解雇特例特区―あまりに乱暴な提案だ@朝日社説
本日の朝日新聞の社説が、例の解雇特区について、極めて的確でかつ過不足のない評価を下しています。
http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit1(解雇特例特区―あまりに乱暴な提案だ)
いくら「特区」だからといって、雇い主の権利の乱用は認められない。
政府の産業競争力会議で、解雇や労働時間などの規制を緩和した特区をつくる提案があり、安倍首相が厚生労働省に検討を指示した。
特区内にある開業5年以内の事業所や、外国人社員が3割以上いる事業所への適用を想定しているという。
特に問題なのは、解雇規制の緩和だ。
現行ルールでも、企業には従業員を解雇する権利がある。ただし労働契約法16条で、その解雇が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は権利の乱用になり無効としている。
今回の提案は、ここに特例を設け、「特区内で定めるガイドラインに適合する契約に基づいていれば、解雇は有効」と規定するという。
解雇へのハードルが下がり、トラブルも防げるので、企業が多くの人を雇ったり、高い給料を払ったりできるようになる。そんな主張である。
雇用契約に、解雇の要件を明確に記すこと自体は、推進すべきことだ。
だが、実際に解雇が正当かどうかでもめた場合、契約の文言だけでなく、働かせ方の実態をみて判断するしかない。
社員の成果の測り方ひとつとっても、業務に必要な資源や環境を与えられていたかどうかに左右されるはずだ。
競争力会議側は、仮に裁判になった場合、契約を優先させるよう求めているが、あまりに乱暴な議論だろう。今回の提案は企業側が一方的にリスクを減らすだけではないか。
日本で正社員の解雇が難しいといわれるのは、ある仕事がなくなっても、従事していた人をすぐに解雇せず、他にできる仕事がないか探す義務が企業側にあるとされるからだ。
ただ、それは「辞令一本で、どこででも、なんでも、いつまでも」という無限定な働かせ方と表裏一体の関係にある。
そこで、仕事の内容を具体的に決め、さらに解雇が有効になる判断基準について労使と司法のコンセンサスをつくろう。最終的には、立法や通達で明確にしよう――。
政府の規制改革会議の雇用ワーキンググループは今年5月末にこんな提案をした。ただし、それが実現しても権利の乱用は認められないことを確認することも忘れなかった。
こちらの方がはるかに建設的な提言ではないだろうか。
ただ、解雇特区がむちゃくちゃであるというだけでなく、まっとうな規制改革会議の提案と対比させることで、労働問題の筋道がちゃんとわかっていることが伝わってくる、出色の社説と言えるでしょう。
他紙の社説子諸氏も、朝日に負けないようにちゃんと勉強しましょうね。
(追記)
『日本の雇用終了』の著者に向かって、こういう寝言を口走る人も・・・。
https://twitter.com/Gigokujizo/status/383444334177046528
寝言。ハイリスク、ハイリターンの限定実験なんだからやってみればいい。そもそも、解雇規制なんて大企業でしか実施されてないのを知らんのだろ。 / “解雇特例特区―あまりに乱暴な提案だ@朝日社説: hamachanブログ(EU労働法政策…”
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コメント
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>日本で正社員の解雇が難しいといわれるのは、ある仕事がなくなっても、従事していた人をすぐに解雇せず、他にできる仕事がないか探す義務が企業側にあるとされるからだ。
ただ、それは「辞令一本で、どこででも、なんでも、いつまでも」という無限定な働かせ方と表裏一体の関係にある。
そこで、仕事の内容を具体的に決め、さらに解雇が有効になる判断基準について労使と司法のコンセンサスをつくろう。最終的には、立法や通達で明確にしよう――。<中略>それが実現しても権利の乱用は認められないことを確認することも忘れなかった。<
この部分、よく調べ理解している発言だと思います。
私としては、いくら特区をつくっても、『解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は権利の乱用になり無効』というのは譲れません。法は社会全体の規範だというところも譲れません。
特区というのなら、労働以外の他の商品でやればよろしいのです。委託や請負で独禁法と下請法を外すとか。しかしこれだと、幾ら小さな法人でも取引先が複数でさえあれば域外に逃げられるわけですね。
囲い込まれた商品(労働力)だけは逃げ押せないわけですね。
これ、何か、かつての家制度みたいな、労働力とその再生産のための「嫁入り」に酷似してきます。
否もしかすると、我が国の労働契約はそういう感覚が無意識に残っている??。
投稿: endou | 2013年9月27日 (金) 10時52分