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2013年9月 3日 (火)

古市くん、チョーまともじゃん

例の「今後の経済財政動向等についての集中点検会合」に「有識者」として出席した古市憲寿さん。ネット上では誰の代表のつもりだ・・・とかなりな言われようでしたが、公開されたその議事録を読んでみると、実にまっとうな議論を堂々と展開しています。

冒頭「今日は、若いというだけで呼んでいただいたと思うので、できるだけ若者とか現役世代目線の利害を代表したようなことを言いたいと思う」と、謙遜めいた言い方をしていますが、どうしてわかってない下手な大人よりもずっと立派にまともなことを言ってますよ。

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/tenken/01/gijiyoushi.pdf

・・・そもそもなぜ消費税を上げるのかという議論に対して、余り根本的な議論がされていないように思う。すごく後ろ向きの意見が目立つと思う。

・・・3点目が一番重要だと考えるが、現役世代に負担をかけないために消費税引上げと言うが、本当に消費税が現役世代のためなのかという問題である。現代の計画を見ると、たとえ予定通り5%増税されたとしても、子ども・子育て支援へは、そのわずか0.3%分が充当されるだけと言う。確かに、今の金額から考えれば、0.3%は大きい数字ではあり、一歩前進ではあると思う。しかし、その現役世代にあまりこの消費税というものが還元されている気がしない。

子育て支援は、長らく日本では経済成長のお荷物と考えられてきた。しかし、添付した資料の2ページ目以降に、同志社大学の柴田悠氏の研究を付録として付けたが、こちらを見ていただくと、この内容というのは、OECDの28カ国の経済成長の要因というものを分析した資料であるが、その分析によると、実は保育サービス、子育て支援こそが実は経済成長にとってプラスの影響を与えているということが、この分析からは明らかになっている。つまり、子育て支援とか少子化対策は、経済成長に対してお荷物なんかではなくて、逆にプラスの影響を与える、そんな研究が出ている。これからの社会の持続性を考えたとき、もしくは短期的な経済成長にかんがみても、子育て支援、少子化対策は重要であるにもかかわらず、そこに対するウェイトとか、そこに対するまなざしというものがあまり熱心であるようには思えないというのが、僕の消費税引上げに対する不信感と言うか、懸念の事項の1つである。

もしも仮に消費税を上げるかわりに、現役世代を含めて社会保障をきちんと整備していく、雇用対策をきちんとしていく、そういうきちんとこの社会で安心して、税金を払って、それが自分に還元される、そんな安心感ができれば、別に増税は消費税に限らず、そこまで国民が忌避することではないと思う。ただ、今のままではあまりにも増税という言葉だけ、しかも増税という中身が議論されずに増税ありきの議論ばかりされてしまっていて、なかなかこの国の未来を考えるというフェーズまでこの議論が達していない。だから、もしも引き上げるのだとするならば、その発表もしくは引上げのタイミングと同時に、その増税は一体何のためのものなのか、それでこの国はどう変わっていくのか、そうした長期的な議論を同時に提供していただければいいというが私の思いである。

・・・消費税がメインのトピックスなので、経済寄りの話になるのは仕方がないと思うが、もう少し社会の話を少しだけ補足させてほしい。今までの日本は経済政策を中心にずっとやってきたわけだが、やはり経済だけを追いかけた結果が、どうしても焼畑農業的になってしまっていると思う。その結果が少子化だと思う。2012年の合計特殊出生率は1.41で、一見この10年では高い数字だが、本来は今、第3次ベビーブームが起こっている時期。第3次ベビーブームが起こっている時期のはずなのに、これだけの数字しかない。先ほどからグローバル人材とか、2050年の日本、そのための経済成長という話が出てきた。でも、そのためには人がいないとそんなことは可能にはならないと思う。やはり教育であるとか社会保障とか、再生産に対する投資だとか、そこの議論が余りにも日本ではおざなりにされてきた気がする。

90年代以降の経済成長率が高い国を見てみると、租税負担率が高い国でも着実に経済成長をしていることがわかっている。北海道大学の橋本努さんという研究者の方が北欧型新自由主義という言葉でまとめているが、法人税は安くリストラには寛容。その代わり、きちんと社会保障がトランポリンのように一般の労働者をきちんと支える。そういった形での社会保障と強い経済の両輪というものが、ヨーロッパではこの20年間で普及してきた。したがって、経済の話はどうしても経済成長とか2050年とか経済成長率何パーセントとか、すごく勇ましい話になりがちだと思うが、一方でそのためには社会が再生産していかなければいけない。人々が再生産をして次世代を生んでいくという基本の営みがあることを確認したく、少し補足させていただいた。

よく世代間格差といいって、高齢者がお金をもらい過ぎて、若者がもらっていない。確かに数字を見るとそのとおりだと思う。高齢者に対する社会保障費はほかの国と比べても、OECDの平均の国並みになった。一方で現役世代に対する社会保障が非常に低い。ただ、これを単純にこの結果だけで受けとめるわけにはいかないと思っていて、日本はずっと福祉というものを家族が担ってきた国だった。実際、今でも家族が担わなければいけない分量というものはかなり程度があるという中で、単純に高齢者に対する社会保障費を一律にカットしたとしても、結局それが現役世代に対するしわ寄せになってしまうと思う。

高齢者に対する社会保障というのは、実際は現役世代もいつかは自分が高齢者になっても安心できるんだという、この安心感にもつながると思う。だからもちろん高齢者の社会保障に関して今の病院をちゃんとホームドクター制を導入するとか、幾つか改革ができることはあると思う。ただ、単純にそれを現役世代と高齢者、若者と高齢者に対する世代間格差という形に収れんさせるのではなくて、高齢者に対する社会保障はこれまでどおりやっていく。同時に現役世代に対しても大学の学費が高いだとか、職業訓練がきちんとしていないとか、その方も拡充していく。その両輪が必要だと思う。そのためには経済成長が必要だというのは、まさに同意見である。

ブータンのように幸福度を重視した政策というのは、私は反対である。幸福度を上げるのはある種簡単で、情報を遮断して、それで人々を幸福と思い込ませればいい。ある種の洗脳をすればいいだけで、そういうふうに個人の主観とか価値観によって施策を決めてしまうことに関しては反対である。

確かに日本は、特に若い世代はこれから沢山の借金を背負っていく、どんどん高齢者が増えていく、人口も減っていく中で幾つもの負担を負っているわけだが、一方で日本だけがしていなくてほかの国が当たり前にしていることは、まだまだ沢山あると思う。

やはり1つは働く女性の問題である。日本は出産、育児期に仕事をやめざるを得ない女性がすごく多い。その女性が働くだけでも大分労働力が上がる。だから保育サービスを拡充して児童手当をちゃんと出して、職業訓練をちゃんとしてという、どこの国も当たり前にやっていることを当たり前にするだけで、まだまだ可能性はあると思っている。その1つが消費税なのかもしれないが、消費税をもしもほかの国並みに上げようとするのであれば、そういった現役世代に対する社会保障に関しても、ほかの国並みに上げていく方向をちゃんと政治が示していただければ、政治不信というものは払拭されていくのかなという思いはある。

例えばナショナリズムであるとか、そうやって短期的に安易に人々を魅了するということは、どうしても長続きしないと思う。短期的に強さを見せるとかも当然必要だと思うのだが、それだけではなくて、ちゃんと10年、20年、50年、100年大丈夫だという仕組みをちゃんと責任を持って年配の方が示していくことが、ひいては現役世代、若者世代に対する幸福につながっていくのかなと私は思っている。

頭の中に「社会」がないまま、保育サービスや児童手当や職業訓練など「どこの国も当たり前にやっていること」を目の敵にして財政再建vs景気という2項対立しか見えてない「大人」よりは、百万倍役に立つことをちゃんと伝えていると思いますよ。

私に褒められても大して嬉しくもないでしょうけど、わかってない記者が書く新聞記事だけでなく、ちゃんと議事録を読んでる人もいるということで。

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コメント

古市さん、実際しっかりした方ですね。OECD報告書を根拠に子育て支援が経済成長に寄与することを述べている点など秀逸です。北欧型新自由主義が日本に合うかは疑問に合うか思いましたが、ブータンについては全く同意です。

はまちゃんさん、こんにちは!SNSの埋め込みに関して。
あの、良ければ、ツイッターだけでなく、Facabookの「いいね!」とか「シェア」とかも、埋め込んでいただけたら、嬉しいです。検討していただきたいです。

大学生より!

リンク先の議事録を見て、古賀氏も良いことを言っているなと思っていたら、ヤメ官僚の古賀茂明氏ではなくて、連合会長の古賀伸明氏だったでござる。

欧米フェミニスト:保育園に入れないなんて許せない

日本フェミニスト:家で子育てや教育を行う奴らなんて許せない


専業主婦や家族制度へのヘイトスピーチをやってるソーシャル(笑)な人々は欧米を見習おうw

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