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2013年4月 3日 (水)

『大都市における30代の働き方と意識』

Kosugiこれも、JILPT小杉組の研究成果。『大都市における30代の働き方と意識 ―「ワークスタイル調査」による20代との比較から―』です。

http://www.jil.go.jp/institute/reports/2013/0154.htm

なかなか格調高いまえがきから:

90 年代後半以降、日本の若者の教育から職業への移行が大きく変容したことは周知のとおりである。これまで当機構では、学校から職業への移行プロセスの変化について、数多くの調査研究を実施してきた。しかし移行プロセスの変化がどの年齢まで継続しているのかについての調査分析についてはこれまであまり行っていない。そこで本報告書では、「就職氷河期世代」と呼ばれる30 代層に対する調査を実施し、政策的な示唆を探ることにした

現在の学校から職業への移行プロセスは高度成長期以降にかたちづくられ、70 年代から80 年代に完成期を迎えた。振り返ってみれば、学校から職業へのスムーズな移行が社会の大勢であった時期は歴史上それほど長いわけではない。しかし現在の30 代がこの大きな社会の変化に初めてさらされた時、我々社会の側はこの変化をどのように認識すればよいのかについての解答を持っていなかった。それが現在の20 代がおかれた状況との大きな違いといえる。

その意味で、現在の30 代はこれからもフロントランナーであり続けることになるだろう。

執筆者はおなじみの方も含めた

小杉 礼子 労働政策研究・研修機構 統括研究員
堀 有喜衣 労働政策研究・研修機構 副主任研究員
喜始 照宣 労働政策研究・研修機構 臨時協力研究員
久木元 真吾 公益財団法人 家計経済研究所 次席研究員
本田 由紀 東京大学大学院教育学研究科 教授

リンク先では、主な事実発見が比較的詳しく書かれ、政策的インプリケーションはごく短く載っているだけですが、ここでは本文から堀さんの書かれた序章の最後の政策的支援を整理したところを、やや長いですが引用しておきます。

http://www.jil.go.jp/institute/reports/2013/documents/0154.pdf

(1)正社員への移行支援

非典型雇用から正社員への移行支援を2つに分けて整理する。
第一に、「取り残された」30 代に対する支援である。20 代ではそれほど顕在化しなかった、典型―非典型の差異が様々な点で鮮明化されていることが見て取れる。一般的に指摘されてきた収入の格差だけでなく、男性において典型―非典型間の意識の「差異」も如実に表れるようになっている。同時に、典型―非典型だけでなく、典型間の差異の顕在化が観察されるのも30 代の特徴である。
典型―非典型の格差については、20 代のような企業による初期訓練を期待できないので、30 代には、公的支援による職業能力形成を含んだ就職支援が有効である。雇用型訓練(ジョブ・カード訓練等)や、スキル・資格取得の場として学校の活用も考えられる。
典型間の格差については本報告書の範囲を超えており、次の課題としたい。
第二に、現在の30 代よりも、より厳しい状況にある20 代への支援を拡充する方向性である。若者の非典型雇用から正社員への移行は景気に左右されやすい。景気拡大を期待したいが雇用に直接結びつくかどうかは未知数であるので、トライアル雇用やジョブ・カード政策など、正社員につながりやすい非典型雇用についてのルートをいっそう整備することが望まれる。

(2)ハローワークと高校・大学の連携を通じて、多様な移行経路の明示と、企業情報
の開示の拡大をはかる(特に就業環境や早期離職について)

一般にはスムーズな移行の方法のみが強調されて伝達されるが、新卒から外れた経路については、職業訓練等の情報を含めて高校や大学には十分な情報がない。新卒採用は今でもメインルートではあるのだが、実際の移行は相当に複線的になっているという情報も、時機を見て伝達していく必要があろう。
また企業情報の重要性については「若者雇用戦略」においても指摘されてきているが、企業に対する労働法令の周知とともに、労働行政とNPO・学校とが連携しながら宣伝ではない生の企業情報を収集、発信していくことが期待される。

(3)在学中における相談機会を充実させる(特に卒業時に非典型雇用になる場合)

卒業時に非典型雇用だった場合でも在学中に相談経験がある者は、30 代になってからのソーシャル・ネットワークが豊かになっており、また「他形態から正社員」となった割合が高かった。これだけのデータでは擬似相関である可能性は否定できないものの、「自分のこれから」について在学時に相談する機会を持たせることは、年齢を重ねても、持続的な効果を持つ可能性があることは政策的に踏まえられてよい。特に卒業時に安定した移行に至らない者について支援をいっそう充実させることは、卒業時にいったん非典型雇用になったとしても、その後のキャリアにプラスに働くことにつながるものと思われる。

(4)定点観測調査の必要性

若者の移行プロセスは景気だけでなく、高学歴化や就職・進路指導などの学校側の要因や少子化など様々な要因によって変化する。現在の実態を把握するためには一時点の調査ではなく、過去と比較できるデータを調査研究によって蓄積していくことが肝要である。


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