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2013年5月

2013年5月31日 (金)

個別紛争トップはいじめ・嫌がらせ

本日、厚生労働省が平成24年度個別労働紛争解決制度施行状況を発表しています。

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r985200000339uj.html

毎年発表しているものですが、今年は「相談件数のトップは「いじめ・嫌がらせ」というのがサブタイトルになっています。

【平成24年度の相談、助言・指導、あっせんの概況】
 ・総合労働相談件数              106万 7,210 件(前年度比3.8% 減)
  →うち民事上の個別労働紛争相談件数  25万 4,719 件( 同 0.6% 減)
 ・助言・指導申出件数                 10,363 件( 同 8.1% 増)
 ・あっせん申請件数                   6,047 件( 同 7.1% 減)

○ 相談内容は『いじめ・嫌がらせ』がトップ
 ・総合労働相談件数は、5年連続で100万件を超えており、民事上の個別労働紛争に係る相談件数は、高止まりである。
 ・『いじめ・嫌がらせ』に関する相談は、増加傾向にあり、51,670件。民事上の個別労働紛争相談の中で最も多かった。

○ 助言・指導申出件数が過去最多
 ・助言・指導申出件数は、制度施行以来増加傾向にあり、初めて1万件を超えた。
 ・あっせん申請件数はやや減少した。

○ 迅速な対応
 ・助言・指導は1カ月以内に97.4%、あっせんは2カ月以内に93.8%を処理。

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r985200000339uj-att/2r985200000339w0.pdf

件数が増えているというのは、いじめ・嫌がらせ自体が増えているという面もあるでしょうが、今までも存在していたが労働紛争と意識されにくかったことが、意識されるようになってきたからという面が大きいのでしょうね。

世界的にも職場のいじめ・嫌がらせ問題は注目されてきています。

先日紹介した『ビジネス・レーバー・トレンド』6月号を再度紹介しておきましょう。

201306_2http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/blt-2887.html(いじめ・嫌がらせの実情と課題――欧州諸国と日本の対応@『BLT』 )

いまや政府からも労使からも研究者からも熱い注目を集めているトピックである職場のいじめ・嫌がらせ問題について、去る2月28日に開かれた労働政策フォーラムで報告されたイギリス、フランス、スウェーデン、ドイツ及び日本の状況が掲載されています。

(追記)

ちなみに、昨日発表された平成24年度 都道府県労働局雇用均等室での法施行状況でも、順位の入れ替えがありました。

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r985200000335p5.html

こちらはこれまでぶっちぎりの一位だったセクハラに代わって、妊娠・出産を理由とする不利益取り扱いがトップになったようです。相談件数ではセクハラが一位ですが、紛争解決援助の申立件数ではこっちが一位と。

1 雇用均等室で取り扱った相談、是正指導の状況(P.1)
・相談件数は115,496件で、前年度より増加。
・是正指導は67,509件で、前年度より増加。

2 男女雇用機会均等法の施行状況(P.2~4)
・男女雇用機会均等法に関する相談は20,677件。「セクシュアルハラスメント」が 9,981件、「婚姻、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い」が3,186件、「母性健康管理」が2,950件。
・ 紛争解決の援助の申立受理件数は504件。そのうち、「婚姻、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い」が232件で、「セクシュアルハラスメント」(231件)を超え、初めてトップに。「募集・採用」、「配置・昇進・降格・教育訓練等」が増加した。調停申請受理件数は63件。
・是正指導は4,087事業所・7,696件。

3 育児・介護休業法の施行状況(P.5~9)
・育児・介護休業法に関する相談は87,334件で、前年度より増加し、相談内容別では、育児休業に関する相談が最多。
・紛争解決の援助の申立受理件数は226件、両立支援調停会議による調停申請受理件数は16件で、ともに「育児休業に係る不利益取扱い」に関する事案が最多。
・是正指導は8,766事業所・39,117件で、平成24年7月に全面施行された改正育児・介護休業法の内容が定着し、法の履行確保が図られるよう指導を行った結果、前年度より増加。

4 パートタイム労働法の施行状況(P.10~12)
・パートタイム労働法に関する相談は7,485件。相談内容は、「通常の労働者への転換」が2,418件で最も多く、次いで「労働条件の文書交付等」(779件)、「賃金の均衡待遇」(402件)となっている(「指針」関係及び「その他」を除く。)。
・是正指導は7,485事業所・20,696件。指導事項では、「通常の労働者への転換」が5,127件で最多。次いで「労働条件の文書交付等」(4,472件)となっている。

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加茂善仁『最新判例から学ぶメンタルヘルス問題とその対応策Q&A』

25626017_1経営法曹として活躍されている加茂善仁さんの『最新判例から学ぶメンタルヘルス問題とその対応策Q&A』(労働開発研究会)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.roudou-kk.co.jp/books/book-11.html

実務担当者が疑問に思う点をQ&Aで表し明確にしたうえで、最新判例や法的留意点を押さえた対応策の詳細をしっかりと解説しています。

実務で活用しやすく、手元に置いておきたい一冊です。      

近年増加するメンタルヘルス不調をめぐる様々な問題と企業に必要な対応についてトータルに学ぶことができます。

タイトルはメンタルヘルスですが、対象は結構広く、第1章は「メンタルヘルスと採否」で、精神障害歴が三菱樹脂事件最高裁判決の言う「その他の制限」に含まれるか、という問いから始めているくらいです。

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2013年5月30日 (木)

「職業実践専門課程」は結局専修学校に

大山鳴動すらしないまま、ネズミ一匹でおわりそうですね。

http://ten.tokyo-shoseki.co.jp/news/detail.php?id=20130529165129(専修学校で高度な職業教育=14年度から新課程―文部科学省)

文部科学省は2014年度から、実践的で高度な職業教育を行う専修学校の課程を「職業実践専門課程」(仮称)として認定する方針を決めた。専修学校の質の向上を図るのが狙いで、有識者による検討委員会が近く認定制度の概要をまとめる。

 中央教育審議会(文科相の諮問機関)は10年度、実践的な職業教育の枠組みづくりについて議論、新たな学校種の創設も検討していた。しかし、大学・短大関係者から異論が出たことを受け、まず専修学校に高度な職業教育の課程を増やしていき、将来的に新学校種を創設するかどうか判断することにした。また、専修学校は小・中・高校や大学よりも教育内容の基準が緩やかで、学校によって教育水準に差があることから、一定のレベルに水準を維持するため新たな専門課程の創設を決めた。

はぁ?専修学校って、そもそも職業教育をするところでしょう。

これだけぶくぶく膨れあがりながら、依然として「職業」とは縁のないあかでみっくな存在であるかのように尊大にふんぞりかえっている偉大なる「大学」に、「職業実践的な教育に特化した枠組み」という少しは役に立ちそうなものを作ろうというのが、一昨年の2011年に、中央教育審議会が出した「「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」という答申だったんじゃないかと勝手に思っていたのですが、そうではなかったようです。

大学の皆様は、偉いはずの大学の中に、職業実践的な高等教育機関を作るなんていうことには大変「異論」があったのでしょうね。そんな下賤なことは専修学校あたりにやらせておけ、と。

この感覚がある限り、いまや同世代人口の過半数を占める大学生たちは「職業実践的な教育」から隔離してもらえるわけです。なんとすばらしい・・・。

(参考)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-5682.html(「大学」だけは「職業」と無関係な件について)

大学が多すぎるだの、いや先進諸国に比べれば少ないだの、議論が賑やかですが、問題は日本国の学校教育法という立派な法律においては、なぜか高等教育機関のうち、「大学」という名前の施設だけは、「職業」という文字がないということだという指摘は、どこからもないようですね。

・・・「大学」と称する施設がこれもそれもあれもどれも、み~~んな「学術の中心」と言うのなら、それはたしかに多すぎますけど、「職業」に必要な能力を育成することを主たる目的とする4年制の高等教育機関というのなら、別に多すぎるわけでもなく、もっとあってもいいわけですよ。

残念ながら、現行学校教育法上は、そういう存在は許されないことになっているわけですけど。

学校教育法(昭和二十二年三月三十一日法律第二十六号)

第九章 大学 

第八十三条  大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。

第九十九条  大学院は、学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥をきわめ、又は高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培い、文化の進展に寄与することを目的とする。

 大学院のうち、学術の理論及び応用を教授研究し、高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培うことを目的とするものは、専門職大学院とする。

第百八条  大学は、第八十三条第一項に規定する目的に代えて、深く専門の学芸を教授研究し、職業又は実際生活に必要な能力を育成することを主な目的とすることができる。

 前項に規定する目的をその目的とする大学は、第八十七条第一項の規定にかかわらず、その修業年限を二年又は三年とする。

 前項の大学は、短期大学と称する。

第十章 高等専門学校 

第百十五条  高等専門学校は、深く専門の学芸を教授し、職業に必要な能力を育成することを目的とする。

第十一章 専修学校 

第百二十四条  第一条に掲げるもの以外の教育施設で、職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図ることを目的として次の各号に該当する組織的な教育を行うもの(当該教育を行うにつき他の法律に特別の規定があるもの及び我が国に居住する外国人を専ら対象とするものを除く。)は、専修学校とする。

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2013年5月28日 (火)

今のところノンフィクションとしては現代の日本人に対して薦められるベスト

112483「lochtext」さん(ロッホテクストさんとお読みするのでせうか)のブログで、「学生の間に出会えてよかったかどうかは分からないがとりあえずおすすめできる何冊か」というタイトルで、10冊の本が紹介されています。

http://lochtext.hatenablog.com/entry/20130527/1369659130

挙がっている本はまことにノンジャンルですが、

田崎晴明『熱力学―現代的な視点から』 (新物理学シリーズ)培風館

ジョーゼフキャンベル,ビルモイヤーズ『神話の力』 早川書房

古川日出男『アラビアの夜の種族』角川書店

マーシャ・ガッセン『完全なる証明』文藝春秋

ウラジーミルナボコフ『ナボコフの文学講義』河出書房新社

シーナ・アイエンガー『選択の科学』文藝春秋

ロバートゲスト『アフリカ 苦悩する大陸』東洋経済新報社

濱口桂一郎『日本の雇用と労働法』日本経済新聞出版社

エヴァン・I・シュワルツ『発明家たちの思考回路 奇抜なアイデアを生み出す技術』ランダムハウス講談社

安宅和人『イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」』英治出版

なぜかその中に拙著が・・・。

lochtextさんの評言は次の通りです。

もっとも厄介な種類のおとぎ話、それは普段「歴史」だとか「制度」だとか呼ばれています。この本は現実世界のおとぎ話を鮮やかに解体した本であり、今のところノンフィクションとしては現代の日本人に対して薦められるベストです。

「今のところノンフィクションとしては現代の日本人に対して薦められるベスト」との評をいただきました。ありがとうございます。


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2013年5月27日 (月)

三者構成原則について復習用テキストいくつか

政治家の発言に対しては、既に政治家になった黒川滋さんが適切にされているので、そちらにお任せし、

http://kurokawashigeru.air-nifty.com/blog/2013/05/527-38fe.html(政労使三者協議は共産主義という細野幹事長の問題)

民主党の細野幹事長が、安倍政権が構想している政労使三者構成による労働政策の合意形成の場を、「共産主義的」と抗議したらしい。

まったく認識不足としかいいようがない。

北欧や西欧では、労働政策や社会保障政策制度の変更にあたっては、政府・労働組合・使用者団体の三者による協議で運営するのが当たり前であり、日本ではそれが十分に機能しないために、生活に困る人がいきなり生活保護や最低賃金のような限界の制度のお世話にならなくてはならない社会になってしまっています。

安倍政権の魂胆があまりしっかりしていないのは確かですが、しかしだからと言って「共産主義的」と全然的外れな非難するのはどうかと思います。政労使三者の合意形成のシステムは、「共産主義」に批判的な北欧や西欧の労働組合が、政治参加を通じてかちとってきたものです。

民主党の最大の応援団である連合としても、こうした反応の仕方しかしない民主党に対して、厳しい抗議を申し入れるべきでありましょうし、それが叶えられないなら次の参議院選挙では、象徴的な選挙区で自民党支持に切り替えるぐらいの厳しい姿勢が必要ではないかと思います。

連合がどうされるかは連合のご判断ですが、何をするにしてもまず何よりも現代先進世界における労働政策のコモンセンスである三者構成原則についてきちんと理解することが必要となります。

実を言えば、2006年から2008年にかけての時期、一部経済学者や規制改革サイドから三者構成原則に対する攻撃が猛烈になされ、私もそれに対して三者構成原則を擁護する論陣を張っていたことがあります。当時の言説からいくつか取り出してみますと、

http://homepage3.nifty.com/hamachan/rippougaku.html(日本学術会議立法学シンポジウム報告「労働法学の観点から(2007年9月1日))

http://homepage3.nifty.com/hamachan/bigbangkouen.html(労働ビッグバンを解読する(講演録)(『労働調査』2007年11月号))

●労働法制はいかに作られるべきか―三者構成原則を再確認しよう

三者構成で労使が入ったところでものを決めるのはけしからん、我々のようなフェアな意思決定で物事を決めるべきだという、福井秀夫氏などの主張に対して、もっと怒らないといけないと思います。そもそも経済財政諮問会議は学者が2人、経営側が2人だけなんですね、有識者というのは。つまり、労働者というのは有識者ではないという話になっているわけです。規制改革会議だって、みんな有識者と言っていますけれども、学者と使用者側だけで労働者側は入っていない。そういうところで労働者の運命を左右するようなことを決めていいのかということついては、これはそもそも民主主義の大原則の問題として、もっときちんとした議論をしていかなければいけないと私は思っております。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/jilzoukan.html(労働立法プロセスと三者構成原則(『日本労働研究雑誌』2008年特別号))

・・・ただし、その際EUでも指摘されているように、デンマークモデルがマクロな政労使協調システムの上に成り立っているという点を忘れてはなるまい。日本の規制緩和サイドはデンマークモデルの基盤でもある政労使三者構成原則に対して極めて敵対的な姿勢を見せることが多いが、解雇規制を含めいかなる労働関係の規制緩和も、緩和される側の労働者を無視して行うべきでないのは当然であろう。今日、EUでも日本でも労働法の再編が重要課題として提起されてきているだけに、三者構成原則の重要性を再確認する必要性は高まってきていると考えられる。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/juristtripartism.html(労働立法と三者構成原則(『ジュリスト』2008年12月15日号))

5 民主制原理としての三者構成原則

このEU憲法条約の視座から改めて三者構成原則を考えてみると、それは議会民主制と並ぶもう一つの民主制原理を労働立法過程の中に持ち込むものと評価しうる。それは一般的には参加民主制であるが、労使団体を担い手とするものは産業民主制と呼ぶことができる。この言葉は、ウェッブ夫妻が1897年に著した有名な労働組合論の標題である。現在の日本ではほとんど死語と化しているが、かつて労使関係の世界では産業民主制とか産業立憲という言葉が頻繁に用いられていた。労使が対等の立場に立って労働に関わる物事を決定していくべきだという原理は、憲法が定める民主制や立憲主義という言葉で理解されていたのである。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/ilojapan.html(ILO条約が日本の労働・雇用法制に与えた影響(『世界の労働』2009年4月号))

1 ILO三者構成原則と日本

(1) ILO総会への労働者代表問題と社会局の誕生

個々のILO条約が与えた影響を論ずる前に、ILOという国際機関の存在、政労使三者からなるその組織原則自体が、近代日本にどのように影響を与えてきたかをまず見ていこう。

三者構成原則が国際的に確立されたのは、いうまでもなく第一次大戦後にベルサイユ宮殿で開かれたパリ平和会議においてであった。戦争を引き起こした大きな原因として労働問題が取り上げられ、一般的な国際連盟に加えて、労働条件を国際的に規制するILOが設置された。そして、労働問題の性質から、政府代表だけではなく、労働組合と使用者団体の代表もILOの会議に出席して物事を決めるというルールが確立された。

ちなみに、民主党政権ができたときには、こういうことも書きましたが、

http://homepage3.nifty.com/hamachan/minshu.htm(労働政策:民主党政権の課題(『現代の理論』2009年秋号))

9 労働政策決定システムと三者構成原則
 
 最後に、民主党政権の最大の目玉として打ち出されている「政治主導」について、一点釘を刺しておきたい。政権構想では「官邸機能を強化し、総理直属の「国家戦略局」を設置し、官民の優秀な人材を結集して、新時代の国家ビジョンを創り、政治主導で予算の骨格を策定する」としている。これは、小泉内閣における経済財政諮問会議の位置づけに似ている。
 政治主導自体はいい。しかしながら、小泉内閣の経済財政諮問会議や規制改革会議が、労働者の利益に関わる問題を労働者の代表を排除した形で一方的に推し進め、そのことが強い批判を浴びたことを忘れるべきではない。総選挙で圧倒的多数を得たことがすべてを正当化するのであれば、小泉政権の労働排除政策を批判することはできない。この理は民主党政権といえどもまったく同じである。
 労働者に関わる政策は、使用者と労働者の代表が関与する形で決定されなければならない。これは国際労働機構(ILO)の掲げる大原則である。政官業の癒着を排除せよということと、世界標準たる政労使三者構成原則を否定することとはまったく別のことだ。政治主導というのであれば、その意思決定の中枢に労使の代表をきちんと参加させることが必要である。

その後、分かってきたかな・・・と思っていたんですが、

http://homepage3.nifty.com/hamachan/johororen1110.html(日本が踏み出す三者構成原則の第一歩(『情報労連REPORT』2011年10月号))

政治家が社会のすべての状況を把握することなどできませんし、その必要もありません。社会の諸利害を各省庁が代表するような省庁官僚制ではなく、政治的リーダーのもとで社会の諸利害-とりわけ経営者と労働者という先進産業社会における二大勢力が膝詰めで議論をし、その上で政治家が意思決定していくという、西欧諸国では常識になっている三者構成原則が、2年間の迷走の挙げ句に、ようやくこの日本でも確立する一歩を踏み出そうとしているとすれば、これは極めて重要な意義のある出来事というべきでしょう。

と、やや前のめり気味に褒めちぎったのもつかの間・・・。

(参考)

稲葉振一郎氏の若干のコメント:

https://twitter.com/shinichiroinaba/status/339236682316541953

三者協議というかそれ以外の利益団体(例:農協)を含めたコーポラティズムというのはミクロ的な規制や再分配を主眼とする場合とマクロ政策をターゲットとする場合とではその意義がかなり根本的に変わる……はず……。

https://twitter.com/shinichiroinaba/status/339237039738339328

かつて農業利害というのは国民経済の命運を左右する「マクロ」的性格を帯びていたが農業セクターの縮小と変動相場制への意向によってすっかりミクロ化した。

https://twitter.com/shinichiroinaba/status/339237285319036928

労働セクターが同様の運命をたどるかどうかは組織労働者の利害しか反映できないかそれとも相場設定や社会政策への介入を通じて労働者全体の利害を代表できるかどうかにかかっている……はず。

https://twitter.com/shinichiroinaba/status/339288613604966401

しかし三者協議というかコーポラティズムは果たしてケインズ的危機に際して効力を発揮したという実績はあるのか問題。

https://twitter.com/shinichiroinaba/status/339288692269146114

この辺は政治経済学の実証を調べねばならぬ。

https://twitter.com/shinichiroinaba/status/339289243941748736

しかし歴史的に見ると労働組合代表が政府に呼ばれてテーブルに着く画期というのは第一次大戦時の動員と統制に際してではなかったか。このとき問題になっていたのは失業ではなく供給サイド。「ストライキ押さえて生産協力してくれえ」という話。

https://twitter.com/shinichiroinaba/status/339289796667121664

70年代のスタグフレーション期の場合はもっと複雑かな? まあもちろん焦点は「経常収支の悪化と国際競争力の低下を防ぐためにストと賃上げを抑えないと雇用ががが」という問題だったのだが。ただこの時代もまだ本格的な変動相場制ではなかったのね。ブレトンウッズ。

連合さん、労働組合がマクロ的ソーシャルパートナーとしての地位を維持するか、農協程度のミクロ的存在に成り下がるか、「労働者全体の利害を代表できるか」にかかっているのですよ。

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いじめ・嫌がらせの実情と課題――欧州諸国と日本の対応@『BLT』

201306_2『ビジネス・レーバー・トレンド』の6月号は、「いじめ・嫌がらせの実情と課題――欧州諸国と日本の対応」の特集です。

http://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2013/06/index.htm

いまや政府からも労使からも研究者からも熱い注目を集めているトピックである職場のいじめ・嫌がらせ問題について、去る2月28日に開かれた労働政策フォーラムで報告されたイギリス、フランス、スウェーデン、ドイツ及び日本の状況が掲載されています。

労働政策フォーラム「欧州諸国における職場のいじめ・嫌がらせの現状と取り組み」から

各国報告
イギリスにおける職場のいじめ ヘルゲ・ホーエル マンチェスター 大学ビジネススクール教授
フランス法におけるモラルハラスメント ロイック・ルルージュ ボルドー第四大学比較労働法・社会保障研究所研究員
スウェーデンにおける職場のいじめ・嫌がらせ―いじめに立ち向かう結束 マルガレータ・ストランドマーク カールスタッド大学教授
職場のいじめ・嫌がらせ―ドイツの現状 マルティン・ヴォルメラート 弁護士
日本における職場のいじめ・嫌がらせ、パワーハラスメントの現状と取り組み 内藤 忍 JILPT研究員

パネルディスカッション

なおこれにあわせて、調査・解析部による「増加傾向にある「職場の嫌がらせ」に関する相談―メンタルヘルス不調の相談もめだつ 東京都、日本産業カウンセラー協会、連合の労働相談集計等から」もあります。


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極めてジョブ型な自民党教育再生実行本部第二次提言

森直人さんが、去る5月23日に安倍総裁に提出された自由民主党の教育再生実行本部の第2次提言を紹介しています。

http://d.hatena.ne.jp/morinaoto/20130525/p1

そこにその提言自体もPDFファイルでリンクされていますので、見てみると、

http://d.hatena.ne.jp/morinaoto/files/%E8%87%AA%E6%B0%91%E5%85%9A%E3%83%BB%E6%95%99%E8%82%B2%E5%86%8D%E7%94%9F%E5%AE%9F%E8%A1%8C%E6%9C%AC%E9%83%A8%E3%80%8C%E7%AC%AC%E4%BA%8C%E6%AC%A1%E6%8F%90%E8%A8%80%E3%80%8D.pdf

いくつか、職業教育に関連する記述があり、それらが半世紀以上前のジョブ型雇用政策時代の感覚にかなり接近しているような印象を受けます。

最初の「平成の学制大改革」では、

3.後期中等教育等の複線化(普通教育と専門教育、公立と私立)

として、

(1)専門高校等における専門人材(マイスター)養成を推進

○後期中等教育における職業教育(専門高校・総合高校・高等専修学校(専修学校高等課程))の抜本的拡充・支援

○専門高校の高専化・専攻科の活用、専門高校と専門学校(専修学校専門課程)の連携接続等による中学校卒業後の5年一貫職業教育(全国200校の整備)について検討

○ジュニア・マイスターの称号付与など、専門高校等の魅力向上に向けた取組の促進

(2)普通高校と専門高校の適正比率の検証

が挙げられています。

さらに「大学・入試の抜本改革」では、

1 「キャリア教育・職業教育推進法」(仮称)の制定によるわが国全体でキャリア教育・職業教育を推進する体制の整備

・・・

3 質の高い専門学校(専修学校専門課程)の認定制度の創設・支援。専修学校の生徒・学生への経済的支援のための補助制度の創設

といった項目が示されています。

もちろんこの提言全体の方向性についての議論はそれとしてまたあるでしょうが、上に示された点を見ると、かつて1950年代から1960年代にかけての「近代主義の時代」に政府や経営側が取っていた極めてジョブ型志向の政策が復活しているようにも見えます。

それが他の政策分野とどの程度整合性があり、どの程度整合性がないのかは、それとして論じられるべきことではありますが、とりあえず、旧稿から半世紀以上昔のこの分野の政策を概観した一節を引用しておきます。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/dualsystem.html(「デュアルシステムと人材養成の法政策」 (『季刊労働法』第213号))

5 公的人材養成システム中心の構想
 
 とはいえ、戦後もある時期までは公的人材養成システムを中心におく政策構想が政府や経営者サイドから繰り返し打ち出されていたのです。これは前回お話しした賃金制度論において、同一労働同一賃金に基づく職務給制度が唱道されたのと揆を一にしています。

 1951年、占領中の諸制度の見直しのために設けられた政令諮問委員会は、「教育制度の改革に関する答申」の中で、中学校についても普通教育偏重を避け、職業課程に重点を置くものを設けるとか、中学高校一貫の6年制ないし5年制の職業高校や、高校大学一貫の5年制ないし6年制の専修大学といった構想を打ち出しています。

 1957年には、中央青少年問題審議会の首相への意見具申で、定時制、通信制及び技能者養成施設を母体として、修業年限4年の産業高等学校を制度化し、義務教育修了後の18歳未満の全勤労青少年が就学すべき学校として構想しています。これはまさに1939年のデュアルシステム的な長期義務教育制の復活です。

 日経連も、1952年に実業高校の充実を要望しましたが、1954年の「当面の教育制度改善に関する要望」では、中堅的職業人の養成のため、5年制の職業専門大学や6年制職業教育の高校制を導入することを求めています。

 日経連はさらに1956年、「新時代の要請に対応する技術教育に関する意見」において、「普通課程の高校はできる限り圧縮して工業高校の拡充を図る」べきことや、「昼間の職業を持つ青少年に対する定時制教育は、労働と教育が内容的に一致するように、普通課程よりも職業課程に重点を置く」こと、さらには「養成工の向上心に応えるため、・・・高等学校修了の資格を付与する道を開」くことも求めています。

 これを受けて、ついに文部省もそれまで否定的であった技能連携制度の法制化に動きだし、野党の反対で廃案を繰り返した後、ようやく1961年に成立に至りました。しかし、訓練担当者が高校教諭免許状を有することなどを指定要件とし、科目指定まで文部省が細かく定めるなどのため、あまり普及しませんでした。

 この点については、かなり後になりますが、1965年の「後期中等教育に関する要望」の中で、日経連は企業内訓練施設での教育の高校単位としての認定の拡大を求めるとともに、高校に技能学科を設け、企業内訓練施設を技能高校に移行することを求めています。これは、企業内では高卒扱いされるけれども、一歩企業外に出れば中卒扱いされる養成工たちにとっては切実な問題であったと思われますが、学校教育の純粋性を第一義と考える文部省には受け入れられるものではありませんでした。彼らが自分たちの能力を高く評価してくれる唯一の場である企業内での長期雇用を志向していったのも当然と言えるでしょう。その意味で、日本型雇用システム形成の一つの要因に教育界の実業嫌いがあったと評することもできるかも知れません。

 一方、労働行政の方は、上記日経連の1956年意見などもふまえ、監督行政から技能者養成を切り離し、職業補導と合体させて職業訓練と名付け、独立した政策分野として位置づける職業訓練法を1958年に制定しています。ここでは、ドイツやスイスの技能検定制度に倣って新たに技能検定制度を設け、技能士の資格を有することで労働協約上の高賃金を受けることができるような、企業横断的職種別労働市場が目指されました。

 この方向性は、1960年の国民所得倍増計画と、とりわけ1963年の人的能力政策に関する経済審議会答申において、政府全体を巻き込んだ大きな政策目標として打ち出されることになります。

 ここでは、そもそも近代意識確立の必要性から説き起こし、年功的秩序と終身雇用的慣行に支えられるこれまでの経営秩序を近代化し、賃金を職務給化するとともに、職務要件に基づき人材を適時採用し配置するという人事制度の近代化を断行すべきだとまず論じています。そして、職業に就く者は全て何らかの職業訓練を受けるということを慣行化し、人の能力を客観的に判定する資格検定制度を社会的に確立し、努力次第で年功や学歴によらないで上級資格を取得できるようにして、労働力移動を円滑化すべきだと主張しています。このような労働政策を前提として、ばらばらに行われている職業的教育を総合的に位置づけ、特に職業高校について「実習の適当な部分は企業の現場において行う」ことや、さらには「一週間のうち何日かの昼間通学を原則と」し、「教科は教室で、実技は現場でという原則の下に」、「職業訓練施設、各種学校、経営伝習農場等・・・において就学することも中等教育の一環として認められるべき」といった形で、明確にデュアルシステムを志向しています。

 また、職業課程だけでなく普通課程そのもののあり方を根本的に検討しなければならないとし、「学歴が異常に尊重されるという社会の現実が、中学、高校教育における一機能としての進路指導を妨げている」という考え方から、アカデミックな性格のA類型に対して、プラクチカルな性格のB類型においては職業科目、特に実践的科目の履修を促進すべきとも述べていました。

 さしもの頑固な文部省も、1966年の中教審答申「後期中等教育の拡充整備について」において、「学校中心の教育観にとらわれて」「技能的な職業を低く見たり、そのための教育訓練を軽視したりする傾向を改めなければならない」と反省し、普通教育専門教育双方を通じて「生徒の適性・能力・進路に対応」して「教育内容を多様化」することや、職業技能を高校教育の一部として短期修得できる制度を設けることなどを提起し、1967,68年の理科教育及び産業教育審議会答申「高等学校における職業教育の多様化について」でこれを具体化しています。

 ところが、このように経営側も政府も声をそろえて、外部労働市場志向型の公的人材養成システムに強く傾いた政策方向を打ち出していたにもかかわらず、その後の人材養成システムは全く逆に、教育制度を中心とした公的部門の役割は縮小する一方で、企業内人材養成システムがほとんど全面的に役割を担うに至ります。

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2013年5月25日 (土)

荒木尚志『労働法 第2版』

L14449荒木尚志『労働法 第2版』(有斐閣)をお送りいただきました.有り難うございます。

http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641144491

立法や判決がめまぐるしく、2年ごとの改訂が標準化しているかに見える労働法テキスト界にあって、初版から4年目で第2版というのは、満を持した刊行でしょうか。

荒木先生、今年の秋にはアメリカに行かれるので、自ら最新のテキストとして授業で使う機会はないんですね。

4年前も、最後の雇用システムを論じた部分を若干引用しておきましたが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/post-d864.html(荒木尚志『労働法』)

今回もそこから、今日的なところを:

・・・しかし、雇用システム全体としては安定(保障)と柔軟性のバランスがとれていたとしても、個々の労働者についてみると、選択の余地の乏しい特定の雇用モデルに固定化される傾向にあった。正規従業員は、手厚い雇用保障の反面として労働条件・人員配置に関する柔軟性(使用者の一方的調整権限)を受け入れざるを得ず、雇用保障以外の価値(例えばワーク・ライフ・バランス)をより重視する労働者にとっては、望ましい働き方を選択できていない可能性がある。他方、非正規従業員は、もっぱら量的柔軟性をもたらす不安定雇用として位置づけられ、その処遇にも正規従業員との間で大きな格差があり、正規従業員への転換も容易ではないなどの問題点は指摘されている。

労働者の多様化に適合した雇用システムとは、正規雇用と非正規雇用の2つの雇用モデルしか提示し得ない伝統的雇用システムを脱し、安定(保障)と柔軟性の多様な組み合わせによる豊富な雇用モデルを提示でき、労働者が、そうした多様な雇用モデルを自ら選択できるような雇用システムということになろう・・・

ここに書かれているとおりで、付け加えることもありませんが、こういう認識はなお必ずしも一般的ではなく、一方に伝統的な無限定正社員型の安定(保障)のみを金科玉条と考えて、ジョブ型正社員を口を極めて非難する人々がおり、他方でジョブだろうがメンバーシップだろうがともかく労働者に何かしら安定を許すことに激怒を示し、有期契約労働者が5年後に無期になれるという(ヨーロッパ諸国ではむしろ控えめな)法制を目の敵にしまくる人々がいるというのが、今日の日本の現状であるわけです。

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2013年5月24日 (金)

昨日のHRmicsレビュー

先週金曜日と昨晩、海老原嗣生さんのHRmicsレビューに出ました。

http://www.nitchmo.biz/

Part1
【テーマ】法改正、それは正常化への第一歩か?
【講 師】本誌編集長 海老原 嗣生
Part2
【テーマ】識者はどう見る<座談会>
【司 会】東京・大阪共通
      本誌編集長 海老原 嗣生
【東京会場パネラー(予定)】
  独立行政法人労働政策研究・研修機構 濱口桂一郎氏
  東京大学社会科学研究所 教授 水町勇一郎氏
  人材サービス産業協議会事務局 
         プロジェクト推進担当部長 川渕香代子氏
【大阪会場パネラー(予定)】
  立行政法人労働政策研究・研修機構 濱口桂一郎氏
  モロゾフ株式会社 人事総務グループ課長 中西泰輔氏
  雇用ジャーナリスト 常見陽平氏

昨晩のパネルディスカッションの様子が、雇用維新の出井智将さんのブログで紹介されていました。

http://ameblo.jp/monozukuri-service/entry-11536818771.html

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(追記)

「社会派うどん人」ことyamachan(hamachanにあらず)が、HRmicsの様子をブログに書かれています。

http://social-udonjin.hatenablog.com/entry/2013/05/24/120913

昨日、リクルート主催のHRmics #15に行ってきた。

これは私の師匠(と自分が勝手に呼んでいる)海老原嗣生さんが、人事界隈の著名人を呼んで本質的なトークをするという講演会。

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実は厳しくない日本の解雇規制@『日経ビジネス』5月20日号

Hyoshi『日経ビジネス』5月20日号が、表紙にでかでかと「パナソニック シャープを辞めた人たち」というコピーを出して「雇用流動化の理想と現実」という特集を組んでいますが、

http://business.nikkeibp.co.jp/nbs/nbo/base2/index.html

その中の、「解雇先行の危険性」という記事の中で、日本の解雇規制って、実は言うほど厳しくないんだよ、ということが書かれています。

・・・だが、中堅電子部品メーカーの人事担当部長である横田光男氏(仮名)は「クビにするのは簡単」と断言する。横田氏は350人いた社員のうち2年間で250人ほどを解雇した。

大企業の場合は、下手に解雇を宣告すればマスコミなどで話題にされ、企業ブランドを傷つけてしまいかねない。そのため、辞めて欲しい社員を自主退職に追い込む「追い出し部屋」のような手法が横行している(上の囲み記事参照)。だが横田氏は「中小企業なら、ブランドの毀損もそれほど気にすることはない」と言いきる。

250人にクビを宣告して、「4要件が成立していない」として裁判になったケースはたった1件。解決に必要な和解金は70万円だった。「日本人で会社を訴えようと思う人は少ないのではないか」(横田氏)。

日本における人材流動化の足かせになっていると言われる解雇規制。だが、「全体の大半を占める中小企業では、既に解雇が当たり前のように実施されている」(雇用問題に詳しいリクルートキャリアの海老原嗣生フェロー)というわけだ。

「中小企業ではスパスパ解雇してますよ」ということが、既にいちいち『日本の雇用終了』を引用なんかしなくても、常識化しつつあるということですかね。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/post-a1c3.html

こういうリアルな認識が、『日経ビジネス』誌でごく普通に語られるところまできたのだな、という一抹の感慨が・・・。

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2013年5月23日 (木)

柴田悠「いま優先すべきは「子育て支援」」@『g2』

Book13m_2講談社の『g2』という雑誌は、旧『月刊現代』の後継だそうですが、その最新号が「これでいいのか?アベノミクス」という特集を組んでいて、

http://g2.kodansha.co.jp/1251.html

そこに、「気鋭の社会統計学者」柴田悠さんの「いま優先すべきは「子育て支援」という文章が載っています。

古市憲寿さんがこうつぶやいているので、関心を持った方も多いのではないでしょうか。

https://twitter.com/poe1985/status/337087284086190081

今回の『g2』(vol.13)がとっても面白い。特に柴田悠さんの「いま優先すべきは「子育て支援」」。子育て支援・女性の労働参加、自殺予防対策こそが経済成長にプラスの効果を持つことを統計学的に実証。荻上チキさん的な人は、絶対に読んだほうがいいよ(エア呼びかけ)。

柴田さんが日本を含む先進18カ国のOECDや世銀の国際データを使って見いだした「経済成長を左右する5つの要因」とは?

1 「政府による老齢年金支出」が増えると、(同年の)経済成長率が下がる。

2 「政府による子育て支援現金給付支出(児童手当など)」が増えると、経済成長率が上がる。

3 (保育サービス拡充や介護サービス拡充などによって)「女性の労働参加率」が上がると、翌年の経済成長率が上がる。

4 「自殺率」が高まると、経済成長率が下がる。

5 「政府による開業奨励金支出」が増えると、翌年の経済成長率が上がる。

こうして柴田さんは提言します。

・・・安倍政権が「成長戦略」を掲げるならば、「規制緩和」によって民間投資を促進するだけでなく、「高資産高齢者への老齢年金給付」を削減し、浮いた公費で「子育て支援」(とりわけ保育サービスと児童手当)を全面的に拡充すべきだ。

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2013年5月22日 (水)

規制改革会議第2回雇用ワーキンググループ議事概要(濱口発言部分)

去る4月11日に規制改革会議第2回雇用ワーキンググループに呼ばれてお話しした時の議事概要が、内閣府HPにアップされています。

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg/koyo/130411/summary0411.pdf

そのうち、私のプレゼンテーションと、質疑応答のうち私に関わる部分を、こちらに載せておきます。

○濱口統括研究員 労働政策研究・研修機構の濱口でございます。

私からは、先ほど佐藤先生がお話されたことを若干、理念型的な形でお話をすることになろうかと思います。

本日のテーマとして与えられております限定正社員という言葉ですが、恐らくこれを外国人に説明するのは大変苦労すると思います。なぜかというと、この言葉は、限定されているのが特殊である。限定されていないのがデフォルトであるという発想を意識的、無意識的のうちに前提にしている言葉ですが、そして、それは実は、日本の2007年に改正されましたパート法8条1項の「通常の労働者」という概念が正にそれでありまして、外国人に通常の労働者とは何だという場合、それは無期契約で、直接雇用で、フルタイムであればそれは通常のレギュラーワーカーだろう。しかし、日本では、この3要件だけでは通常の労働者にしてくれないのです。何かというと、職務も無限定、勤務場所も無限定でなければ通常の労働者ではない。諸外国であれば通常の労働者と認められる職務や勤務場所が限定された労働者は、日本では通常ではない、アブノーマルなワーカーになってしまうという、恐らくそこのところの概念枠組みの違いというものから考えを始めないと、この問題はなかなか頭が整理されないのではないかと思っております。

その頭の整理のために、私はここ数年来、ややキャッチーな言葉ですが、メンバーシップ型とジョブ型という言葉を使っております。今週出た内閣府の成長のための人的資源活用検討専門チームの報告でも使われておりましたし、昨日の日本経済新聞の神林先生の経済教室でも使われておりましたので、結構使われてきているのかなと思います。

ジョブ型といいましても、必ずしも職務限定だけを意味しているのではなく、むしろ、職務も時間も、勤務場所も限定しているのがデフォルトルールだという、欧米のといいますか、実は、アジア諸国も基本的にはそうですので、日本以外の国々で、デフォルトであるものをジョブ型という形で概念化して、それに対して、職務や時間や空間が無限定であるのがデフォルトであるものをメンバーシップ型と概念化したものであります。

そして、何かというと、特に今日、大内先生が言われた解雇規制の関係でいわれる終身雇用であるとか、あるいは年功制であるとかといったもろもろのことは、そういった雇用契約の在り方、一般的には、就職ではなくて、就社だという言い方をすることもよくありますが、そこから導き出されるものだろうと思っております。若干、社会学的にいえば、恐らくそれはかつての専業主婦を前提とした、成人男子が深夜までも働くし、どんな場所でも行けと言われれば行くという、そういった働き方を前提とした時代に構築されたものだろう。そういう意味からいうと、男女共同参画が進んでくる中では、メンバーシップ型の枠組みと現実社会との間に徐々に矛盾が出てきているのは間違いないことだろうと思います。

ただ、一方で、賃金制度として一種の生活給、中高年になれば、子供の教育費や住宅費まで賄えるだけの賃金を支払うというものと社会学的には実はつながっておりますので、そう簡単にそれを変えることもできないという実態があるのだろうと思います。

その結果として、とりわけ90年代以降、何が進んできたかというと、かつては、正に会社の中で中核的に働くような方々は、基本的に全部、正社員として無限定的に働いて、一部のその外側の方々は、基本的に主婦パートや学生アルバイトあるいは高齢で引退後の働き方という形で、そういった安定がそれほど必要でない方々をテンポラリーなところにはめ込むという形で、社会全体としてはうまく回っていた。

ところが、90年代以降、本来、正社員になりたいと思っていた方々がそこからはみ出す形で、佐藤先生がよく使われるグラフでいうと、かつて1割ぐらいだったものがどんどん増えていって、いまや3割を超えて4割近くになっている。これをどうするかが現在、大きな問題なのだろうと思うのです。

ただ、そこでその処方箋に行く前に、恐らく多くの方々がつい失念してしまうことを1点だけ注意喚起しておきたいと思うのは、実は、こういうメンバーシップ型のシステムは、先ほどパート法8条1項に初めて、メンバーシップ型を前提とした「通常の労働者」という概念が入ったのですが、しかし、その他の法律、民法から始まって、労働基準法、労働組合法、職業安定法、その他もろもろの法律は、実は、基本的には欧米にならって作った法律ですので、ジョブ型を前提に書かれております。細かいことはここでは省略いたしますが、それを現実のメンバーシップ型の雇用慣行と、いわば調整するために裁判所が苦肉の策として、もろもろの判例法理を作ってきたのです。

最近問題になっている解雇に関する、解雇権濫用法理自体はヨーロッパの正当な理由がなければ解雇できないこととほぼ同じですが、整理解雇に関する、いわゆる4要素と言われるもの、とりわけ解雇回避努力義務というものは、ジョブ型の立法とメンバーシップ型で動いている現実社会を調整するために作ってきたものです。

これは解雇だけではありませんで、時間外労働であるとか、あるいは遠距離配転についても、基本的に正社員であれば従う義務がある。従わなければ懲戒解雇もあり得べしと日本の最高裁が言っているくらい、非常に強大な、包括的な人事権を認める法理であるとか、あるいは就業規則の不利益変更についても合理性があれば認めるであるとか、入り口のところでも、新卒一括採用を前提とした形での、非常に包括的な採用の自由を認めております。

それに対応する形で、一旦雇い入れたら、なかなか外に出すわけにはいかないという、多分、本来の契約原理からすると、かなり乖離した判例法理を裁判所が作ってきたわけですので、そこだけ見て、裁判所が何か変なことをやってきたと思ってはいけないのです。むしろ、裁判所は現実社会に則した法理を構築してきたのだと考えるべきだろうと思います。

また、雇用政策も1960年代までは、職業能力と職種に基づく近代的な労働市場を作るのだという発想で、今でも技能検定という制度は、ずっともう半世紀前に作られたもので残っております。ところが、1970年代半ば、オイルショック以降は、雇調金に代表されるような雇用維持型の政策がとられてきたということだろうと思います。

それを前提に、では、これからどうしていくか。話としては、ここで話題になっている限定正社員、あるいは私も佐藤先生と同じで、準正社員とか中間型というのはよくない言葉だと思うのですが、私はそれを若干キャッチーな言葉でジョブ型正社員と呼んでいます。

これは職務限定というだけではなくて、先ほどいいました職務や時間や空間が限定されているのがデフォルトルールであるというのを分かりやすく使った言葉であります。こういったジョブ型正社員であれば、ジョブや勤務地、あるいは時間についても限定される。この時間限定というのはフルタイムでもいいのですが、日本のフルタイム正社員は単なるフルタイムではなくて、これはよく言うのですが、オーバータイムがデフォルトルールである。つまり、残業しないなどという労働者は、通常の労働者とは認めないというところもあるので、そうではなくオーバータイムのないフルタイムという意味です。

例外的な状況はもちろんあるわけですが、基本的には、それを超える義務はない。したがって、ここは労働者にとってメリットでありまして、その裏腹として、それを超える配転をしなければ雇用が維持されない状況であれば、雇用終了は当然、正当なものであるとなってくるだろう。

これは、日本的感覚から見ると、リストラを正当化するのかという話になるのですが、そもそも就社ではなくて、就職している人間から見れば、勝手に会社の命令でその職を変えられるなどという権利侵害がないことの裏腹として、その仕事がなくなるというのは、いわば借家契約で、その家がなくなったのと同じですので、そもそもそれは正当な解雇ということになるのだろうと思います。

もちろんその場合でも、例えばヨーロッパで見られるように、ジョブが縮小したのであれば、それをみんなでワークシェアリングで分け合うということはあります。むしろここで重要なのは人選基準です。ここは日本的なメンバーシップ型の発想では、リストラ解雇というのは、リストラを名目として、こいつはできが悪いから首を切るという話にどうしてもなりがちなのです。最近の議論でも、ちらちらとそういうものは出てくる。これは日本人にとって当たり前だからそうなるのですが、これをやると純粋に経営上の理由に基づいた解雇にはならなくなってしまいます。つまり、そいつが問題だから解雇だという話になるので、当然その理由が正当であるかないかが問われます。正当でなければ、アンフェアな解雇だという話になるので、そこのところの頭の整理がつかないまま議論をしてしまうとかなりまずいことになるだろうと思います。

どうなるかというと、要するにリストラ解雇というのは、リストラを名目として、お前は言うことを聞かないから首だということをやろうとしているのだと受け取られます。そうだとすると、それで解雇されてしまうと、正に会社からこいつは駄目なやつだとレッテルを張られたという話になるので、ますます猛然と抵抗することになります。

逆に言うと、リストラクチャリングによって量的にジョブが減るので、その部分が淡々と解雇されましたという話であれば、それはその労働者本人にとっては何らマイナスにはならないのです。

ここまでちゃんと頭の整理をして考えないと、欧米型のまともなジョブ型の議論をしているつもりで、実は、とんでもないあらぬ方向に議論が迷い込んでしまう可能性があることはぜひ念頭に置いていただきたいと思います。括弧の中の不当な解雇から保護されるべきことは、いずれの形態であっても当然というのはそういう意味であります。

あとは、佐藤先生が先ほど言われたように、基本的には、昨年の改正労働契約法で、有期から無期に転換をするという枠組みができたわけですが、何もこれは5年を待つ必要はないので、むしろ積極的に仕事がパーマネントである。もちろん経済状況や事業経営によっていつそれがどうなるか分からないけれども、当面、パーマネントであるならば、むしろこういう無期だけれども、ジョブ型の正社員といったものにどんどんしていくことを考えていいのではないか。また、現在、正社員になっているけれども、そういう無限定な働き方は自分にとって大変働きにくい。特に女性とか、あるいは男性でも、最近、特に介護との関係でいろいろな問題が出てきておりますので、そういう意味からも、準正社員という言葉はよくないので、『自壊社会からの脱却」(岩波書店)所収の「「ジョブ型正社員」の可能性」の最後でワークライフバランス正社員といったらどうかということも提起しておりますが、そういうことも考えてはいかがかと思っております。

時間がほぼ終わったのですが、試用期間についてもという話がありましたので、1点だけ申し上げます。

日本では、試用期間というのはあまり意味がありません。なぜか。そもそもなぜ試用期間があるかというと、ジョブ型の雇用契約を前提とすると、この仕事をできる人がいますかと募集し、はい、できますと応募し、それで雇いました。ところが全然できないではないか。これを確認するために試用期間があるわけです。ところが日本は、この仕事ができますといって入るのではないので、そういう意味では、試用期間の意味があまりない。では、あえて言えば何かというと、人間性が問題だと。実は、日本で試用期間切れで解雇した典型的な例は、学生時代に学生運動をしていたことを理由とするものです。試用期間中の話ではないのですが、最高裁は認めております。

ですから、これは実は、先ほどの話とも全部つながるのですが、日本で解雇というと、人間性の問題になってしまうのです。それをもし断ち切りたいのであるならば、そこはメンバーシップ型ではないということを明確にしなければ、永遠にこれはつきまとうということは念頭に置いていただく必要があると思います。もし、この仕事ができるかということで試用期間を設定する。そして、その間にこの仕事ができないと分かったからということで、本来からいえば、日本だって原則からいえばそうなっているはずなのですが、解雇がよりしやすいということであるならば、やはりそれは判定するのに10年も20年もかかるというのは当然あり得ないので、ヨーロッパの一般的な期間は、大体3カ月から6カ月、長くても1年となっているということは言っておく必要があるだろう。

あと、セーフティネットということでいうと、どうしてもお金の話が中心的に議論されるのですが、ここでぜひ申し上げておきたいのは、企業を超えた職業能力評価システム、日本版NVQというものが出たかと思ったら仕分けされたりという話もあってなかなか、これもある意味で、日本型のメンバーシップ型の感覚からいうと、何でそんな無駄なことをやるのだという話になるのだと思うのですが、それがないと、お金だけ出てもうしようがない。つまり、私は、この仕事ができるのだというものが企業を超えた形で認証されるシステムが確立されることが労働市場システムとしては、最大のセーフティネットであるということを申し上げておきたいと思います。

私からは以上でございます。

質疑応答から:

○大田議長代理 ありがとうございました。

限定正社員は今も行われていて、だんだん増えていって、それは人事管理上の問題であると。解雇回避努力義務の範囲が縮減されることは考えられるけれども、それも人事管理上のことが実質的に問われるだろうという話だったのですが、とすれば、限定正社員を導入するというときに、この規制改革会議は何をすればいいのでしょうか。

つまり、規制改革会議というのは、何かの規制を外したり、何かの規制を書いたりということになるのですけれども、何をすればいいのでしょうか。

・・・(佐藤、大内両先生の回答)・・・

○鶴座長 濱口先生、お願いします。

○濱口統括研究員 恐らく、この問題について若干誤解があるのではないかと私は思っております。つまり、何が規制なのかなのですが、御承知のとおり、労働契約法16条は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でない解雇は権利の濫用として無効であるとしか書いておりません。これを緩和するというのは一体どういうことなのか。客観的に合理的な理由がなくても解雇していいのだと書くのか。それは男を女に変える以外全てができる立法府ならやれるのかもしれませんが、恐らくそれは事実上、不可能だろうと思います。

何ができるのかというと、何が客観的に合理的な理由なのかということについての頭の整理。つまり、実は私が大内先生と若干違うのは、不明確なのかどうかということなのです。確かにある意味不明確なのですが、ただ、それは条文をどういじったところで明確になるものでもない。

つまり、先ほど来、頭の整理と申し上げているのは、こういう雇用契約であれば、恐らくこういうふうになるであろうと。もちろん、単に契約の条文ということではなくて、実際にそういうふうに人事管理を運用してくれるということまで含んだものなのですが、そういう約束で、実際、その仕事だけでずっとやってきたということであれば、こういうふうになるという頭の整理を、これは恐らく形はいろいろあるだろうと思います。例えば指針という形で示す。もちろん、厳密に言えば、指針が裁判官を拘束するかというと、それはしないのかもしれませんが、多くの場合、指針というのは判断の基準にしているところはございます。

恐らく、規制改革という言葉に厳密に当たるかどうか分かりませんが、やれることがあるとすれば、それはそういう頭の整理を国民に分かるようにするということでしょう。実は整理解雇4要素にしても、本来から言えば、あれは解雇権濫用法理を応用したものにすぎないはずなのですが、ややもすると、これは裁判官も含めて、4要件、4要素というものを処理の前提として、どのような会社であろうが、どのような雇用契約であろうが、それを一律に当てはめるとする嫌いもなきにしもあらずなので、それはそういうものではないよということを明らかにするという意味はあろうかと思います。

逆に言うと、それを超えて、何か契約法16条をいじれるかというと、それはむしろ無理な話ではないかと思っております。

・・・・・

○鶴座長 佐久間委員、お願いします。

○佐久間委員 ありがとうございます。

私の理解としては、まず、入口のところが課題に。濱口先生の資料の2ページ目に書いてあったジョブ型正社員の構築ということで、正にどういうふうに就業規則で書き、どういうふうに個別の契約なり何らかで法的に手当をすれば、まずジョブ型正社員ということが認められるのか、今、言われた指針でも、ひな形でも何でもいいのですけれども、そういうものがあって、それが一旦認められた後に、つまり、ここまでやれば、当然弁護士に頼めばすごいものができてしまいますけれども、そんなものは汎用性があるかどうかは別にして、ここまでやればジョブ型正社員になりますとなるのか。次に、そうすると、そこはメンバーシップ型の正社員とは条件が違ってくる。したがって、解雇のときの条件が違う。

次に、やはり分からないのは、ジョブ型正社員になったときに、ジョブの絶対量はここに書いてあるように縮小すればというところまでいくのか、ジョブがなくなればというのは分かるのですが、縮小するというのもある程度、もちろん他の要素は全部満たしたとして、差別がないとか、そういうのを満たしたとして、ジョブの絶対量縮小というのはどういうところまで行けばいいのかとか、そういうのがある程度はっきりしてくれば、多分企業としてはジョブ型正社員を整備していきやすくなるということではないかと思います。

○濱口統括研究員 まず第1点なのですが、実は今、佐久間委員が就業規則でということを言われたのが、正にメンバーシップ型社会の典型的な発想でございまして、雇用契約の中にほとんど何も書かれていない。私は「空白の石版」と申し上げているのですが、お前はこの会社の社員になるよとだけ書いてある。あとは何で決まるかというと、契約ではなくて、就業規則でいろいろ書いて、あとは命令でいく。

ところが、ジョブ型というのは契約そのものの性質で、つまり、契約書に不立文字で、この人はこの仕事だけですよ、あるいはこの場所だけですよと書いてしまうという話ですので、これは個別契約の話です。個別契約でそうするかしないかということ。あとは実際にそれで動かしているかということで、逆に言うと、就業規則に書いたから、ばさっとメンバーシップ型からジョブ型に変わるなどという性格のものではそもそもない。これはむしろ民法の契約の大原則に戻るのだろうと思います。

それから、ジョブの縮小をどこまで認めるか。これは実は、正にヨーロッパにおける、先ほど申し上げたように、整理解雇については手続規制になっているということで、裁判になったときにも、国によってさまざまなようですが、基本的には経営判断について裁判所はあまり介入しないというのが大原則のようであります。経営判断というのは経営者の専権であるので、その後は手続規制できちんと労使協議をやっているか。不公正な恣意的なことをやっていないかということで見ていくというのが一般的なやり方です。

ですから、これはある意味でパッケージの話になるのですが、経営判断について、逆に言うと、日本の場合、非常にメンバーシップ型で、そこが全部ある意味で本当にリストラする必要があるのかということを問い詰めるということから、そこまでいろいろ議論するということもあるのだろうと思いますが、そこは多分、これをまたどこまで書いていくかという話になるのですが、ジョブ型になっていくということを前提とすると、そこは恐らく基本的には経営判断を認めることになります。

逆に言うと、例えば経営上の理由だと言って解雇しながら、一方で、同じ職種で人を雇い入れているということになれば、これは正に禁反言ということになりますので、それは違うだろうという話になるのだろうと思いますが、実際に当該業務が縮小しているということであれば、恐らく一般的には認められることになるのだろうと思います。

・・・・・

○佐久間委員 1点、先ほどのジョブ型正社員のところで水町先生もおっしゃっていた4要素は、整理解雇の話ということでございますね。ですから、逆にジョブ型正社員というのが非常に増えていくと、整理解雇というよりも、パフォーマンスが悪いときに解雇できるということが非常に重要になってくるのですが、そこについてはやはりある程度整理してもらわないとなかなか予測可能性がない中で、もう個別訴訟で解決ということになってしまうので、その辺はどういうふうに考えておけばよろしいのでしょうか。どなたでも結構ですので、教えていただければと思います。

○濱口統括研究員 議論の方向性としてやや気になるのですが、どうやったら解雇できるかというところから話をすると、多分話はうまくいかないと思います。

大事なのは、労使双方が、こういう約束なのだから、こういうことで雇用が終了するのであれば、それはなるほどそうだなと納得するようなルールをどう作っていくか、あるいは明確化していくかということなのであって、今の話も、一般的にいいますと、ジョブ型であれば職務が明確であるわけで、当該職務ができないということは、恐らくそれができないのだったら、他に回せよという可能性がなくなるわけで、確かに解雇の可能性は高まるだろうと一般的には思います。

ただし、実は解雇規制というのは、基本的に欧米でも似たようなもので、非違行為と能力と経営上の理由というのが三大理由であります。その能力を理由にして解雇というときに、日本的なメンバーシップ感覚で物を考えるとかなり間違うのではないかと思います。

ジョブ型社会では、この仕事がこのようにできないということが正当な理由になるわけですが、逆に日本的なメンバーシップ型ですと、言わば人間性とか、みんなと仲良くしないとかというのが、つまりそういったことも含めて能力と判断される。とはいえ、解雇自体が非常に抑制されるので、それがゆえに大企業であれば簡単に解雇されるわけではないですが、中小零細企業になれば、実はそういう仲間と溶け込まないとか、言うことを聞かないという理由で割と解雇されている例は大変多くございます。

ジョブ型になるということは、そういう個々の仕事と直接関わらない人間性みたいなものを理由にした解雇は認められにくくなるということを理解していただきたいのです。つまり、会社だけにとって都合のいいようなルールもあり得ないし、労働者にとってだけ都合のいいようなルールもあり得ないというところから出発しないとまずいのではないかと思います。

以上です。

・・・・・・

○濱口統括研究員 ほとんど同じことなのですが、先ほど申し上げたように、これは契約の範囲内で何をどう変えるという話ではなくて、契約そのものの根幹をどうするかという話ですので、本人が嫌だというものを就業規則で勝手に変えるということは、実はそもそもあり得ない話だと思います。

鶴座長が言われた嫌だと言っている方々というのは、ある意味で当たり前で、昭和のメンバーシップ型の中でずっとどっぷりつかって、それがすばらしいのだと。どんなに深夜まで働いても、どんな遠いところに転勤させられても、それはありがたいことだと思って数十年来やってきた人が、今さらそれは実は不幸かもしれないと思うのはなかなか難しいので、そういう方がそういうふうに言われるのもある意味で当たり前ですが、それが全ての労働者の考え方というわけでもなかろうし、とりわけ女性やいろいろな家族、地域社会との関係でいろいろ働いている方々にとっては、正に本人の選択としてどちらが望ましいかということだと思います。それは、むしろ誠実にそういうふうに説明していく話なのかと思います。

・・・・・・・

○佐々木委員 今日はどうもありがとうございます。

いろいろ本当は聞きたいことがあるのですけれども、1つだけ、試用期間についてお尋ねしたいと思います。

規制改革会議ですから、先ほど大田議長代理もおっしゃったように、これを変えれば、より経済が発展する。労働もしやすくなるというところの視点なのですけれども、3つ質問があります。

1つ目は、今現在は、試用期間の最中であっても、実際には試用期間終了、それを解雇と呼ぶのか、契約終了と呼ぶのか、あまり条件に差がないと理解しているのですけれども、それはそのとおりでしょうか。

2つ目は、つまりそうであった場合に、企業側とすると、新しい正社員をいきなり雇うことが今、大変難しい。それは、試用期間といえども、なかなかうまくいかないと思ったときに、やはり取り消しましょうという話がうまくいかないために、一気に正社員というものを採りにくいという現状があると私は理解しています。例えば試用期間というものを仮に先ほどのヨーロッパの事例の最長が1年間だとすると、1年間の有期雇用の試用期間を正社員の試用期間ではなくて、正社員として見込んでいる人を1年間有期雇用としてお互いに契約をして、その途中で正社員という、いわゆる試用期間なしの正社員として採用するかもしれないという少し合理的な試用期間の考え方、両者にとってある意味でフェアな考え方というのは法的に難しいのでしょうか。

3つ目は、先ほど仲間とかかわらないというところでは、ジョブジョブディスクリプションに反するので解雇できなくなるのではないかというお話が出たのですが、ジョブといったときに、やはり経営側や組織側からすれば、チームワークというのは1つの機能にもなるかと思う中で、コミュニケーション能力というのを今後限定にしたり、ジョブといったときに、どの程度法的には入れることが可能か、あるいは不可能なのか。

この3つを教えてください。

○濱口統括研究員 1点目、2点目は、先ほど申し上げたことの繰り返しになるかと思いますが、実は日本も法的な基本的な枠組みは同じで、試用期間というのはあります。そして試用期間というのは、言わば解雇権を留保している。

ただ、実態的にはなかなか難しい。難しいというか、正に就職ではなくて就社なので、この仕事ができますねといって雇ったのならば、その仕事ができないねというのが正当な理由になりやすいのですが、そうでない、むしろ大学校時代に勉強したことは全部忘れてこいと。一から教えるといって雇って、それで試用期間に駄目だというのは、それはお前の教え方が悪いのだろうという話に論理的になる。

つまり、何か解雇規制という外在的なものがあって、それによって企業が縛られるというイメージがかなりの方にあるようなのですが、それは間違いです。もしそれが厳しいとすれば、それは企業がみずからやっているメンバーシップ型の人事管理のやり方がみずからに対して解雇規制が厳しくなるようにしているだけなのです。これは一般的な解雇の話もそうですし、この試用期間についてもそうだろうと思います。

逆に言うと、正にチームワークとか何とかという観点で、学生時代に学生運動をやっていたというような、恐らくこれは外国人から見ると全く理解できないと思うのですが、それが正当な理由になったりいたします。

そういう意味からすると、正に頭の整理をし、それを国民に対して示すことによって、この試用期間というのは、この仕事で雇ったのだから、この仕事ができるかできないか。その判断を会社としてしましたと。それであるならば、それは当然そんなに長いことはないので、一定期間ということになるでしょうという話になるのだろうと思います。

最後の点は、外国の方々にその話をすると、よほど特殊な、顧客との関係では若干あるのかもしれないですが、仲間との関係で仲良くやれる能力ということをここに持ってくるというのは、多分理解されないだろうと思います。社内的なコミュニケーション能力というのは、やはりメンバーシップ型を前提としたものであると私は思います。それならそうと割り切って、メンバーとして扱うべきでしょう。

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2013年5月21日 (火)

「限定正社員」是か非か@『サンデー毎日』

Cover本日発売の『サンデー毎日』6月2日号は、でかでかと載ってる政治系の記事はともかく、「「限定正社員」是か非か」という小さめの記事が注目です。

http://sunday.mainichi.co.jp/

正社員でも残業、異動なし

「限定正社員」是か非か

スペシャリスト養成、非正規社員救済のはずが、正社員リストラ先に

ということで、わたくしも取材を受けて2カ所で登場しています。

・・・限定正社員とは、端的に言えば勤務地、職務や労働時間が限定された社員のことだ。独立行政法人労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎統括研究員が説明する。

「伝統的な正社員のイメージは、勤務地、職務や労働時間が無限定というものですとかく正社員と非正規の二者択一だと思われがちですが、これは必ずしも労働法制が想定した形ではありません」

・・・労働者が「首都圏以外の地方に転勤したくない」「経理職以外はしたくない」と主張し、会社が合意すれば労働契約に盛り込めばいい。これが、法が予定する労使の姿だ。

「現実には、日本の労働者は会社に勤務地や職務などの労働条件を守ってもらうより、解雇されない方を重視したのです」

つまり、現行法でも限定正社員は可能だ。・・・

この後、実例や、小林美希さんの懸念の声などがあって、再度私が登場します。

・・・前出の濱口氏は「基本的には望ましい制度と思う」としつつ、不安を口にする。

「労働契約に『限定』とあれば解雇しやすいと間違った理解をする人が多いのが問題です」

誤解が広まれば、正社員を限定正社員に転換し、思うままに解雇する「リストラ先」になりかねない。スペシャリスト養成の意義は骨抜きになる・・・

Hanging

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2013年5月20日 (月)

岩波だけあって油断してると字面を撫でるだけになってしまうが

久しぶりに、拙著『新しい労働社会』と『日本の雇用と労働法』に対する短評がブクログと読書メーターにアップされていました。

まずは「かいちょーさん」。

http://booklog.jp/users/midwhite/archives/1/4004311942

131039145988913400963岩波だけあって油断してると字面を撫でるだけになってしまうが、それだけ内容の濃い本だった。
労働に関する諸問題として、労働時間や賃金、生活給制度、非正規労働、労働紛争など幅広くカバーしている。

著者が冒頭に述べている通り、国際比較と歴史的パースペクティブを軸に論を展開しているので、歴史や法律、欧米の事例といった話が主。
とりあえず幅広い現状が知りたい人にはオススメ。

「岩波だけあって油断してると字面を撫でるだけになってしまうが」というあたりが、いささか意味不明感も漂いますが、まさに局所的にではなく労働問題を幅広く総体的に取り上げるのが目的でしたので、的確に捉えていただいています。

もう一つは、「だるい」さん、

http://book.akahoshitakuya.com/u/49386

112483「新しい労働社会」を読んだ時にも感じたが、日本で働くのはままならないな。そして、正直なところ、変わる気がしない。/「新しい労働社会」より、こっちのほうが良い本のように思う。/しかし組版はなんとかならなかったのか・・・

組版に問題がありましたでしょうか・・・。

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2013年5月16日 (木)

『大学とコスト―― 誰がどう支えるのか』

0286130岩波書店の「シリーズ 大学」の第3巻『大学とコスト―― 誰がどう支えるのか』をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/7/0286130.html

法人化を機に公費依存の財政運営に変容を迫られる国公立大と,学生納付金・民間資金に6割を依存する私大.大学が国家の枠を超えて活動し,社会への貢献を問い直されるなか,巨額化する運営コストを支えるための具体的な方策とは? 国際比較もふまえ,公的支援の論理,民間財団など中間支援組織のあり方,奨学金制度の課題等を論じる.

内容は次の通りですが、

1 社会は大学のコストを支えていくことができるか  (京都橘大学:財政学)阪本 崇

2 高等教育への公財政支出の変容  (広島大学高等教育研究開発センター:高等教育論)丸山文裕

3 大学財政の日本的特質  (東北公益文科大学:高等教育論)水田健輔

4 大学の教育費負担  (東京大学:高等教育論)小林雅之

5 公益と私益をつなぐもの  (上智大学:科学技術政策)上山隆大

6 費用負担のミステリー  (桜美林大学:教育経済学)矢野眞和

かつて日本学術会議の大学と職業の接続分科会でご一緒させていただいた矢野さんの費用負担のミステリーが面白いです。何がミステリーか?なかなか深刻な問題が提起されているのですよ。

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規制改革の本丸は物理的労働時間規制の強化だ@『情報労連REPORT』5月号

2013_05『情報労連REPORT』5月号に掲載した「規制改革の本丸は物理的労働時間規制の強化だ」です。

 昨年12月に安倍政権が誕生してから、矢継ぎ早に規制改革の動きが繰り出されています。労働界は総じてその動きに批判的なようですが、筆者から見る、それとは違う重要なポイントもあります。

 労働界がもっとも懸念を表明しているのは、いわゆる解雇規制の問題であるようですが、少なくとも経済財政諮問会議と規制改革会議が提示している論点を見る限り、そこで論じられているのは、今までの無限定正社員(筆者のいう「メンバーシップ型正社員」)と非正規労働者の二極化を克服し、欧米で一般的な職務や勤務場所が限定された正社員(筆者のいう「ジョブ型正社員」)を導入することを前提として、労働者の義務が無限定なるが故に整理解雇の際にもジョブを超えた配転によって雇用維持が求められる現在の判例法理から、ジョブの範囲で雇用が守られる仕組みへのシフトであって、一部で叫ばれている「解雇自由化」とは異なる観点も含まれていると考えるべきでしょう。雇用の安定とワークライフバランスのどちらを選ぶかは、労働者の選択の問題であって、昭和オヤジ感覚だけが正しいわけではありません。

 しかしながら、その規制改革会議の論点には見過ごしにできない問題も多く並んでいます。冒頭から、企画業務型裁量労働制の対象業務・対象労働者の拡大、手続の簡素化、事務系や研究開発系に適した労働時間制度の創設等々、かつてのホワイトカラーエグゼンプションの失敗にあまり学んでいないのではないかと思われる項目が並んでいます。そして、例によって「多様で柔軟な働き方」というフレーズでそれらが正当化されています。

 しかしながら日本においては企業にとって柔軟な働き方が求められ、欧米のジョブ型労働者にはあり得ないような長時間労働を日本のメンバーシップ型正社員が甘受してきたのではないでしょうか。そして、そういうワーク・ライフ・「インバランス」な働き方と引き替えにジョブを超えた雇用の安定が与えられる日本型正社員に在り方に疑問が呈されてきているからこそ、上述のような多様な正社員の議論がなされてきているのではないでしょうか。

 その意味で、今日正社員の在り方の見直しの一環として何より求められることは、労働時間規制の緩和などではなく、これまで日本型雇用慣行への悪影響を理由にほとんど手がつけられてこなかった物理的労働時間規制を強化することだと思われます。筆者はこれまでもその第一歩として、EU型の休息時間規制(勤務間インターバル規制)を導入すべきとの論を張ってきました。

 情報労連傘下の組合は、その点で他の組合をリードしてきた実績があります。労働者にとって真に守るべき利益はなにか、男女両性、全世代の労働者の意見を踏まえて改めて議論すべき点だと思います。

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2013年5月15日 (水)

溝上憲文『非情の常時リストラ』

9784166609161労働ジャーナリストの溝上憲文さんから『非情の常時リストラ』(文春新書)をお送りいただきました。

http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784166609161

仁義なきリストラ時代をどう生き抜くか?

もはや社員はコストでしかない。狙われやすいのはどんな人か。人事部取材歴30年のジャーナリストが厳しい選別社会の実態を明かす。

「慎重に検討しましたが、社内にあなたの経験と能力を十分に活用できる場がなくなっています」。リストラ担当マニュアルに書かれている最後の決めゼリフだそうです。では、どのような人がリストラ候補に挙がるのか? 評価の基準は? 給与との関係は? ここ数年間で極めてドライになった会社と社員の関係。社員を厳しく選別する新しい基準が次々に導入されています。会社はあなたをどうしようとしているのか。人事のプロが教えます。(MR)

最後の第5章「解雇規制緩和への流れ」の中で、40歳定年制への批判としてわたくしの発言が引用されています。

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上林陽治『非正規公務員という問題』

Photo0869昨年『非正規公務員』(日本評論社)を出された上林陽治さんが、そのより一般向けのバージョンということで、岩波からブックレットとして『非正規公務員という問題』を出され、わたくしにもお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/2708690/top.html

労働規制緩和の波のなか,ムダの象徴として公務員の数の多さがしばしば槍玉に挙がります.しかし,安定した職種だというイメージが強い地方公務員の,実に3人に1人が今や非正規の職員だということをご存じでしょうか(2012年自治労調査).総務省の2005年の調査では,非正規公務員の割合は約15%でしたので,その数は急激かつ確実に増えていることになります.非正規で働く公務員は,保育士や図書館職員,公立学校の教師やハローワークの相談員など,幅広い職種にわたります.

非正規公務員が増えた背景には,正規公務員の減員,地方財政の逼迫,そして,それと裏腹に増加する行政サービスへの需要があります.その処遇は,フルタイムで1年間働いたとしても,ワーキングプアのボーダーラインである年収200万円に届かない人がほとんどです.しかも,1回の任用期間は大半が1年以内で,任用回数の上限を定めている自治体も多いというのが現状です.

市民の日常を支える地方公務員が不安定な労働環境におかれている実態を伝え,課題を明らかにします.

前著の時に紹介で書いたことに特に付け加えることはなく、今こそ是非読まれるべき内容です。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/post-a1a9.html(上林陽治『非正規公務員』)

実は偶々昨日、某所で公務員労働法制について講演する機会があり、一般労働法の世界では集団法は閑古鳥が鳴いて個別法ばかり人気があるのに(まあ、それも問題ですが)、なぜか公務員法制は集団的労働法の改正ばかりが政治課題になったりつぶれたりで、一番肝心な個別労働関係の根幹に関わる部分が等閑視されているのはおかしいんじゃないですか?みたいなことを喋ってきたばかりなんですね。

なお上林さんは来月刊行される『季刊労働法』の次号に、「非正規公務員と改正労働契約法の適用問題」という論文を書かれているそうです。

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2013年5月14日 (火)

NHK視点・論点「日本型雇用を考える」

去る5月7日に放送されたNHK視点・論点の「日本型雇用を考える」のスクリプトです。

http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/155509.html

 昨年末の総選挙で自民党が大勝し、第二次安倍内閣が成立してから、経済財政諮問会議、規制改革会議、産業競争力会議など、官邸主導のさまざまな会議が復活・新設され、規制緩和をめぐる議論がかまびすしくなっています。その中でも、とりわけ解雇規制の緩和をめぐっては、マスコミでもややセンセーショナルに取り上げられる傾向があり、必ずしも正しい認識で議論が進められない恐れがあるように思います。本日は、賛成論からも反対論からも、ややもすると解雇を自由化するものであるかのように思い込まれている解雇ルールをめぐる議論の筋道を明確に解きほぐし、この問題をどのように論ずるべきかを示していきたいと思います。

 この問題を考える出発点は、日本の「正社員」と呼ばれる労働者の雇用契約が世界的に見て極めて特殊であるという点です。諸外国では就職というのは文字通り「職」、英語で言えば「ジョブ」に就くこと、つまり職務を限定して雇用契約を結ぶことです。通常勤務地や労働時間も限定されます。それに対して日本の「正社員」は、世間で「「就職」じゃなく「就社」だ」といわれるように、職務を限定せずに会社の命令次第でどんな仕事でもやる前提で雇われます。また勤務地や労働時間も限定されないのが普通です。こういう「無限定」社員を、われわれ日本人はごく当たり前だと思っていますが、実は世界的には極めて特殊なのです。

 そういう日本型「正社員」は、たまたま会社に命じられた仕事がなくなったからといって簡単に解雇されません。なぜなら、どんな仕事でも、どんな場所でも働くという約束なのですから、会社側には別の仕事や事業所に配転する義務があるからです。これを労働法の世界では、解雇回避努力義務といいますが、それは「就職」ではなく「就社」した人々だからそうなるということは理解していただけるでしょう。

 一方、学校を卒業したときに日本型「正社員」になれなかった若者は、仕事も時間も場所も限定された非正規労働に就くしかありませんが、正社員が標準だった時代に作られた非正規のモデルは主婦パートや学生アルバイトが前提で、賃金労働条件は低いし雇用は極めて不安定です。彼らには短期間の雇用契約を繰り返し更新して事実上長く働き続けている人々が多くいますが、仕事があってもちょっとした理由でいつ更新されずに雇い止めになるかわからない状態です。

 つまり日本には、その仕事がなくなっても会社内に回す余地があれば雇用が保障される「正社員」と、その仕事があってもいつ雇用が打ち切られるかわからない「非正規労働者」という二つの極端なモデルしかありません。欧米で「就職」した普通の労働者のように、その仕事がある限り雇用が保障され、まっとうな水準の労働条件を享受できる人々がほとんどいないのです。この状態を何とかしなければならないというのが、現在の問題の出発点です。

 政府の会議の中でも、経済財政諮問会議と規制改革会議は、まさにそういう問題意識から議論を展開しています。いずれも、正規と非正規の二元的システムではなく、勤務地や職種が限定されているジョブ型のスキル労働者を創り出していくことから話を始めています。そして、その仕事や事業所がなくなったり縮小したときに、契約を超えた配転ができないがゆえに、整理解雇が正当とされるという筋道で議論を展開しようとしています。

 ところが同じ政府の産業競争力会議では、そういう前提抜きに現在の日本の解雇規制が厳しすぎるとして、その緩和、あるいはむしろ自由化を求める声が出ているようです。一部のマスコミでも、そういう認識に基づいた解雇自由化論を唱える向きもあるようです。しかしながら、その認識は正しくありません。なぜなら、日本の法律自体は、なんら解雇を厳しく規制していないからです。

 日本の労働契約法第16条は「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」解雇を無効としていますが、似たような規定はヨーロッパ諸国にも見られます。違うのは、何が客観的に合理的であり、社会通念上相当であるかという点です。それは、その雇用契約が何を定めているかによって、自ずから変わってくるのです。

 欧米で一般的な「ジョブ」型の雇用契約では、同一事業場の同一職種を超えて配転することができませんから、労使協議など一定の手続を取ることを前提として、整理解雇は正当なものとみなされます。それに対して日本型「正社員」の場合は、雇用契約でどんな仕事でもどんな場所でも配転させると約束しているため、整理解雇はそれだけ認められにくくなります。

 日本は解雇規制が厳しすぎるのではありません。解雇規制が適用される雇用契約の性格が「なんでもやらせるからその仕事がなくてもクビにはしない」「何でもやるからその仕事がなくてもクビにはされない」という特殊な約束になっているだけなのです。ヨーロッパ並みに整理解雇ができるようにするためには、まず「何でもやらせる」ことになっている「正社員」の雇用契約のあり方を見直し、職務限定、勤務地限定の正社員を創り出していくことが不可欠の前提です。

 さて、ここまで述べてきたことは、実は出るところへ出たときのルールに過ぎません。年間数十万件の解雇紛争を労働裁判所で処理している西欧諸国に比べ、日本で解雇が裁判沙汰になるのは年間1600件程度に過ぎません。圧倒的に多くの解雇事件は法廷にまでやって来ないのです。明日の食い扶持を探さなければならない圧倒的多数の中小零細企業の労働者にとって、弁護士を頼んで長い時間をかけて裁判闘争をするなど、ほとんど絵に描いた餅に過ぎません。

 それに対して、全国の労働局に寄せられる個別労働関係紛争の数は膨大です。解雇など雇用終了関係の相談件数は年間10万件に上りますが、そのうちあっせんを申請したのは約4000件弱です。わたくしは2008年度にあっせん申請された事案のうち1144件の実態を調査し、報告書にまとめました。そこには態度が悪いからとか上司のいうことを聞かないからといった理由による解雇が山のように並んでいます。雇用契約がどんな内容であったとしても、どうみても「客観的に合理的な理由」があるとは思えないような解雇が、ごく当たり前のように横行しています。しかもあっせんは強制力がなく任意の制度なので、申請された事案のうち約3割程度しか金銭解決していませんし、その水準は平均17万円と極めて低いのです。日本の大部分を占める中小企業レベルでは、解雇は限りなく自由に近いのが現状といえます。

 こういう社会の実態を見れば、近年解雇規制緩和の一つの象徴のように批判されている金銭解決制度の持つ意味が浮かび上がってきます。どのような規定になるかにもよりますが、例えばドイツでは無効な解雇の場合の補償金は、年齢によって12か月分から18か月分ですし、スウェーデンでは勤続年数によって6か月分から32か月分とされています。多くの中小企業労働者にとっては、こちらの方が遙かに望ましいのではないでしょうか。

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2013年5月 9日 (木)

職場におけるパワハラ対策―労働組合の取組み@『労働法律旬報』1791号

Rojyun1791『労働法律旬報』1791号(5月上旬号)は「職場におけるパワハラ対策―労働組合の取組み」の大特集です。

http://www.junposha.com/catalog/product_info.php/products_id/837?osCsid=0da80e9839adfe113ca080ffb14ae555

[特集]職場におけるパワハラ対策―労働組合の取組み
パワーハラスメントが問いかける職場の課題=金子雅臣・・・06
職場のいじめ・嫌がらせ、パワーハラスメントに関する労働組合の取組み―現状と促進の方向性=内藤忍・・・09
UAゼンセンにおけるパワーハラスメント対策=千頭洋一・・・14
自治労パワー・ハラスメント一〇万人実態調査の取組み=西田一美・・・19
パワーハラスメントの一掃―人権の息づく職場と社会の実現めざして=渡邉一博・・・26
パワハラ防止規程の取組み=梯俊明・・・31
ハラスメントは「解決すべきもの」ではなく「発生させないこと」=山下雅弘・・・36
グンゼ労働組合におけるパワー・ハラスメント防止に向けた取組み=内藤達也・・・38
連合の労働相談キャンペーン「職場のパワーハラスメント」について=村上陽子・・・40
モラル・ハラスメント電話相談の現場から=長尾香織・・・42
労働組合・医師・弁護士・心理職らが力あわせて=清水良子・・・44
労働組合における職場いじめ相談への対応の現状と課題―「会社ぐるみ」のいじめへの対応を中心に=杉村めぐる・・・46
厚生労働省によるパワハラ実態調査の概要と今後の取組みの検討=長沼裕介・・・54

最近は、労働法雑誌がしばしば職場のいじめ・いやがらせ・ハラスメントを取り上げますが、労旬もその例に漏れず、今回は労働組合の取り組みという観点からの特集です。

前後を主にJILPTでこの問題に取り組んでいる研究者がはさみ、その中に労組やNPOの担当者の文章が並んでいます。

JILPTからは、最近この問題の「顔」になっている内藤忍さんが総括的な文章を書き、後ろの方では社会学系の杉村めぐるさんがユニオンの取り組みを、心理学系の長沼祐介さんが厚労省実態調査の分析を行っています。

産別からはUAゼンセン、自治労、生協労連、映演労連、単組からはヤナセ労組、UAゼンセングンゼ労組、連合からは非正規センターの村上陽子さん、そして二つのNPOの方の文章が並んでいます。

一昔前まではあまり議論にもなっていなかった職場のいじめ問題が、いまや専門誌で繰り返し特集されるほどの大きなトピックになってきたことを、ひしひしと感じられるでしょう。

なお、JILPTの雑誌でも近々この問題の特集(国際シンポジウムの記録)がされる予定ですので、その際にはまたご紹介します。

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2013年5月 6日 (月)

『日本の雇用終了』書評いくつか

1120501185月に入って、拙著『日本の雇用終了』に対して2人の社労士さんによる書評がアップされています。

まずは、wadamyこと和田泰明さんの「HUREC AFTERHOURS 人事コンサルタントの読書備忘録」。これは和田さんの膨大な書評サイトで、旧著『新しい労働社会』も書評していただいておりますが、今回は『日本の雇用終了』について。

http://hurec.bz/mt/archives/2013/05/1875_font_colorblue_201203.html労働法から遠い世界にある雇用終了の実情? 判例規範とは別ルールが存する「あっせん」の場の実態を示す。

労働政策研究・研修機構の編集による本ですが、実質的には同機構統括研員の濱口桂一郎氏の執筆によるものです。労働局の個別労働紛争のあっせん事例の紹介が本書の大半を占めますが、今まであまり触れられることのなかった実証的な記録であるとともに、日本の雇用社会の実態が浮き彫りにされていて興味深く読みました。・・・

と、拙著の明らかにしたことや主張していることを丁寧に説明していただき、最後に

濱口氏の本は、一般向けであっても堅めのものが多いのですが、本書は事例集なのでとっつき易く、また、著者なりの分析も簡潔明瞭で、企業規模を問わずお薦めです。

と言っていただいております。

もう一つは社労士の高井利哉さんのブログです。こちらは、解雇規制緩和論についての連続エントリの一環の中で、

http://takai-sr.blog.so-net.ne.jp/2013-05-02-1(解雇規制緩和⑥ 解雇無効の判決でも、目安の補償金を支払えば解雇できる制度の是非 [労働政策])

先日の東京大学社会科学研究所のシンポジウムの話題を語る中で、

・・・幾つかの講演の後、玄田有史教授(東京大学社会科学研究所)の司会で、パネルディスカッションが行われました。その時に、会場の参加者から、労働局の「あっせん」(個別労働紛争解決制度)の現状のついての意見が出されて、パネリストの一人であった濱口桂一郎氏が書かれた、労働局の「あっせん」制度の事例研究である「日本の雇用終了」が話題になりました。

・・・「あっせん」における解決金の水準は、この「日本の雇用終了」によって、その一部が初めて明らかにされました。

と紹介していただいております。

ちなみに、日本労働弁護団が4月23日に公表した「労働規制の緩和に反対し、人間らしい生活と労働条件の実現を求める意見書」の中でも、

http://roudou-bengodan.org/proposal/detail/post-46.php

・・・このように10年前に法制化された日本の解雇ルールであるが、特に中小企業の職場では殆ど守られておらず、多くの労働者が裁判を利用できず泣き寝入りとなっているのが実態である。増加を続ける労働相談の中でも最も多いのが解雇に関する相談であるが、妊娠をしたから解雇とか、協調性や能力がないから解雇とか、社長が気に入らないから解雇とか、理由の説明もない解雇など恣意的、理不尽な解雇が後を絶たない。平成22年度の都道府県労働局の民事上の個別労働紛争相談件数は24万件を超え、そのうち解雇に関するものが21.1%を占め最も多いが、あっせん申請まで行ったのは2400件弱に過ぎない。しかし労働局のあっせんは任意の手続きであり参加を強制できないので、事案の4割は会社側不参加で終了しており、解決に至るのは全体の3割でしかないのである(以上の実情は濱口桂一郎「日本の雇用終了」参照)。肝心の裁判については、2006年に労働審判制度がスタートしたことにより、以前に比べて裁判所を利用しやすくなったものの、それでも年間の労働裁判件数は7000件台に止まっており、日本より労働者数が少ない英独仏等の年間数十万件とは桁違いに少ない状態にある。このように、日本の解雇ルールは、法律の上で存在しながらも十分に機能していないというのが実態であり、むしろ法の支配の観点からは、泣き寝入りを防ぎもっと裁判を利用できるような制度改革やインフラ整備こそが求められているといえよう。

      このように、ただでさえ解雇ルールが守られていない中で解雇の規制緩和を行えば、底が抜けたように理不尽な解雇が横行することは必至である。解雇の金銭解決制度を  始めとした解雇ルールの規制緩和は、半世紀に及ぶ時代の変化を背景として、労使の非対等性を踏まえた利益考量の下で形成発展してきた判例の解雇権濫用法理、そして、これを労働契約法に成文化して解雇権の濫用から労働者を保護するとしてきたこれまでの解雇ルールの発展の経緯を無視するものであり、法の支配に反し時代に逆行するものであって、断じて許されてはならない。

と使っていただいております。

政策研究は、政策論議のために使っていただいてなんぼですから、こうやって使っていただけるのは嬉しいことです。

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2013年5月 5日 (日)

OECD『バック・トゥ・ワーク』韓国編

812013031mOECDのサイトに、「Back to Work Korea: Improving the Re-employment Prospects of Displaced Workers 」がアップされました。

これは「バック・トゥ・ワーク」という国別調査研究プロジェクトの第一冊目と言うことのようです。

http://www.oecd.org/els/emp/backtoworktheoecdreviewondisplacedworker.htm

「バック・トゥ・ワーク」って、どう見ても「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を意識してますけど、まあ文字通り、失業状態から仕事に戻そうという政策課題を言い表した言葉でしょうね。

Workers who are involuntarily displaced from their jobs can face long periods of unemployment. Wages also tend to be lower once they find a new job, especially when they are unable to find a new job in the same occupation as their pre-displacement job or in occupations using similar skills. Helping displaced workers back into work quickly and minimising the income losses they face is therefore an important challenge for employment policy. This series of reports provides new empirical evidence from a comparative perspective on the incidence of displacement and the risk displaced workers subsequently face of a long spell of unemployment and large wage losses when re-employed. It also identifies the main labour market programmes providing help to these workers and assesses how adequate and effective they are. Policy recommendations for further action are presented.

不本意にその職から離職した労働者は長期の失業に直面する。新たな仕事を見つけても、とりわけ離職前の職や同じようなスキルを用いる仕事を見つけられなければ、賃金は低くなりがちだ。離職労働者が早急に仕事に復帰し、直面する収入減を最小限にすることは、それゆえ雇用政策にとって重要な課題である。この報告シリーズは、離職の発生と長期間の失業と再就職時の大幅な賃金減少二関する比較的なパースペクティブからの新たな経験的な証拠を提供する。それはまた、これら労働者に援助を与える労働市場プログラムを明らかにし、それらが以下に十分で効果的であるかを評価する。さらなる行動への政策勧告が示される。

と言うことで、このレビューに参加しているのは9か国のようです。

Nine countries will participate in the review: Australia, Canada, Denmark, Finland, Japan, Korea, New Zealand, Sweden and the United States. Once the country reviews are completed, a synthesis report will be prepared highlighting the main issues and policy recommendations emerging from the review.

9か国がこのレビューに参加している。オーストラリア、カナダ、デンマーク、フィンランド、日本、韓国、ニュージーランド、スウェーデン、米国。各国レビューが完了したら、レビューから生ずる主な問題と政策勧告を明らかにする統合報告書が準備される。

これから、日本版も含めて各国報告書が出されていき、その後統合報告書が刊行されるという段取りですね。


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2013年5月 4日 (土)

壺齋散人さんの拙著書評

131039145988913400963拙著『新しい労働社会』は2009年7月に出版されたもので、もうそろそろ4年になり、さすがに新しい書評はあんまり見当たらなくなりましたが、それでも、『世界』5月号に書いた解雇規制に関する論考を読んで、この4年前の拙著を読んで書評を書いて頂ける人が現れるのは、嬉しい限りです。

http://blog2.hix05.com/2013/05/post-423.html(続 壺 齋 閑 話)

Jigazouこの壺齋散人さんの自画像がブログのプロフィールに載っています。長く東京都に勤められ、「若者もすなるブログといふものを、翁もしてみんとてするなり」ということで、書き綴られているようです。

労働法学者の濱口桂一郎氏は、雑誌「世界」5月号所収の論文(「労使双方が納得する」解雇規制とは何か)の中で、安倍政権の中で議論されている解雇規制の緩和について、それが日本の雇用の歴史的な経緯を無視した乱暴な議論であり、国際的な解雇規制のあり方からしても問題が多いと指摘していたが、その論旨は労働法制にあまり詳しくない筆者などにも非常にわかりやすかった。そこで氏の論理の背景となっている考え方をもう少し詳しく知りたいと思って、「新しい労働社会~雇用システムの再構築へ」(岩波新書)を読んでみた。・・・

私の言わんとするところを的確に捉えて頂き、過分な評価を頂いております。

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『これからどうする 未来のつくり方』岩波書店

Book岩波書店のホームページに、6月12日刊行予定の『これからどうする 未来のつくり方』の案内がアップされています。

http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/0098900/index.html

228人が考える私たちのこれから

というわけで、その228人のうちの1人として、わたくしも1項目書いております。メジャーな方々はこのとおり:

Contents


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『日本労働法学会誌』121号

Isbn9784589035196『日本労働法学会誌』121号が届いております。

特集は昨年10月に学習院大学で開催された124回大会のメインテーマ「有期労働をめぐる法理論的課題」です。

報告者は有田謙司、唐津博、沼田雅之、小西啓文の諸氏。

わたくしは、質疑応答の中でちょいと食いついています。

なお、次回大会は今月19日に鹿児島大学で開かれることはご存じの通りです。紺屋博昭先生、ご苦労様です。

そのプログラムを確認の意味でここに挙げておきます。

http://www.rougaku.jp/contents-taikai/125taikai.html

1.受付開始 8:15~

2.個別報告 9:00~11:10 第一会場テーマ:「ハラスメントからの『人格的利益』保護―イギリスにおけるハラスメントからの保護法を素材として―」
報告者:滝原啓允(中央大学大学院)
司会:山田省三(中央大学)

テーマ:「イギリスにおけるハラスメントの法理―差別禁止法制における発展を中心に―」
報告者:内藤忍(労働政策研究・研修機構)
司会:島田陽一(早稲田大学)

第二会場テーマ:「企業組織再編と労働関係の帰趨-ドイツ法における実体規制・手続規制の分析」
報告者:成田史子(弘前大学)
司会:荒木尚志(東京大学)

テーマ:「平等な賃金支払いの法理―ドイツにおける労働法上の平等取扱い原則を手掛かりとして―」
報告者:島田裕子(京都大学)
司会: 村中孝史(京都大学)

3.特別講演 11:15~12:00 テーマ:「私の研究遍歴―労働者の人格権をめぐって―」
報告者:角田邦重(中央大学名誉教授)

4.昼食・休憩 12:00~12:50
5.総会 12:50~13:20
6.ミニ・シンポジウム 13:30~17:30 第一会場「職場のメンタルヘルスと法」司会:鎌田耕一(東洋大学)
報告者:水島郁子(大阪大学)
     坂井岳夫(同志社大学)
     三柴丈典(近畿大学)

第二会場 「公務における『自律的労使関係制度』の確立の意義と課題」 司会:根本到(大阪市立大学)
報告者:清水敏(早稲田大学)
     岡田俊宏(弁護士)
     下井康史(筑波大学)

第三会場 「貧困と生活保障-労働法と社会保障法の新たな連携―」 司会:石田眞(早稲田大学)
報告者:宮本太郎(中央大学)
     島田陽一(早稲田大学)
     菊池馨実(早稲田大学)
コメンテーター:野田進(九州大学)
         丸谷浩介(佐賀大学)

ちなみに、全く労働法の本質と関係ないことですが、私は小学3年生から中学1年生という多感(?)な時期を鹿児島市内で過ごしたこともあり、久しぶりに訪れる鹿児島の地に思いを膨らませております。


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誤解についての誤解または事件はどこで起こっているか?

大内伸哉さんが限定正社員についてさらに書かれていますが、

http://souchi.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/2-eafd.html(限定正社員について思うーその2-)

私は根本的誤解をしているらしいのです。あの濱口さんがそう言うのですから,そうなのでしょう。限定正社員について。でも,私は,どこを誤解しているか,よくわからないのです。

いや、ですから、なにを誤解しているかについての誤解、いわばメタ誤解なんですよ。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/post-1ca9.html(大内伸哉さんの根本的誤解)

ボタンの掛け違いは、そもそも、大内さんがこの議論を解雇法制をどうにかすることについての議論だと思っておられるところにあります。

・・・私はずっと消極意見というか,それは法律問題ではないよ,と言ってきました

いや私もまさに繰り返し、それは解雇法制の問題ではなく、雇用契約やその運用、つまり人事管理の問題だと言っているわけです。

つまり、解雇法制を変えるべきだと叫んでいる人々に対して、それは間違いだ、問題は雇用の在り方にあるのだと説明し続けているわけです。

だからこそ、わざわざワールドビジネスサテライトに、労働契約法第16条の条文をフリップで示して、「別に解雇規制が厳しいわけではないでしょう」と言っているわけで。

何でそんなわかりきった無意味なことを言うのか、と、大内さんは言うかも知れません。それは、それが日本労働法学会の総会であればまったくもっともです。

でも、世の中で勢いを得たがっている解雇規制緩和論や解雇自由化論は、日本労働法学会の総会で議論されているわけではありません。

労働契約法第16条の規定も知らないくせに、「日本の解雇法制は世界で一番厳しい」とか「労働契約法16条が諸悪の根源である」とか口走る人々がリードしているのです。

誤解についてのメタ誤解の根源は、おそらくここについての認識にあります。

大内さんにとっては、限定正社員というのは現に存在するし、それについての法的取り扱いも法律的には既に議論され解決済みであって、そんなものを解雇規制緩和論という看板を掲げている議論の土俵に持ちだしていること自体が訳の分からないふざけたものに見えるのだと思います。

それは、場面が日本労働法学会総会であればそのとおりですが、そうじゃない人々(大内さん自身も、目の当たりにされたはずですが)のとてつもない誤解を、教師の学生に対する目線でなく、納得して貰うように解きほぐしていくというのは、アカデミックな純粋性だけではなかなか難しいのだと思います。

世の中には、労働法についてとてつもない誤解をしている人や、誤解をさせようとしている人や、誤解をさせられている人々が山のようにいるんです。みんなが菅野労働法を身に付けてから議論をしているわけではないんです。

大内さんはたくさん労働法の解説書や入門書を書かれていますが、でもそれらは全て、学ぼうという志向性を持った読者を想定されています。でも、今の解雇規制の問題は、労働法を学ぼうなんて欠片も考えていない、労働法が諸悪の根源だと思い込んでいる人々に、そうじゃないということを説明するというしんどい作業なんです。

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2013年5月 3日 (金)

NHK視点・論点「日本型雇用を考える」のお知らせ

来週5月7日に、NHK総合テレビでは早朝4:20-4:30、Eテレではお昼の13:50-14:00の枠で、「視点・論点」が放送され、わたくしが「日本型雇用を考える」というタイトルでお話をします。

http://www.television.co.jp/programlist/detail.php?id=2000596784-552-1290-1367902200-1367902800&ref=guide24

中身は、まあ最近あちこちでしゃべっていることを、10分間ひたすら一人でしゃべっております。

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テレビ東京ワールドビジネスサテライトに出演しました

Kotani本日・・・じゃなく、もう昨日ですが、5月2日の11時ころから、テレビ東京ワールドビジネスサテライトに出演しました。キャスターはあの小谷真生子さん。

進藤です。現在、最後の打ち合わせ中です。
今夜のテーマは「解雇規制」。ゲストは労働問題に詳しい、労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎さんです。
解雇規制というと「解雇をしやすくする」というイメージが強くありますが、実際は「雇用の流動性を高めること」が最大のテーマだといいます。
なぜ雇用改革が必要なのか?
我々ビジネスパーソンに直結するテーマです。
私も今夜のゲストに疑問をぶつけたいと思います。

同番組のフェイスブックに、打ち合わせの時の写真が載っています。

https://www.facebook.com/wbsfan#!/photo.php?fbid=514537275274554&set=a.144806102247675.27971.140486669346285&type=1&theater

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世の中には「WBS.log」なるサイトがあるようで、昨日の私の発言がかなり逐語的に起こされています。

http://wbslog.seesaa.net/article/358405235.html(ワールドビジネスサテライト,5/2,ライジングジャパンゲストスペシャル、規制改革への提言,濱口桂一郎)

政府の産業競争力会議で
成長に向け雇用の流動性を高めていく考えを示した安倍総理

改革案を成長戦略に盛り込む方針だ

国際競争にさらされている民間経営者は
会議の場で日本の解雇規制は厳しいと主張

その一人

経済同友会 長谷川閑史 代表幹事
「雇用の条件もう少し明確にしてほしい」

成長し続ける日本になるため
いま雇用の在り方が問われている

きょうのゲスト
労働問題に詳しい

独立行政法人 労働政策研究・研修機構 濱口桂一郎 統括研究員

※インタビューは一部要約して書いています

雇用の流動性を高めるための雇用改革(規制改革会議 雇用WG)
1.正社員改革

  • 解雇ルールのあり方
  • 勤務地・職務制限の雇用ルール整備
  • 労働時間規制見直し

2.民間人材ビジネス業の規制見直し
3.セーフティーネットや教育訓練の整備・強化

Q.解雇ルールは産業競争力会議では後退しましたね

濱口
「後退という言い方は」
「”解雇規制を緩和するべきである”という考え方からして後退した」
「そういう言い方になると思うんですが」
「私はそもそも問題にすべき事は解雇規制の緩和であると思っていない」
「後退したと言われているが」
「それはむしろまともな議論に落ちつこうとしていると理解している」

そもそも日本の解雇規制が厳しいのか

労働契約法16条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、
社会通念上相当であると認められない場合は、
その権利を濫用したものとして、無効とする。

Q.日本では解雇規制は厳しい

「労働契約法16条を見る限り当たり前のことが書いてあるだけ」
「ヨーロッパのドイツ・フランス・イギリスにしろ」
「似たような規制を持っています」

「そういう意味では日本は解雇規制自体は厳しくないんです」
「逆にコレを緩和しようというのは」
「客観的に合理的な理由がなくても解雇していいと」
「法律で書くんですか私はそんなことはできないんじゃないかと思う」

「問題は日本の企業にとって」
「ある局面を捉えればヨーロッパと比べると厳しいのは事実なんです」
「解雇規制が厳しいのではなくて」
「解雇規制が適用される雇用のあり方」

「雇用契約のあり方が日本と欧米では違うんです」
「それがある局面で解雇がし難い元となっている」

Q.雇用のあり方の提唱をされていますね

「日本以外の国では就職というのは」
「ある職に就くということ」
「”この仕事できますか”というのに対して」
「”私できます”と就いていく」

「ソレをきちんとやっている限りは」
「なかなか解雇はされるわけはないんですが」

「その仕事がなくなったらどうなるのか」
「雇用契約の元がなくなるようなものですから」
「ある意味で解雇に正当性がある」

「解雇を規制している諸国でも整理解雇は」
「一番正当性がある解雇なんです」
「しかし日本は全く逆なんですよ」

「日本の場合就職ではなく就社」
「会社の社員になるという形で入ってきていますから」
「会社から言われた仕事がなくなれば解雇できるのかといえば」
「それは正当にならない」

「会社がどんな仕事でもやりますね」
「という約束で雇っているからなんです」

そのジョブ型正社員を取り入れている企業がある

東京・中央区
花王

ヒットした新商品のデザイン担当者による
会議が行われていました

社員に職歴を聞いてみました

社員1
「新卒で入社で21年間同じ部署」
「パッケージデザイナーとして働いている」

社員2
「6年前に新卒でパッケージデザイナーとして入社」
「ずっとこの道を極めて行きたい」

花王デザイン部門
新卒採用の時点で仕事内容を限定して採用

原則異動はなく
専門家としてキャリアを積む

花王 作成センター 多治見豊センター長
「一般職とは全く違った形で」
「(デザイン部門の)メンバーが採用係をやって」
「最終的な決定は私がする形」

ヒットに繋がったデザインの数々が
この職種別採用の専門集団によって生み出されました

花王
海外法人では
幅広い分野で職種別採用を行う

ただ日本では
職種別採用はデザインや技術など一部のみ

営業など多くの分野は職種別採用せず
入社後に異動もある

花王 人材開発部 松井明雄 部長
「労働市場の環境が日本と違う」
「全体の中で企業として同じ方向に進んでいく」
「完全な職種別採用でそれができないかというと」
「必ずしもそうではないが長期雇用で育てる過程においては」
「いろいろな部署を経験することが重要」

Q.このジョブ型正社員を分かりやすく教えてください

濱口
「基本的には仕事を限定して採用する」
「会社側も他の仕事をやらせることはできない」
「ということは+-両方ある」
「会社はイロイロな事に使いまわしたほうが便利だ」
「だからこそ普通の正社員はそういう風にやってきたんですが」
「その自由度がなくなります」

「その代わりその仕事が必要なくなれば」
「解雇が正当と認められる可能性は高まる」

「しかし一般的な解雇規制はなくならないわけですから」
「解雇が自由になることはあり得ない」

「労働者の方から見ると」
「いろいろ使い回されていい面もあるが」
「私がこれができますというのが身につかない」
「転職などのときにマイナスになる」

「+-の中で今後はどちらのプラスの方がより望ましいかと」
「いう事になるんだろうと思います」

Q.ジョブ型正社員の比率は

「ジョブ型正社員の比率の規定はないですし」
「ジョブ型でも他にまわさないという事も絶対ではない」
「明確なルールがあるわけではない」
「ソコを明確化して行こうというのがいま提唱されている事だと思う」

「例えばガイドラインという形で国民に示す」
「という事が考えられる」

Q.例えば正社員でいて・産休・育休などを経て
  ジョブ型正社員に変わって落ちついたら正社員に戻るのは可能?

「規制改革会議ではそういう意見も出てるんですが」
「私はソレはチョッと違うと思う契約そのもの土台の話なので」
「ジョブ型で入った人はずっとジョブ型で行く」
「正社員は正社員のままで短時間で働くのは今でもある」

「私の考えているジョブ型正社員は入口から出口まで」

「可能性としてあるのは不本意非正規」
「そういう方々を中途採用のジョブ型というのが1つの入口として」
「ありうるんじゃないかと思う」

Q.社会保障はある

「基本的には処遇にしろ保障にしろ」
「正社員並なんですよ」
「仕事内容・勤務場所が決まっている」
「それがなくなれば解雇の正当となる可能性が高まります」

Q.雇用形態を欧米型に振ったほうがいいんでしょうか

「アメリカみたいに基本的に解雇が自由が原則な国と」
「ヨーロッパみたいに解雇が規制されている」
「というのとでは若干違うんですが」
「レイオフについてはヨーロッパも発想は同じ」

「つまり仕事がないがゆえに整理解雇するのは正当で」
「ただ解雇する順番が原則決まっています」

「勤続年数の短い人から切っていく」
「逆に景気がよくなってきたら切られた人から順番に」
「また採用していくルールがありますので」

「その感覚が日本で一番少ないところ」

Q.企業側 雇用されている側にも歩み寄ったと考えてよろしいですか

「歩み寄ったかは分かりませんが」
「解雇規制そのものを緩和して自由化しようというのは」
「私から見て無茶な議論ではなくて」
「もう少し現実的な解雇したい側だけではなく」
「される側にも納得のいく解雇のルールのあり方をを考えていこうと」
「そういう方向に落ち着いてきたと思います」

Q.若者が守りではなく攻めでいけるには

「守りに成るのは当たり前で」
「攻めでというのは上の世代が無茶を言っている」
「なぜならば今の若者が置かれている状況は」
「今までの伝統的な正社員のモデルか」
「非正規仕事があってもいつ切られるかわからない」
「2者択一を迫られているんですね」

「その中で親や学校から非正規になるなと言われている」
「今までの伝統的な正社員になりたいのは当たり前」

「上の世代がソレに代わるモデルを定義しえていないから」

Q.スピード感を持って成長戦略につなげていくとしていますが
  来年度まで持ち越しそうですスピード感を持つには

「そもそも私は担当者じゃないので」
「意見を述べただけなのでどういう風に動いていくか分かりませんが」

「企業・働く側・国民がどれだけ問題意識を持って」
「やっていくかにかかってくる」

「物事を作るにしてもガイドラインを作るに過ぎないので」
「ソレを実行していくのは企業や労働者の側」
「スピード感というのは他の規制改革と同じように」
「行政が法律や政令を変えるという話ではない」
「という事を理解しておいた方がいい」

さらに、番組をご覧になりながらの労務屋@保守おやじさんのつぶやき:

https://twitter.com/roumuya

おお、WBSにhamachan先生が

流動化推しのWBSにhamachan先生??

ものの5分でジャブ型正社員の話まで来たがついてこられる視聴者はどれほどいるのでしょう。

hamachan先生の解説さすがいいですね!ただある程度の予備知識がないと難しいかも。

飛び石論から社会保障まで、短い時間で大変だ。事前にかなりシナリオが練りこまれている感。

WBSの視聴者層を考えると、なかなか有意義な企画のような気がします。

市川真一氏が米国の話も持ち出してきたし、論点幅広でいいのでは。hamachan先生はこれもジョブに結びつけて語られるし。

米国の先任権の話になってますが、労使で自主的にルールを決めることが大切というのはそのとおりなんですが。

基準の明確化とか恣意的でないとかいうのは自己満足の感はあるなあ。

ふむ、hamachan先生例によって労使が納得いくルールという話になってすのですが。

まあ、長期雇用を期待する人が3人はいるということはわかった。

お、hamachan先生二極化を論じておられる。

非正規雇用以外のモデルが提示できていない中では若年が正社員を志向するのは当然とhamachan先生。御意。

それでも20分くらいはやりましたかね。限られた時間で欲張った内容、健闘したと思います。

mineminetoさんのつぶやき:

https://twitter.com/minemineto

テレ東でhamachan先生がいつもどおりのことをおっしゃっていた。でもアナウンサーの方はたぶんわかってなかったなあれは。「スピード感を持って進めていくためにはどうしたらいいでしょう?」ってスピード感を持って進めたら企業も困っちゃうでしょうに。

「今日からジョブ型契約に切り替えろ!自由に残業も命じられないし、転勤や配転も命じられなくなるが、こっちの方がいいんだから言うことを聞け!」って言われて素直に「はい、わかりました」って言う企業がどこにあるの?

ジョブ型契約は現行の法制度のもとでも結べるわけで、ジョブ型契約が広まってないのは個別の企業が自社の人事戦略の中でメンバーシップ型契約の方がメリットがあるって判断した結果が積み重なっただけのことでしょうに。

労使が合意の上でメンバーシップ型契約を結んでるのに、それを政府がなんとかする、したいって言うことは「お前らは愚かだから俺が契約を決めてやるよ。契約自由の原則?何それ?」って言ってるってことなんだけどなぁ。

そんなことでいいんですか?(いいわけないでしょ?)ってことでガイドラインを作って促していくしかないってことをhamachan先生はおっしゃっていたのだと思う。で、ジョブ型契約が望ましいかどうかは労使に任せる、と。

 

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2013年5月 2日 (木)

本日の東京新聞「「限定正社員」ってナンだ?」に登場

本日の東京新聞の「こちら特報部」は、見開きで「「限定正社員」ってナンだ?」の大特集。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2013050202000123.html

そこに、わたくしも何回も出てきて解説をしております。

・・・このシステムについて、独立行政法人の労働政策研究・研修機構統括研究員、濱口桂一郎氏は「新たに特殊な雇用形態を導入するわけではない」と強調する。

「日本の労働法制も本来、ジョブ型を想定していたが、無限定という非常に特殊な形が定着してしまった。日本型正社員と非正規に二極分化している現状は改善しなければならない」

濱口氏は「日本型正社員では、不本意な転勤や長時間労働を受け入れざるを得ない。『なんでも屋』になって特定の技能も身に付きにくい。本当は無限定は嫌でも、非正規になりたくないとの理由で続けている人が多いのでは」とみる。

一方で、「限定正社員の普及を雇用規制緩和として議論するのは間違いだ」とも指摘する。

「限定正社員は仕事があり、それをきちんとこなしている限りは、不当に解雇されない。逆に中小企業の日本型正社員では『気に入らないからクビ』が横行している」

ちなみに、先月施行された改正労働契約法では、パートや契約社員が同じ職場で五年を超えて働いた場合、本人が希望すれば期間を限定しない無期雇用に変更される。これは「限定正社員」そのものともいえる。

濱口氏は「仕事がなくなって解雇するのは企業側の都合だから、誰を解雇するかを企業側が勝手に決めてはいけない。そうさせないための手続きをしっかり定める必要がある」と付け加えた。

この記事では労働組合の反発の声がかなり紹介されていますが、興味深いのは中野麻美弁護士の言葉です。

「働く全員をジョブ型正社員として雇用する制度であれば賛成だ」

「だが、安倍政権の言う限定正社員は言葉のお遊び。産業界に都合の良いだけのものだ」

中野さんの今までの論調からして、「無限定のメンバーシップ型雇用こそ理想の姿だ万歳」と言わないのは当然ですが、とはいえ、労使の合意で成り立つ雇用契約においてジョブ型正社員以外のものを禁止することが可能であると本気でお考えとも思えず、理屈は正しいけれども、政治的に正しくないという批判なのであろうか、と思われるところです。

ちなみに、記事を書いた佐藤圭記者のつぶやき:

https://twitter.com/tokyo_satokei/status/329797019629654017

ジョブ型契約自体は真っ当な話だと思うが、実際にはブラック企業が新手の首切り策として悪用するんだろうなあ。

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『新福祉国家構想3 失業・半失業者が暮らせる制度の構築』

109664後藤道夫・布川日佐史・福祉国家構想研究会編『新福祉国家構想3 失業・半失業者が暮らせる制度の構築』(大月書店)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.otsukishoten.co.jp/book/b109664.html

日本の失業時保障の貧困を徹底批判。雇用保険制度の抜本改正と「求職者保障制度」の新設など、労働者の総合的な生活保障を提示。

労働市場のセーフティネットとしての雇用保険を中心に、求職者支援制度、ハローワーク、さらには住宅等の社会保障のあり方をラディカルに考察し、あるべき姿を示そうとした本です。

序章 高失業社会の到来
第1章 みえる失業・みえない失業――その歴史・現状と政策の課題 
第2章 漏れのない失業時保障
 補論1 ハローワークの現状と改編の課題
 補論2 雇用労働政策と公的扶助の交錯-ドイツの事例から
第3章 失業時・勤労時の生活を支えるシステム――労働、居住、社会サービス、所得
第4章 近年の半失業と失業時保障
終章 社会保障のすき間の拡大を許さないために

後藤さんも布川さんも何回かお目にかかってお話ししたこともあり、その論ずるところには同感するところが多くあります。

とともに、これは90年代以来のアクティベーション型のEUの労働社会政策に影響されているためなのでしょうが、彼らの議論がややもすると働かないことを推奨してしまうのではないか、という疑念も沸いてくる面もあります。

もちろん、長期失業者がかつてなく増加している今の日本では、モラルハザード効果よりもセーフティネット機能の不足の方が極めて重大であるという認識には賛成です。ただ、トータルのバランスをどう取るかは、なかなか難しいところではないかな、という思いもあるわけです。

本書で指摘されている離職理由が解雇・倒産等の者とそうでない者との差の付け方に問題があるというのは、もう一度きちんと議論し直してみる値打ちがあるように思われます。

近年の生活保護に対する厳しい社会状況を考えると、労働市場の側のセーフティネットにもう一段の拡充が求められることになるのかもしれません。

Repoこの分野については、3年前に『労働市場のセーフティネット』という労働政策レポートをまとめたことがありますが、

http://www.jil.go.jp/institute/rodo/2010/documents/007.pdf

その冒頭で述べたセーフティネット機能とモラルハザードのバランスをどの辺でとっていくかというのは、永遠の課題なのでしょう。

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2013年5月 1日 (水)

J-WAVE JAM THE WORLD

22441_2本日、FMラジオ局J-WAVEの「JAM THE WORLD」という番組で、堤未果さんのナビゲーターで解雇規制問題についてお話をしました。

http://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/break/index.html

日本の解雇規制はどうあるべきなのか?(ゲスト:独立行政法人「労働政策研究・研修機構」 濱口桂一郎さん)

安倍総理が議長を務める政府の産業競争力会議は先月23日、雇用制度改革の骨格を決め、企業から要望が強かった解雇規制の緩和については6月に策定する成長戦略には盛り込まず、見送る方針となりました。

野党からの批判や、7月の参院選への影響を考えてのようですが、選挙後、蒸し返される可能性も十分もあります。

はたして日本の解雇規制はどうあるべきなのか? 
今夜は、労働に関する総合的な調査研究を行っている独立行政法人「労働政策研究・研修機構」の濱口桂一郎さんと考えます。

(追記)

ツイッター上で、oha_miyazakiさんが、このJAM THE WORLDのログをアップされています。

https://twitter.com/oha_miyazaki

【解雇規制緩和問題①】安倍首相が議長の産業競争力会議は産業界から要請が強い解雇規制緩和を参院選を見据えて見送ったが、いずれ蒸し返される恐れも。果たして日本の解雇規制はどうあるべきなのか?労働政策研究研修機構の濱口桂一郎統括研究員に聞いた。

【解雇規制緩和問題②】濱口「政府の会議の中には皆が不安に思っている解雇の自由化や金さえ払えば解雇できるようにしようと思っている人がいるのは事実だが、少なくとも政府そのもの、規制改革会議の座長の考え方はそういうものではないと思っている。」

【解雇規制緩和問題③】濱口「『日本の解雇規制は厳しい』は嘘。日本では労働契約法で『客観的合理的な理由なく、社会通念上相応ではない解雇は権利の乱用で無効』と書いているだけで、同じような規定は欧州にもある。とりわけ日本だけが厳しい訳じゃない」

【解雇規制緩和問題④】濱口「だが、リストラにおいては欧州に比べ日本では解雇しにくいのは事実。それはなぜかというと解雇規制が厳しいからではなく、日本の雇用契約の中身が欧米と違うからだ。欧米では"就職"するが、日本では"就社"する。」

【解雇規制緩和問題⑤】濱口「日本以外の国々における就職とは会社がして欲しい仕事に応募してきた人と契約を結び、入るとその仕事の中身を説明して(job discription)それをやるのが仕事になるのだが、日本ではそういうことはない。」

【解雇規制緩和問題⑥】濱口「日本ではこの仕事でということで入ることが殆ど無いし、仮にあっても会社に入った以上は会社の命令でどんな仕事でもやる、会社が遠方地に行けと言われたら従うのが当たり前。日本人は当然だと思うが、国際的には極めて特殊だ」

【解雇規制緩和問題⑦】濱口「他国は仕事を通して契約するが、日本では会社の一員になる。ゆえに会社の為なら何でもやると入ってきた労働者を仕事が無くなったからといって解雇することはできない。これこそが日本では解雇しにくいと言われる所以である。」

【解雇規制緩和問題⑧】濱口「逆に言うと欧米では仕事が無くなったから整理解雇するのが最も正当で、労働者が納得できる解雇理由となる。『お前は能力が無いから』とか『言うこと聞かないから』という理由で解雇すれば『何言ってんだ』と紛争になる。」

【解雇規制緩和問題⑨】濱口「要するに採用時の契約内容からして日本と欧米では違う。そういうことを知らない経営者や経済学者が日本は世界一解雇しにくいと思っているが、実は解雇規制が厳しいのではなく、そういう労働契約を結んでいるからなのだ。」

【解雇規制緩和問題⑩】濱口「別に日本政府が日本型の契約を結べと強要してる訳ではないどころか日本の法律では欧米のようにちゃんと仕事を決めて契約を結ぶルールがあるのに、労働者を使いやすいから企業が日本型の契約をしてきたんで、その契約が企業が自らを縛っている。」

【解雇規制緩和問題⑪】濱口「日本型の契約では、会社の為に何でもやる見返りとして仕事が無くなっても簡単に解雇されないのが労働者にとっての最大のメリットだった。これによって職業は不安定でも雇用は安定していた。」

【解雇規制緩和問題⑫】濱口「終身雇用は無くなったのではなく収縮した。昔は新卒一括採用で社員になったが、だんだん企業が絞って行くうちにこぼれ落ちた人達が非正規雇用へ流れていった。彼らは処遇も悪いし、マズいのは仕事があっても斬られることだ。」

【解雇規制緩和問題⑬】濱口「要するに日本の正社員は仕事が無くても解雇されないのに、非正規雇用は仕事があっても解雇される。つまり仕事がある限りは解雇されないような欧米の一般的な働き方が日本ではスポーンと抜けちゃっている。」

【解雇規制緩和問題⑭】濱口「欧米は解雇を禁止しているのではなく、不公正な解雇を禁止しているだけ。不公正な解雇とは仕事がちゃんとあってjob discriptionの中身をちゃんとやっているにも関わらず解雇すること。これに対しては厳しい。」

【解雇規制緩和問題⑮】ー「では欧米で仕事がなくなった時、どういう基準で解雇するのか?」濱口「日本人はリストラ名目で好き放題に解雇する話じゃないかと勘違いしてるが、それこそが欧米では最もやってはならぬこと。なぜなら原因は会社にあるから。」

【解雇規制緩和問題⑯】濱口「仕事が無くなったので整理解雇するのは正しいのだが、欧米では誰を解雇するかは会社側が勝手に決めてはいけない。ドイツやスウェーデンでは勤続年数や年齢でルールを決めていて、そうでない場合でも労使で協議して決める。」

【解雇規制緩和問題⑰】濱口「解雇はしてもいいが誰を解雇するか厳格なルールがある欧米とは対照的に日本の、特に中小企業では、上司や取引先と上手くやれない、言う事を聞かない等、この手の解雇は沢山ある。中小企業においては解雇規制が無いに等しい。」

【解雇規制緩和問題⑱】濱口「大企業の経営陣や経済学者には見えていないが、実は日本の大部分を占めている中小企業は他の国々と比較してもはるかに自由に解雇されている社会だ。世間の通説とは違い日本の中小企業ほど解雇規制が緩い所は世界中には無い。」

【解雇規制緩和問題⑲】濱口「日本の働き方は世界でも特殊で、海外からの留学生に日本の労働のあり方の話を振るとおかしいとの声が多数上がる。新卒一括採用・定期昇給・定期人事異動が意味不明なんだと。彼らにはなぜそんなことをするのか理解できない。」

【解雇規制緩和問題⑳】濱口「留学生達には会社のメンバーになるという感覚は無く、ゆえに彼らが日本企業に"就社"するとものすごいカルチャーショックを受ける。彼らと話していると逆にいかに日本の労働環境が特殊なのか気付かされるくらいだ。」

【解雇規制緩和問題㉑】ー「仕事で契約する欧米型の労働契約は日本の派遣労働も同じ労働契約と見ていいのか?」濱口「法律上、派遣社員は専門職で仕事内容を契約で決めることになっているが、実際の派遣先では日本の労働慣習に従って何でもやらされる。」

【解雇規制緩和問題㉒】濱口「要するに契約になくても何でもやるのが当然だと思っている日本の企業の中に派遣社員が入っているから文化摩擦が起きるのだが、衝突してクビを斬られるのが嫌な人が大半だから黙って従うのが実情であり賢い生き方になっている」

【解雇規制緩和問題㉓】ー「そうなると契約外の仕事をやらされる上にすぐ解雇されるリスクを負わされている日本の派遣労働者は労働者の底辺で、悪いとこ取りされている感が否めない。」濱口「政府は本物の専門職を作ろうとしたが、それは実現していない。」

【解雇規制緩和問題㉔】濱口「その上で政府が提起している限定正社員やジョブ型正社員はもう一度契約型の専門職を作ろうという話だと思っている。非正規雇用にして雇用が不安定になったので、正社員にして期間に定めなく仕事がある限り解雇されないようにして安定を与えた上で、しかし仕事が無くなれば欧米のように解雇されるというシステムにしようとしているのではないのだろうか。」

【解雇規制緩和問題㉕】濱口「実は今から17年前に日経連が出した新時代の日本的経営の中で、今までの正社員=長期蓄積能力活用型は段々減らしていって、パートアルバイト等の雇用柔軟型を増やしていくと宣言していたがそれは実現したものの、その中間として高度専門能力活用型(専門職)を作るという宣言は未だに実現していない。」

【解雇規制緩和問題㉖】濱口「なぜ実現しなかったかというと有期雇用にしたので雇用柔軟型のパートアルバイトとの区別がつかなかったからだ。本当は派遣にしろ契約社員にしろ当初は専門職のイメージはあったのだが、今ではパートアルバイトとの違いが分からなくなっている。」

【解雇規制緩和問題㉗】濱口「ゆえに期間の定めがない一種の正社員として認めるが、仕事が無くなれば解雇されるシステムに作り直した方がいいだろうと、むしろその方が第三の働き方を日本社会に作っていく上で役に立つだろうと思っている訳だ。」

【解雇規制緩和問題㉘】ー「そういうシステムが出来た後、今までのような理不尽な解雇を規制出来るのか?」濱口「ルールを作る時にジョブ型正社員を解雇する為には契約時に企業側が後で約束違反したら契約は無効になる条項を入れておくべきだろう。」

【解雇規制緩和問題㉙】ー「そのルールを入れてもメンタリティーが変わるまで時差があるがそこを変えるのは時間がかかるのでは?」濱口「人間の意識は法律で簡単に変わるものではないから実際には紛争が多発するだろうが、その中で学んでいくしかない。」

【解雇規制緩和問題㉚】濱口「大事なことはジョブ型正社員とは整理解雇をしやすくなるというだけで、今までのような理不尽な解雇は出来なくなるということをハッキリ伝えることだ。」ー「でも実際に数多ある中小企業までチェックするのは難しいのでは?」濱口「提訴するには金がかかるので中小企業の従業員には難しいが、一応、彼らの為に労働局や労働委員会に斡旋という仕組みがある。」

【解雇規制緩和問題㉛】濱口「会社側が相手にしないので未解決な事例が多いが、解決事例でも解決金は平均17万ぐらいだ。裁判をやればもっと貰えるし、そもそも解雇無効になるが、自分一人で戦うなら勝っても一ヶ月分の給料にも満たない額しか貰えてない」

【解雇規制緩和問題㉜】濱口「そう考えると批判される金銭解決もメリットがあると思う。欧州での不当解雇への金銭解決時の額はドイツでは原則1年分、年齢が高いと更にかさ上げされるし、スウェーデンでは勤続10年以上だと最高32ヶ月分を勝ち取れる。」

【解雇規制緩和問題㉝】濱口「要するに解雇規制緩和の議論をする時にはまず、日本がいかに特殊な労働環境かというところから議論を進めないと話が進まないということだ。」(終)

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