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2013年4月30日 (火)

極めて当たり前の判決だが、法の世界では「権利」は主張して初めて問題になる

医師の転職雑誌『DOCTOR'S CAREEA MONTHLY』(リクルート)の2013年5月号に、標題のインタビュー記事が掲載されました。

中身は例の奈良県立病院事件最高裁判決についてですが、この雑誌の読者である医師たちにどれだけ届く話なのか、という気もしたりします。

2月13日、奈良県立奈良病院の産婦人科医2人が、県に対し当直勤務の時間外手当を求めていた裁判がついに結審した。最高裁は県側の上告を受理せず、当直は労働基準法(労基法)の時間外勤務に当たるとして、県に約1500万円の支払いを命じていた2審判決が確定した。労働政策研究・研修機構統括研究員の濱口桂一郎氏は、「極めて当たり前の判決。病院側が最高裁まで争ったことが不思議なくらいだ」と言う。
 
裁判では、原告医師の当直が労基法の時間規定(1日8時間、週40時間)から除外されるか否かが争点となった。労基法では、41条3項で定めた『監視または断続的労働』と、労基法施行規則第23条にある『宿日直』は、どちらも労働基準監督署長の許可を得ることで時間規定から除外される。県側は、独自に定めた条例で「県立病院における入院患者の病状の急変等に対処するための当直勤務」は断続労働としていることを理由に除外を主張していたが、裁判所は認めなかった。濱口氏は「民間企業が労基法より就業規則を優先させようとするような話でナンセンス」と言い切る。県の認識と法律は大きく乖離していたのだ。
 
「当直勤務とは、医療法で定められた概念ですが、医療法は医療施設のあり方を規定するものです。労基法の『宿日直』とは似て非なるもので、適応除外にはなりません」医療従事者が「監視または断続的労働」「宿日直」となるかどうかは、厚労省が02年に出した通達が基準になっている。そこには“常態としてほとんど労働する必要がない業務のみであり、病室の定時巡回や少数の要注意患者の検脈、検温等の軽度または短時間の業務に限る”とあり、いわゆる“寝当直”のイメージだ。
 
原告の2人は当直中も分娩等の対応に従事し、通達の基準とはかけ離れていたため時間外手当は当然の権利だが、「法の世界では、権利は主張して初めて問題になります」と濱口氏は言う。
 
一方で、宅直の扱いについては、今回は原告の訴えが退けられた。病院側が指示を出した証拠がないことが理由だが、濱口氏によると「たとえば院長が一言『今日の宅直、よろしく頼む』といえば覆ります」というように、これはかなり危ういロジックなのである。今回の判決によって、これからの医療現場にどのような波紋が広がるか、引き続き注目していきたい。

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コメント

民事的には極めて当然な判決ではあっても、刑事処罰については、告発されても訴訟にすらしてもらえないのが、今の労働法制の現状です

労働基準法違反の罰則規定が完全に骨抜きになってます

国家が労働刑事の強権を発揮しないことには、企業は金さえ払えば良いと思うだろうし、金を求められるまでは違法状態に頬かむりするのが合理的な選択になります

労働法違反での処罰規定を空文化させていることは、今の労働団体・政党の怠慢、無能とも評価できます

〉法の世界では「権利」は主張して初めて問題になる

民事ではそうかもしれませんが、刑事に関していえば、被害者が権利を主張するしないに関わらない強行規定です。

権利侵害を大っぴらに唱えて告訴しても刑事罰が下されない労働基準法違反の罰則は、労働法制を歪めてます

労働基準法を守らない法人は、法人たる資格を失うべきだし、そういう法制を持たない現状は、労働法を守る法人に対して淘汰圧力を掛けているのと同じです

労働法学者であるなら、労働法違反の処罰について、もっと厳しい主張をしていただきたいものです

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