日経新聞の社説は話の順番が逆
本日の日経新聞の社説が解雇規制を取り上げていますが、物事の筋道をわきまえた経済財政諮問会議や規制改革会議の議論と、わきまえていない産業競争力会議の議論がごっちゃになったまま、混乱した頭が書かれているため、話の順番が逆になっています。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO53716170Y3A400C1PE8000/(元気な社会へ新たな雇用ルールを )
・・・雇用契約が解除できるのは就労が難しいほど労働者の健康状態が悪いときや、希望退職募集など労務コストの削減を進めても経営が立ち行かなくなる恐れがある場合など、一部に限られる。
こうした現状を変えたいと政府の産業競争力会議で民間議員から提案があった。解雇権乱用を禁じた労働契約法の条文を見直すとともに、どんな場合は解雇を禁止するか規定を設けたうえで、使用者は自らの意思で正社員の雇用契約を打ち切ることができると同法に明記するよう求めている。
経済・社会の変化にあわせ、雇用のルールや慣行も変えていくことはもちろん重要だ。解雇規制もそれが日本の成長力をそいでいるなら、見直す必要がある。
まず、ここの認識が間違っている。労働契約法16条は客観的に合理的な理由と社会的相当性というやや抽象的な要件を規定しているだけで、そんな細かいことまで書いていない。そういうことになるのは解雇規制のせいではなく、それが適用されるメンバーシップ型の雇用契約のせいだと、何回言ったら分かるのか・・・。
客観的に合理的な理由がなくても、貴様は気に入らねぇからクビだ、という風にしたいというふうにしか、その意見はならないのですよ。
ただ、その後で、話の後先を間違えながら、こういう話もしています。
ただし、これまでは長期の雇用が当たり前と思われてきたため、ルールの変更は影響が大きい。
企業は社員に長期雇用を約束するのと引き換えに転勤や残業を強いてきたが、こうした日本的な経営は見直しを迫られる。雇用契約を打ち切られた人の再就職を社会全体で助ける仕組みも、あわせて整えることが不可欠だ。
欧米企業は一般に職務内容をあらかじめ決めて雇用契約を結ぶが、日本の正社員は会社の指示通りに部署を移り、「なんでもやる」使い勝手の良い労働力だ。会社への忠誠心も高い。いずれも事実上の雇用保障があるためだ。
雇用契約が解除されやすくなれば、社員はこれまでの使われ方に疑問を持とう。会社にとって便利な正社員の働き方を見直すなど、雇用のあり方を根本から改める覚悟を経営者は問われる。
なんで、こう、話の順番を見事に間違えてしまうのでしょうか。
メンバーシップ型ではなく、始めにジョブありきの雇用契約であれば、そのジョブがなくなれば解雇するのは十分に客観的に合理的な理由になりますよ。現に、欧米社会ではそうなんだから。
それを、解雇自由にしたら「社員はこれまでの使われ方に疑問を持とう」などとのんきな言い方をする。逆でしょう。仕事があるのにいつ首を切られるか分からないとなったら、ますます怖くて、文句など言えなくなります。
解雇問題は、順番を間違えると、ブラック企業を作り出すだけになるのです。
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