本日の東京新聞「「限定正社員」ってナンだ?」に登場
本日の東京新聞の「こちら特報部」は、見開きで「「限定正社員」ってナンだ?」の大特集。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2013050202000123.html
そこに、わたくしも何回も出てきて解説をしております。
・・・このシステムについて、独立行政法人の労働政策研究・研修機構統括研究員、濱口桂一郎氏は「新たに特殊な雇用形態を導入するわけではない」と強調する。
「日本の労働法制も本来、ジョブ型を想定していたが、無限定という非常に特殊な形が定着してしまった。日本型正社員と非正規に二極分化している現状は改善しなければならない」
濱口氏は「日本型正社員では、不本意な転勤や長時間労働を受け入れざるを得ない。『なんでも屋』になって特定の技能も身に付きにくい。本当は無限定は嫌でも、非正規になりたくないとの理由で続けている人が多いのでは」とみる。
一方で、「限定正社員の普及を雇用規制緩和として議論するのは間違いだ」とも指摘する。
「限定正社員は仕事があり、それをきちんとこなしている限りは、不当に解雇されない。逆に中小企業の日本型正社員では『気に入らないからクビ』が横行している」
ちなみに、先月施行された改正労働契約法では、パートや契約社員が同じ職場で五年を超えて働いた場合、本人が希望すれば期間を限定しない無期雇用に変更される。これは「限定正社員」そのものともいえる。
濱口氏は「仕事がなくなって解雇するのは企業側の都合だから、誰を解雇するかを企業側が勝手に決めてはいけない。そうさせないための手続きをしっかり定める必要がある」と付け加えた。
この記事では労働組合の反発の声がかなり紹介されていますが、興味深いのは中野麻美弁護士の言葉です。
「働く全員をジョブ型正社員として雇用する制度であれば賛成だ」
「だが、安倍政権の言う限定正社員は言葉のお遊び。産業界に都合の良いだけのものだ」
中野さんの今までの論調からして、「無限定のメンバーシップ型雇用こそ理想の姿だ万歳」と言わないのは当然ですが、とはいえ、労使の合意で成り立つ雇用契約においてジョブ型正社員以外のものを禁止することが可能であると本気でお考えとも思えず、理屈は正しいけれども、政治的に正しくないという批判なのであろうか、と思われるところです。
ちなみに、記事を書いた佐藤圭記者のつぶやき:
https://twitter.com/tokyo_satokei/status/329797019629654017
ジョブ型契約自体は真っ当な話だと思うが、実際にはブラック企業が新手の首切り策として悪用するんだろうなあ。
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コメント
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「仕事がなくなって解雇するのは企業側の都合だから、誰を解雇するかを企業側が勝手に決めてはいけない」という所がお恥ずかしながらよくわからないんです。
例えば部署Aがあって衰退部門なので3人いる所を2人にしなければならない。この場合も「仕事がなくなる」ことになりますからまず1人を切らねばならないとなります。
この場合どのように選抜するのでしょうか。
そうではなくてこの場合はその部門の仕事をなくして3人とも解雇ということになるのでしょうか。
ご解説いただけますと幸いです。
投稿: Dursan | 2013年5月 2日 (木) 17時04分
『世界』5月号に載せた文章から、そこを解説したところを引用します。
これが、日本の解雇自由論者には全く分かっていないというのが、最大の問題です。
投稿: hamachan | 2013年5月 2日 (木) 19時40分
記事の最後に(牧)という署名でコメントが載っていたように思ったのですが。
そしてそのコメントが「やはりうさんくさい」で終わっていて、新聞としては面白いなと思ったのですが。。
投稿: 高橋良平 | 2013年5月 2日 (木) 21時10分
被用者たる地位が維持され又は失われることについて、労働関係の当事者が関与できる社会的な基盤がなくては、どのような「呼称」であれ、危うさがともなうだろう。その「危うさ」をコントロールできる労使自治の不在又は機能不全、という現状の方が限定正社員云々という以前に大切なのかもしれない。が、だとしても、こういう絡みを含めてまっとうに議論するひとが、公論の世界では濱ちゃん先生以外に見当たらないのが残念かも。
投稿: HIDAMARI | 2013年5月 2日 (木) 23時33分
あ~なるほど、EUの剰員整理解雇を要約すると、概ね若年層から解雇する。或いは労働市場にとって有益(というかその後に利益期待可能性のある)労働者から先に解雇しなさい。
つまり制度意志として・・労働者の保護も然ることながら、事業を縮小するんだから労働市場で価値の高い労働者は返しなさい!・・ということなんですね。事業縮小企業が美味しいとこ取りは出来ない。労働市場というのはそれだけ公共性が高いのだから、そこから退場する時には成長労働力はちゃんと返しなさいということでしょうかねぇ。
これは労働者にとっても非常にドライだと思いました。
投稿: endou | 2013年5月 3日 (金) 11時33分
連投失礼します。
ただ、あえて突っ込むと、EU流の年功序列待遇とか、一見すると若年層のリスク負担により中年熟年層の生活安定を確保しているように見えます。
>例えばジョブが100人分縮小したら、解雇する必要のない人まで含めて200人以上解雇しなければならず、その後100人以上を採用せよという奇妙なルールであり、しかもその際年齢差別をしなければならないとまで義務づけている<
いや~驚きです。これについての批判、若年層の不満はないのでしょうか??(なかなかジョブ層に入れないというリスクとか・・)
投稿: endou | 2013年5月 4日 (土) 11時01分