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つまり、ジョブレス解雇じゃなくて、貴様ぁ解雇がやりたいと

今野晴貴さんのついーとから:

https://twitter.com/konno_haruki/status/320395861920215040

産業競争力会議でのローソン社長の発言「勤務態度が著しく悪く、または結果を著しく出せていない社員は他の社員に迷惑をかけていることを十分認識しなくてはいけない…組織全体で迷惑をかけている人に対して解雇が会社として検討しやすくなる柔軟な要件を入れるなど、是非今後検討していただきたい」

ほんとかどうか確認してみましょう。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/skkkaigi/dai4/gijiyousi.pdf

(新浪議員)

解雇法理について、四要件全てを満たすことは、世界経済に伍していくという観点からは大変厳しい。緩和をしていくべき。被解雇者選定基準の合理性は大変重要。特に被解雇者選考基準が大事。例えば、勤務態度が著しく悪く、または結果を著しく出せていない社員は他の社員に迷惑をかけていることを十分認識しなくてはいけない。
一方で、企業として教育や研修の機会を付与したのかも考慮する。それらを解雇選基準に入れ、柔軟に解釈すべき。解釈においては、解雇法理そのものよりも、組織全体で迷惑をかけている人に対して解雇が会社として検討しやすくなる柔軟な要件を入れるなど、是非今後検討していただきたい。

確かに明確に言ってますね。

始めのところでは「解雇法理について、四要件全てを満たすことは、世界経済に伍していくという観点からは大変厳しい。緩和をしていくべき」と言っていて、いかにも整理解雇法理が問題であるかのようですが、そしてその点については確かに、日本のメンバーシップ型社会と異なり、欧米のジョブ型労働社会では、同一事業場の同一職種に配転する余地がなければ原則としてそれ以上の配転の必要はなく整理解雇が正当と認められますが、大事な事が抜けてます。

それは、剰員整理解雇、ジョブレス解雇である以上、それは労働者の行為や能力とは関係のない企業側の都合による解雇なのだから、被解雇者を勝手に選んではいけない!ということです。

それを認めたら、要はジョブレス解雇という名目のもとに、気に入らないやつをクビにする貴様ぁ解雇、アンフェア解雇を大手を振ってまかり通らせることになるからです。

ジョブ型社会のルールとは、ジョブがなくなれば解雇していいけれども、誰を解雇するかは会社が勝手に決めてはいけない、ということなんですが、その一番肝心な、一丁目一番地を、真っ先に踏みにじる発言を、しかもその自覚が全く無しにやってのけてしまえるというところに、日本の解雇規制緩和論のどうしようもない危うさが露呈していますね。

112050118ちなみに、『日本の雇用終了』には、この「勤務態度が著しく悪く、または結果を著しく出せていない社員は他の社員に迷惑をかけていることを十分認識しなくてはいけない」といってスパスパ解雇している実例がてんこ盛りです。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/03/post-12a7.html(中小企業ではスパスパ解雇してますよ)

ごく一部だけ転記しておくと:

・10037(試女):受付業務を教えるように言われ、拒んだら普通解雇(不参加)
・20057(正男):職務命令違反、勤務態度不良で普通解雇(不参加)
・20110(正男):上司に従わないという理由で懲戒解雇を予告されたので退職届を提出(30 万円で解決)
・20120(正男):運行命令の放棄と社内での暴言が理由で懲戒解雇(打ち切り)
・20123(正男):悪質運転を繰り返したことを理由に「もう要らない」(打ち切り)
・20169(正女):上司の指示に従わない(トイレ掃除等)ので普通解雇(不参加)
・30004(非女):指導に従わないので普通解雇(不参加)
・30056(非女):自己都合退職後アルバイト勤務中業務妨害したので普通解雇(不参加)
・30079(派男):一部業務を拒否し派遣先の要求で契約解除(15 万円で解決)
・30097(非男):同僚とのトラブルでうつ病に、業務命令を拒否したら更新拒否(不参加)
・30128(非女):仕事を拒否し、意に反することがあると無断欠勤するので退職勧奨(7 万円で解決)
・30185(非女):指示に従わないので退職勧奨(打ち切り)
・30207(正男):専任講師として採用されたのに収益追求を強要され、退職勧奨(不参加)
・30222(非女):「会社の方針に従えなければ辞めてくれて結構」(不参加)
・30223(非女):「長い時間働かなければ辞めてくれ」(不参加)
・30240(正女):受付事務でカウンセリング業務を拒否したので普通解雇(10 万円で解決)
・30278(正男):研修中本人の就業拒否のため普通解雇(不参加)
・30337(非女):業務改善に応じず「明日から来なくてもいいです」(打ち切り)
・30363(正男):再三の是正指示にかかわらず業務着任できないため普通解雇(打ち切り)
・30559(正男):社命に従わず仕事に熱意なしと普通解雇(不参加)

・10018(非男):出退勤をメールで送信したため普通解雇(不参加)
・10021(非女):業務怠慢を理由に普通解雇(不参加)
・10038(正男):移転就職で、住民票を移しておらず自分の車をもたないことを理由に普通解雇(不参加)
・10098(正男):業務上の失態重なり報告怠るので普通解雇(不参加)
・10106(派男):派遣先からの勤務態度についての苦情で雇止め(打ち切り)
・10112(正男):仕事に誠意が見られないとして解雇(取下げ)
・10116(非男):業務手順が守られないという理由で普通解雇(不参加)
・10139(正男):職務怠慢を理由に懲戒解雇(不参加)
・20015(非男):ずさんな清掃の仕方ゆえ普通解雇(2 万円で解決)
・20016(非女):作業内容の不備を理由に労働条件引き下げに加え退職勧奨(不参加)
・20047(正女):能力、勤務態度、協調性の問題から普通解雇(15 万円で解決)
・20096(正男):事務局長として職務懈怠で懲戒解雇(10 万円で解決)
・20162(正女):仕事中に抜け出すので普通解雇(1 万円で解決)
・20200(非女):接客態度が悪いので普通解雇(不参加)
・20201(非女):誠実さがないので普通解雇(不参加)
・30025(正男):ミスを報告しないので普通解雇(不参加)
・30173(正男):業務に支障をきたす行為多く、パート社員とし「クビ」(30 万円で解決)
・30276(正男):勤務態度不良、成績不良で普通解雇(打ち切り)
・30279(派女):マナー違反を理由に雇止め(不参加)
・30328(試男):態度が反抗的なので普通解雇(打ち切り)
・30371(派男):勤務中の居眠りを理由に普通解雇(打ち切り)
・30390(正男):後輩に誤った指示をし、業務をほったらかしにしたので普通解雇(50 万円で解決)
・30517(正男):仕事ぶり、態度ともに悪いので普通解雇(打ち切り)
・30583(非男):勤務中の言動や行動に改善なしとして普通解雇(打ち切り)
・40018(非男):勤務態度に問題ありと普通解雇(打ち切り)
・40019(非女):事務の乱雑さで雇止め(打ち切り)
・40030(非女):勤務態度、勤務成績不良で普通解雇(打ち切り)
・40035(非男):業務態度不良で雇止め(打ち切り)
・40038(正男):警備室内でスリッパを履いていたので普通解雇(打ち切り)

・10028(正女):職場のトラブルで夫が威力業務妨害したので退職勧奨(謝罪・退職金で解決)
・10044(非女):フロアマネジャを怒らせたので出勤停止、普通解雇(取下げ)(あっせん外で30万円で解決)
・10169(派女):宗教関係の精神の混乱のため退職勧奨(15 万円で解決)
・10171(非女):従業員間のトラブルを報告したら誤解で即日普通解雇(不参加)
・20042(正女):再入社が知れていじめを受け、「これからいじめがひどくなるから退職してほしい」(不参加)
・20071(正男):「傷害事件を起こす恐れがあるので辞めてもらう」(打ち切り)
・20092(非女):マネージャーとトラブって欠勤、メールのやりとりで退職とされた(打ち切り)
・20113(非男):上司との喧嘩で顧客から殴られたことを理由に退職勧奨(打ち切り)
・20154(非男):個人を誹謗中傷するメールを再度送ったため普通解雇(打ち切り)
・20155(正男):部下とトラブり、「こんな部下と一緒に働けない」と言ったら退職とされた(28 万円で解決)
・20160(非女):会社の調和を乱したので雇止め(不参加)
・20176(正女):上司とのトラブルで普通解雇(50 万円で解決)
・30007(非男):協調性の欠如ゆえ雇止め(不参加)
・30011(非女):職場トラブルから「不満があれば辞めてもらっていい」(打ち切り)
・30051(非男):職場内の人間関係や勤務態度から雇止め(打ち切り)
・30054(正男):人間関係乱したとして普通解雇(打ち切り)
・30065(試男):職員との信頼感欠如を理由に普通解雇(25 万円で解決)
・30087(試男):自分でネットショップを経営し火の車で使用者や他の従業員に無心したので普通解雇(打ち切り)
・30104(派男):就労初日に派遣先担当者との見解の相違で即日解除(不参加)
・30136(試女):同僚とコミュニケーションを図ろうとしないので退職勧奨(30 万円で解決)
・30151(正女):職場の秩序を乱したとして普通解雇(50 万円で解決)
・30156(非男):コミュニケーションがとれず協調性に欠けるとして雇止め(取下げ)
・30170(試男):協調性がないという理由で普通解雇(不参加)
・30181(派女):他スタッフとの協調性低いとして雇止め(不参加)
・30192(試男):現場責任者が指導したところ噛みつきトラブルになり退職勧奨(1.2 万円で解決)
・30226(非女):チームワークを乱すので退職勧奨(不参加)
・30235(試女):挨拶ができない、声が小さいので普通解雇(不参加)
・30241(派女):派遣先から人間関係のトラブルで契約解除の申し出あり雇止め(15 万円で解決)
・30253(正男):取締役に罵声を吐くなど勤務態度不良で普通解雇(720 万円で解決)
・30254(正男):協調性がないので普通解雇(取下げ)
・30294(派女):派遣先で他の派遣労働者とのトラブルを理由に雇止め(打ち切り)
・30312(試男):意思疎通を図らず社長の指示以外聞かないので普通解雇(40 万円で解決)
・30349(正男):職場での暴言、脅迫、命令無視を理由に懲戒解雇(打ち切り)
・30353(正女):職場内の人間関係が悪化したため普通解雇(40 万円で解決)
・30355(派男):女性パートが嫌がっているという理由で雇止め(不参加)
・30415(非女):皆から無視されるようになり、異動先がないとして普通解雇(不参加)
・30434(正男):業務中不満をぶちまけ、同僚を脅迫したため退職勧奨(不参加)
・30435(非女):上司とのコミュニケーションがとれないので普通解雇(不参加)
・30515(試男):コミュニケーション能力不足を理由に普通解雇(不参加)
・30536(非男):風紀を乱したため普通解雇(打ち切り)
・30540(試男):態度が悪く、周りとコミュニケーションがとれないとの理由で普通解雇(不参加)
・30574(派女):派遣先での喧嘩を理由に普通解雇(打ち切り)
・30625(試男):協調性の欠如ゆえ普通解雇(50 万円で解決)
・30642(非女):他の作業を手伝わなかったから普通解雇(取下げ)
・40009(正男):職場の秩序を乱すとして普通解雇(打ち切り)
・40012(正女):他従業員とのトラブルで解雇(離職直前に過去に遡って1年の有期契約にして雇止め)(4 万円で解決)
・40032(試男):試用期間中、他の従業員に溶け込まず孤立して普通解雇(打ち切り)

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コメント

初めまして。
「新しい労働社会」を拝読して以来、ブログを拝読しているTakと申します。

日本の労働システムにおいて、大体どのような問題点があるのかという点は理解できました。

今は、ここからどのように具体的に効果のある改善策を行うのか・・・という点に関心があります。

もしよろしければ、このあたりについてまとめたお勧めの記事などがもしあれば、ご教授いただけませんか。

投稿: Tak | 2013年4月 6日 (土) 18時14分

無論、労働システムの問題が、非常に複雑に入り組んでいるのは承知しています。

ただし、これを改善するためには、現実的に可能な形で進めることが不可欠だと思うんです。

そのために、個人的には、一点集中戦略がいいと思うんですよね。

戦略的にも、一点集中作戦は結構良い作戦だと思います。
例えば最近、一票の格差を是正すべしという司法判断が出ました。

これは、一人一票実現国民会議
http://www.ippyo.org/index.php
が、「一票の格差解消を実現する」という一点に絞って活動したことが大きく貢献しています。

これの労働版があったらいいなーと思うんですよね。
あれもこれも・・・とやると、何も進まなくなってしまうので。

仮に一点集中したら、どのような点に集中したら良いんだろう・・・

たとえば、「新しい労働社会」のp42にある、”最低連続11時間の休息期間”を、国内の全ての法人に対し義務付け、
違反した法人には重い刑事罰を与えるよう規制を変えるという点に一点集中するなんていかがでしょうか?


私自身、過労で体を壊し転職した経緯があるので、
日本の労働システムがより良くなればいいな・・・と思わざるを得ません。

投稿: Tak | 2013年4月 6日 (土) 18時27分

ペンネーム原田と申します。

MyNewsJapanの渡邉正裕氏が『「解雇ルール見直し」に強まる反発(http://toyokeizai.net/articles/-/13535?page=2)』について、『この文脈は正社員についての話だから事実誤認。正社員は堂々1位』とtwitterで述べております。

渡邉氏がジョブレス解雇と貴様ぁ解雇を単純比較すること自体に違和感がありますが、この指摘は事実でしょうか。

おそらく、これを論拠に解雇自由論を展開してくると思われますので、コメントではなくブログでご意見をお示し頂けると幸いです。

浅学で恐縮ですが、よろしくお願いいたします。

投稿: 原田 | 2013年4月 7日 (日) 14時38分

原田様

新たにエントリを起こしました。

投稿: hamachan | 2013年4月 7日 (日) 16時38分

濱口様

丁寧にご回答いただき、ありがとうございました。

MyNewsJapanの渡邉正裕氏は何を根拠に日本の解雇規制が1位だなんていっているのか甚だ疑問ですね。
(資料も提示してないところがさらに怪しい)

解雇自由論者は現状を正確に把握していないか、または把握した上で都合の良いところだけ提示しているのか、いずれにしろ危険な論調だと改めて感じました。

投稿: 原田 | 2013年4月 7日 (日) 17時30分

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