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2013年5月 1日 (水)

J-WAVE JAM THE WORLD

22441_2本日、FMラジオ局J-WAVEの「JAM THE WORLD」という番組で、堤未果さんのナビゲーターで解雇規制問題についてお話をしました。

http://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/break/index.html

日本の解雇規制はどうあるべきなのか?(ゲスト:独立行政法人「労働政策研究・研修機構」 濱口桂一郎さん)

安倍総理が議長を務める政府の産業競争力会議は先月23日、雇用制度改革の骨格を決め、企業から要望が強かった解雇規制の緩和については6月に策定する成長戦略には盛り込まず、見送る方針となりました。

野党からの批判や、7月の参院選への影響を考えてのようですが、選挙後、蒸し返される可能性も十分もあります。

はたして日本の解雇規制はどうあるべきなのか? 
今夜は、労働に関する総合的な調査研究を行っている独立行政法人「労働政策研究・研修機構」の濱口桂一郎さんと考えます。

(追記)

ツイッター上で、oha_miyazakiさんが、このJAM THE WORLDのログをアップされています。

https://twitter.com/oha_miyazaki

【解雇規制緩和問題①】安倍首相が議長の産業競争力会議は産業界から要請が強い解雇規制緩和を参院選を見据えて見送ったが、いずれ蒸し返される恐れも。果たして日本の解雇規制はどうあるべきなのか?労働政策研究研修機構の濱口桂一郎統括研究員に聞いた。

【解雇規制緩和問題②】濱口「政府の会議の中には皆が不安に思っている解雇の自由化や金さえ払えば解雇できるようにしようと思っている人がいるのは事実だが、少なくとも政府そのもの、規制改革会議の座長の考え方はそういうものではないと思っている。」

【解雇規制緩和問題③】濱口「『日本の解雇規制は厳しい』は嘘。日本では労働契約法で『客観的合理的な理由なく、社会通念上相応ではない解雇は権利の乱用で無効』と書いているだけで、同じような規定は欧州にもある。とりわけ日本だけが厳しい訳じゃない」

【解雇規制緩和問題④】濱口「だが、リストラにおいては欧州に比べ日本では解雇しにくいのは事実。それはなぜかというと解雇規制が厳しいからではなく、日本の雇用契約の中身が欧米と違うからだ。欧米では"就職"するが、日本では"就社"する。」

【解雇規制緩和問題⑤】濱口「日本以外の国々における就職とは会社がして欲しい仕事に応募してきた人と契約を結び、入るとその仕事の中身を説明して(job discription)それをやるのが仕事になるのだが、日本ではそういうことはない。」

【解雇規制緩和問題⑥】濱口「日本ではこの仕事でということで入ることが殆ど無いし、仮にあっても会社に入った以上は会社の命令でどんな仕事でもやる、会社が遠方地に行けと言われたら従うのが当たり前。日本人は当然だと思うが、国際的には極めて特殊だ」

【解雇規制緩和問題⑦】濱口「他国は仕事を通して契約するが、日本では会社の一員になる。ゆえに会社の為なら何でもやると入ってきた労働者を仕事が無くなったからといって解雇することはできない。これこそが日本では解雇しにくいと言われる所以である。」

【解雇規制緩和問題⑧】濱口「逆に言うと欧米では仕事が無くなったから整理解雇するのが最も正当で、労働者が納得できる解雇理由となる。『お前は能力が無いから』とか『言うこと聞かないから』という理由で解雇すれば『何言ってんだ』と紛争になる。」

【解雇規制緩和問題⑨】濱口「要するに採用時の契約内容からして日本と欧米では違う。そういうことを知らない経営者や経済学者が日本は世界一解雇しにくいと思っているが、実は解雇規制が厳しいのではなく、そういう労働契約を結んでいるからなのだ。」

【解雇規制緩和問題⑩】濱口「別に日本政府が日本型の契約を結べと強要してる訳ではないどころか日本の法律では欧米のようにちゃんと仕事を決めて契約を結ぶルールがあるのに、労働者を使いやすいから企業が日本型の契約をしてきたんで、その契約が企業が自らを縛っている。」

【解雇規制緩和問題⑪】濱口「日本型の契約では、会社の為に何でもやる見返りとして仕事が無くなっても簡単に解雇されないのが労働者にとっての最大のメリットだった。これによって職業は不安定でも雇用は安定していた。」

【解雇規制緩和問題⑫】濱口「終身雇用は無くなったのではなく収縮した。昔は新卒一括採用で社員になったが、だんだん企業が絞って行くうちにこぼれ落ちた人達が非正規雇用へ流れていった。彼らは処遇も悪いし、マズいのは仕事があっても斬られることだ。」

【解雇規制緩和問題⑬】濱口「要するに日本の正社員は仕事が無くても解雇されないのに、非正規雇用は仕事があっても解雇される。つまり仕事がある限りは解雇されないような欧米の一般的な働き方が日本ではスポーンと抜けちゃっている。」

【解雇規制緩和問題⑭】濱口「欧米は解雇を禁止しているのではなく、不公正な解雇を禁止しているだけ。不公正な解雇とは仕事がちゃんとあってjob discriptionの中身をちゃんとやっているにも関わらず解雇すること。これに対しては厳しい。」

【解雇規制緩和問題⑮】ー「では欧米で仕事がなくなった時、どういう基準で解雇するのか?」濱口「日本人はリストラ名目で好き放題に解雇する話じゃないかと勘違いしてるが、それこそが欧米では最もやってはならぬこと。なぜなら原因は会社にあるから。」

【解雇規制緩和問題⑯】濱口「仕事が無くなったので整理解雇するのは正しいのだが、欧米では誰を解雇するかは会社側が勝手に決めてはいけない。ドイツやスウェーデンでは勤続年数や年齢でルールを決めていて、そうでない場合でも労使で協議して決める。」

【解雇規制緩和問題⑰】濱口「解雇はしてもいいが誰を解雇するか厳格なルールがある欧米とは対照的に日本の、特に中小企業では、上司や取引先と上手くやれない、言う事を聞かない等、この手の解雇は沢山ある。中小企業においては解雇規制が無いに等しい。」

【解雇規制緩和問題⑱】濱口「大企業の経営陣や経済学者には見えていないが、実は日本の大部分を占めている中小企業は他の国々と比較してもはるかに自由に解雇されている社会だ。世間の通説とは違い日本の中小企業ほど解雇規制が緩い所は世界中には無い。」

【解雇規制緩和問題⑲】濱口「日本の働き方は世界でも特殊で、海外からの留学生に日本の労働のあり方の話を振るとおかしいとの声が多数上がる。新卒一括採用・定期昇給・定期人事異動が意味不明なんだと。彼らにはなぜそんなことをするのか理解できない。」

【解雇規制緩和問題⑳】濱口「留学生達には会社のメンバーになるという感覚は無く、ゆえに彼らが日本企業に"就社"するとものすごいカルチャーショックを受ける。彼らと話していると逆にいかに日本の労働環境が特殊なのか気付かされるくらいだ。」

【解雇規制緩和問題㉑】ー「仕事で契約する欧米型の労働契約は日本の派遣労働も同じ労働契約と見ていいのか?」濱口「法律上、派遣社員は専門職で仕事内容を契約で決めることになっているが、実際の派遣先では日本の労働慣習に従って何でもやらされる。」

【解雇規制緩和問題㉒】濱口「要するに契約になくても何でもやるのが当然だと思っている日本の企業の中に派遣社員が入っているから文化摩擦が起きるのだが、衝突してクビを斬られるのが嫌な人が大半だから黙って従うのが実情であり賢い生き方になっている」

【解雇規制緩和問題㉓】ー「そうなると契約外の仕事をやらされる上にすぐ解雇されるリスクを負わされている日本の派遣労働者は労働者の底辺で、悪いとこ取りされている感が否めない。」濱口「政府は本物の専門職を作ろうとしたが、それは実現していない。」

【解雇規制緩和問題㉔】濱口「その上で政府が提起している限定正社員やジョブ型正社員はもう一度契約型の専門職を作ろうという話だと思っている。非正規雇用にして雇用が不安定になったので、正社員にして期間に定めなく仕事がある限り解雇されないようにして安定を与えた上で、しかし仕事が無くなれば欧米のように解雇されるというシステムにしようとしているのではないのだろうか。」

【解雇規制緩和問題㉕】濱口「実は今から17年前に日経連が出した新時代の日本的経営の中で、今までの正社員=長期蓄積能力活用型は段々減らしていって、パートアルバイト等の雇用柔軟型を増やしていくと宣言していたがそれは実現したものの、その中間として高度専門能力活用型(専門職)を作るという宣言は未だに実現していない。」

【解雇規制緩和問題㉖】濱口「なぜ実現しなかったかというと有期雇用にしたので雇用柔軟型のパートアルバイトとの区別がつかなかったからだ。本当は派遣にしろ契約社員にしろ当初は専門職のイメージはあったのだが、今ではパートアルバイトとの違いが分からなくなっている。」

【解雇規制緩和問題㉗】濱口「ゆえに期間の定めがない一種の正社員として認めるが、仕事が無くなれば解雇されるシステムに作り直した方がいいだろうと、むしろその方が第三の働き方を日本社会に作っていく上で役に立つだろうと思っている訳だ。」

【解雇規制緩和問題㉘】ー「そういうシステムが出来た後、今までのような理不尽な解雇を規制出来るのか?」濱口「ルールを作る時にジョブ型正社員を解雇する為には契約時に企業側が後で約束違反したら契約は無効になる条項を入れておくべきだろう。」

【解雇規制緩和問題㉙】ー「そのルールを入れてもメンタリティーが変わるまで時差があるがそこを変えるのは時間がかかるのでは?」濱口「人間の意識は法律で簡単に変わるものではないから実際には紛争が多発するだろうが、その中で学んでいくしかない。」

【解雇規制緩和問題㉚】濱口「大事なことはジョブ型正社員とは整理解雇をしやすくなるというだけで、今までのような理不尽な解雇は出来なくなるということをハッキリ伝えることだ。」ー「でも実際に数多ある中小企業までチェックするのは難しいのでは?」濱口「提訴するには金がかかるので中小企業の従業員には難しいが、一応、彼らの為に労働局や労働委員会に斡旋という仕組みがある。」

【解雇規制緩和問題㉛】濱口「会社側が相手にしないので未解決な事例が多いが、解決事例でも解決金は平均17万ぐらいだ。裁判をやればもっと貰えるし、そもそも解雇無効になるが、自分一人で戦うなら勝っても一ヶ月分の給料にも満たない額しか貰えてない」

【解雇規制緩和問題㉜】濱口「そう考えると批判される金銭解決もメリットがあると思う。欧州での不当解雇への金銭解決時の額はドイツでは原則1年分、年齢が高いと更にかさ上げされるし、スウェーデンでは勤続10年以上だと最高32ヶ月分を勝ち取れる。」

【解雇規制緩和問題㉝】濱口「要するに解雇規制緩和の議論をする時にはまず、日本がいかに特殊な労働環境かというところから議論を進めないと話が進まないということだ。」(終)

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