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2013年11月22日 (金)

経済の好循環実現検討専門チーム会議中間報告

本日、官邸の経済の好循環実現に向けた政労使会議に「経済の好循環実現検討専門チーム会議」中間報告が提出されました。

http://www5.cao.go.jp/keizai2/keizai-syakai/k-s-kouzou/shiryou/houkoku/houkoku.pdf

これは、政労使会議の下部組織として、その理論的根拠を構築するために、今年の9月から開かれていたもので、その第1回目には、わたくしも呼ばれてお話をさせていただいたことは、本ブログでも紹介したとおりです。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/09/post-235f.html(内閣府「経済の好循環実現検討専門チーム」で報告)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/10/post-a0fa.html(1回経済の好循環実現検討専門チーム会議の議事要旨)

さて、本日の中間報告は、政府が賃上げを求めるという異例の行動が、なぜ今の日本で必要なのかを、主として経済的な観点から論じています。以下に、その説明を長めに引用しておきます。是非、じっくりと読んで、それぞれに考えていただければと思います。

まず、「はじめに」で、概括的に、

なぜ、日本だけがデフレという悪循環に陥ったのか。

鍵は名目の賃金水準の動向にある。第二次大戦後、諸外国がデフレに陥らなかった理由は、金融政策を含むマクロ経済政策がその役割を果たしたことに加えて、名目賃金が上昇し続けたことが考えられる。しかし、日本では、1990 年代末頃から名目賃金は低下傾向にあり、デフレ・ストッパーの役割をもつ名目賃金の「下方硬直性」が失われた。このことがデフレの大きな要因になってきたと考えられる。

この間、正規雇用から非正規雇用への転換が大きく進んだことも、名目賃金の低下を更に加速化した要因となった。・・・

・・・こうした中で、日本企業は2つのことを追求してきた。

第1に、国際競争力の維持のため、賃金の抑制も含めたコストカットの実施。

第2に、内部留保の蓄積。バブル崩壊後、過剰雇用や過剰債務を抱えていた日本企業は、1990 年代後半の金融危機を契機に、その後2000 年代半ばにかけて、内部留保を蓄積して資本を厚くするとともに、債務を圧縮し、財務体質を強化。

その結果、企業の利益剰余金は300 兆円を超える水準となる一方、賃金は低下した。今日、日本経済で最大の貯蓄超過部門は企業部門である。家計部門の貯蓄超過に対して、企業部門は投資超過になるという姿こそが資本主義経済にとって「健全な」姿である。現状は決して正常とは言えない。

各企業から見ればコスト削減という極めて合理的な行動が、消費や投資の減少や人的資本蓄積の停滞といった「合成の誤謬」を引き起こし、マクロ経済全体からみるとデフレという悪循環を引き起こしてきた。・・・

そして、今後求められるのは、

デフレ脱却のためには、これまでに例をみない「逆所得政策」も活用しつつ、「賃金の上昇」を実現することが重要である。賃金上昇が需要を増やし、更なる企業収益改善につながるという好循環を実現するために必要との共通認識を醸成し、早期にデフレマインドと悪循環から脱出すべきである。

この「逆所得政策」というアイディアについて、本文ではさらに詳しく、その趣旨を説明しています。まず「賃金の外部性」について。

賃金など労働条件は、企業と労働者の私契約に基づいて決められるものであり、基本的に労使の交渉によって決定されるものである。しかし、トービンが指摘しているように個々の労使による賃金決定には、それらが集計された場合のマクロ経済への影響を考慮しないという意味で「外部性」がある。したがって、個別企業の労使の合理的な賃金決定行動が、全体としてみると「合成の誤謬」によって物価水準や景気に影響を及ぼす可能性がある。

このような外部性の存在、合成の誤謬が存在する場合には、政府の関与による「内部化」によって事態は改善する。例えば、政府が主導して、労使が共通の情報や認識を共有できるように促すことにも一定の効果が期待できる。具体的には、デフレの状況下で、賃金引上げを一社だけで実施することは不利益となっても、多くの企業が同時に賃上げを行なえば、経済全体が活性化し、望ましい状況となる可能性がある。・・・

ここから「逆所得政策」が正当化されます。

・・・先に指摘したように、デフレ脱却・経済再生に向けた「三本の矢」によって経済状況が改善する中で、労働分配率からみても賃金水準の上昇は可能な状況にあり、また、市場の実勢を先取りしながら、できるだけ早く賃金を引上げていくことが、好循環実現を起動させる上で効果的である。

このため政府が、政労使会議の場などにおいて、個別の労使が賃金引上げを行なう環境を整備するとともに、税制等によってこれを促していくことが有効である。

政府がデフレ下で労使が賃上げを行なう環境を整備することは、これまで世界で前例がない。しかし、これはかつて欧米の政府が行なった「所得政策」の逆を行なう政策と意義づけることができる。・・・

欧米で(あるいは石油危機の時には日本でも)取られた所得政策のちょうど逆だから逆所得政策なんですね。労使に委ねておくと、マクロ経済に悪影響を与えるほど賃上げしすぎるので、政府が介入してちょうど良い具合にするのが所得政策。その逆と言うことは、つまり個別の労使に委ねておいたのでは、マクロ経済に悪影響を与えるほど賃金が上がらない、あるいは下がり続けてしまうので、政府が介入してちょうど良い具合にするんだ、と言いたそうです。

雇用に影響を与えるのが怖くて賃金が上げられないという議論に対しては、

賃金を上げると雇用が減って失業が増えると広く考えられている。しかし、雇用は総需要で決定され、賃金上昇は必ずしも失業につながらないとの見方もある。

この問題は、賃上げによって雇用が減少し失業が増えると考える新古典派経済学的にマクロ経済をみるか、それとも財市場の需給が問題の本質で、賃金が上がっても雇用は変わらないと考えるケインズ経済学的にみるかに依存する。ただし、今日のように企業が内部留保という形で貯蓄を増加させてきた中で、労働者への分配がフローベースで企業貯蓄の減少によってもたらされれば、どちらかといえば、経済全体の需要の創出につながり、賃金の上昇は必ずしも雇用の減少につながらないと考えられる。

と、こういう文章を読むと、欧米だとこれこそ労働組合サイドのシンクタンクが言いそうな理屈なんですよね。

このあと、「持続的な経済成長に向けて」という章では、非正規雇用労働者のキャリアアップ、処遇改善とか、「多様な正社員」の普及等による非正規雇用労働者の正規化促進とかについてもいろいろと書かれていて、本ブログ的にはそちらこそ取り上げるべきかも知れませんが、中身はいつもの話なのでここでは省略。関心のある方はリンク先を見て下さい。

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