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2013年11月19日 (火)

ブラック企業問題とは何か@『人事労務実務のQ&A』12月号

1281691969_o日本労務研究会の『人事労務実務のQ&A』12月号に、「ブラック企業問題とは何か」を寄稿しました。

ここでは、最後の部分だけを。

1 はじめに

2 雑誌『POSSE』に見るブラック企業論の展開

3 ブラック企業の何が問題なのか?

4 「社畜」批判がブラック企業を産み出すパラドックス

5 厚生労働省のブラック企業対策

6 ジョブ型正社員へ

 最後に、ブラック企業問題も含めた現在のさまざまな労働問題に対する処方箋の一つとして、最近話題になっているジョブ型正社員という考え方について述べておきたいと思います。
 上で述べたように、ブラック企業を産み出したのは、滅私奉公を求める点では従来の日本型雇用を維持強化しているにもかかわらず、それと釣り合いをとっていた長期的な雇用保障に対しては奇妙に敵対的な思想でした。そうしたブラック企業イデオロギーを鼓吹する人材コンサルタントもいるようです。この矛盾を解きほぐすためには、義務と権利がほどほどに釣り合った働き方のモデルを拡大していくことが有効なのではないかと思われます。
 これは拙著(『新しい労働社会』岩波新書、『日本の雇用と労働法』日経文庫、『若者と労働』中公新書ラクレ)で繰り返し述べてきたことですが、日本型雇用システムにおける正社員は、職務、時間、空間の限定なしに企業の命令に従って働く広範な義務を負うとともに、それらをフレクシブルに転換させることによって欧米の正規労働者には及びもつかないような強固な雇用保障を獲得してきました。いわゆる「無限定正社員」です。その義務の無限定をそのままに保障を空洞化させたのがブラック企業ということになります。
 従来型正社員にこだわる人々は、何が何でも雇用保障を守れと主張する傾向がありますが、グローバル化や情報化の進展する今日、変動する市場経済の中で雇用を維持できる範囲は徐々に縮小してきていることは間違いありません。問題はむしろ、雇用保障が縮減せざるを得ないのに無限定の義務だけは従来通りに維持することにあります。無限定の義務を前提にしてしまうと、例えば過度な長時間労働も直ちに違法とすることはできませんし、企業から追い出すために無茶な配転を強いることも直ちに不合理ということはできなくなります。「仕事を探すのがお前の仕事だ」などという欧米のジョブ型社会では絶対にあり得ないような業務命令がまかり通ってしまうのも、職務無限定が原則の日本型社会ならでは現象です。ここのところの発想を転換する必要があるのではないでしょうか。
 筆者がここ数年来提唱してきた「ジョブ型正社員」というのは、職務、時間、空間など、これまで正社員であれば無限定が前提であった事項を、欧米の正規労働者並みに限定して、その範囲内でしか企業は命令ができないし、その範囲内でのみ労働者の雇用は守られる、という考え方です。期間の定めのない無期雇用ですから、仕事がちゃんとあって、その仕事をちゃんとこなしている限り、不当な解雇からは保護されます。しかし、経済環境の変化等で仕事自体がなくなったり少なくなれば、対象者を公正に選定するという条件の下で整理解雇の対象になります。
 今年の6月に政府の規制改革会議が出した答申でも、正社員改革の第一歩としてこのジョブ型正社員に関する雇用ルールの整備を行うべきとしています。これを受けて、厚生労働省も9月から「多様な正社員」の普及・拡大のための有識者懇談会を開催しています。その問題意識は、「雇用が安定し処遇も高いが、働き方の拘束性が高く長時間労働等の課題がある正社員と、雇用が不安定で処遇が低く、能力開発の機会が少ないといった課題のある非正規雇用の労働者という働き方の二極化」を解消することにあります。
 この二極化の観点からブラック企業現象を見直してみれば、「雇用が不安定で処遇が低」い非正規雇用に落ちたくないがために、「働き方の拘束性が高く長時間労働」があるだけで実は「雇用が安定し」ていないし必ずしも「処遇も高い」わけでもない見せかけの正社員にしがみついてしまっている状況ということもできるでしょう。その意味では、ジョブ型正社員の普及は、なかなか決め手がないブラック企業現象に対するもっとも本質的な処方箋といってもよいのではないでしょうか。

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