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2013年10月15日 (火)

老化した汎用iPS細胞と専用部品

4年前のエントリにコメントがついたので、改めて読み直してみて、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/post-58cf.html(従業員の能力は陳腐化・・・してますよ、半世紀前から)

思ったのは、半世紀前の職務能力陳腐化論に基づいた職務給論が衰退して、可塑的能力論に基づく職能給が広がって、さらにそれがもう一度デジャビュ的に批判されるというこの構図を、こういう風に比喩的に言えないか、と。

日本型雇用システムの「人材」観は、先日来、経団連や経済同友会に呼ばれたときにお話ししているように、どこ(の部署)にべたっと貼り付けても、周りの状況に適応してそこにふさわしく活動できる「何でもやります」型で、言ってみればiPS細胞みたいなもの。

iPS細胞のいろんな職務をこなしていける「汎用能力」が高ければ高いほど、企業にとっては欧米型ジョブ型労働者のような専用部品を、きちんとそれが当てはまる部署に差し込まなければならないという制約が少なくなり、内部的フレクシビリティをフルに享受できるので、日本型システムの競争力は極めて高いと評価されることになる。

ところで、iPS細胞の適応能力それ自体は、それまでどれだけいろんな職務を的確にこなせてきたかという事後的な形でしか評価できない。無理に(何でもやらせる前に何でもできるかを)事前評価しようとすると、好き嫌い的な主観的評価になってしまうから。

しかるに、iPS細胞も生き物なので、かつてはどこに貼り付けてもちゃんと活動できたiPS細胞も、中高年になるにつれて、徐々に老化現象が進み、「何でもできる」適応能力は減退せざるを得ない。

実を言えば、それ自体は日本だろうが欧米だろうが同じこと。ただし、そもそも一部のエリートを除けば労働者は「部品」であるジョブ型社会では、特定の箇所にのみ使える堅い部品として使っている限り、よほど老化してポキッと折れるのでない限り、それなりに安心して使い続けることができる。「部品」であることによるメリット。

ここが労働者を[部品]扱いしない「まことに人間的な」日本型システムの皮肉なところ。部品じゃなくiPS細胞として使い続けようとすれば、それが老化してどこに回しても若いときのようにすぐに適応して活動することができなくなると、「何にもできない」という不当とも言えるレッテルが貼られてしまう。

拙著で繰り返した、日本型システムでは若者がもっとも利益を得ており、中高年、高齢者になればなるほど不利益を被るというのは、こういうメカニズムが働いているわけですね。

「部品」であるがゆえに、それがちょうど合う箇所がない限り「部品」として採用してもらえない欧米の若者。しかし、「部品」であるがゆえに、その箇所がある限りよほど老化しない限り使い続けられる欧米の中高年。

対して「iPS細胞」であるがゆえに、どんな箇所でも「突っ込んどけ」で採用してもらえる日本の若者。しかし、「iPS細胞」であるがゆえに、ちょっと老化して「どこでも使い回しできる」柔軟性が低下したら、「どこでも使えないヤツ」とレッテルを貼られてしまう日本の中高年。

どっちが幸福でどっちが不幸なのかはともかく、物事はこれくらいの複眼で見なければならないということですね。変なのに煽られることなく。

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コメント

物事を様々な角度から見るのは
大切ですね。

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