『若者と労働』にもさらに書評
新著『若者と労働』にもさらにブログ上やアマゾンのレビューが続いています。
旧著にも丁寧な書評を頂いていた「kuma_asset」さんの「ラスカルの備忘録」に、旧著と比較しながらその特色を的確に表現していただいております。
http://d.hatena.ne.jp/kuma_asset/20130901/1378002874
・・・ただし、本書は随所に略図を置くなど前著よりもわかりやすく記述されている。また、法改正等の背景にある政策担当者の問題意識がよく理解できるところも、その特徴と言える。そうした改正等にまつわる話の中で興味を引いたのは・・・
また、本書はタイトルにあるとおり、若者の労働に関して、前著でも明確にはされていなかった新しい視点から光をあてている。その視点からみると・・・
・・・以上、若者と労働をめぐる本書の視点をみてきたが、こうした構図は、日本の雇用システムについての歴史的な視点と、若年雇用問題に関する国際的(横断的)な視点を重ね合わせ、抽象化することで描くことができたものといえる。この構図を踏まえた上で、未来の日本の雇用システムをどう描くかがつぎの話となる。本稿の筆者は、前著の感想において、不安定な就業を継続する層と正規雇用に就いた層に分断された日本の雇用システムの「二重構造」の解決策について、「本書には、その回答は記載されていない」と指摘した。一方、本書には、この点について、一歩進んだ記述がなされている。・・・
アマゾンカスタマーレビューでは「Social」さんの「若者と労働を巡る「失われた20年」から脱却する第一歩を踏み出そう」という書評です。
「若者」はどのような状態に置かれているのか、そして置かれてきたのか。それをどのように評価し、先へ進めていくか。
労働分野を含め、長い間議論が行われてきた。特に労働に関しての議論は玉石混淆であり、著者のいうとおり、「様々な議論の中でもみくちゃにされて」きた。
そして、若者と分類される人たちが、時代の変化とともに順次入れ替わると、また議論の様子が変わってくることも、もみくちゃになってきた一因であろう。
働くことについては、各国の規範意識や思想に影響されるものであり、さらに「若者」となると、議論の難易度は上がる。
やはり歴史をつぶさに観察し、確固たる事実認識に立脚した議論が必要であることは、おそらく誰もが感じていたことであろう。
本書は、その需要をかなりの程度満たす、待望の新書といえよう。
著者の書籍の中で有名なものとして『新しい労働社会』(岩波新書)、『日本の雇用と労働法』(日経文庫)がある。
これらでも論じられていた日本の労働のあり方を、若者労働に特化して仕上げたのが、この『若者と労働』だろう。
ここで「特化」としたのは、本書が決して議論のレベルを落とすことをしていないからだ。
その上で、わかりやすく、わかりやすく書くにはどうしたらよいだろうと考えに考えた著者の努力の跡は、本書前半に特に顕著に感じた。
若者の労働問題を前に進めるためには、教育分野がどのように足並みを揃えて仕組みを変える意思を持つか・・・今のところ、微々たる兆候のようなもの、そしてそれがよりによって変な方向に行きそうになっている。若者の教育に携わっている方にも、是非読んでいただきたい。
崇高な教育は労働と無関係とこれからも言い続けられるのか(同様の問題は教育と福祉の関係(幼稚園と保育所)にもいえることなのだが)。
なお、著者は労働法政策を専門とする研究者であり、「経済学的分析が足りない」などというのはナンセンスというものである。
労働経済の分野からは、著者とメンバーシップ型/ジョブ型や労使関係論について、相当共有の認識枠組みを持つと思われる、神林龍氏(一橋大学准教授)の論考を待つこととしたい。
本書を読んで、若者と労働を巡る「失われた20年」から脱却する第一歩を踏み出そう。
なお、本日の朝日新聞の読書欄で、本書がごく簡単に紹介されています。
副題は<「入社」の仕組みから解きほぐす>。問題となっている非正規雇用や「ブラック企業」も、出発点はここから。一定の職にふさわしい人を充てる欧米型「就職」に対し、日本では未経験な若者が学校から直送されて「入社」する。かつては若者の雇用問題が“なかった”日本型雇用の歴史と、最近の政策を概説。
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