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2013年4月 4日 (木)

ジョブ型雇用システムをまったく理解していない解雇自由派

昨今の解雇規制をめぐる議論がぐちゃぐちゃになる一つの理由は、左派がメンバーシップ型感覚にどっぷりつかってジョブ型システムをまったく理解していないということもありますが、それ以上に事態を悲惨なものにしているのは、自分では欧米型を主張しているつもり(あくまでも「つもり」)の連中が、実は極めて日本的な「貴様ぁ解雇」「この無能野郎解雇」を意識的無意識的に前提にしていることでしょう。

実際、『日本の雇用終了』には、具体的にどのジョブのどういうスキルがないのかまったく不明な「能力を理由とする解雇」がてんこもりです。

ある種の人々は、なにかというと無能な中高年をクビにして云々というけれども、そもそも明確なジョブディスクリプションのない日本だから、そういう言葉だけの無能呼ばわりができるのであって、仕事のスペックを明確にして雇っている世界であれば、それができていないということをきちんと立証しなければいけないのですよ。

実際、成果主義でなんぼの特殊なエリートの世界を別にすれば、普通の労働者が能力を理由に解雇できるのは、傷病や障害で職業能力を喪失した場合とか、できると思って雇ってみたけど、全然できなかったという雇用当初の時期くらいでしょう。そのために試用期間というのがあるわけですね。

逆に、メンバーシップ型の日本では、もともと「これができる」で採用していないので、それができないから試用期間で解雇というのも難しいという構造になっていて、結局試用期間中じゃない学生時代の学生運動を理由に試用期間で解雇が認められるというジョブ型の社会から見たら訳のわからないことになっている。

これを裏からいえば、「これができる」で採用して、ずっと雇用し続けてきているということは、それができると認め続けてきているわけで、中高年になって急に無能になったなんて理屈は通るはずがない。いうまでもなく、中高年になっても同じ仕事のベテランになるだけで、管理職にならないのがデフォルトだからですが。

そういう雇用システムの違いをまったく理解しないまま(あるいはうすうすわかっていながらあえて無視して)、一方的なデマを飛ばし続ける人々は何なんだろうか、と思わざるを得ません。

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コメント

明快なブログありがとうございます。欧米のような詳細な職務記述書があるわけではないローコンテクスト型の社会である日本では「空気を読む力」が重視されます。池田信夫氏などの解雇自由派は「空気」を読めない人間を解雇しろと言ってるわけです。でもそれって解雇規制議論ではないです。だから議論が噛み合わないわけです。

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