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2013年5月27日 (月)

三者構成原則について復習用テキストいくつか

政治家の発言に対しては、既に政治家になった黒川滋さんが適切にされているので、そちらにお任せし、

http://kurokawashigeru.air-nifty.com/blog/2013/05/527-38fe.html(政労使三者協議は共産主義という細野幹事長の問題)

民主党の細野幹事長が、安倍政権が構想している政労使三者構成による労働政策の合意形成の場を、「共産主義的」と抗議したらしい。

まったく認識不足としかいいようがない。

北欧や西欧では、労働政策や社会保障政策制度の変更にあたっては、政府・労働組合・使用者団体の三者による協議で運営するのが当たり前であり、日本ではそれが十分に機能しないために、生活に困る人がいきなり生活保護や最低賃金のような限界の制度のお世話にならなくてはならない社会になってしまっています。

安倍政権の魂胆があまりしっかりしていないのは確かですが、しかしだからと言って「共産主義的」と全然的外れな非難するのはどうかと思います。政労使三者の合意形成のシステムは、「共産主義」に批判的な北欧や西欧の労働組合が、政治参加を通じてかちとってきたものです。

民主党の最大の応援団である連合としても、こうした反応の仕方しかしない民主党に対して、厳しい抗議を申し入れるべきでありましょうし、それが叶えられないなら次の参議院選挙では、象徴的な選挙区で自民党支持に切り替えるぐらいの厳しい姿勢が必要ではないかと思います。

連合がどうされるかは連合のご判断ですが、何をするにしてもまず何よりも現代先進世界における労働政策のコモンセンスである三者構成原則についてきちんと理解することが必要となります。

実を言えば、2006年から2008年にかけての時期、一部経済学者や規制改革サイドから三者構成原則に対する攻撃が猛烈になされ、私もそれに対して三者構成原則を擁護する論陣を張っていたことがあります。当時の言説からいくつか取り出してみますと、

http://homepage3.nifty.com/hamachan/rippougaku.html(日本学術会議立法学シンポジウム報告「労働法学の観点から(2007年9月1日))

http://homepage3.nifty.com/hamachan/bigbangkouen.html(労働ビッグバンを解読する(講演録)(『労働調査』2007年11月号))

●労働法制はいかに作られるべきか―三者構成原則を再確認しよう

三者構成で労使が入ったところでものを決めるのはけしからん、我々のようなフェアな意思決定で物事を決めるべきだという、福井秀夫氏などの主張に対して、もっと怒らないといけないと思います。そもそも経済財政諮問会議は学者が2人、経営側が2人だけなんですね、有識者というのは。つまり、労働者というのは有識者ではないという話になっているわけです。規制改革会議だって、みんな有識者と言っていますけれども、学者と使用者側だけで労働者側は入っていない。そういうところで労働者の運命を左右するようなことを決めていいのかということついては、これはそもそも民主主義の大原則の問題として、もっときちんとした議論をしていかなければいけないと私は思っております。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/jilzoukan.html(労働立法プロセスと三者構成原則(『日本労働研究雑誌』2008年特別号))

・・・ただし、その際EUでも指摘されているように、デンマークモデルがマクロな政労使協調システムの上に成り立っているという点を忘れてはなるまい。日本の規制緩和サイドはデンマークモデルの基盤でもある政労使三者構成原則に対して極めて敵対的な姿勢を見せることが多いが、解雇規制を含めいかなる労働関係の規制緩和も、緩和される側の労働者を無視して行うべきでないのは当然であろう。今日、EUでも日本でも労働法の再編が重要課題として提起されてきているだけに、三者構成原則の重要性を再確認する必要性は高まってきていると考えられる。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/juristtripartism.html(労働立法と三者構成原則(『ジュリスト』2008年12月15日号))

5 民主制原理としての三者構成原則

このEU憲法条約の視座から改めて三者構成原則を考えてみると、それは議会民主制と並ぶもう一つの民主制原理を労働立法過程の中に持ち込むものと評価しうる。それは一般的には参加民主制であるが、労使団体を担い手とするものは産業民主制と呼ぶことができる。この言葉は、ウェッブ夫妻が1897年に著した有名な労働組合論の標題である。現在の日本ではほとんど死語と化しているが、かつて労使関係の世界では産業民主制とか産業立憲という言葉が頻繁に用いられていた。労使が対等の立場に立って労働に関わる物事を決定していくべきだという原理は、憲法が定める民主制や立憲主義という言葉で理解されていたのである。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/ilojapan.html(ILO条約が日本の労働・雇用法制に与えた影響(『世界の労働』2009年4月号))

1 ILO三者構成原則と日本

(1) ILO総会への労働者代表問題と社会局の誕生

個々のILO条約が与えた影響を論ずる前に、ILOという国際機関の存在、政労使三者からなるその組織原則自体が、近代日本にどのように影響を与えてきたかをまず見ていこう。

三者構成原則が国際的に確立されたのは、いうまでもなく第一次大戦後にベルサイユ宮殿で開かれたパリ平和会議においてであった。戦争を引き起こした大きな原因として労働問題が取り上げられ、一般的な国際連盟に加えて、労働条件を国際的に規制するILOが設置された。そして、労働問題の性質から、政府代表だけではなく、労働組合と使用者団体の代表もILOの会議に出席して物事を決めるというルールが確立された。

ちなみに、民主党政権ができたときには、こういうことも書きましたが、

http://homepage3.nifty.com/hamachan/minshu.htm(労働政策:民主党政権の課題(『現代の理論』2009年秋号))

9 労働政策決定システムと三者構成原則
 
 最後に、民主党政権の最大の目玉として打ち出されている「政治主導」について、一点釘を刺しておきたい。政権構想では「官邸機能を強化し、総理直属の「国家戦略局」を設置し、官民の優秀な人材を結集して、新時代の国家ビジョンを創り、政治主導で予算の骨格を策定する」としている。これは、小泉内閣における経済財政諮問会議の位置づけに似ている。
 政治主導自体はいい。しかしながら、小泉内閣の経済財政諮問会議や規制改革会議が、労働者の利益に関わる問題を労働者の代表を排除した形で一方的に推し進め、そのことが強い批判を浴びたことを忘れるべきではない。総選挙で圧倒的多数を得たことがすべてを正当化するのであれば、小泉政権の労働排除政策を批判することはできない。この理は民主党政権といえどもまったく同じである。
 労働者に関わる政策は、使用者と労働者の代表が関与する形で決定されなければならない。これは国際労働機構(ILO)の掲げる大原則である。政官業の癒着を排除せよということと、世界標準たる政労使三者構成原則を否定することとはまったく別のことだ。政治主導というのであれば、その意思決定の中枢に労使の代表をきちんと参加させることが必要である。

その後、分かってきたかな・・・と思っていたんですが、

http://homepage3.nifty.com/hamachan/johororen1110.html(日本が踏み出す三者構成原則の第一歩(『情報労連REPORT』2011年10月号))

政治家が社会のすべての状況を把握することなどできませんし、その必要もありません。社会の諸利害を各省庁が代表するような省庁官僚制ではなく、政治的リーダーのもとで社会の諸利害-とりわけ経営者と労働者という先進産業社会における二大勢力が膝詰めで議論をし、その上で政治家が意思決定していくという、西欧諸国では常識になっている三者構成原則が、2年間の迷走の挙げ句に、ようやくこの日本でも確立する一歩を踏み出そうとしているとすれば、これは極めて重要な意義のある出来事というべきでしょう。

と、やや前のめり気味に褒めちぎったのもつかの間・・・。

(参考)

稲葉振一郎氏の若干のコメント:

https://twitter.com/shinichiroinaba/status/339236682316541953

三者協議というかそれ以外の利益団体(例:農協)を含めたコーポラティズムというのはミクロ的な規制や再分配を主眼とする場合とマクロ政策をターゲットとする場合とではその意義がかなり根本的に変わる……はず……。

https://twitter.com/shinichiroinaba/status/339237039738339328

かつて農業利害というのは国民経済の命運を左右する「マクロ」的性格を帯びていたが農業セクターの縮小と変動相場制への意向によってすっかりミクロ化した。

https://twitter.com/shinichiroinaba/status/339237285319036928

労働セクターが同様の運命をたどるかどうかは組織労働者の利害しか反映できないかそれとも相場設定や社会政策への介入を通じて労働者全体の利害を代表できるかどうかにかかっている……はず。

https://twitter.com/shinichiroinaba/status/339288613604966401

しかし三者協議というかコーポラティズムは果たしてケインズ的危機に際して効力を発揮したという実績はあるのか問題。

https://twitter.com/shinichiroinaba/status/339288692269146114

この辺は政治経済学の実証を調べねばならぬ。

https://twitter.com/shinichiroinaba/status/339289243941748736

しかし歴史的に見ると労働組合代表が政府に呼ばれてテーブルに着く画期というのは第一次大戦時の動員と統制に際してではなかったか。このとき問題になっていたのは失業ではなく供給サイド。「ストライキ押さえて生産協力してくれえ」という話。

https://twitter.com/shinichiroinaba/status/339289796667121664

70年代のスタグフレーション期の場合はもっと複雑かな? まあもちろん焦点は「経常収支の悪化と国際競争力の低下を防ぐためにストと賃上げを抑えないと雇用ががが」という問題だったのだが。ただこの時代もまだ本格的な変動相場制ではなかったのね。ブレトンウッズ。

連合さん、労働組合がマクロ的ソーシャルパートナーとしての地位を維持するか、農協程度のミクロ的存在に成り下がるか、「労働者全体の利害を代表できるか」にかかっているのですよ。

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