

 解雇規制緩和に関する誤った情報が早く日本から消えることを願います。

発想がおもしろいので、便乗させていただきます。
ただ、少し違うような・・・。民法の権利乱用というのは憲法との関係や、古くは民法の存立自体であるところの「利益の存するころ、責任も存する」という趣旨と地続きなので、これを改正すると他の法条との関係が崩れてしまうように思えます。

なので、ご投稿のご趣旨に沿って少々アレンジさせていただくと「労基法1条1項を削除すれば、あちらの思いどおりなると思います。以下がその条文。
第一条  労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。

で、これは、ご承知の通り(ご経験の通り、小生も同じ立場ですから・・)、オンコール労働者には適用されていません。その証拠に、最賃法も時給(単位当たりの賃金)に縛りをかけているだけですから、オンコールで呼ばれる非正規労働者には殆んど関係がないわけです。
正社員クラブに入れた一部の人だけが謳歌出来る、とても贅沢な制度なので、あちらの人たちを満足させるためには先ずこれを廃止するのがよいと思います。

>個人に対しては収入が乏しくても保険料は徴収され
>る、けれども企業は赤字なら法人税を支払わなくていい

企業も、赤字でも保険料は払わないといけませんよ。

>企業も、赤字でも保険料は払わないといけませんよ。

それはちょっと違うと思います。
会社側は、個々の労働者の月の労働日数を14日以内に減らせば、社会保険も雇用保険も支払わなくてもよいわけです。
しかし、会社で社会保険に入らなくても国年・国保には加入しなければなりません。

>個人に対しては収入が乏しくても保険料は徴収され
>る、けれども企業は赤字なら法人税を支払わなくていい
・・・というご発言はそういうことだと思います。

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