金子良事『日本の賃金を歴史から考える』(旬報社)の広告
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本ブログでも時々やり合って皆様を楽しませてきた金子良事さんの単著です。タイトルは『日本の賃金を歴史から考える』なんですが、左の写真の帯の文句にあるように
このタイトルは過小広告!
賃金だけでなく日本の雇用の全体像を歴史を軸に描き出した名著
です。
って、この帯の文句は、誰かと思えば私が言ってるんですが。
どれくらい過小広告かは、この目次を見ればわかりますよ。これくらい広く目配りして日本の労働史を描いた本はあまりないはず。
はじめに
第1章 二つの賃金
仕事と報酬
雇用における報酬の貨幣化の発生
工場労働者の登場
近世から近代への連続性は日本だけのことか?
工場法の世界
報酬にたいする二つの考え方―感謝報恩と受取権利
賞与金(ボーナス)の一つの系譜
富士紡の利益分配制度
コラム1 報酬の金銭化
第2章 工場労働者によって形成される雇用社会
日本近代の二つの変革
生活面での変革
工場のなかの社会
株式会社制度の定着
株式会社における賃金制度
株式会社における身分
工場労働者の規律をつくる
仕事の直接的な対価という性格が強かった職工の賃金
コラム2 ブルーカラーとホワイトカラーの協力体制
第3章 第一次世界大戦と賃金制度を決める主要プレイヤーの登場
賃金制度を決める主要プレイヤー
鈴木文治による友愛会の結成
生計費と賃金の関係
人事部と経営(賃金)コンサルタントの登場
「管理の科学」の形成
科学的管理法の登場
能率技師とソーシャル・ワーカー
科学的管理法の導入と福利厚生制度の充実
科学的管理法の成果と賃金
コラム3 近代的労務管理と安全運動
第4章 日本的賃金の誕生
「日本的賃金」
ソーシャル・ダンピング論
低賃金論としての日本の賃金
戦時日本的賃金論
戦時日本的賃金論の前提1―「能率」思想
戦時日本的賃金論の前提2―能率賃金≒科学的管理法の探求
戦時日本的賃金論の前提3―生活賃金
賃金カーブによる年功賃金―「標準賃金」
日本的賃金論
コラム4 賃金とプロパガンダ
第5章 基本給を中心とした賃金体系
「賃金体系」
異なる時代の前提条件
賃金体系に核(コア)である基本給
第二改革期の変化1―出来高賃金から基本給+能率給へ
戦前の賃金形態―時間による固定給と出来高賃金
常傭給あるいは戦前の基本給?
固定給における査定
複線的な賃金体系の成立
臨時産業合理局『賃金制度』の改革案
第二改革期の変化2―日給月給と月俸の融合
職務給から職能資格給へ
階級(身分)制度から職能資格制度への転用
ブロードバンディング(broad banding)
労働組合のグローバル化の必要
コラム5 査定制度と公平性
第6章 雇用類型と組織
日本的雇用の議論の前提
日本的雇用論の派生形であるメンバーシップ型雇用論
トレード型雇用とジョブ型雇用
伝統を引き継いでいるヨーロッパのトレード型、新しい日本のメンバーシップ型
トレード・ユニオニズム
変容したプロフェッション
経済学の伝統的な二つの賃金仮説
人的資本論
内部労働市場と外部労働市場
組織と信用
資格制度
コラム6 人的資本と組織の経済学
第7章 賃金政策と賃金決定機構
賃金政策と賃金決定機構との距離
賃金統制のはじまり―熟練工の移動防止と高賃金の抑制
価格等統制令と賃金臨時措置令の不備
第二次賃金統制令と「賃金総額制限方式」―統制から外されたもの
労働運動の興隆と戦後の賃金決定方式の誕生
官公庁の機構改革と600円賃金
労使交渉による賃金ベース協定
公務員の賃金ベース―所得政策と参照水準
物価と賃金―消費者物価指数(CPI)の登場
生活給賃金から能率給賃金へという転換
個別賃金要求方式の登場
定期昇給とベース・アップ
春闘のはじまり
春闘の展開
生産性と賃金
計画経済の時代
生産性基準原理と所得政策
熊谷委員会の所得政策に込められた思想
一九七五年春闘の帰結―日本型所得政策の誕生と戦後賃金政策の終わり
長期賃金計画と逆生産性基準原理
コラム7 大きなストーリー
第8章 社会生活のなかの賃金
マタイ書20章
完全雇用政策
賃金ではなく所得である理由
三つの賃金格差の解消?
社会問題にされなかったもう一つの賃金格差―男女別賃金格差
社会問題にならなかった低賃金
生活の変貌と農業の縮小
低収入でもニーズがある請負仕事
最低賃金法と家内労働法
請負と雇用―労働者性の有無
賃上げだけを求めていた時代の終焉と個別賃金要求方式の興隆
主婦パートの興隆
労働条件を切り下げる頑迷なボランティア精神
標準世帯を前提とした社会保障―103万円の壁と130万円の壁
工場法から男女雇用機会均等法まで
平等への道―ペイ・エクイティと職務分析
女性の非正規化と男性への波及
生活賃金の難しさ
コラム8 絶対的な正しさと相対的な正しさ
賃金を学習を進めるためのリーディング案内
あとがき
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