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中窪・野田『労働法の世界〔第10版〕』

L14446中窪裕也、野田進両先生より『労働法の世界〔第10版〕』(有斐閣)をお送りいただきました。有り難うございます。

http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641144460

1994年からほぼ隔年で改訂され続けて遂に第10版です。本ブログでお礼を申し上げるのももう何回目かになります。

日々変化する「労働法の世界」を実像に迫りながら明快に描写。労働契約法や派遣法改正等の最新の法状況や判例,学説の動向を反映する。時を重ね,世紀を超えて進化・発展をつづける教科書。第10版の描き出す「労働法の現在」はいかに。

今回は、コラム「Brush up」の中から、近年話題の「解雇の金銭解決」(351ページ)を紹介しておきましょう。この問題に関する極めて端的な概説になっています。このコラムの執筆はおそらく野田先生でしょうが、そもそも無効構成ではないフランスの解雇法制の感覚がにじみ出ています。

解雇を裁判で争う場合には、労働契約の存続または従業員たる地位についての確認訴訟が一般的である。その場合には、解雇権濫用に該当し、または強行法規や労働協約・就業規則に違反すると、解雇無効と判断されて、解雇の意思表示はなかったことになる。その結果、使用者は、労働者の現実の復職を法的に強制されることはないとしても、労働者の就労申し入れを拒み続けると、労働者が別会社に就職するなど特段の状況変化が生じない限り、毎月の賃金支払い義務が発生し続けることになる。したがって、常識的な経営者であるならば、その状況を放置することはできず、現実には敗訴後に金銭和解等の何らかの解決の手を打たざるを得ない。

だとすれば、解雇権濫用についても、その効果を無効と定める必要はなく、始めから金銭解決を図ることを認めても良いのではないだろうか。実は、解雇保護立法を有するヨーロッパを中心とする多くの諸国では、解雇については金銭解決が原則であり、例外的に、公序違反や組合活動を理由とする不当解雇などに限り、無効・復職を認める立法が多い。

これに対して、日本で解雇の無効・復職が原則とされるのは、我が国において伝統的な終身雇用慣行が解雇法理に影響を及ぼしたものと考えられる。また、「不当な解雇をしても、金銭さえ支払えば良い」という考え方に、抵抗感を持つ見解も根強い。

ただ、近年の労働審判やあっせんの解決例では金銭解決が標準であり、一度失われた労使の信頼関係を元に戻して労働者を復職させることは、現実には困難である。また、正社員以外の雇用が39%近くにもなる今日の雇用実態では、終身雇用慣行を基本とする必要もない。公序違反等の解雇の場合を除き、金銭解決が可能であるものとし、賠償金(解決金)の最低額や標準額を法律で定めるなどして、解雇の金銭解決を適正かつ円滑にするための取り組みが必要である。


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