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『DIO』281号

Dio連合総研の機関誌『DIO』281号は、「歴史からの教訓―戦前日本は危機にどう対応したか」が特集です。

http://rengo-soken.or.jp/dio/pdf/dio281.pdf

「平等」意識を欠いた自由主義政党―1930年代危機と立憲民政党―  坂野 潤治
高橋財政の「失敗」に何を学ぶのか  井手 英策
戦前日本の失業対策と労働組合の対応  加瀬 和俊

というラインナップは、なかなか渋くていいですね。

坂野さんの「「平等」意識を欠いた自由主義」って、今風に言うとソーシャルを欠いたリベサヨって感じでしょうか。

次の台詞なんか、ほとんど本ブログで言ってきたことと同じ感じです。

・・・しかし筆者は、「自由」と「平等」のセットは1930年代の日本にもありえたと考える。そしてその実現を阻んだのは社大党の陸軍接近だけではなく、自由主義政党の民政党における「平等意識の欠如」にもあった、とこれまでの研究で唱えつづけてきた(拙著『日本政治「失敗」の研究』、拙編『自由と平等の昭和史』など)。1931年の危機の際と同じく、1936・7年の危機においても、民政党は社大党や総同盟が求める「退職積立金法案」に背を向けた。同法案は失業保険のない日本で、せめて退職金の支払いだけは法律で企業に義務づけようとするものであったが、資本家団体の猛反対で完全に骨抜きの法律になった。資本家団体の意を受けて同法案の骨抜きの先頭に立ったのは、自由主義政党の民政党だったのである。

戦前の日本にファシズムがあったかどうかの厳密な考証を脇に置けば、軍部と社大党はファッショ的であった。しかしファッショは、実現性はともかく口先では、社会経済的な平等を国民に約束する。社大党の「広義国防」は、その典型であった。それに対抗する自由主義政党が、資本家団体の意を受けて、労働組合法案や退職積立金法案を葬っていたのでは、労働者や小農は「平和」や「自由」の味方にはつかない。

このような歴史の教訓をもとにして昨2012年末の総選挙での民主党と社民党の惨敗を振り返れば、その一因が両党における「平等意識の欠如」にあったことが明らかになろう。財政の健全化を最重視した民主党は、かつての民政党の井上準之助蔵相と同じように、社会の底辺に予算を注ぎ込むことをしなかった9条を守れ、としか言わなかった社民党は、自らの党名の意味を全く理解していなかった。20世紀以降の欧米社会で「保守党」と対抗してきた政党は、党名の如何にかかわらず、社会の弱者の救済につとめてきた。これに対し民主党は古典的な意味での「自由党」であり、社民党はその党名を裏切っている。「平和」も「自由」も重要であるが、保守政党自民党との対抗軸は「平等」なのではなかろうか

こういう言葉が、しかしながら、肝心の人々の耳に伝わっていかないのですね・・・。

あと、今号では、「視点」として南雲智映さんが「学生に対する労働教育の充実を」を書いています。

これまた、昨今話題のブラック企業を取り上げながら、労働教育の必要性を論じています。

・・・自発的にせよ、非自発的にせよ、不幸にして「ブラック企業」に就職する学生は少なくない。このことを、競争の結果だから、自己責任だから、運が悪かったからなどの理由で仕方ないと割り切れというのは、あまりに酷ではないか。とりうる方策はいくつかあるだろうが、学生を対象とした労働教育の充実がその1つであろう。

・・・全国の大学、高校、あるいは義務教育の段階で一定の時間を割いて授業を行うべきであろう。学生が十分に労働者の権利を理解して就職活動をすれば、労働条件への関心が高まるので、「成長」とか「やりがい」といった表面的な言葉に惑わされにくくなり、「ブラック企業」を事前に見分けられる可能性が高くなるだろう。これが学生向けの労働教育に期待される1つ目の効果である。

2つ目の効果は、「ブラック企業」を選ばざるを得なかった、もしくは「ブラック企業」だと気づかなかったという学生であっても、労働者の権利をよく知っていれば、労働基準監督署などに訴えることにより法定以上の労働基準に是正させる、あるいは心身を壊さないうちによりましな企業に移る、労働組合をつくって労働条件交渉により改善をはかるなどの自己防衛の段をとりやすくなるはずである。とくに労働組合の結成については、よりよい労働条件を獲得し、その後の企業経営に対して牽制力を持てるという意味で、かなりの力を入れて教えていってもいいと個人的に思う。

さらに、今号で目を通しておくべきは、「「労働組合による異議申し立て行動の実態」についての調査報告書 ―21世紀の日本の労働組合活動に関する調査研究委員会Ⅲ―」の概要です。

例の中村圭介主査による労働組合研究の3段目で、労働争議、というかもう少し広くとって異議申し立て行動を調査したものです。

第1章  交渉力の基盤は「日常の活動」にあり マイカルユニオン
第2章  廃業の危機から労使一丸となって事業存続を実現  自治労全国一般新潟労働組合新潟容器支部
第3章  組合を通じて業界イメージを改善していきたい  アコムユニオン
第4章  小売業におけるスト権の事前確立  上新電機労働組合
第5章  審判員の地位向上へ向けて  JSD連帯労組プロ野球審判団支部
第6章  オーナー経営のもとで労働条件向上へ大きな一歩を踏み出す  大和冷機労組
第7章  賃金の「構造維持」を守り抜く  松山労働組合
第8章  組合執行部への信頼関係再構築 大梅製作所労働組合(仮名)
第9章  人員不足および労使慣行破棄によるストライキ 小田急バス労働組合
第10章  会社解散通告を乗り越えて  全国一般石川地方労働組合中央自動車学校分会
第11章  投資ファンドとの1年超におよぶ闘い  東急観光労働組合(現トップツアー労働組合)合中央自動車学校分会

これ、もとになった報告書もすでにお送りいただいていて、大変面白いです。

それぞれの章の執筆者は以下の通りで、JILPTアシスタント・フェローの鈴木誠さんが計4章も執筆していて大活躍です。

21世紀の日本の労働組合活動に関する調査研究委員会Ⅲ「労働協約とストライキ」の構成と執筆分担
(肩書は2012年10月現在)
 主 査 中村 圭介  東京大学社会科学研究所教授
(序論)
 委 員 佐藤  厚  法政大学キャリアデザイン学部教授(2012 年3月まで)
     鈴木  誠  労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー(第5章、第7章、第8章、第9章)
     杉山 寿英  連合労働条件・中小労働対策局部長(第2章、第3章)
     陳  浩展 連合雇用法制対策局次長
 連合総研事務局
     龍井 葉二(副所長)
     中野 治理(主任研究員)
     髙島 雅子(前研究員; 第4章、第10 章)
     南雲 智映(研究員;第1章、第6章、第11 章)

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