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2013年10月 1日 (火)

小杉・堀『高校・大学の未就職者への支援』

115574小杉礼子・堀有喜衣編著『高校・大学の未就職者への支援』(勁草書房)を頂きました。もちろん、編著者の一人である堀さんから手渡しで、です。

http://www.keisoshobo.co.jp/book/b115574.html

かつて国際的に評価されてきた日本の高校の就職指導は縮小しつつあるが、効果的なカリキュラム・リンケージが行われている例もある。高校編では、工業高校・福祉系高校・特別支援学校を事例に検討を加える。大学編では、就職プロセスのインターネット化で発生する問題について論じ、今後の支援策と、教育・労働政策のあり方を論じる。

もはやおなじみの小杉・堀組の若者労働本ですが、今回は、同じJILPTの堀田聰子さんも1章担当しています。またマージナル大学の居神浩さんもコラムに登場しています。

はじめに

序章 若者の移行プロセスを再構築するための「組織化」にむけて[堀有喜衣]
 1 本書の問題意識
 2 使用するデータ
 3 知見の要約
 4 「道なき道を進ませない」

第Ⅰ部 高校編

第一章 高校における就職指導と未就職卒業者支援のいま[堀有喜衣]
 1 はじめに
 2 高卒就職の制度的枠組みと慣行の変化
 3 近年の高卒労働市場
 4 未就職者の把握――「左記の者以外」の進路の分析を通じて
 5 未就職者支援の際の学校外機関の活用
 6 進路が決まらないまま卒業していく生徒の目立った特徴
 7 未就職者や早期離職者に対して実施している支援
 8 高卒未就職者の支援の今後

第二章 専門高校における産学連携教育[堀田聰子]
 1 はじめに――インタビュー調査の概要と位置づけ
 2 産学連携教育のさまざまな態様――工業高校・福祉科調査から
 3 産学連携教育のなりたち――変化する産業界のニーズへの対応
 4 カリキュラムレベルの産学連携普及にむけて
 コラム――地域の再生と商業高校[番場博之]

第Ⅱ部 大学編

第三章 新規大卒労働市場の変化[小杉礼子]
 1 新規大卒労働市場の変化と未就職卒業者
 2 求職者(学生)の変化
 3 大卒者への需要とマッチングプロセス

第四章 大卒未就職者問題への対応[小杉礼子]
 1 未就職卒業者問題への対応
 2 キャリア形成支援の未就職者削減効果
 3 能動的学修と学び続ける力、新卒就職
 4 キャリア教育と就職支援
 コラム――マージナル大学における支援の課題[居神浩]

おわりに

この中では第1章の堀さんの論文が高卒就職問題の概観になっています。

メッセージ性が高いのは序章の第4節「道なき道を進ませない」です。ここで堀さんが語っている3つのメッセージを、部分的に引用する形で示しておきましょう。

まず「1.「組織化」の意義を再評価する」。

・・・移行における学校の関与は少なくなったが、まだ学校に代わる他の組織が現れているわけではないため、若者の学校から職業への移行における「組織」の関与は弱くなっている。

組織化の弱まりの帰結としてもたらされるのが、就職指導における保護的機能の低下であるが、他方でこの状況は新規学卒労働市場の「自由化」をも意味する。新規学卒労働市場の「自由化」は、一見若者に選択の自由を与えたように見えるが、このルールの変更は実のところ、将来の見通しを早期からますます不透明にすることに荷担してしまっている。

・・・移行プロセスの不透明化は後期近代においては不可避な現象として受け止められることも多いが、「組織」の関与は不透明化の歯止めとなり得るはずである。歯止めとして機能するためには、「組織」によるマッチング機能を強化し、新卒市場を一定の秩序や方向性を持った市場に再編する試みが求められる。

次に、「2.学校の教育内容と社会からのニーズとを緩やかに連結した職業教育の充実」。

中身は緩やかな職業的レリバンスを、ということなんですが、最後のところで、

・・・長期的には、ドイツの専門大学のような実戦的な高等教育機関も検討されてよい。

というひと言が。

最後に「3.進路決定を先延ばししない就職指導・就職支援を」。

このマックス・ウェーバー風の台詞は、私も結構よく使いますが、

・・・何かを選ぶことはそれ以外の可能性を失うことだが、選ぶことを先延ばしすることによるリスクの増大にも目を向け、こうした観点から、就職指導・就職支援の理念を見直す時期に来ているのではないか。

確か以前、金子良事さんとのやりとりで出たような記憶が(詳しくは下記参照)。

そして、これら3つのメッセージの後で、この章の最後に一見さりげなさそうに、実は世間ではびこる風潮に対する、柔らかくてキツイひと言が。

・・・「告発型」にとどまったり、正論かも知れないがけっしてかなうことはない理想を振りかざすのではなく、地道でこつこつとできそうなことを拾い上げていきたいというのが本書のスタンスである。

これもまた、マックス・ウェーバー風の、しかし今はやりの政治家には一番耳に入らなさそうな言葉ではありますね。

(参考)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/02/post.html(「職業教育によって生徒は自由な職業選択が可能になる」はずがない)

・・・職業教育訓練とは、それを受ける前には「どんな職業でも(仮想的には)なれたはず」の幼児的全能感から、特定の職業しかできない方向への醒めた大人の自己限定以外の何者でもありません。・・・

120806(追記)

なお、本書の編著者の一人である堀有喜衣さんは、先日刊行されたわたくしの編著の『福祉と労働・雇用』(ミネルヴァ書房)において、「学校から職業への移行」という章を執筆されています。

http://www.minervashobo.co.jp/book/b120806.html

短い中に重要なメッセージが盛り込まれた論文ですので、是非お読み頂きますよう。

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