『東洋経済』4月6日号の他の読むべき記事
さて、本日発売の『東洋経済』4月6日号には、特集の他にも目をとめておくべき記事があります。
一つは、巻頭近くの「解雇ルール見直しに波紋 労働市場改革の高い壁」です。ここで、規制改革会議で雇用問題を担当している鶴光太郎さんがこう述べていますが、読めば分かるように、日本の解雇規制が世界一厳しいとか口走るある種の人々とは一線を画し、ちゃんと物事の筋道をわきまえた議論を展開しようとしていることが分かります。
・・・政府の規制改革会議の民間議員である、鶴光太郎・慶應義塾大学大学院教授は、そうして状況を憂慮し、「解雇ルールというより、正社員改革の議論をすべき」と話す。鶴氏が提案するのは、「限定社員の雇用ルール整備」である。
鶴氏によると、現状の「正社員」は、職務や地域などが限定されない雇用契約を結んでいるため、仮に所属先の部署の業績が悪化しても、他部署や地域に転籍(ママ)できる。結果的に企業が余剰人員を抱え、雇用の流動化につながらない。
「職務や地域を限定した新たな正社員のルールを設ければ、雇用契約のハードルが下がる一方、事業の終了時に雇用関係も終了しやすくなり、人の移動が促される」(鶴氏)
と、基本的には私の認識とほぼ同じ見解を示しています。
一つだけ懸念があるのは、日本の解雇規制は厳しいと思い込んでいる人がこのロジックを半ば意識的に誤解して、経営上の理由によるジョブレス解雇でなくても、限定正社員はクビが切りやすいと勝手に思い込んでしまう可能性で、これは「准正社員」というようないかにも二級とかB級みたいな表現をするとその危険性が高まるので、明確に人事権の行使が限定される「限定」正社員と呼ぶべきだと思っています。
もうひとつ、この4月6日号で労働問題への深い認識を示しているのは巻末近くの与那覇潤さんの「会社は「学校の延長」か? 新卒採用の季節に改めて考える」です。
次の言葉も、本ブログや拙著を読まれた方にはとても近しい感覚を持たれるでしょう。
・・・逆に言うと、日本の場合は、英米ではごく一部のエグゼクティブやスペシャリストに限定されている「学校を出てから間断なく企業へと移動する」ライフコースが、一般的な事務職や高卒者、中卒者も含めて、労働者のほぼ全階層を覆っている点が特殊だ。それは広範な国民に「職場」というアイデンティティを供給する一方で、一回でも移動に失敗して所属する場所(学校・企業)がなくなると、「浪人」として白眼視されがちな社会を作ってきた。・・・
与那覇さんはこのエッセイで、菅山真次『「就社」社会の誕生』とか、野村正實『日本的雇用慣行』といった、大変重量級の専門書を紹介しています。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/post-b3b7.html
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/08/post_449b.html
そして、最後に紹介しているのが最近私とコンビ化している今野晴貴さんの『ブラック企業』。その台詞が:
・・・それはまさに、人生経路の全てが「学校の延長」として設計されてきた、日本的雇用のディストピアにほかならない。
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