毎日新聞のまっとうな社説 on ジョブ型正社員
毎日新聞の社説が、誤解にまみれたジョブ型正社員について、極めてまっとうな社説を書いています。
http://mainichi.jp/opinion/news/20130606k0000m070116000c.html(正社員改革 多様な働き方への課題)
雇用には問題が多い。給料が低く生活が不安定な非正規雇用が増え、若い世代が結婚や子育てできない原因になっている。その一方で長時間労働を強いられ疲弊している正社員は多い。経営側にとっては解雇規制が厳しいため非正規雇用を増やさざるを得ず、その分正社員がしわ寄せを受けているという構図だ。
正社員か非正規かという硬直した現状を変えるため、政府の規制改革会議が打ち出したのが「限定正社員(ジョブ型正社員)」だ。何を「限定」するのかと言うと、勤務地や労働時間や職務の内容だ。日本の雇用制度は一般的に人事権の裁量が広く認められ、いったん正社員として採用すると勤務地も仕事の内容も量も会社側が決められる。合理的な理由があれば賃金や退職金の変更もできる。その代わり労働者は安易に解雇されないよう守られている。
「限定正社員」は会社側の人事権の裁量を小さくする一方で解雇規制を一部緩めるもので、諸外国の雇用制度はむしろこちらに近い。国内でも流通業などでは既に導入しているが明確なルールはない。職務を限定し、その職務がなくなれば解雇できることにして非正規雇用から正社員への転換を企業に促すねらいがある。正社員の中にも自分に合った仕事を決められた勤務時間だけ行うことを望む人は多いかもしれない。子育てが必要な期間は勤務時間を限定したり、親の介護が必要な場合には勤務先を選べたりすることで離職せずにすむ人も大勢出てくるだろう。
限られた職務に専念できることで自らの専門性を高め、それを客観的に評価する仕組みを労働市場に作ることができれば、雇用の流動性を高めることにもつながる。より付加価値の高い商品やサービスを開発するためには、なんでも広く薄くできる社員がたくさんいるよりも、職務や分野ごとに専門性の高い社員がいることを求める企業は増えていくのではないか。
もちろん、懸念がないわけではない。安易な解雇や賃金カットに利用され、職場での差別がはびこることを心配する声は多い。職務に着目した雇用制度を整備することが目的であり、現に職務があるのに解雇するようなことは許してはならない。
生活を大事にしながら多様で柔軟な働き方を実現するためには、労働者側の意向を尊重した仕組みが必要だ。子育てや介護をしている期間は限定正社員となり、それが一段落したら正社員に戻れるような柔軟な運用も可能にすべきだ。職務の内容や能力に応じた人事・処遇制度は経営者にも労働者にも恩恵をもたらすものでなくてはならない。緻密な制度設計と労使の信頼が必要だ。
ジョブレス解雇と貴様ぁ解雇を意識的無意識的にごっちゃにして、「現に職務があるのに解雇する」話に仕立て上げられないように、マスコミの皆さんの責任は重大です。
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