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2013年4月10日 (水)

成長のための人的資源活用検討専門チーム報告書

本日、内閣府の経済社会構造に関する有識者会議の日本経済の実態と政策の在り方に関するワーキング・グループの下に置かれた「成長のための人的資源活用検討専門チーム」の報告書『成長のための人的資源の活用の今後の方向性について』が公表されました。

http://www5.cao.go.jp/keizai2/keizai-syakai/k-s-kouzou/pdf/jintekisigenhoukokusyo.pdf

概要版から重要なポイントを示すと、

・ 正社員としての雇用の安定性を一定程度確保しつつワークライフバランスが確保できるような、残業なしの働き方や短時間正社員、職種限定正社員など、多元的な無期雇用形態を個人の選択により可能にすること

・ 職業能力をレベル毎に的確に評価でき、それが転職した場合にも賃金に反映されるような企業横断的な職業能力評価制度の整備などを通じた専門能力活用型のジョブ型労働市場の整備を図ること

・ 変化に対応して新しい技術・技能を常に身につけることができる効果的な学び直しを行うための良質な教育訓練機会の確保を図ること

・雇用制度の在り方を考えていく際には関係者の納得感が重要であること

と、極めてまっとうな提言を行っています。

ここをもう少し詳しく要約したもので見ると、

多元的な働き方の実現

現在、正社員と非正規雇用に二極分化しており、職務内容、労働時間、勤務場所などについて限定的に働きたいが雇用の安定を求めたいという正社員・非正規雇用労働者のニーズに十分応えられていない面がある。
このため、正社員と非正規雇用労働者の二極化を解消するため、正社員としての雇用の安定性を一定程度確保しつつワークライフバランスが確保できるような、残業なしの働き方や短時間正社員、職種限定正社員、業務限定正社員など、多元的な無期雇用形態を、雇用契約の多元化や明示などを通じて可能として普及し、各雇用形態間を労働者個人の選択によって相互に移行可能にしていくことが考えられる。これまで無限定の働き方を避け、有期契約の非正規雇用を選択していた者も働き方を限定したままで無期契約の正社員に移行することができる。また、希望に応じて正社員に移行するルートとして多元的な働き方が活用しうる。
なお、制度設計に当たっては、個人の選択が確保され、企業からの強制や正社員の処遇切り下げとならず、改革を通じて雇用の安定化が図られる層が増えるよう配慮がなされるべきである。

職業能力評価制度の整備などジョブ型労働市場の整備

正社員であっても、非正規雇用であっても、自らのキャリア、職業能力を軸として円滑に労働移動することによって、雇用の安定を図っていくことが考えられる。職業能力を蓄積することにより賃金上昇を可能とすることによって、転職した場合にも生活の安定を図っていくことが考えられる。そのためには、それを可能とする専門能力活用型のジョブ型労働市場の整備を図るべきである。職業能力をレベル毎に的確に評価でき、それが転職した場合にも賃金に反映される企業横断的な職業能力評価制度の整備が必要である。

若者への人的資源形成機会の提供

若者が新卒時に安定した職を得て、腰を据えて職業能力を養成し、その後の人生において、場合によっては職業能力を軸に離転職することが可能となることによって、雇用の安定を図っていく必要がある。中小企業を含めれば新卒者の求人倍率は1を超えている。在学時からキャリア教育の充実、中小企業の人材ニーズに応える教育の推進や、中小企業の魅力を伝えることにより、中小企業と学生のマッチングを図り、新卒者の希望者全員ができるだけ安定した雇用を得ることができるようにすることを目指す。
バブル崩壊以後、フリーターやニートとなり、安定的な雇用が得られず、長期間が経過している者に安定的な雇用を得るための教育訓練、トライアル雇用、精神面も含めたサポートなど、重点的な支援を可及的速やかに行うべき。

継続的人的資源形成のための教育訓練の見直し

時代にあった多様な人的資源形成のために教育のあり方を見直していくことが必要である。職業に直接役立つ企業内外の効果的な教育訓練機会の確保が企業内外の高生産性部門への円滑なマッチングを進めるための前提である。
経済社会の変化に対応して新しい技術・技能を常に身に付ける必要性が生じうるということを、学生の時代から一人一人の労働者に自覚を促していく必要がある。また、個人の意欲を喚起しつつ、効果的な学び直しを行うための良質な教育訓練機会の確保とともに意欲ある者に手厚い支援を行う必要がある。ただし、その際には公的支援と自己負担を組み合わせるなどモラルハザードが生じない仕組みを工夫する必要がある。

ひねこびた観点からけちをつけるだけのねじけた議論は次第に淘汰されていき、こういうまっとうな筋道の通った議論が徐々に主流になりつつあると、希望的に考えていきたいところです。

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コメント

濱口様

ペンネーム原田です。

さて、先日もOECDの解雇指標について、
誤った認識を持っていたMyNewsJapan渡邉正裕氏が、
本記事で紹介されている報告について次のように
述べております。

『多様化すればするほど、無限低正社員の地位が高まり、既得権が温存されるわけで、これは既存正社員に対して政治的に配慮をしすぎ。カースト制度を作るようなもの。全員を同じ条件にするほうが重要。』
https://twitter.com/masa_mynews/status/321663433806331907

私はこの主張のような全員をエリート仕様のメンバーシップ型に押し込む事が大事だとは思えません。

多様な働き方が既得権を高めるという彼の主張に対して、濱口様はどのように考えられますか。

よろしければ、ご所見をお聞かせください。

よろしくお願いいたします。

 一昨日のBSフジの「65歳定年時代の働き方 年金受給開始引き上げ 日本型雇用の行方とは」拝見し、感動しました。
 先生のブログ、御本(日本の雇用終了も今週読みました。)には納得することが多いのですが、今回のブログの内容含めて、世の中がジョブ型労働に向かって行っていることがよくわかりました。
 ただ、法令や政策がどれだけよくても、労働組合の組織率がきわめて低い現状では、現場でそれがどれだけ活かされていくのかが心配ではあります。

本日のエントリーで、労働組合のことは取り上げられておられるのですね。失礼いたしました。
「団結と参加―労使関係法政策の近現代史」も読ませていただきます。

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