歴史的に俯瞰し,現代の課題を浮き彫りにしていくスケールの大きな論考だ
先月刊行された『若者と労働』は引き続き評判が良いようで、有り難いことです。本日は、人事担当者のためのウェブマガジン「HRM Magazine」で、久島豊樹さんにより4冊の本が書評されている中で取り上げられています。
http://hrm-magazine.busi-pub.com/books1309.html
若者の就職事情と労働政策の動向を歴史的に俯瞰し,現代の課題を浮き彫りにしていくスケールの大きな論考だ。まず,「入社」に価値を置く日本的な新卒採用スタイルを「メンバーシップ型」と名付け,欧米にみられる「職」基準の「ジョブ型」との違いを明らかにしている。そのうえで,企業が学歴(偏差値)を頼りに新卒を採るメンバーシップ型雇用は,1990年代の正社員削減の動きを契機に行き詰まったと振り返る。そのとき門戸から漏れた若者らが「フリーター」となって潜行し,2000年代に至って「年長フリーター」という格差問題で顕在化したとの分析を示している。今後の政策的処方では,新卒(学歴)採用への偏りを廃し,「職」基準への転換が避けられないと見通すものの,一気にジョブ型労働社会へ移行するとスキルを持たない若者から失業するリスクが大きいとし,暫定的な「ジョブ型正社員」という雇用スタイルに注目する。内容は詳しく正確で,しかも易しい記述に徹していて,時系列の雇用状況を一気におさらいできる仕上がりがうれしい。
読みたくないから読んでいないのか、読んでもわざと理解できないふりをしているのか、本の内容とは異常にかけ離れた曲解した印象操作を振りまきたがるヒョーロンカ諸氏が多い中、こういう真摯にわたくしの議論を取り上げていただく方には感謝の念に堪えません。
そうですね、「若者の就職事情と労働政策の動向を歴史的に俯瞰し,現代の課題を浮き彫りにしていくスケールの大きな論考」という評は、私がまさに念じていたところです。どこまでのスケールの作品になっているかはわかりませんが。
なお、拙著以外の3冊は、
児美川孝一郎『キャリア教育のウソ』
野原蓉子『こうして解決する! 職場のパワーハラスメント』
原俊『「シロアリ社員」があなたの会社を食いつぶす』
です。
なお、最近のネット上の書評もいくつか。
http://ameblo.jp/hosukenigou/entry-11604717055.html(いつもだいたいむかいかぜ)
日本人は全体主義だと言われる。
定時の鐘が鳴ってから、なんだか言いようのない帰りづらさ。
帰りたいけどなんかみんなまだやってるから、とりあえずなんかしていよう。
これは全体主義ゆえではない。
この定時に上がらない帰りづらさはなんなのか、ということの説明にピンと来たので抜粋する。「自分の仕事と他人の仕事が明確に区別されていない。そうなると、たまたま今やっていた自分の仕事が終わってからといって、さっさと仕事を終えて帰るなどという行動をとるのは大変難しいことになります。
同僚がたまたま今やっている仕事だって、他人の仕事ではなく自分の仕事でもあるからです。
結果的に、職場集団の全員が仕事を終えるまではみんなで残業することが多くなります」そうか。まさに、そうだ。
http://blog.livedoor.jp/wwbw_9ss/archives/31581797.html(Whatever Will Be, Will Be)
最近は自己啓発に軸足を置いた「働き方」の本が多い中で、ここまで簡潔に日本の雇用制度を説明している本は他にないと思います。
また、日本だけの変遷に限らず海外との比較や日本の特有の法と労働判例の関係性なども丁寧に説明してくれます。本当に勉強になる本です。
これからの働き方を考えるたい人は、読んで損のない本だと思います。
http://minami-jimusyo.jp/news/%E6%9C%AA%E5%88%86%E9%A1%9E/20130904/2141/(みなみ事務所からのお知らせ)
日本の正社員は、担当する職務=ジョブの範囲や量が明確でなく、企業に所属する=メンバーであるということのみで、会社と雇用契約を結んでおり、そのため、担当する仕事が無定形無定量で歯止めがかからず、正社員の(超)長時間労働を生み出しています。
それとは対照的に、日本の非正社員は、担当する作業=ジョブはかなり明確である代わり、会社への帰属性=メンバーシップは極めて希薄で、雇用契約が有期であったり、契約期間が切れたときはもちろん、切れる前でも、会社の業績など都合次第で簡単に雇用が打ち切られます。権限や責任も正社員と比べて大幅に限定され、給与や社会保険などの労働条件は極めて劣悪です。
いわば、「ジョブなきメンバーシップ」原理の正社員と「メンバーシップなきジョブ」原理の非正社員という、両極端な二つの世界が併存しており、そのことがそれぞれの側を苦境に陥れる結果をもたらしているのだ、ということになります。
http://pink.ap.teacup.com/furuya-y/1679.html(「ブラック企業誕生の二つの道???」 )
この本、濱口氏の他の本にくらべてかなりわかりやすいというか、読みやすい気がしますね。もちろん、レベルを落としているということはなく、よく読めば実はかなり難しいんだが。
http://pink.ap.teacup.com/furuya-y/1680.html(「見返りなし・滅私奉公???」 )
あった、あったこういう時代。ワタクシが大学を出たての頃だ。まああのころは日本中がブラック企業でしたね。要するに、定年まで面倒見てやるから煮て食おうが焼いて食おうがこちらの勝手だぞ、ということでした。
ところが、「定年まで面倒みてやるから」がいつの間にか消えてなくなった。そしていま、「見返りなし滅私奉公」的働き方が強いられているってわけか。
なぜか、amazonではここ数日、ずっと品切れ状態が続いているようですが。
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