上林陽治『非正規公務員という問題』
昨年『非正規公務員』(日本評論社)を出された上林陽治さんが、そのより一般向けのバージョンということで、岩波からブックレットとして『非正規公務員という問題』を出され、わたくしにもお送りいただきました。ありがとうございます。
http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/2708690/top.html
労働規制緩和の波のなか,ムダの象徴として公務員の数の多さがしばしば槍玉に挙がります.しかし,安定した職種だというイメージが強い地方公務員の,実に3人に1人が今や非正規の職員だということをご存じでしょうか(2012年自治労調査).総務省の2005年の調査では,非正規公務員の割合は約15%でしたので,その数は急激かつ確実に増えていることになります.非正規で働く公務員は,保育士や図書館職員,公立学校の教師やハローワークの相談員など,幅広い職種にわたります.
非正規公務員が増えた背景には,正規公務員の減員,地方財政の逼迫,そして,それと裏腹に増加する行政サービスへの需要があります.その処遇は,フルタイムで1年間働いたとしても,ワーキングプアのボーダーラインである年収200万円に届かない人がほとんどです.しかも,1回の任用期間は大半が1年以内で,任用回数の上限を定めている自治体も多いというのが現状です.
市民の日常を支える地方公務員が不安定な労働環境におかれている実態を伝え,課題を明らかにします.
前著の時に紹介で書いたことに特に付け加えることはなく、今こそ是非読まれるべき内容です。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/post-a1a9.html(上林陽治『非正規公務員』)
実は偶々昨日、某所で公務員労働法制について講演する機会があり、一般労働法の世界では集団法は閑古鳥が鳴いて個別法ばかり人気があるのに(まあ、それも問題ですが)、なぜか公務員法制は集団的労働法の改正ばかりが政治課題になったりつぶれたりで、一番肝心な個別労働関係の根幹に関わる部分が等閑視されているのはおかしいんじゃないですか?みたいなことを喋ってきたばかりなんですね。
なお上林さんは来月刊行される『季刊労働法』の次号に、「非正規公務員と改正労働契約法の適用問題」という論文を書かれているそうです。
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