松村文人編著『企業の枠を超えた賃金交渉』
松村文人編著、藤井浩明・木村牧郎著『企業の枠を超えた賃金交渉-日本の産業レベル労使関係』(旬報社)をお送りいただきました。貴重な研究成果をありがとうございます。
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戦後、わが国で産業レベルにおいて企業横断的に展開された主要6産業(私鉄、ビール、金属機械、繊維、石炭、海運)の賃金交渉の実相を明らかにし、企業の枠を超えて形成された労使関係の実像に迫る。
「企業内主義」と「正社員主義」を特徴とする「排他的かつ閉鎖的」な日本の労働組合が、戦後のある時期、いくつかの産別で、企業を超えた団体交渉を行ったことがあります。本書は、私鉄、炭鉱、ビール、金属、繊維、海運の6つのケーススタディから、その実態を明らかにしようとした貴重な研究です。
序章 産業レベル賃金交渉
•1.目的と課題
•2.産業レベル交渉の主な形態
•3.産業レベル交渉の成立条件
•4.産業レベル交渉の後退・終了
•5.産業別組合化論
•6.本書の構成
第1章 私鉄の産業レベル労使関係
•1.課題
•2.私鉄産業の特性
•3.産業レベル交渉当事者
•4.私鉄産業の交渉
•5.産業別単一労働組合論
•6.結論
第2章 石炭産業の労使関係
•1.課題
•2.戦後の石炭産業と労使関係の概観
•3.労使関係の展開
•4.石炭産業の団体交渉
•5.結論
第3章 ビールの産業レベル労使関係
•1.課題
•2.戦後のビール産業
•3.団体交渉当事者
•4.統一交渉(対角線交渉)
•5.単一化論−産業別組合化論
•6.結論
第4章 金属機械産業の労使関係
•1.課題と分析視角
•2.全国金属の理念・政策
•3.石川方式における統一闘争の実態
•4.石川方式を確立させた条件
•5.石川方式の衰退・終焉の過程とその要因
•6.おわりに−結論
第5章 繊維産業の労使関係
•1.課題
•2.繊維産業の概観と諸特性
•3.労使当事者
•4.繊維産業の団体交渉と展開
•5.尾西地区における地域集団交渉
•6.結論
第6章 海運業の労使関係
•1.課題
•2.戦後の団体交渉
•3.近年の団体交渉−統一交渉から個別交渉への移行
•4.交渉形態変化の要因
•5.結論−統一交渉を支える条件とは
終章 結語
•1.産業レベル賃金交渉
•2.断片的な産業レベル労使関係
•3.産業別組合化論の有名無実化
なお、松村さんによる終章では、かつて1960年代に企業別から産業別への移行を目指す産業別組合化論が構想されながら挫折したことについて、2000年代の韓国の動きと対比させて簡単に論じています。この問題提起に対して、若い研究者からの応答が望まれます。
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