全国津々浦々で労働法教育を
連合が、「法曹養成制度改革推進会議「司法試験選択科目(労働法)廃止」の検討」について事務局長談話を出していますが、
http://www.jtuc-rengo.or.jp/news/danwa/2013/20131127_1385522576.html
・・・国民の大多数が雇用されて働く労働者とその家族で構成される「雇用社会」日本で、法曹資格者が労働法に関して十分な知見を持つことは、安心・安全の国民生活に不可欠な社会的基盤として必須である。連合は、すべての働く者が安心して働いて暮らせる「働くことを軸とする安心社会」をつくるとの観点から、労働法を司法試験の科目として維持することを求め、働きかけを行っていく。
いやまあ、それはそうなんですが、労働法学会ではなく労働組合の代表としては、そういういわば上澄みの話だけしていればいいわけではないのでは、という気もします。
弁護士がちゃんと労働法を知っていることはもちろん大事ですが、それより何より、働く人々が、そして働かせる側の人々が、弁護士の知識の10分の1でも100分の1でも知っているようにするために何をするべきか、ということこそ真っ先に論じ、そして行動に移していかなければならないのでは、と思うのですよ。
というと、話はもちろん、労働法教育の話になるわけですが、そして、先日のワークルール検定とかも、世間への意識喚起という意味では大きな意味はあるとは思いますが、もう少し地味な話も忘れてはいけません。
昨日、講演に行った豊中市で、草の根レベルでの動きの一つの姿を見てきました。
まずはこれを見て下さい。
ご覧の通り、豊中市が作った「労働トラブルを防止するために!! 就職する前に!人を雇う前に!知っておきたい基礎知識」というパンフレットです。なかなか細かいところにも神経が行き届いたものですが、「はじめに」にあるように、これはNPO法人あったかサポートの全面協力で作られているということです。
昨日、講演の後の意見交換会で、そのあったかサポートの笹尾専務理事ともお話をさせていただきましたが、ほんとに労働法の知識を必要としているレベルに一番近いところで、こういう取り組みが進んでいることは、もっと知られていいと思います。
行ってびっくりしたのですが、講演会場の豊中市男女共同参画センターすてっぷに、以前連合におられた林誠子さんが理事長として来られていたのですね。
豊中市の雇用労働行政の取り組みはここにまとめられています。
http://www.city.toyonaka.osaka.jp/kurashi/roudou/index.html
そういう市町村レベルとしては例外的に雇用労働問題に熱心な豊中市の姿が、先日の朝日新聞にでかでかと載ったので、ご記憶の方も多いでしょう。先週土曜日(11月23日)のオピニオン欄に1面の3分の2くらいをつぶして豊中市市民協働部理事の西岡正次さんのインタビューが載りました。
http://www.asahi.com/articles/TKY201311220597.html
仕事に就けず、ぎりぎりの生活に苦しむ人たちの「自立」を助けよう、という法律が近くできる。ハローワークか生活保護か、という二者択一で済まない時代を踏まえたものだ。自立に必要なのは就労への後押しなのか、福祉か。そもそも自立とは――。生活困窮者自立支援法の成立を前に、大阪府豊中市の試みを手がかりに考える
話を戻すと、もちろん弁護士が労働法の知識をわきまえていることは必要だし、そのために司法試験の受験科目に労働法があった方がいいとは思いますけど、本当の戦場はそういう上澄みの世界だけではないと、やはり思うし、その意味でも、こういう通常雇用労働政策の手が及んでいかない領域で、こうしてきちんと底辺の世界に労働法の知識をもたらせようとしている試みこそを、もっと応援していかなければいけないのではないでしょうか。ごく一部の上澄みよりも、全国津々浦々で労働法教育をこそ。
(追記)
豊中市のやってる事業にはこんなのもあります。
http://www.city.toyonaka.osaka.jp/kurashi/roudou/soshohiyo.files/sosyoutirashi.pdf
豊中市では、経済的理由により訴訟等の提起、申立て等を行うことが困難な市民に対して訴訟費用の貸付を無利子で行います。
« 研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律案 | トップページ | 大内伸哉『解雇改革』 »
« 研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律案 | トップページ | 大内伸哉『解雇改革』 »
コメント