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2013年10月 8日 (火)

毛塚勝利編『事業再構築における労働法の役割』

1106336320毛塚勝利編『事業再構築における労働法の役割』(中央経済社)をお送り頂きました.ありがとうございます。

M&Aから企業再生時の再編さらにはアウトソーシングなど、多様な事業の再編の局面における労働者保護の現状と課題を法的側面から検討する。欧州の最新動向も紹介する。

本書における事業再構築とは、(1)事業組織の再編(企業再編)に、(2)業務の外部化(アウトソーシング)・「ヒト」の外部化(第三者労働力の利用)と(3)人的合理化(解雇・労働条件の変更)を加えて考えている。経営効率の追求のなか事業の再編成の強化が不可避であるならば、その現実に労働法がどのような選択肢を提供できるか、公務サービスの動向をも視野に入れて探求する。

ということで、全部で500ページを超える大冊の内容は以下の通りです。

第1編 事業の再構築をめぐる法的問題(課題設定—検討の概要と特色
組織再編をめぐる法的問題
事業譲渡における労働契約の承継をめぐる法的問題
解散・倒産をめぐる法的問題
現代における整理解雇法理のあり方
賃金処遇制度の見直しをめぐる法的問題
第三者労働力利用と集団的労使関係—派遣先の団交応諾義務
公務部門の法的問題
事業再編における労働者保護に関する立法論的検討:欧州法モデルを超えて)
第2編 比較法の視点からの検討(EU法
ドイツ法
イギリス法)

このうち、橋本陽子さんが書かれているEU法の章は、私にとってもずっとフォローしてきた分野でもあります。

上記目次のように、かなり広範な分野を対象にしている本書ですが、やはり中心をなすのは、編者である毛塚さんの「事業再編における労働者保護に関する立法論的検討」でしょう。あえて、「欧州法モデルを超えて」というサブタイトルをつけていることに、2000年の労働契約承継法を超える立法を目指す思いが伝わってきます。他の論文も、多かれ少なかれ同じ方向性を共有しているように見えます。

ただ、私自身は、本書の筆者の皆さんとはいささか考えを異にするところがあります。それは、端的に言ってしまうと、欧米と違って職務無限定の労働契約を前提とする日本の労働社会において、ドイツ法にならって、事業移転に伴って自動承継されない異議申立権を認めてしまっても、移転元に仕事がなくなった(移転してしまったんだから当然)ことを理由とする解雇がドイツと同じように行えるわけではないため、結果的に労働者のごね得を認める結果になってしまうのではないかということです。(ドイツの章の374ページ参照)

それに、ドイツ以外の国では、そもそもジョブとともに移転するのが当たり前で、嫌だという権利がある訳ではないのがデフォルトなわけです。

ジョブ型だから自動移転を原則とする社会で、それは嫌だと主張する権利はあっても、それは仕事がなくなったことを理由とする正当な解雇のリスクにさらされることを意味する訳なので、バランスはとれるわけですが、メンバーシップ型の社会で同じようにはならないのではないでしょうか。

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