『現代思想』5月号特集「自殺論」
橋口昌治さんより、その論文の掲載された『現代思想』5月号をお送りいただきました。特集「自殺論」です。ありがとうございます。
http://www.seidosha.co.jp/index.php?9784791712625
自殺論 対策の現場から
【イントロダクション】
「誰も自殺に追い込まれることのない社会」をめざして / 清水康之【討議】
死なせないための、女子会 / 雨宮処凛+川口有美子【エッセイ】
狂気が希望に転じるとき / 大野更紗【自殺対策への批評】
労働の病、レジリエンス、健康への意志 / 北中淳子
自死の「動機の語彙」としての「うつ病」 労災保険における「自死=病死=災害死」という構図 / 山田陽子
自殺対策の推進における家族員の責務とその上昇をめぐって / 藤原信行
【自殺のタイポロジー】
老いらくの自殺 ポスト経済成長時代の超高齢社会から排除される人たち / 天田城介
労働にまつわる死の変化と問題の所在 死傷、過労死から自殺へ / 伊原亮司
「就活自殺」とジェンダー構造 / 橋口昌治
子どもの自殺を消費する社会 / 伊藤茂樹【死-権力】
「理性的自殺」がとりこぼすもの 続・「死を掛け金に求められる承認」という隘路 / 大谷いづみ
遺体たちの遺書、焼身への差押えを解け 悠久かつ残酷なジャンル、韓国の焼身労働者たちの「評伝」について / 黄鎬徳 田島哲夫訳
絡まり合いと自滅 ドゥルーズ=ガタリのファシズム論の現代的意義の検討 / 篠原雅武【自殺へのアプローチ】
モラリズムの蔓延 / 小泉義之
自殺の社会学的課題 / 山下雅之
自己、社会、そして神に反して 哲学・法学・文学に見る一八世紀イタリアの自殺論 / F・カンパニョーラ
橋口さんの「「就活自殺」とジェンダー構造」は、就活自殺の原因となっている「正社員になりたい」という心理的圧力の背景にあるものとして、「女だからフリーターもやれる・・・男の人は就職した方が良い」「私にとって、フリーターは『結婚する相手』としては不十分です」「将来のことを考えると男の人は正社員になるべきだと思います」といったジェンダーバイアスがあるとし、妻と子を経済的に扶養できる存在を目指して「正社員になりたい」と努力するが、入口の段階で躓くと「就活自殺」にいたる可能性があると述べています。
もう一つ、本誌で労働問題から自殺を論じている伊原亮司さんの「 労働にまつわる死の変化と問題の所在 死傷、過労死から自殺へ」は、戦後労働史を概観しながら、手際よい頭の整理をしてくれています。次の文章は、読まれるに値するでしょう。
・・・読者は既に気づかれているであろう。「日本的経営」論と労働市場の流動化論のどちらが望ましいかの選択を迫る議論が多いが、その対立図式は本質的な論点を避けていることを。どちらの議論も、働く場の実態を軽視し、労働規制という視点を欠いている。そして、組織か市場かの二者択一の議論に入り込み、組織や市場の外の社会という視点を持たない。それゆえに、職場はいつまで経っても閉ざされた世界であり、職場環境は経営側の「善意」に任されている。・・・
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コメント
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自殺は究極の自己否定。ではなぜ人は自己否定に至るのか。社会からの疎外感、ソーシャルインクルージョンの漏れということになるかと思います。特に日本や韓国のような家父長的な伝統の強い社会では就職失敗=究極の自己否定に直結する例が多いのではないかと容易に推測されます。
定
投稿: RUI | 2013年5月 2日 (木) 18時13分