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2013年6月 4日 (火)

ジョブ型正社員が(貴様ぁ)解雇しやすいなんてのは大嘘

間違った認識のマスコミ報道が、その認識に基づいた間違った理解を生み出し、それに対してまっとうな現実認識を持った人が、元々の議論に対してとんでもなく的の外れた批判をしてしまう・・・という奇怪な事態が、ジョブ型正社員構想をめぐって起こっていることを、この冷泉彰彦さんの文章ほど見事に浮き彫りにしているものはないように思われます。

http://www.newsweekjapan.jp/reizei/2013/06/post-563.php(「限定正社員」構想の議論、欧米では一般的だというのは大ウソ)

もちろん、冷泉さんは、職務や勤務地、労働時間が限定された労働者が欧米で一般的だということを否定しているわけではありません。

冷泉さんがウソだと言っているのは、元々のジョブ型正社員の議論とは全く逆のインチキな議論、すなわち、ジョブ型正社員は好き放題にクビにできるかのごとき議論です。

ですが、解雇に関しては「管理職や専門職は簡単に解雇される」一方で「一般職の雇用は組合や雇用契約で守られている」のです。勿論、一般職も事業所の閉鎖などの場合は、現状の日本の法制よりは解雇される可能性は高いと思います。ですが、高給な管理職や専門職よりも、一般職が「簡単に切られる」とか「景気変動や人材流動化の対象」になるなどということは「ない」のです。

ちょっとこの言い方も雑で、ノンエリート労働者は基本的にリストラの際にはセニョリティルールに従って順番にレイオフされるのが普通ですから、景気変動の対象にはなるのです。ただ、最近のマスコミ報道がそもそもジョブ型正社員とは何かという根本認識を完全に無視して、単に解雇しやすいということしか書かないために、それを読んだ冷泉さんが「簡単に切られる」なんてウソだと言いたくなるのは当然でしょう。

とにかく「管理職や専門職より低位の正社員」の方が「より解雇されやすい」などという制度は欧米にはありません。アメリカには少なくともないし、EUの場合は更に雇用を守る法制になっていると思います。この点で「解雇しやすい限定正社員制度」なるものが「欧米では一般的」などというのは大ウソです。

何でこんな訳の分からない話になってしまうのかというと、結局本来雇用契約の基盤であるジョブ自体がなくなった場合の話をしていたはずなのに、あたかもジョブ型正社員であれば仕事がちゃんとありその仕事をちゃんとやっていても貴様ぁ解雇がやりたい放題にできるかのごとき完全に間違った印象を、マスコミ報道が与え続けたからではないのでしょうかね。

もちろん、政府のいろんな会議の委員諸氏が、何かというと(ジョブレス解雇ではなく)貴様ぁ解雇がやりたくて仕方がないという風なことを繰り返し語っているからでもあり、マスコミはそれをそのまま報じているからでもありますが。

ここまで歪みきってしまったジョブ型正社員の理解を、どうやったらまともに戻せるのか、ほとほと徒労感がにじみ出てきますな。

こういう間違った認識のままジョブ型正社員の議論が進められるととんでもない方向に暴走しかねないので、1年くらい冷却期間をおいた方がいいかもしれません。下手にスピード感なんか持たずに・・・。

本来のジョブ型正社員については、こういうのをちゃんと読んでください。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/sekaikaiko.html(「労使双方が納得する」解雇規制とは何か──解雇規制緩和論の正しい論じ方(『世界』2013年5月号)

(参考)

sumiyoshi_49さんの冷静な評言

https://twitter.com/sumiyoshi_49/status/342041538924261376

左翼の人たちが濱口氏のジョブ型正社員論を口汚く批判したのは、それを日本に導入した場合の政治的帰結を直感的に予想していた点では間違ってなかったのかもしれない。

ついでに、

https://twitter.com/tucan/status/342263039707459584

「ジョブ型」っていう呼称は、濱口先生の定義づけが参考にされているのかなあ。だとしたら、濱口先生はどんな思いで今の状況をみているんだろうか。

でもね、ちょうど2か月前に、ちゃんとこういうことを言ってたんですよ、わたしは。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/post-02ac.html(ジョブ型雇用システムをまったく理解していない解雇自由派)

昨今の解雇規制をめぐる議論がぐちゃぐちゃになる一つの理由は、左派がメンバーシップ型感覚にどっぷりつかってジョブ型システムをまったく理解していないということもありますが、それ以上に事態を悲惨なものにしているのは、自分では欧米型を主張しているつもり(あくまでも「つもり」)の連中が、実は極めて日本的な「貴様ぁ解雇」「この無能野郎解雇」を意識的無意識的に前提にしていることでしょう。

ある種の人々は、なにかというと無能な中高年をクビにして云々というけれども、そもそも明確なジョブディスクリプションのない日本だから、そういう言葉だけの無能呼ばわりができるのであって、仕事のスペックを明確にして雇っている世界であれば、それができていないということをきちんと立証しなければいけないのですよ。

実際、成果主義でなんぼの特殊なエリートの世界を別にすれば、普通の労働者が能力を理由に解雇できるのは、傷病や障害で職業能力を喪失した場合とか、できると思って雇ってみたけど、全然できなかったという雇用当初の時期くらいでしょう。そのために試用期間というのがあるわけですね。

これを裏からいえば、「これができる」で採用して、ずっと雇用し続けてきているということは、それができると認め続けてきているわけで、中高年になって急に無能になったなんて理屈は通るはずがない。いうまでもなく、中高年になっても同じ仕事のベテランになるだけで、管理職にならないのがデフォルトだからですが。

そういう雇用システムの違いをまったく理解しないまま(あるいはうすうすわかっていながらあえて無視して)、一方的なデマを飛ばし続ける人々は何なんだろうか、と思わざるを得ません。

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コメント

自由に自主退職できるようにして、不利にならないようにするのが経済を一番活性化させる。それと、副業の自由も保障して、残業して所得を増やすのでなく、定時労働をして、外部で収入を得られるようにした方がいい。こうすることで、適材適所になって、経済全体にもいい。

雇用が政治になっているかぎり、なにをやっても無駄。雇用は経済分野。日本が、政治で利益をだすことに専念している限り、沈み行く日本ってことです。だいたい、金儲けに忠誠心っておかしいでしょ。忠誠というのはまやかしの言葉で、実質、奴隷雇用をしたいだけ。

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