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2013年7月

2013年7月31日 (水)

松村文人編著『企業の枠を超えた賃金交渉』

13224松村文人編著、藤井浩明・木村牧郎著『企業の枠を超えた賃金交渉-日本の産業レベル労使関係』(旬報社)をお送りいただきました。貴重な研究成果をありがとうございます。

http://www.junposha.com/catalog/product_info.php/products_id/853

戦後、わが国で産業レベルにおいて企業横断的に展開された主要6産業(私鉄、ビール、金属機械、繊維、石炭、海運)の賃金交渉の実相を明らかにし、企業の枠を超えて形成された労使関係の実像に迫る。

「企業内主義」と「正社員主義」を特徴とする「排他的かつ閉鎖的」な日本の労働組合が、戦後のある時期、いくつかの産別で、企業を超えた団体交渉を行ったことがあります。本書は、私鉄、炭鉱、ビール、金属、繊維、海運の6つのケーススタディから、その実態を明らかにしようとした貴重な研究です。

序章 産業レベル賃金交渉
•1.目的と課題
•2.産業レベル交渉の主な形態
•3.産業レベル交渉の成立条件
•4.産業レベル交渉の後退・終了
•5.産業別組合化論
•6.本書の構成

第1章 私鉄の産業レベル労使関係
•1.課題
•2.私鉄産業の特性
•3.産業レベル交渉当事者
•4.私鉄産業の交渉
•5.産業別単一労働組合論
•6.結論

第2章 石炭産業の労使関係
•1.課題
•2.戦後の石炭産業と労使関係の概観
•3.労使関係の展開
•4.石炭産業の団体交渉
•5.結論

第3章 ビールの産業レベル労使関係
•1.課題
•2.戦後のビール産業
•3.団体交渉当事者
•4.統一交渉(対角線交渉)
•5.単一化論−産業別組合化論
•6.結論

第4章 金属機械産業の労使関係
•1.課題と分析視角
•2.全国金属の理念・政策
•3.石川方式における統一闘争の実態
•4.石川方式を確立させた条件
•5.石川方式の衰退・終焉の過程とその要因
•6.おわりに−結論

第5章 繊維産業の労使関係
•1.課題
•2.繊維産業の概観と諸特性
•3.労使当事者
•4.繊維産業の団体交渉と展開
•5.尾西地区における地域集団交渉
•6.結論

第6章 海運業の労使関係
•1.課題
•2.戦後の団体交渉
•3.近年の団体交渉−統一交渉から個別交渉への移行
•4.交渉形態変化の要因
•5.結論−統一交渉を支える条件とは

終章 結語
•1.産業レベル賃金交渉
•2.断片的な産業レベル労使関係
•3.産業別組合化論の有名無実化

なお、松村さんによる終章では、かつて1960年代に企業別から産業別への移行を目指す産業別組合化論が構想されながら挫折したことについて、2000年代の韓国の動きと対比させて簡単に論じています。この問題提起に対して、若い研究者からの応答が望まれます。

2013年7月30日 (火)

様々な雇用形態にある者を含む労働者全体の意見集約のための集団的労使関係法制に関する研究会報告書

本日、「様々な雇用形態にある者を含む労働者全体の意見集約のための集団的労使関係法制に関する研究会」の報告書が公表されました。

プレス資料から:

http://www.jil.go.jp/press/documents/20130730.pdf

近年、経済のグローバル化やサービス経済化、IT化の進展等を背景として、産業構造の変化が進む一方で、労働組合の組織率の低下が一段と進み、18%を割り込むまでに至った。そうした状況とともに、労働組合への加入率が特に低い有期契約労働者、パートタイム労働者、派遣労働者等の非正規労働者が増加している。

このような経済社会情勢の変化や非正規労働者の増加に伴い、職場の労働者は多様化している。伝統的労働法モデルは、労働基準法等の労働保護法により労働条件の最低基準を設定し、最低基準を上回る労働条件については労働組合による団体交渉を通じた労働協約により設定することを予定してきたが、こうしたモデルは、労働組合組織率の低下や労働者の多様化によって、十分に機能しなくなってきている。

また、正規労働者と非正規労働者との処遇格差が指摘されるようになって久しい。非正規労働者の処遇問題の解決に当たっては、正規労働者と非正規労働者双方の利害を適切に調整するための、集団的な労働条件設定システムの再検討が求められている

以上のような問題意識の下、平成23 年11 月から「様々な雇用形態にある者を含む労働者全体の意見集約のための集団的労使関係法制に関する研究会」を開催してきたところである。

今般、同研究会の報告書が取りまとめられたので公表する。

報告書のポイントは次の通り。

○ 労使協議の形骸化、労働組合の組織率の低下、多様な雇用形態の労働者の増加、個別労働紛争の増加、過半数代表の役割・権限の拡大などの労使関係の変化により、企業別労働組合は様々な課題に直面。とりわけ、企業別労働組合が有効に機能してきたはずの企業・事業所レベルの労使関係において、多様化する労働者の声を十分に反映し得ていないとすれば、改めて集団的発言チャネルの今後のあり方を検討する必要。

○ 過半数代表者に関する制度上の懸念から、喫緊に取り組むべき課題は、法定基準の解除を担う集団的発言チャネルの整備である。そこで、新たな従業員代表制の構想も視野に入れながら、法定基準の解除機能の担い手の実質化を図る観点から、課題とその解決のための方向性について検討。

○ 今後も、労働組合が集団的労使関係において団体交渉を通じて労働条件設定における中核的役割を担うべきであることが基本スタンス。その上で、次の2つのシナリオを念頭に考察。
① 現行の過半数代表制の枠組みを維持しつつ、過半数労働組合や過半数代表者の機能の強化を図る方策
② 新たな従業員代表制を整備し、法定基準の解除機能等を担わせる方策

まずは過半数代表者の複数化・常設化等を図った上で、それが日本の労使関係の中でどのように役割を果たすかを検証しながら、新たな従業員代表制の整備の必要性を検討することが適当

過半数代表者の機能強化により、全従業員のために苦情処理機能を担うようになれば、非正規労働者等の不満や苦情の受け皿としての役割を果たすこととなる。正規労働者と非正規労働者の処遇格差に対して、分権化した労使レベルで問題を解決することが可能となる

○ 今回提案した取組により、我が国の集団的発言チャネルが今後どのように発展していくのか等を見据えながら、集団的発言チャネルの労働条件設定機能を高めるための方策について引き続き検討していくことが必要。

報告書本文はこちらです。

http://www.jil.go.jp/press/documents/20130730/report.pdf

なお、研究会の委員は次の通りで、

座長:荒木 尚志 東京大学大学院法学政治学研究科教授
呉 学殊(独)労働政策研究・研修機構労使関係部門 主任研究員
神吉 知郁子 ブリティッシュコロンビア大学 客員研究員
竹内(奥野)寿 早稲田大学法学学術院准教授
橋本 陽子 学習院大学法学部教授
濱口 桂一郎 (独)労働政策研究・研修機構 客員研究員
久本 憲夫 京都大学大学院経済学研究科教授
本庄 淳志 静岡大学人文社会科学部法学科准教授
水町 勇一郎 東京大学社会科学研究所教授
両角 道代 明治学院大学法学部教授
山川 隆一 東京大学大学院法学政治学研究科教授

座長の荒木先生がアメリカに行ってしまう直前に何とか出せましたね。

と、これを見て気がつきましたが、神吉さんがまだカナダにいることになってますな。現在帰国して立教大学法学部准教授になられてますので、直しておかなければいけなかったのに、うっかりしてた。

(追記)

神吉さんは、7月末日までは「ブリティッシュコロンビア大学 客員研究員」なのだそうなので、間違いではないようです。

ただ、既に立教大学法学部のサイトにも<2013年度後期着任>として載っています。

http://www.rikkyo.ac.jp/law/faculty/introduction.html

今野晴貴・常見陽平『IT企業という怪物』

Isbn9784575154153今野晴貴・常見陽平『IT企業という怪物 組織が人を食い潰すとき』(双葉新書)をお送り頂きました.有り難うございます。

http://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-15415-3.html?c=70100&o=name&

「剥き出しの資本主義」が横行するIT企業。正社員、採用担当、ノマド……走り続けるIT労働者たちに、未来はあるのか!? 「ブラック企業」批判の旗手・今野晴貴と、採用担当の裏側まで知り尽くした人材コンサルタント・常見陽平による共著。巻末にはスペシャル対談も収録。

IT業界論としても興味深い話がいっぱいですが、本書のメッセージをまとめると、最後の対談のこのあたりになるのかも知れません。

今野 今までの話を全部まとめて、私が思う一番大事なポイントを言うと、「現実を見失うな」ということ。ほどほどに、身の丈に合った現実を見失わずに生き抜こうよということです。

常見 とてもエリートな話か、とてもかわいそうな人を前提に世の中は回って行きがちです。極端なエリート論にもかわいそう論にも走らず、普通のサラリーマンの普通の暮らしをそれぞれも人が直視するべきなんですよね。・・・

目次は:

第1章 未来の芽を摘む「IT労働」(「剥き出しの資本主義」が跋扈する/ 底なしの長時間労働 ほか)/

第2章 IT業界のジレンマ(IT業界とは何か?/ 数字で見るIT業界 ほか)/

第3章 過労死を生み出す「ノマドワーキング」(希望は独立/ ノマドは「下流」だ ほか)

第4章 踊らされる「意識高いIT系」(ブームに踊る「意識高い系」/ パソコン通信時代から変わらない ほか)/

第5章 「スーパーエリート」以外の大多数は、どうすれば生き抜けるのか(まず目の前の仕事をしろ/ Fランク大卒→飲食店長は大逆転物語 ほか)

2013年7月29日 (月)

難波克行『職場のメンタルヘルス入門』

112893難波克行『職場のメンタルヘルス入門』(日経文庫)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.nikkeibook.com/book_detail/11289/

「最近元気がない」「遅刻や欠勤が増えた」……部下や同僚の“いつもと違う”様子は、メンタルヘルスの不調が原因かもしれない。職場でのメンタルヘルス不調にどう対応するか、気をつけるべき点を具体的に解説する。

という実務書です。

第1章  職場のメンタルヘルス不調

第2章 メンタルヘルス不調を防ぐストレス対策

第3章 職場で取り組むメンタルヘルス対策

第4章 メンタルヘルス不調者の早期発見・早期対応

第5章 メンタルヘルス不調者への対応と復職支援

2013年7月28日 (日)

塙和也『自民党と公務員制度改革』

08315l塙和也『自民党と公務員制度改革』(白水社)をお送り頂きました。有り難うございます。

http://www.hakusuisha.co.jp/detail/index.php?pro_id=08315

秋葉原事件やリーマン・ショックに揺れた2008年――。戦後政治と向き合った福田康夫、麻生太郎、渡辺喜美、甘利明の「総合調整」を巡る戦いを、綿密な取材で浮かび上がらせる。

著者は新聞記者ですが、書かれている時代は少し前の自公政権末期で、同時代ジャーナリズムよりは少しばかり歴史的考察の入った感じの記述になっていて、その後の民主党政権の有様の顛末を見た上で改めて本書を通読すると、対象となっている時代に同時代的に見られていた姿とはまた違う相貌が浮かび上がってくるという、なかなか興味深い作りの本です。

政界、財界、労働界が挑んだ迷宮
「福田政権が続いていればな……」。政治部記者が集まれば、大体そんな話になる。55年体制下、入念に練り上げられた日本の統治システムは、2009年の政権交代の一年前、福田内閣の突然の退陣で跡形もなく崩壊してしまった──。冒頭の嘆き節は、そうした歴史観を踏まえたものだ。
たしかに福田政権では政策が着実に具体化した。最大派閥の領袖、町村信孝を官房長官に据える一方、渡辺喜美ら急進派を巧みに閣内に取り込む。党に目を転じても、小泉改革継続を訴える中川秀直はじめ改革急進派もまだ威勢がよく、そこには複雑に絡み合う利害を調整する、まさに「包括政党」自民党の最後の姿があった。
本書は、そんな福田政権の最大の果実となり、後継の麻生政権で迷走していく公務員制度改革に焦点を当てながら、政治について改めて考え直す試みである。
公務員改革をめぐる永田町と霞が関、財界と労働界の攻防の中で、最高権力者たちは、大正デモクラシー期の政治任用やGHQによる労働基本権の剥奪など、迷宮のように入り組んだ公務員制度に嵌まり込んでいく。
一方、秋葉原事件やリーマン・ショックに象徴されるように、政治家に決断を迫る社会は激しく動揺していた。
〈歴史〉と〈社会〉という視角を導入することで、ジャーナリズムとアカデミズムを架橋する新たな政治ノンフィクション!

目次は次の通りです。

 序章   三年坂
 第一章  日暮里
 第二章  修正協議
 第三章  10森
 第四章  投げ出し
 第五章  内閣人事局
 第六章  人事院
 第七章  離党と政令
 第八章  格付
 第九章  公務員政局
 第十章  十二兆円
 第十一章 幻の法律案
 終章   厚労省大臣室

 あとがき/参考文献/資料集

著者とは全く面識もなく、どういうご趣旨でお送り頂いたのかもわかりませんが(わたくしが公務員労働法制について若干ものを書いたりしているからでしょうか)、今日一日大変面白い読書をさせて頂きました。改めて有り難うございました。

2013年7月25日 (木)

乾彰夫編『高卒5年 どう生き、これからどう生きるのか』

114629乾彰夫編『高卒5年 どう生き、これからどう生きるのか』(大月書店)をお送り頂きました。有り難うございます。

http://www.otsukishoten.co.jp/book/b114629.html

学生生活や就職の悩み、労働の過酷化と離転職、家族との葛藤、そしてコミュニティの支え…。高校3年の秋から卒業5年目まで、7年におよぶ追跡調査をもとに、大都市で懸命に生きる若者たちの成長過程とその意味を描く。

多摩地区の中位校A高校と下町の底辺校B高校の、高校生時代から高卒就職した人、大学や専門学校を経て就職した人、非正規労働や性的サービス労働に入っていった人など、さまざまな人生模様の中から、「学校から仕事への移行」だけでなく「大人へのなり方」の種々相を描き出す長期研究の最終報告です。

序 章 若者たちの移行に寄り添う(乾彰夫)
第1章 「大人になること」について(木戸口正宏)
第2章 アイデンティティ形成における職業的な教育・研修プログラムの機能──正規雇用就職者の仕事をめぐる展望に着目して(船山万里子)
第3章 若年女性と性的サービス労働(杉田真衣)
第4章 家族を支える女性たち──若者の移行とケアワーク(宮島 基)
第5章 男性のジェンダー/セクシュアリティ意識と進路選択・将来展望(渡辺大輔)
第6章 ネットワーク形成・維持の基盤(藤井[南出]吉祥)
第7章 若者は大学生活で何を得たのか?──大学生活の構造とその意義(児島功和)
第8章 調査におけるインタビュアーと調査対象者のかかわり(上間陽子)
第9章 データの収集・分析のプロセスと本調査の方法的特徴(中村[新井]清二)
終 章 若者たちの七年の成長と自信(乾彰夫)

若者労働論からはやはり第2章がいろんな意味で興味深いですね。

2013年7月24日 (水)

Addressing the Problems with Japan’s Peculiar Employment System

先日、nippon.comに「「ジョブ型正社員」と日本型雇用システム」という記事を寄稿しましたが

http://www.nippon.com/ja/currents/d00088/

その英語版がアップされました。

http://www.nippon.com/en/currents/d00088/

Addressing the Problems with Japan’s Peculiar Employment System

Japanese companies have cut back sharply on their recruitment of regular employees to be permanent members of their organizations, forcing many people to rely on nonregular employment. An expert on labor policy calls for the introduction of a job-based system of regular employment, distinct from the existing membership-based system, which is seen only in Japan.

The problems with employment and labor in today’s Japan—the peculiar way in which university students hunt for jobs, the poor work-life balance among regular employees, and the difficult circumstances faced by nonregular workers—can all be attributed to the unusual nature of the Japanese employment system.

A “Membership-Based” Model of Regular Employment

The Sharp Rise in Nonregular Employment

From Membership-Based to Job-Based Employee Status

The Membership-Based Model Allows Abuses by “Black Companies

2013年7月23日 (火)

大竹文雄・川口大司・鶴光太郎編著『最低賃金改革』

06257大竹文雄・川口大司・鶴光太郎編著『最低賃金改革 日本の働き方をいかに変えるか』(日本評論社)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

http://www.nippyo.co.jp/book/6257.html

鶴光太郎さんを中心とする経済産業研究所(RIETI)の研究シリーズの第4弾で、今回は最低賃金がテーマですね。

最低賃金は未熟練労働者、特に最低賃金水準の労働者の雇用に対してどのような影響を与えるか? 最低賃金政策の理論・実証研究。

おりしも再び(正確にはみたび)最低賃金引き上げが政治課題として浮上し、最賃審で大臣が引き上げを呼びかけるという状況下にあって、なかなか時宜に適した出版です。

第1章 最低賃金の労働市場・経済への影響―諸外国の研究から得られる鳥瞰図的な視点

第2章 最低賃金と若年雇用―2007年最低賃金法改正の影響

第3章 最低賃金が企業の資源配分の効率性に与える影響

第4章 最低賃金と地域間格差―実質賃金と企業収益の分析

第5章 最低賃金と労働者の「やる気」―経済実験によるアプローチ

第6章 最低賃金の決定過程と生活保護基準の検証

第7章 最低賃金と貧困対策


2013年7月22日 (月)

中山慈夫『就業規則モデル条文 第3版』

M0464712201_2経営法曹の中山慈夫さんから『就業規則モデル条文 第3版』(経団連出版)をお送り頂きました。いつも有り難うございます。

http://www.keidanren-jigyoservice.or.jp/public/book/index.php?mode=show&seq=281&fl=

企業実務の立場から、就業規則の作成手続きと効力に関するルールを説き、必要不可欠と思われるモデル条文を掲げて、その意味と現在の労働法令上の根拠を示し、あわせて職場で生じやすい問題について判例をもとに解説しました。各条文の「基本的な考え方」に加え、条文の運用上問題となりやすい事項を「チェックポイント」「問題点」として詳述しました。第3版は、改正労働契約法、改正高齢法をふまえて改訂し、無期転換社員対応の条文例などを加えました。


2013年7月19日 (金)

宮本太郎『社会的包摂の政治学』

110787宮本太郎さんから新著『社会的包摂の政治学』(ミネルヴァ書房)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

http://www.minervashobo.co.jp/book/b110787.html

社会的包摂はなぜ浮上したか。どのような政策から成り、生活困窮が広がる日本の現実をいかに変えうるか。福祉レジーム論、比較政治学、社会的企業論、ガバナンス理論などの成果を広範に動員し、アクティベーション、ワークフェア、ベーシックインカムの対抗のなかから、新しい包摂型社会のかたちを展望する。

[ここがポイント]
◎ 政策論議にかかわった著者による社会的包摂研究の集大成
◎ アクティベーション、ワークフェア、ベーシック・インカムによって新しい社会のかたちをデザインする

ということで、主として2000年代後半になって、自公政権末期から民主党政権へ、そして再び自公政権へという政治の流れの中で、一貫して主張し、かつ現実政治の中に関わりながら実現を図ってきた「社会的包摂」の政治を、既発表論文をベースに再構成してまとめられたものです。

序 章 社会的包摂の政治学

 第Ⅰ部 三つの包摂戦略
第1章 社会的包摂をめぐる政治対抗
第2章 社会的包摂の方法・場・組織
第3章 ベーシックインカム資本主義の三つの世界

 第Ⅱ部 排除と包摂の政治
第4章 福祉レジームと社会的包摂
第5章 日本の労働変容と包摂の政治
第6章 新しい右翼と排除の政治
第7章 包摂型改革と言説政治 

 第Ⅲ部 包摂型社会のデザイン
第8章 福祉ガバナンス
第9章 社会的包摂とEUのガバナンス
第10章 グリーンな社会的包摂は可能か

終 章 自立と承認をめぐる政治

こういう時期だからこそ、じっくりと読まれるべき本の筆頭と言うべきでしょう。

ちなみに、inclusionを「包摂」と訳すのは少なくとも社会政策方面ではかなり定着してきたように思いますが、最近訳書が刊行されたアセモグルらの『国家はなぜ衰退するのか』では、inclusiveを「包括的」といういささかピント外れな訳語にしてしまっているように、その他の分野ではいまだに全然定着していないようですね。

2013年7月17日 (水)

OECD『雇用見通し2013年版』

Oecdemploymentoutlook2013_empl_outlOECDの『Employment Outlook 2013』(『雇用見通し2013年版』)が昨日公表されました。

http://www.oecd.org/employment/oecdemploymentoutlook.htm

日本語による資料はこちら:

http://www.oecdtokyo.org/theme/emp/2013/20130716EmploymentOutlook2013.html

OECD諸国の失業率は2014年にかけて高水準の状態が続き、それは若者と低技能労働者に最も深刻な影響を及ぼすと、OECDの新報告書、「雇用アウトルック2013」は述べています。

不安定な短期契約の職に就いている人々、特に若者と低技能労働者は、経済危機が起きたときに真っ先に解雇され、新しい職を見つけるにも苦労しました。

高齢労働者は、それらの人々よりはうまく経済危機を乗り切っており、その就業率は高くなったか、下がってもごくわずかでした。 多くの高齢者が、健康状態が良好であること、早期退職制度が利用できなくなった、また財政上の問題など、様々な理由で退職時期を遅らせています。 本書に掲載されている新たな証拠によると、これによって若者が犠牲になることはありません。 早期退職制度の復活または障害者雇用ルールまたは高齢労働者への失業給付の緩和はコストのかかる失策であるとOECDは述べています。

政府は様々なマクロ経済政策と構造改革を組み合わせて雇用危機に取り組み、経済成長を強化し雇用創出を促すべきです。 ここ数年、ギリシャ、イタリア、メキシコ、ポルトガル、スペインを含むいくつかの国が、一時契約の労働者と常雇用の労働者との雇用保障の格差を減らそうと、意欲的な改革に取り組むようになりました。 これらの改革は、もし完全に実施されれば、もっと多くの人を受け入れられる労働市場と生産性の拡大につながる資源のより良い配分を促すことになります。

経済危機の間長期にわたって失業状態にあった人々で、失業給付を受ける資格を失い、もっと条件の厳しい社会扶助を頼らざるを得ない人が増えています。 最低所得給付は、特に長期失業率が高い場合には、困窮する家庭を支援するべく強化する必要があるかも知れません。

ちなみに、中身はすべて下のビューアから読めます。

  OECD Employment Outlook 2013 | OECD Free preview | Powered by Keepeek Digital Asset Management Solution

2013年7月12日 (金)

北岡大介「精神障害の労災認定と企業の実務対応」

4890170081北岡大介さんから『精神障害の労災認定と企業の実務対応』(日本リーダーズ協会)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://kitasharo.blogspot.jp/2013/07/blog-post.html

ご自分のブログでも、

6冊目の本(共著、編集協力含む)になりますが、やはり新著が刷り上がると嬉しいものです(笑)。特に本書は一貫して研究・実践を重ねてきた労災認定・労働安全衛生問題に関する最初の著書であり、感慨深いものがあります。

と感慨深げに語られていますね。

本書は、精神障害の労災認定問題を取り上げ、認定基準の実際とメンタル不調の予防策、労災申請後の企業対応まで幅広く解説するものです。同労災認定基準は極めて複雑・難解ですが、本書の特徴としては、まず「慢性的な長時間労働」、「急激な仕事量の増加」、「配転」、「新規事業の担当」、「パワハラ」など豊富に事例紹介を行い、労災認定基準の実際と予防対策を簡潔明瞭に解説する点にあります。また企業側の視点から、労災補償給付申請書における会社証明欄への対応、労基署調査対応などの実践的な解説を行っています。精神障害の労災認定件数が急増(平成24年度前年比150件増)する中、ぜひ本書をご参考にしていただければ幸いです。

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