本日の朝日社説 on 派遣労働
派遣法についてもよく勉強しておらず、今回の派遣研究会報告書もろくに読まずに書いたとおぼしき社説が多々見られる中、本日の朝日新聞の社説は、ちゃんと物事の構造を理解した上で書かれていて好感が持てます。
http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit1(派遣見直し―働き手を守る覚悟は)
・・・内容を大づかみにいえば、「派遣先で労働者がどう働くか」については、規制を緩和する一方、「派遣元がどう労働者を保護するか」については規制を強化する。
労働力の需給調整という派遣制度の機能を正面から認めており、業界大手が加盟する「日本人材派遣協会」の要望に沿ったものといえる。
現行法では、ずっと派遣に任せていいのは26の専門業務に限り、そのほかの業務には最長3年の上限を設けている。
「ずっと続く仕事なら、正社員にさせるべきだ。そこに派遣労働者が入って、正社員が代替されるのを防ごう」という理念が背景にあった。
報告書は、この考え方を見直し、仕事の内容による区別の撤廃を提言した。
いまや非正規雇用は、働き手の3人に1人、1800万人に及ぶ。派遣社員は約137万人で、パートやアルバイトにはない特別な規制を、派遣にだけかける意味は薄い。専門26業務の中身もあいまいになっていた。区別の撤廃自体は妥当だろう。
このあたりが「違い」がわかるかどうかですね。
その上で、朝日社説は注文をつけていきます。
・・・焦点は、派遣会社が派遣労働者をきちんと保護できるかどうか、である。
報告書は、派遣会社との契約が有期の場合、3年の派遣上限に達した働き手に対して、派遣会社に「雇用安定化措置」を講じるよう義務づける。
具体的には、(1)派遣先に直接雇ってもらうよう申し入れる(2)新しい派遣先を提供する(3)働き手との契約を無期雇用にする、のいずれかだ。
もっとも現実的なのは(2)だろうが、切れ目なく派遣先を用意し続けるには、派遣会社側に相当な努力が必要となる。
逆にいえば、派遣労働者の生活を安定させる力のない派遣会社は、ビジネスを続ける資格がないという意味でもある。
全国に8万3千近くある派遣会社のうち、かなりの数は淘汰(とうた)される可能性があるが、働き手にしわ寄せがいかない形で進めるしかない。
業界の覚悟が問われている。
CIETTのレポートなどでも示されているように、日本の派遣業界の欧米諸国と比べたときに最大の特徴は、異常なまでに事業者数が多いということなんですね。言い換えれば、「派遣労働者の生活を安定させる力のない」中小零細というにも及ばないような形だけの派遣会社が山のようにある。そういう業界関係者ならみんなわかっている問題点にもきちんと目を向けています。
今日から労政審で議論が始まることになりますが、それを伝える報道機関が少なくともこの程度の基本的な認識枠組みをもって報じていって貰わないと、あらぬ方向にミスリードすることになりかねませんので、宜しくお願いしたいところです。
基本的な勉強の素材は
http://homepage3.nifty.com/hamachan/jkoyou.html
に載せていますので、ご参考に。
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