『新福祉国家構想3 失業・半失業者が暮らせる制度の構築』
後藤道夫・布川日佐史・福祉国家構想研究会編『新福祉国家構想3 失業・半失業者が暮らせる制度の構築』(大月書店)をお送りいただきました。ありがとうございます。
http://www.otsukishoten.co.jp/book/b109664.html
日本の失業時保障の貧困を徹底批判。雇用保険制度の抜本改正と「求職者保障制度」の新設など、労働者の総合的な生活保障を提示。
労働市場のセーフティネットとしての雇用保険を中心に、求職者支援制度、ハローワーク、さらには住宅等の社会保障のあり方をラディカルに考察し、あるべき姿を示そうとした本です。
序章 高失業社会の到来
第1章 みえる失業・みえない失業――その歴史・現状と政策の課題
第2章 漏れのない失業時保障
補論1 ハローワークの現状と改編の課題
補論2 雇用労働政策と公的扶助の交錯-ドイツの事例から
第3章 失業時・勤労時の生活を支えるシステム――労働、居住、社会サービス、所得
第4章 近年の半失業と失業時保障
終章 社会保障のすき間の拡大を許さないために
後藤さんも布川さんも何回かお目にかかってお話ししたこともあり、その論ずるところには同感するところが多くあります。
とともに、これは90年代以来のアクティベーション型のEUの労働社会政策に影響されているためなのでしょうが、彼らの議論がややもすると働かないことを推奨してしまうのではないか、という疑念も沸いてくる面もあります。
もちろん、長期失業者がかつてなく増加している今の日本では、モラルハザード効果よりもセーフティネット機能の不足の方が極めて重大であるという認識には賛成です。ただ、トータルのバランスをどう取るかは、なかなか難しいところではないかな、という思いもあるわけです。
本書で指摘されている離職理由が解雇・倒産等の者とそうでない者との差の付け方に問題があるというのは、もう一度きちんと議論し直してみる値打ちがあるように思われます。
近年の生活保護に対する厳しい社会状況を考えると、労働市場の側のセーフティネットにもう一段の拡充が求められることになるのかもしれません。この分野については、3年前に『労働市場のセーフティネット』という労働政策レポートをまとめたことがありますが、
http://www.jil.go.jp/institute/rodo/2010/documents/007.pdf
その冒頭で述べたセーフティネット機能とモラルハザードのバランスをどの辺でとっていくかというのは、永遠の課題なのでしょう。
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コメント
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本体2,200円+税ということですから、購入して読んでみたいと思います。
「~半失業者が暮らせる~」というお題、グッとくる感じで、小生(小生の業界、みんな半失業状態なので)のような、雇用契約を結んでいても、細切れや、日々雇用に近い働き方の職能型(←自称ですけど)労働者は多い筈。しかも建設工事と違って、舞台の場合だと、1日か2日、長くとも数日そこいら(まあ、1か月公演なんてのも、たまにありますが、それでも現地ランクの労働者は公演初日を迎えるまでの数日や、バラシ作業がある千秋楽日だけ)。
登録型派遣ならぬ、登録型日雇い、でも何故か「1年間とかの雇用期間があることになっていて、日給月給制で、シフトされない日が休日扱い。事後にそうなっているわけです。当然法定休日を上回っているので、法的には問題ないとされています。しかし、これでは食っていけないので、他に同じように実質登録型の有期雇用契約とやらを数社と結ぶ。同じように、シフトされない日が所定休日とな!。事前に判らないのに・・・トホホ。
このような、常に雇用の調整弁になっている「トホホ労働者」に、どのような制度が構築され得るのか、書いてあると良いのですが!。
投稿: endou | 2013年5月 2日 (木) 12時05分