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2013年10月16日 (水)

主務大臣に求める「新たな規制の特例措置」ってのを見せてくれないかな

法律の条文に則して厳密に論理的に物事を考えるという訓練を受けていない人々が、ふわふわした新聞記事程度のことばだけであれこれもてあそんでいると、今みたいな事態になるんだなあ・・・という典型か。

昨日のエントリで紹介した産業競争力強化法案の具体的な文言があるのだから、それに即して、その雇用特区だか解雇特区だかで、具体的にどういう特例措置の求めの文書を、どの主務大臣に出そうというつもりなのか、耳をそろえてきちんと出してくれれば、できるできないもちゃんと言いようもあるのですけどねえ。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/10/post-4898.html(産業競争力強化法案)

http://www.meti.go.jp/press/2013/10/20131015001/20131015001-2.pdf(産業競争力強化法案要綱)

新たな規制の特例措置の適用を受けて新事業活動を実施しようとする者は、主務大臣に対し、当該新たな規制の特例措置の整備を求めることができるものとすること。

この法律において「規制の特例措置」とは、法律により規定された規制についての別に法律で定める法律の特例に関する措置及び政令又は主務省令により規定された規制についての政令等で規定する政令等の特例に関する措置であって、認定新事業活動計画に従って実施する新事業活動について適用されるものをいうものとすること。

この規定からして、その「規制の特例措置」というのは、「法律により規定された規制」か「政令又は主務省令により規定された規制」でなければならない。法律、政令、省令の第何条第何項と、ちゃんと指定できなければならない。

あまりにも当然のことながら、ここがちゃんとわかっているかどうかがかなり疑わしい人々が結構います。「そんなこと言ったって、現に日本ではなかなか解雇できないじゃないか!それを何とかするのがおまえの仕事だろ!」という無茶振りは、残念ながらこの法律の枠組みには載らない。法律上は解雇できることになっているのに、我が社では正社員に対してなかなかそうできないというのは、この法律でいう「法律により規定された規制」か「政令又は主務省令により規定された規制」ではないのですから。

いや、労働契約法第16条がその「法律により規定された規制」だっ、と次に言い出す人が出てくるわけですが、そうすると、それは論理必然的に、

第十六条  解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

の特例措置を設けろという話になるわけです。

「特例措置」というのは、原則たるこの労働契約法第16条の例外を作るという話以外ではあり得ませんね。論理的に。

ということは、(ガイドラインに定める等の)ある条件に該当する場合には「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合であっても、その権利を濫用したものであっても、無効とならない。」とするということ以外ではあり得ませんね。

もし、、(ガイドラインに定める等の)ある条件に該当する場合には、上の規定の客観的に合理的な理由に該当するとか、社会通念上相当ということにするということを言いたいんであれば、それはそれで言いたいことはよくわかるんですが、とはいえ論理的には、それは「法律により規定された規制」の「特例措置」ではあり得ないのです。だって、それは労働契約法16条の論理的射程範囲内なのですから。客観的に合理的な理由であったり社会通念上相当であれば、権利濫用じゃないんだから、解雇していいんだよ!と、労働契約法16条はちゃんとお墨付きを出してくれているのです。条文をよく読んでね。そこのところがどこまでよくわかって言っているのか、はなはだ疑問を呈したくなるような法学的論理性の欠如した方々がうようよしていらっしゃるようですけど。

そもそも、法の基礎理論からして、権利濫用法理にせよ、信義誠実の原則にせよ、「公の秩序と善良の風俗」(いわゆる「公序良俗」)にせよ、こういったデウスアキスマキナ的な一般規定は、産業競争力強化法に基づいて特例措置を設けることができるような「規制」ではないわけです。そして、河野太郎氏にせよ、池田信夫氏にせよ、なぜか民法90条の公序良俗規定については(特段の根拠を示すこともなく)特区といえども特例措置を設けることができるような規制ではないと(適切に)理解しているのに、それと法論理的には全く同型的であるところの権利濫用法理については、産業競争力強化法に基づき「規制の特例措置」を設けることが可能であると思い込んでしまっているわけですね。

ま、何にせよ、こうして法案も出たことだし、これでいったい何ができるものなのか、実際にやってみればいいのではないでしょうかね。

法律の規定からすると、まずは「新たな規制の特例措置の適用を受けて新事業活動を実施しようとする者」が主務大臣に対してちゃんとこういう「規制の特例措置」を作ってくれと求めるところから始まるようなので、具体的にその求める文書とやらを起草して示していただけると大変有り難い。法律、政令、省令のどこをどういう風に特例を設けるのかを、明確に示した文書をね。

それが、(こういうのは客観的に合理的な理由とするというような)権利濫用法理の論理的射程範囲内に収まるような話であれば、「規制の特例措置」に該当しないので、中身の審査以前にそもそも取り上げることが不可能ということになります。少なくともこの産業競争力強化法の枠組みを使うのである限りは。

一方、そこに、権利濫用法理の適用を除外する云々とか書いてあったら、主務大臣は厚生労働大臣であるとともにより一層民法を所管する法務大臣ですから、こういう一般条項の「規制の特例措置」が可能であるかどうか、公序良俗なんかと一緒に、法制審議会ででもじっくり審議してもらえるのではないでしょうか。

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