事業規制から派遣労働者保護へ@『Vistas Adecco』34号
アデコ社の広報誌『Vistas Adecco』34号のインタビュー記事に登場しています。
http://www.adecco.co.jp/vistas/topics/34/index02.html
今回の報告書は、労働者派遣法を巡って、「本来はこうあるべきなのではないか」と主張してきた私の意見とほぼ同じ内容で議論されているように感じます。特に注目している点は、「専門26業務の在り方と常用代替防止という考え方」に関する議論です。
26業務は「正社員が行わない専門業務」という位置づけのため、『常用代替(派遣社員が正社員の雇用を代替する)』はない。だから
期間制限をしない、というものです。しかし、その他の自由化業務は正社員の代替としての業務という範疇のため、原則1年、最長3年間の期間制限をする──。これが今までのロジックだったわけですが、そもそも26業務は「専門業務」としながらも、正社員が普通に行っている業務が含まれていました。
今回、「業務」単位ではなく「人」単位で派遣期間を定めるとし、3年を超す場合、労働者個人レベルでは、派遣元による雇用安定措置が求められるとしたことは、派遣労働者保護の観点から非常に望ましい方向性だと思います。
今回の報告書の一番大切な点は、「事業規制から派遣労働者保護へ」という転換が見られること。その意味で、EUの制度に近い発想です。ただEUの場合、労働者保護の中核にあるのは「同一労働同一賃金」ですが、仕事に基づいた賃金が決まっていない日本ではそれを実現するのは難しい。だから、派遣労働者保護の中核に雇用の安定を据え、待遇については、すべての労働者に配慮した集団的な枠組みで考えていく。これが日本の現状にふさわしい制度の在り方だと思います。
このほかに、同号では、「独特の制度、柔軟な組織、北欧に学ぶ働き方」という特集を組んでいます。
http://www.adecco.co.jp/vistas/adeccos_eye/34/
1.「ワークライフバランス」を実現できる背景
2.合理的思考とそれに基づく制度が生む 女性の社会進出
3.同一労働同一賃金を成立させる 他国に類を見ない労使交渉
4.高い若年失業率に 失業保険・雇用訓練プログラムで対応
5.成長の源泉・「人財」を育てる独特の公教育
6.経済危機を乗り超え確立した 高成長・高福祉・高負担
7.高福祉社会を実現する 世帯単位ではない個人重視の税制
8.透明性の高い政治
よく言われていることではありますが、改めて読んでみる値打ちはあります。
・・・社会保障といえば、日本では年金、医療、介護など「引退世代」のイメージが強い。しかし北欧の社会保障支出は、上記の割合は50%程度。残りは、保育や教育、子どもの医療、職業訓練、失業保険、育児休暇中の手当など「現役世代向け」に充てられている。このため、現役世代も社会保険と福祉制度の重要性を痛感している。
とか、これもよく言われることですが、
富士通コンピューターズ・ヨーロッパ元副社長の田中健彦氏は、1990年代後半のフィンランド駐在時、驚きの連続だったという。
「フィンランド人は役職や性別にかかわらず、夕方4時を過ぎると皆、次々と帰ってしまうのです」
その理由は「息子をサッカークラブに送っていく」「習い事の送迎がある」とプライベートなことが多い。一方で仕事はきっちりとこなす。時間も自由に使い成果を出すことが、なぜ可能なのか?・・・
日本では意味や目的といった定義を明確にしないまま、仕事を部下に与えてしまう傾向がある。このため報告・連絡・相談が求められる。しかし北欧では、最初に仕事の定義を明らかにするため、上司がその都度、部下に報告を求めることはない。「部下の仕事の品質は、上司が部下に時々、進捗状況が明らかになるような質問をすることで管理しているのです」
大半の人は参加するのみで、活発な討論がなかなか見られないと言われる日本でありがちな「大会議」も、かの国々には存在しない。会議資料作成に多くの時間を要することもない。北欧で見られる会議は、参加者全員が発言者かつ当事者の、少人数制が基本だ。・・・
組織はフラット、会社には権威主義などないため、上司が残っているから帰宅しづらい、ということはない。
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