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2013年10月 3日 (木)

『潮』11月号に著者インタビュー

516dyfmnkwl__sl500_aa300_雑誌『潮』の2013年11月号の「著者インタビュー」というコーナーで、わたくしの『若者と労働』が取り上げられています。

見開き2ページわたって、拙著で何を言いたかったかを語っております。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/ushio.pdf

日本の特殊な労働事情

「メンバーシップ型」社会

世の中がどう変わろうが、必ず出てくる労働問題。中高年と若者、男と女、あるいは雇用する側とされる側など、立場によって意見がすれ違い、処理されないまま積み重なっていくというのもこの問題の大きな特徴だろう。

「自分の意見を声高に主張するだけで解決するほど、労働問題は単純なものではない」というのは、長年にわたり第一線で調査・研究に携わって来た労働政策のスペシャリスト、濱口桂一郎さんだ。個々の議論を実のなるものにするために、まずは「もつれた問題を一度解きほぐし頭の整理を」と、書いたのが『若者と労働』である。タイトルにある通り、雇用の入り口に立つ若者に焦点を当てているが、どんな労働問題も根っこは同じであるがゆえ、必然的に日本の雇用事情、労働特性が浮かび上がってくる。

「若者は中高年が既得権益にしがみついているといい、中高年は若者ばかり優遇されていると主張する。ある面では両方とも事実で、間違っていはいない。けれど、ある側面だけ切り取って『こうあるべきだ』と扇情的な言葉を投げ交わしているだけでは不毛な議論にしかならない。互いを理解する上でも、複雑な話をできるだけ明晰に、情報を分かりやすく提供したつもりです」

 問題の根本は、まず「人」を決めてそこに「仕事」を当てはめ、いわば「人」を中心に管理が行われる日本独自の雇用システムにあるとみる濱口さん。それを「メンバーシップ型」と名付け、逆に「仕事」を先に決めてそれに適切な「人」を当てはめる欧米諸国の雇用システム「ジョブ型」と比較して説明する。たとえば、「ジョブ型」の採用基準は、年齢や性別に関係なく会社が要求する職務ができるかどうか。自分の能力、経験が活かせる反面、仕事ができないと判断されれば解雇され、スキルのない新卒は採用されにくい。EUなどではそれが若者失業率問題と直結している。一方「メンバーシップ型」は、「会社にふさわしい社員」に育てることを採用の目的とするため、若者の失業率は海外と比べて低いが、採用の基準は非常にあいまいで、入社したメンバーには終身雇用、定期昇給を約束する代わりに転勤や異動など会社が命じたことには従ってもらうという考え方だ。

「メンバーシップ型の会社の新卒は全員、幹部候補生という位置付けになりますが、ポストの都合上、エリートコースから外れる社員もでてきます。そうした人は専門的なスキルがないと労働現場に適さなくなるケースが発生します。しかし、会社は簡単に解雇することもできないから、自主退社を促すための部署『追い出し部屋』へ、ということになる。こうした現象はジョブ型社会から見れば有り得ない話ですが、日本ではまかり通ってしまう」

 濱口さんは日本の雇用問題の処方箋として、職務や勤務場所、労働時間が限定されている「ジョブ型正社員(限定正社員)」の推進を提唱する。

「厚労省で議論されるようになったのは数年前からですが、実態としては『一般職』の名称で昔からありました。今は女性が就く補助的なイメージが強いですが、将来的には、新卒からそういう選択肢があってもいいと思います」

雇用事情に興味があるならぜひ一読を。「目からうろこ」の一冊になるだろう。

 


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初めまして。
郵便の労働現場にいる者です。『若者と労働』について感想めいたものを書きましたのでトラックバックします。『伝送便』という郵政労働者の交流誌に寄せたものです。

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