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2013年11月16日 (土)

産業競争力会議 雇用・人材分科会有識者ヒアリング資料

去る11月5日、6日に行われた産業競争力会議 雇用・人材分科会有識者ヒアリングの資料一式がアップされました。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/bunka/koyou_hearing/dai1/siryou.html

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/bunka/koyou_hearing/dai2/siryou.html

招かれた有識者は下記の通りです。11月5日が

2.有識者ヒアリング① (9:00~10:00)(日産自動車株式会社常務執行役員 川口 均氏)
3.有識者ヒアリング② (10:00~11:00)((独)労働政策研究・研修機構統括研究員 濱口 桂一郎氏)

11月6日が

2.有識者ヒアリング① (9:00~10:00)株式会社日本総合研究所調査部長、チーフエコノミスト 山田 久氏
3.有識者ヒアリング② (10:00~11:00)フレッシュフィールズブルックハウスデリンガー法律事務所パートナー・弁護士 岡田 和樹氏
4.有識者ヒアリング③ (11:00~12:00)グローバル産業雇用総合研究所所長 小林 良暢氏
5.有識者ヒアリング④ (14:30~15:30)日本GE株式会社代表取締役、GEキャピタル社長兼CEO 安渕 聖司氏
6.有識者ヒアリング⑤ (15:30~16:30)株式会社リクルート執行役員、株式会社リクルートスタッフィング代表取締役社長 長嶋 由紀子氏

わたくしは、第1日の2人目として意見を述べました。

わたくしの資料はこれです。中身は、今まであちこちで述べてきたことです。わたくしは、労働組合に呼ばれても、経営者団体に呼ばれても、規制改革会議に呼ばれても、規制緩和反対の運動に呼ばれても、基本的に同じことを喋っています。誰を相手にしようが、正しいことは正しいし、間違っていることは間違っているからです。片言隻句を捉えて批判する人はどちらにもいるし、ちゃんと趣旨を捉えて評価する人もどちら側にもいます。違うのは、その人の物事をきちんと考える能力だけですね。最近、つくづくそう思うようになりました。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/bunka/koyou_hearing/dai1/siryou2.pdf

1 日本型雇用システムとその変容
・「ジョブ型」と「メンバーシップ型」

「ジョブ型」:職務、労働時間、勤務地が原則限定される。欠員補充で就「職」、職務消滅は最も正当な解雇理由。欧米アジア諸国すべてこちら。日本の実定法も本来ジョブ型。
「メンバーシップ型」:職務、労働時間、勤務地が原則無限定。新卒一括採用で「入社」、社内に配転可能である限り解雇は正当とされにくい。一方、残業拒否、配転拒否は解雇の正当な理由。実定法規定にかかわらず、労使慣行として発達したものが判例法理として確立。
・正社員と非正規労働者それぞれに矛盾
 1980年代までは「メンバーシップ型」が日本の競争力の源泉として賞賛。90年代以後、高齢化、女性の進出、グローバル化等で「正社員」が縮小、欧米のジョブ型労働者に比べても待遇の劣悪な「非正規労働者」が増大。特に新卒の若者の不本意非正規が社会問題化。一方縮小した「正社員」にはブラック企業現象も。
・求められるのは「規制改革」ではなく、「システム改革」
 日本の労働社会の問題は、雇用内容規制の極小化と雇用保障の極大化のパッケージ(正社員)と労働条件及び雇用保障の極小化のパッケージ(非正規)の事実上の二者択一。しかしそれは何ら法規制によるものではない(法規制それ自体は後述のように部分的に極小化)。
 「システム」改革を論ずべきところで「規制」改革を論ずると、話が歪められる。

2 解雇規制の誤解
・労働契約法16条は解雇を「規制」していない

 「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」解雇を権利濫用として無効としているだけ。解雇できるのが原則であり、権利濫用は例外。ところが、その例外が極大化。WHY?職務、労働時間、勤務地が原則無限定だから、社内に配転可能である限り解雇は正当とされないため。つまり、規制の問題ではなく、システムの問題。
・では法改正は不可能か?
 労契法16条を「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められな」くても権利濫用でも有効と改正(改悪?)することは、法理からして不可能。労契法16条を削除しても2003年以前に戻るだけで、状況は不変。民法1条3項の権利濫用法理は常に使える。まさかそれは削除できまい。
 皮肉だが、欧州並みに解雇「規制」を設ければ、その例外(解雇できる場合)も明確化。例えば:
第○条 使用者は次の各号の場合を除き労働者を解雇してはならない。
一 労働者が重大な非行を行った場合。
二 労働者が労働契約に定める職務を遂行する能力に欠ける場合。
三 企業経営上の理由により労働契約に定める職務が消滅または縮小する場合。ただし職務が縮小する場合には、解雇対象者は公正に選定しなければならない。
2 前項第三号の場合、過半数労働組合または従業員を代表する者に誠実に協議をしなければならない。
これも一つの規制改革。
・解雇の金銭解決は現在も可能だし、現に多い
 金銭解決ができない(正確には金銭解決の判決が出せない)のは、裁判所で解雇無効の判決が出た場合のみ。圧倒的に多くの解雇事件は法廷まで来ない。全国の労働局に寄せられた雇用終了関係の相談件数は年間約10万件、そのうちあっせんを申請したのは約4000件弱。そのうち約3割は金銭解決で、残りは未解決。解決金の平均は約17万円。なお裁判所の労働審判の解雇件数は約2000件弱。解決金の平均は約100万円。
 問題はむしろ、(水面下も含めた)金銭未解決件数の多さであり、とりわけあっせん事案の解決金額の少なさ。金銭解決にかかる法規定の不存在が、この状況を生み出している。
・金銭解決制度を規定する意味
 解雇の金銭解決を規定するには、ドイツ式に、解雇無効であっても裁判所が金銭補償を命ずることができるというやり方もあれば、英仏式に、違法な解雇であっても必ずしも無効とはせず、金銭補償を命ずるというやり方もある。
 判決後金銭解決金額の基準を設定しても判決以前の事案には役に立たないという批判があるが、裁判所に行ったらこうなるという予測がつけばあっせん段階でも使われる。ドイツでは年間数十万件の解雇事案が労働裁判所に持ち込まれ、大部分が法律に基づく判決後金銭補償ではなく和解で金銭解決している。

3 限定正社員(ジョブ型正社員)の誤解
・解雇「規制」の緩和ではない!

 労働契約で職務、労働時間、勤務地が限定されることの論理的帰結として、当該職務の消滅・縮小が解雇の正当な理由になるというだけ。正確には契約上許されない配転をして解雇を回避する義務がないというだけ。
 当該職務の遂行能力の欠如も解雇の正当理由になり得るが、試用期間中ならともかく、長年当該職務に従事してきて、企業が文句を付けていなかった場合は、正当にはなりにくかろう。
・「高度」ではない(とは限らない)専門能力活用型の無期雇用
 1995年日経連『新時代の「日本的経営」』で提起された「高度専門能力活用型」はまったく実現しなかったが、その理由は「高度」という余計な形容詞。その反省に立ち、ジョブ型正社員とは、高度でなくても、その専門的能力を、その職務がある限り活用するタイプと位置づけるべき。
 メンバーシップ型正社員が、どの器官に貼り付けても使える「iPS細胞」型労働力であるとすると、ジョブ型正社員とは使える器官が限定されている「部品」型労働力。
・「限定」しなければ限定正社員ではない
 どこまで「限定」に耐えられるか、問われるのは企業側。我慢しきれずに契約違反の使い回しをしたら、もはや「限定」されていないことになるので、当該職務の消滅・縮小が直ちに解雇の正当な理由にならなくなる可能性。

4 労働時間規制の誤解
・日本の労働時間規制は極めて緩い

 日本では過半数組合または過半数代表者との労使協定(36協定)さえあれば、事実上無制限の時間外休日労働が許される。(かつての女子と)年少者を除けば、法律上の労働時間の上限は存在しない。それゆえに、日本はいまだにILOの労働時間関係条約をただの一つも批准できない。
 労災保険の過労死認定基準では、月100時間を超える時間外労働は業務と発症との関連性が強いと評価されるが、それでも労基法上は違法ではない。
・日本で厳しいのは残業代規制
 残業代規制(労基法37条)は物理的労働時間規制ではなく賃金規制であるが、その例外は物理的労働時間規制と同様管理監督者等に限られる。もっとも、物理的労働時間規制は事実上尻抜けなので、使える規制が残業代規制しかないというのが実情。そのため、労働時間訴訟といわれるものはほとんどすべて残業代払え訴訟に過ぎない。
 労基則19条により、時給でも日給でも週給でも月給でも年俸でも、管理監督者でない限り、時間あたり幾らに割り戻して、25%割増(月60時間を超えると50%)を払わなければならない。時給800円の非正規が1時間残業したら1000円、年収800万円(時給換算4000円)の高給社員が1時間残業したら5000円、払わなければ違法。これが刑事罰をもって強制すべき「正義」かは議論の余地。
・正しい「残業代ゼロ」を隠して、嘘の「ワークライフバランス」を掲げた帰結
 米のホワイトカラーエグゼンプションとは、残業代規制の適用除外に過ぎない。ところが、かつての規制改革会議は、これを「仕事と育児の両立を可能にする多様な働き方」と虚構の理屈で正当化。
 労働側は過労死促進だと(理屈の上では)正当な批判。ただし、エグゼンプトでなくても、36協定があれば労働時間は無制限であるが。
 本当は経団連がいうように労働時間と賃金の過度に厳格なリンケージの緩和が目的であったはずが、虚構の議論に終始。
 挙げ句の果てに、マスコミや政治家が「残業代ゼロ法案」と批判してつぶれた。その結果、本来の目的である残業代問題が、一番言えない状態に追い込まれてしまった。
・「企画業務」など存在しない
 そもそも職務無限定の日本のメンバーシップ型正社員に、彼は「企画業務」、彼は「非企画業務」などという職務区分は存在しない。みんななにがしか企画をし、なにがしかルーチン業務をしている。上位に行けば行くほど前者の割合が高まるだけ。企画業務型裁量労働制自体が虚構の上に立脚した虚構の制度(それをいえば、日本では管理職すら「職務」ではなく「地位」に過ぎない)。
・正しい規制とは
 残業代規制の適用除外は、年収要件も考えられるが、企業規模による不公平が応ずるので、企業内における地位(上位から何%など)で中高位者のエグゼンプションとするのが適切。
 一方、残業代がつこうがつくまいが、健康確保のための労働時間のセーフティネットは必要。当面、過労死認定基準の月100時間か。1日ごとの休息時間規制も検討すべき。

5 労働条件変更と集団的労使関係システム
・2007年労契法の挫折

 2005年労働契約法研究会報告は、過半数組合または労使委員会の5分の4の同意で就業規則の不利益変更の合理性を推定すること提案。しかし、労政審で労働側が反発して消えた。
 労使委員会の労働者委員は過半数代表者が指名し、その過半数代表者の実態は会社指名が多いなど、不利益変更を正当化するにはあまりにも悲惨な状況。この点については労働側の反発に理由はある。
・労働条件変更を正当化しうる従業員代表法制の必要性
 だからといって、労働条件の不利益変更の効力が裁判が確定しない限り不明という状況は望ましくない。とりわけ、年功賃金制の修正など、ある労働者には有利で別の労働者には不利な労働条件の変更を、労働者全体の利益から正当化しうる仕組みが必要(管理職になると組合を卒業する風習のある日本では特に)。
 過半数組合が存在しない場合の従業員代表法制を確立することが、この問題の解決への第一歩。
・「過半数組合」を労組法上に位置づける必要性
 なお併せて、労働契約法上で労働条件変更の合理性について過半数組合を位置づけるのであれば、労働組合法上も過半数組合を適切に位置づけ、労働協約の効力についても過半数原理を導入する必要があろう。

付 三者構成原則について
・三者構成原則は、最悪の労働政策決定システムである。他のすべての政策決定システムを除けば、だが。
・議会制民主主義には多くの問題がある。とりわけ、かつてのイギリスの腐敗選挙区のような代表性のアンバランスが存在する場合はそうであった。
・だからといって、「科学的」な「真理」を体現した特定の人々が、利害に基づいて政策を主張する人々を抑圧して、その「科学的」に「正しい」「理想の社会」を作ろうとすれば、この世の楽園が現出する・・・わけではなかった、というのが20世紀の痛切な経験であり、この「他人の経験」に学ばないのは愚者であろう。
・政策決定システムの議論に必要なのは、法学でも経済学でもなく、リアリズムに徹した政治学の教養である。

(追記)

ちなみに、2日目の岡田和樹さんの資料の中に、こういう指摘が出てきます。

これらはいずれもまことにもっともなんですね。全くその通りなんです。ジョブ型社会の欧米企業から見れば。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/bunka/koyou_hearing/dai2/siryou2.pdf

外国企業から見た日本の雇用法制の問題点

解雇法制
• 試用期間が機能していないこと
• 実質的に、勤務成績や経営状態を理由とする解雇が禁止されているに等しいこと
• 裁判官が企業活動の実態を知らないこと
• 仲裁が認められていないこと

労働時間法制
• 職制上、かなり上位の者でないと、「管理監督者」と認められないこと

問題は、なぜ日本ではそうなっちゃっているのか、ということ。それを法律規制が厳しすぎるからだ、などと考えては、物事の本質から逸れていくばかりです。

試用期間が機能するようにするにはどうしたらいいのか、勤務成績や経営状態を理由とする解雇が(禁止はもちろんされていませんが、判例法理上は)厳しく制限されているのはなぜなのか、なぜかなり上位でなければ管理監督者と認められないのか、

どれもこれも、メンバーシップ型にどっぷり浸かった、日本企業の人事労務管理の在り方それ自体が、不可抗力的に導き入れている道理であるわけです。

職務が無限定で雇い入れておいて、たまたま命じた仕事ができなかったからといって、それでクビにできるはずがありません。

そういう人事労務管理の在り方をそのままにして、都合のいいところだけをつまみ食いしようという議論は、法律をどう変えてみたところで、うまくいくはずはないのです。

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