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遠藤公嗣編著『同一価値労働同一賃金をめざす職務評価』

132931遠藤公嗣編著『同一価値労働同一賃金をめざす職務評価 官製ワーキングプアの解消』(旬報社)をいただきました。

http://www.junposha.com/catalog/product_info.php/products_id/866

あれ?「お送り頂きました」じゃないの?

お送り頂いたんじゃないんです。

JILPTの山崎憲さん経由で手渡しで頂きました。山崎さん、例のアメリカの新しい労働組織の研究の関係で遠藤さんと密接ですからね。

同等の仕事に、同等の賃金を!
激増する非正規 公務員。その賃金は適正なのか? 性差・雇用形態などによる差別を排除して仕事の中身を評価し、「同一価値労働同一賃金」の実現をめざす。均等待遇実現のための実践的ノウハウをすべて公開!

第一章 職場と職員
第二章 実施した職務評価システム
第三章 システム設計の創意工夫
第四章 職務評価からの提案と分析
実施マニュアル―簡単に取り組める「職務評価」
付録1)「職務評価ファクター説明書」
付録2)「職務評価質問票」
付録3)「賃金労働時間調査票」

遠藤さんらの問題意識は、本ブログでも今まで何回か紹介してきていますが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/post-fb9e.html(『同一価値労働同一賃金原則の実施システム 公平な賃金の実現に向けて』)

今回の本は、自治労の協力の下、50万都市のA市の4職場(税制課、男女共同参画課中央図書館、市立保育園)に対して、大変詳細なインタビュー形式によって、一人一人の職務の職務評価を試みた記録です。このために作成された「職務評価ファクター」と「職務評価質問票」が巻末についていて、これが遠藤さんの「売りポイント」のようです。

もはや評論の時期ではない、実践の時期だ!という遠藤さんの気持ちがよく伝わってくる本ではあります。

ただ、遠藤さん自身が「むすびに」で述べているように、このメンバーシップ型に確立した日本の労働社会では、職務(ジョブ)が確立していることを前提にして、その値打ちをどう評価するかが問題になる欧米社会とはあまりにも前提条件が隔たっているのも事実です。

一人一人がジョブというレッテルをぶら下げていることを前提に、そのレッテル相互間の値段付けをどうするかが問題になるから、職務評価が労使間の重要な交渉事項になったり、ヘイみたいなビジネスの商売ネタになったりするわけですが、そもそも日本では誰もそういうレッテルをぶら下げていない。

そして非正規は多くの場合事実上職務が固定しているけれど、正社員はそもそも何でもやる前提で雇われ、年功と人間力で値段付けがされるので、職務評価というコンセプトを理解するには何段階も落差があります。

この本は、そこを自治労の力で正規非正規を通じる形でやり抜いたわけですが、ではそれで賃金決定するかという話になれば、当局側がどうこう言う以前に、正規職員側が「それはたまたまそこに配置されたからやってるだけなのに」となってしまう。ものすごい難しい問題がまだまだ山積みです。

まあ、とはいえ、こういうジョブ型の世界があるということ、いやむしろ、日本以外ではこっちの方が当たり前だということを、圧倒的に多くの人が知らない、それも口先ではメンバーシップ型を奴隷制だのなんだのと批判するような手合いに限って一番わかっていないという現代日本の惨状を考えれば、そういう一知半解組に目の敵にされている筆頭選手の自治労が、まさにガラパゴスから脱却して、グローバルスタンダードに近い方向に向かおうという意思を示しているという点に、ジョブ型労働社会に向かう細い道筋がかろうじて見えているのかも知れません。

それはともかく、こういう話になれば、歴史派の私としては、いやまさにかつては日本政府自身が、そういう方向の政策を一生懸命やっていたんだよ、といういつもの話につなげておかないといけませんね。これは、職務評価が可能になる土俵作りとしての職務分析の話です。

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2012/09/pdf/026-033.pdf(雇用ミスマッチと法政策)

Ⅲ  ジョブ型労働政策の時代─職務分析

自分の生きた時代しか目に入らない人々にとっては,日本の労働政策は一貫してこのような大企業正社員型モデルを望ましいものとみなし,雇用維持や企業内教育訓練の推進に注力してきたと見えるであろうが,若干時間軸に沿って過去に遡ってものごとを観察するならば,必ずしもそうとばかりは言えない事実を幾つも発見することができる。むしろ,終戦直後に典型的なジョブ型モデルを前提に作られた諸法律の下で,日本の労働政策は60 年代までは極めて素直にジョブ型の構造を示していた。

まず何よりもジョブ型行政の名にふさわしいのは,職業安定法第15 条2 項に基づく職務分析であろう。同項は「職業安定局長は,公共職業安定所に共通して使用されるべき標準職業名を定め,職業解説及び職業分類表を作成しなければならない。」と規定していた(現在も若干の字句修正はあるがほぼこの形で規定は存在する)。同法の解説書によれば,「職業解説」とはいわゆる職務分析のことで,観察と調査とによって職務の内容をなす作業の全体,その職務に課せられた責任,その職務を一人前に遂行するに必要な経験,技能,知識等の精神的肉体的能力のほか,その職務が他のいかなる職務からも区別される要因を明らかにすることである1)。

労働省は1948 年からアメリカ労働省方式に基づいて職務分析を開始し,その結果を職務解説書として職種ごとに取りまとめていき,1961 年までに全173 集を作成した。そこで解説された職務の数は8500 に上る。その分量が膨大であるため,これを一冊に取りまとめた『職業辞典』が1953年に作成された。

なぜ国が職務分析をしなければならないのか,現代人にはもはや素直に理解することが難しくなっていると思われるが,それは上記職業安定法第5 条の7 が規定する「適格紹介の原則」が,なによりもまず職務単位での求人と求職者との「適格」さを念頭においたものであり,それゆえに職業紹介を行う職員に必要なのはそれが適格であるか否かを判断しうるだけの当該職務に関する知識であったからである。


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