小谷幸『個人加盟ユニオンの社会学』
小谷幸『個人加盟ユニオンの社会学 「東京管理職ユニオン」と「女性ユニオン東京」(1993年~2002年)』(お茶の水書房)をお送りいただきました。ありがとうございます。
http://www.ochanomizushobo.co.jp/cgi-bin/menu.cgi?ISBN=978-4-275-01009-4
1990年代に世代、性別、エスニシティ、職位といった社会的属性を結合単位として労働市場横断的に生成した新しい形の個人加盟労働組合(個人加盟ユニオン)を研究することにより、今後の労働運動への示唆および新たな分析手法を提示する。
最近かなり盛んになってきた個人加盟ユニオンの研究書ですが、調査対象時期は1990年代後半から2000年代初頭で、もとになった博士論文は2005年ですので、むしろそのはしりというか、まだ世間で余り取り上げられていなかった頃の研究ですね。
研究対象ユニオンは、東京管理職ユニオンと女性ユニオン東京です。リーダーや組合員へのインタビューなどに加えて参与観察ももとにして、非常に微細なところまで観察した記録になっています。
最後の章で示している新しい労働運動の5つの特質を挙げておきますと:
特質1。両ユニオンが労働相談機能を重視し、それにより既存の運動では組織対象にされてこなかったような多様な組合員を包摂していること。
特質2。両ユニオンとの組合員一人一人のニーズに応じた労働問題の解決を重視し、個別労使紛争の解決率及び組合員の満足度が高いこと。
特質3.両ユニオンとも多様な組合や、組合にとどまらないNPO等諸団体との連携を重視し、それにより公共性を強めていること。
特質4.両ユニオンが組合員の活動参加及び相互支援を重視し、それにより組合員が幅広い「力」を身につけていること。
特質5.両ユニオンが組合員の紛争解決過程において、アイデンティティ構築、自立支援を重視し、そうした「教育」的機能を通じて組合員が意識変容すること。
こうした研究としては、本ブログでも過去紹介してきましたが、
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/npo-0b20.html(遠藤公嗣編著『個人加盟ユニオンと労働NPO』)
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-d4ce.html(橋口昌治『若者の労働運動』)
などがありますし、JILPTの呉学殊さんのユニオンによる紛争解決の研究も不可欠です。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/post-ec96-1.html(呉学殊さんのコミュニティユニオン研究)
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/09/post-b431.html(個人加盟ユニオンの紛争解決― セクハラをめぐる3つの紛争事例から ―)
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