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「平成25年版労働経済の分析」

「平成25年版労働経済の分析」いわゆる「労働経済白書」が先日公表されました。

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000015637.html

平成25年版では、日本経済における産業構造や就業構造が変化する中、産業の新陳代謝などを通じた競争力の強化や成長の力となる人材の確保・育成などとともに、労働者の意欲と能力が発揮され、企業が活性化するための働き方の構築が必要だという観点から分析を行いました。

その主なポイントは、

・「日本再興戦略」で位置づけられる戦略分野といった産業に「失業なき労働移動」を 実現すること 

・雇用を創出する効果の大きい製造業の競争力を強化するために、多様な人材の確保、 人材の能力・資質を高める育成体系の整備などを行うこと 

・非正規雇用労働者が増加した中で、正社員を希望するなど、より支援の必要性の高い者に焦点を当てながら、適切な能力開発の機会の提供などを通じて、雇用の安定や処遇改善を図っていくこと 

にあります。本文の最後の「構造変化と非正規雇用」のところで、不本意非正規の増加や「多様な正社員」にも触れています。

企業が経済のグローバル化等の環境変化に対応する中で、正規雇用は1980年代後半から1990年代後半にかけて増加した後に減少したが、2000年代半ば以降大きく減少していない。一方で、非正規雇用は増加傾向が続いている。就業形態の多様化は、労働需要側の人件費コスト節約、仕事の繁閑への対応、専門的能力の活用、景気変動への対応等の観点とともに、労働供給側の就業ニーズや意識の変化、例えば家庭責任との両立を志向する者等の労働参加が進んだことや、高齢化の進行等の変化に対応するものでもあったと考えられる。企業における非正規雇用の活用が多様化するなかで、総じて基幹化・戦力化の動きが見られるが、今後についてみると、正社員比率を高める企業の割合は、非正社員比率を高める企業の割合を上回っている。また、非正規雇用労働者の多くが有期契約労働者であると考えられることから、有期契約労働者から無期契約労働者になる者が増え、雇用の安定が図られれば、企業にとっても人材の確保・定着等の効果が期待される。

一方で、厳しい雇用情勢の中でやむを得ず非正規雇用労働者となった者もみられる。そのような不本意非正規や正社員を希望する非正規雇用労働者、非正規雇用労働者のうち世帯所得の低い世帯で主な稼ぎ手となっている者など、より支援の必要性の高い者に焦点を当てながら、適切な能力開発の機会の提供等204を通じて、雇用の安定や処遇改善を図っていくことが重要である205。

こうしたことにより、我が国の労働者全体の人材としての付加価値が高まることが期待されるが、そのためには、企業が成長して良好な雇用が創出され、そのような分野で必要とされる人材が活躍できる仕組みを整備することが重要であると考えられる。

また、現在、労働需要側、労働供給側双方の動向も踏まえ、「多様な働き方」が注目されている。現在、企業でも、そのような働き方を活用する動きがみられているが、正規・非正規の二極化を解消し、雇用形態にかかわらず、労働者の希望に応じて、安心して生活できる多様な働き方が提供される社会を実現するため、より一層こうした働き方の導入促進に向けた取組を推進していくことが重要である。このことは、企業にとって従業員のモチベーション向上や人材の確保・定着を通じた生産性の向上が期待でき、また、非正規雇用労働者のキャリアアップ、より安定的な雇用の機会が確保されることになり、不本意非正規の減少にもつながるものと考えられる。さらには、正社員にとっても長時間労働等の課題を踏まえ、ワーク・ライフ・バランスの実現の一つの手段となりうるものと期待される。なお、その際には、労働者個人の選択が確保され、その導入により雇用の安定化が図られる層が増えるよう配慮して進めていくことが重要である。さらに、改正労働契約法の全面施行も、「多様な働き方」の普及・促進につながるものとして期待される。

本節で労働需要面、さらには労働供給面からみた雇用者の内訳をまとめると第3 -(3)-13図のとおりである。これらの各種統計データについては観点が異なり、重複があり得るものであるが、有期契約労働者の実数に関する統計値は「労働力調査」では2013年1 月より表章されたこともあり、今後、雇用契約の無期・有期の別と勤め先における呼称にまたがる統計の蓄積や分析、議論が必要と考えられる。

政府としては、今般明らかになった統計データを踏まえながら、非正規雇用労働者のキャリアアップのための取組を支援し、成熟産業から成長産業への失業を経ない円滑な労働移動が可能な環境の実現を図るなど、経済情勢の好転、企業における成長を支援する取組を、政労使の協力のもと推進していくことが必要である。そして、「多様な働き方」の選択肢が整備されつつ、各企業の労使が中長期的な観点から最適な従業員・雇用の組み合わせを実現していくことが、成長を通じた雇用・所得の増大にもつながっていくものと考えられる206 207。

206 内閣府「経済社会構造に関する有識者会議」における「成長のための人的資源活用検討専門チーム」報告書(2013年4 月)によると、中期的な制度的対応の方向性として、人的資本をできるだけ損なうことなく、より高い生産性の部門へ失業を経ないで移動できることを目指して、改革のための議論がなされるべきとしている。

207 「日本再興戦略」(2013年6 月14日閣議決定)中の「日本産業再興プラン」には、失業なき労働移動や多様な働き方の実現を含む「雇用制度改革・人材力の強化」が盛り込まれた

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