中村淳彦『崩壊する介護現場』
これは、近所の本屋に積んであるのを見つけて、ぱらぱらと目を通し、思わずそのまま買った本です。
http://www.kkbooks.jp/book-all/dfgaag094358/
タイトルだけ見れば、岩波新書に並べてもいい介護労働問題を論じた本に見えますが、いやまさにそういう問題を論じているんですが、でもその突っ込み具合が、岩波新書や中公新書とはだいぶ違う。
それはこの著者名を見てぴんと来る人もいるでしょう。『名前のない女たち』『職業としてのAV女優』『デフレ化するセックス』といった性ビジネスの底辺を丁寧にルポしてきた中村氏が書いているのですから。
超高齢化社会を目前に控え、介護事業は圧倒的な需要がある成長産業といえよう。
ただ、今の介護現場は危険すぎる。「低賃金」や「重労働」といったよくあるネガティブ要因だけではない。
高い離職率に、急増する介護職員の暴行事件、貧困によって売春市場に流れた介護ヘルパー、宗教的介護施設の乱立……
いったい介護の現場で何が起こっているのか?
本書では、急増する介護現場での事件、著者が経験した困難の一部、介護人材の実態を報告しながら、破たん寸前の介護現場の現状を紐解いていく。
ノンフィクションライターの中村淳彦氏があぶりだす驚愕の真実とは……?
「著者が経験した」というのは、経営者としてなんですね。「はじめに」の冒頭で、中村氏が「2008年からデイサービスを立ち上げ、経営者兼介護職員として数年間関わっている」とあります。
その意味でこの本は、介護事業者・労働者でもあるライターによるこれ以上ない参与観察の本かも知れません。
目次は
序章 壊れかけの介護業界
第一章 介護労働者、五〇人に一人がサイコパス?!
第二章 売春する介護職員
第三章 介護労働は社会から外れた人の受け皿
第四章 夢喰いが牛耳る介護業界の闇
ですが、たとえば第2章の最初の方の小見出しを並べると、
AVモデルの25%が現役介護職員のA社
セーフティネットとしての売春業界
介護は波瀾万丈な人生を送る人の受け皿
パンツを売る女性介護職員・・・
という調子です。
最後の第4章は、
介護施設に圧倒的に多い宗教的組織
徹底した理念研修から生まれた過重労働
重大事故が連続するワタミの介護
介護業界のカリスマたちの下半身の現実
社会で支える介護保険制度と低賃金問題・・・
こないだ来た『POSSE』20号の記事とも交錯しますね。
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